91.槍ケ岳

1.動 機
水戸アルパインの9月例会として、槍ケ岳登山が前夜発3泊4日で計画された。中房温泉から登って燕山荘から表銀座に入り、喜作新道の大天井ヒュッテに泊、東鎌尾根から槍ケ岳に登って槍ケ岳山荘泊、西鎌尾根を下って双六岳に登って双六山荘泊、鏡平を経て新穂高温泉に下りる計画だった。槍ケ岳は憧れの山だったが、簡単には登れそうにないのでのびのびになっていたので喜んで参加した。和子は腰を痛めて泣く泣く欠席、一人での参加となった。一行は男性7名、女性10名、総勢17名(最高年齢68、平均60)だった。

2.データ
a)山域:槍ケ岳(3180m)、双六岳(2860m)
b)登山日:2004/09/16夜(木)〜 9/20(月)
c)コースタイム: 
前夜9/16: 日立計算センタ前19:35 =東海 = 勝田 = 水戸 = 21:50 水戸IC =
1日目9/17: 5:15中房温泉6:15 ---- 9:30 合戦小屋 10:00 ---- 11:05 燕山荘(昼食) 12:05 ---- 14:35 喜作レリーフ 14:50 ---- 15:45 大天井ヒュッテ
2日目9/18: 大天井ヒュッテ5:55 ---- 8:25 西岳ヒュッテ 8:40 ---- 9:45 水俣乗越 ---- 11:10(昼食)11:30 ---- 12:50 槍ケ岳山荘13:30 ---- 13:50 槍ケ岳14:05 ---- 14:30 槍ケ岳山荘
3日目9/19: 槍ケ岳山荘9:05 ---- 9:35 千丈乗越 9:45 ---- 11:00 2674m峰 ---- 11:30硫黄乗越(昼食)11:55 ---- 13:00 樅沢岳13:25 ---- 13:50 双六山荘 14:20 ---- 15:15 双六岳15:30 ---- 16:15双六山荘
4日目9/20: 双六山荘6:25 ---- 7:00 くろゆりベンチ7:15 ---- 7:30 弓折乗越7:35 ---- 8:10 鏡平山荘8:30 ---- 9:40 チチブ小沢9:50 ---- 10:55 ワサビ平11:10 ---- 12:20 新穂高温泉12:30 ---- 13:00平湯温泉(昼食) 14:40 = 19:00 談合坂SA(夕食)19:40 = 23:20 水戸IC = 24:50計算センタ前
d)同行者:水戸アルパイン(男性7、女性10)、和子欠席
e)地形図:1/25000 「槍ケ岳」「三俣蓮華岳」「笠ケ岳」

3.山行記録
前夜:9月16日 曇
19時45分に計算センタ前でバスに乗る。いつも日立から乗車の3名の女性と挨拶する。東海で1名乗り勝田に着いて大騒ぎになった。東海から乗車する人がもう一名いたというのだ。幸い乗り損ねた人は水戸アルパインの人の車に乗せてもらって来て一件落着になった。17名揃って水戸ICから高速に乗り、石川PAと梓川SAでトイレ休憩と時間調整をして、中房温泉に朝5時15分に到着した。梓川SAから中房温泉の間で朝食をとるよう指示されていたが、ぐっすり眠ってしまった。
1日目:9月17日 曇一時雨
朝食をとり、身支度を整え、準備運動をして6時15分に登り始めた。小ぬか雨が降り始めたが、滑るほどではなく、第一、第二、第三、富士見と各ベンチで10分づつ休憩しながら急登を頑張って9時30分に合戦小屋に着き、ここでおやつ休憩する。休んでいるうちに雨が強くなり、上下の雨具をつけて10時に歩き始め、合戦沢の頭の三角点までの急登をすぎると坂はやっと緩やかになり、周りのナナカマドの真っ赤な葉っぱが目に付いてきた。
11時過ぎに燕山荘について、外は風が強くて寒いので、小屋内の食堂に入れてもらって持参のおにぎりを頬張る。コーヒやミルクの温かい飲み物が良く売れていた。空模様は相変わらず悪いまま12時に歩き始めて、展望のない中をゲーロ岩にも気づかないで稜線をひたすら歩いた。唯一、後の燕岳が時々姿を現わし、 みんなを喜ばしてくれた。
大下りの梯子を下って喜作さんのレリーフに挨拶し、大天井への急登の途中から喜作新道に入り、狭いトラバースもこなして、大天井ヒュッテに15時45分に着いた。ヒュッテの前庭からは常念岳の頂上付近だけが雲間から頭を出していた。
夕食の主菜はトンカツ、北アルプスの山小屋の食事は旅館並みである。少し寒気がするので風邪薬を飲んで8時過ぎに寝た。風邪薬のなかの睡眠薬のせいか、一人で布団一つを使えたせいか、朝4時までぐっすりと眠ることが出来た。

2日目:9月18日 曇
朝4時に目覚めて外に出てみると、空は満天の星が降るように輝いていた。今日は槍の穂先が見えると期待させた。ところが朝食をとって外に出ると山裾にはガスがかかり始めていて、常念岳と蝶ケ岳がやっと見えている程度でがっかりさせた。
準備運動を終えて6時前に出発し、お天気の好転を祈りながら歩いた。槍を正面に見ながら歩けるはずのルートなのに、行方に東鎌尾根の険しい登山道は恐ろしくはっきりと見えるのに、その上部は厚い雲に覆われていて槍ケ岳は見えない。好展望地といわれる地点に来ても槍ケ岳は一度も姿を現わさなかった。西岳を巻いて2時間半でヒュッテ西岳に着いてトイレ休憩。寒いので熱いコーヒが売れている。
15分でヒュッテ西岳を出ると、すぐに難関の西岳の大下りが始まった。210mの急な岩場の下りを梯子とクサリに助けながらを慎重に下った。1時間で水俣乗越に着くと、いよいよ両側が深く切れ落ちた東鎌尾根の登りが待っていた。要所には頑丈な鉄梯子がガッチリと取り付けてあるが、スリル十分だった。1時間ゆっくり登ってかぶり岩という名前の付いた大きな岩のある平坦な所について、11時を回った。朝食も早かったのでみんなお腹が空いてきてここで昼食となった。山小屋で作ってもらった弁当にぱくつく。
20分でまた歩き始めたが、今日はやけに足が重い。気を紛らわすために盛んにシャッタを押しながら歩いたが、みんなにくっついて歩くのがやっとだった。昨夜はよく眠ったのにどうしたことだろう。ヨーロッパ以降どこも歩いていない不摂生のせいなのか、夜中風邪薬を飲んだせいか、などといろいろ考えるが気が重い。槍ケ岳が見えてくれれば元気も出るのかもしれないが。

30分ほどでヒュッテ大槍についてトイレ休憩し、さらに殺生ヒュッテを下に見ながらザレた急坂を230mほど登って、12時50分にやっと今夜の宿の槍ケ岳山荘にたどり着いた。指定された部屋は新館にあり、いまのところグループで1部屋占有できるとのことでゆっくりと寝られそうである。トイレも旧館がきつい匂いを発しているのに、こちらは清潔だ。槍ケ岳が有名な山のせいか、険しい山のせいか宿泊者には若者が多い。他のところで中高年ばかりを見てきた目には、若い二人連れが少々眩かった。
天気は相変わらず悪く山頂は見えないが、明日はもっと悪そうなので、今日のうちに頂上に登ることになった。空身になって全員で登頂に出かける。尖った槍の穂先を直登するのだから100mの登りは、岩を這い上がり、梯子をよじ登りの連続だった。それでも悪天候のお陰で渋滞知らずに25分で登って行けた。
山頂からはやはり展望ゼロ、三角点と神社の前で記念写真だけ撮った。天気のいい日にもう一度登ってもいいなと思っていると、「奥さんと登らなきゃダメよ」と冷やかされる。山頂には10分ほどいただけで下山した。この間に上ってきた登山者は10人足らずだったが、天気が良いと狭い山頂は超満員になるのだろう。とにかく憧れの槍ケ岳に登頂したのだ、山荘に入って早速生ビールで乾杯!

夕方になって雨がきつくなり、雨に濡れた登山者が入ってくるようになり、我らの部屋にも数人入ってきた。それでも、敷布団は一枚確保できてゆっくり横になることが出来た。昨夜寝すぎたせいか、今夜は寝付けない。風邪薬を飲んでみようかと思案したが、今日の体調不良のせいかもしれないのでやめにした。雨と風との音を聞きながら朝までもじもじしていた。
3日目:9月19日 晴
5時に朝食をとったが、昨夕からの雨は朝になっても止むことはなく、出発は空模様を見ながらぎりぎりまで延ばすことになった。談話室で待つ間、ガラス窓を通して外を見ていると、時々雲が吹き飛ばされて瞬間的に槍の山頂がかすかに見える時がある。ガラス窓を空けて、寒いのを我慢してシャッターチャンスを待った。9時ごろ雨がやや小止みになったので出発することになり、準備をして雨具を付けて歩き始めた。寝不足を心配したが、不思議なことに今日の足取りは軽かった。
30分歩いた千丈乗越のところで先導と共に半数が指導標を読み間違えて、飛騨沢方向へ進んでしまった。200mぐらい進んだところで後ろから呼び止められて事無きを得たが、危く2部隊に分離するところだった。分岐点では慎重な判断が大切である。隊列を整え、雨も止んで来たのでここで雨具を脱いで歩き始めた。
西鎌尾根に入ってから、槍の穂先が頭を出さないかと振返りながら進むが、後方の雲はいつまでも晴れず独標から北鎌尾根の稜線までは見えるが、槍ケ岳は姿を出さない。進行方向はだんだん晴れてきて、10時頃には陽も射してきた。陽が射すとナナカマドの真っ赤な紅葉が鮮やかに映えて美しかった。慌てて日焼け止めを塗る女性陣もあった。
11時30分硫黄乗越えを過ぎたところで昼食になった。目の前に堂々とした山容を見せる鷲羽岳を中心にした裏銀座の連山を見ながら、気持ちよく弁当をいただいた。12時前に歩き始めて振返ると、赤土の硫黄岳が陽光を受けて輝いており、その後に大天井岳までの表銀座の山々が見えていた。

少し登って13時に2755mの樅沢岳の山頂に着くと、裏銀座連山のの見事な展望が展開していた。このルートも早く歩いてみたい。

樅沢岳からの展望をゆっくり楽しんでから、ジグザグの道を下って13時50分に双六小屋に着いた。掃除の行き届いた綺麗な山小屋だった。2段ベットではない広い部屋を割り当てられて、布団一枚の寝場所を確保する。
40分休憩しているうちに空模様が怪しくなってきたが、12人は空身で双六岳山頂に向かった。中間までは結構な急登だったが山頂近くは殆ど平坦になり、1時間足らずで山頂に着いた。ここから野口五郎岳を眺めるのを楽しみにしていたが、こちら方向の展望もなくなっていた。山頂の証拠写真を撮って下りは45分で双六小屋に着いた。 夕食後、「双六山楽倶楽部」の講演会があり、「山はゆっくり歩いて野山の花や鳥を楽しみながら歩いて欲しい。図鑑での名前は分からなくても、特徴を良く観察して自分で名前を付ければいいよ。百名山もピークハントだけというは勿体ない。」と巧みな話術で話した大学教授の話が印象に残った。サハリンの高山植物を撮影したスライドの上映もあって面白かった。

4日目:9月20日 晴
今日は弓折岳への尾根道を歩いて鏡平まで、ずっと槍ケ岳を展望しながら下っていくルートであり、今日こそ槍が見えますようにと祈りながら目覚めた。
6時半ごろ出発して、双六池から少し登って尾根道に上がったが、やはり槍は厚い雲に隠れていた。がっかりしながら歩くが、道はさすが北アルプスのメインルートだけあって、広くて歩きやすい。三連休も最終日だが登ってくる人も多い。くろゆりベンチで休憩して弓折乗越に1時間で到着、ここから急坂を下って8時過ぎに鏡平小屋に到着した。小池新道を下り、秩父沢で休憩し、左俣林道を合わせてわさび平小屋に11時ごろ到着、更に長い林道歩きをして新穂高温泉に12時20分に到着した。 迎えのバスに乗って平湯温泉に向かい、日帰り温泉で4日ぶりのお風呂に入って汗を流して昼食をとった。ここを14時30分に出発したが、今日は三連休の最終日なので中央道は大変な渋滞。談合坂SAで夕食をとったが、水戸ICに着いたのは23時20分、日立の計算センタには午前1時だった。



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