C83.黒部湖バスツアー

1.動 機
 スーパの抽選で日帰りバス旅行の優待券が当たった。行き先は長野の黒部湖、現役時代に黒四発電所のペルトン水車には随分と苦労したし、8年前の「読売新道」5年前の「下の廊下」の時に歩いたくろよんダムをもう一度眺めて見たかった。日帰りではバスに乗っている時間が長くて疲れそうだが、はるばる長野まで個人で出かける気力はもうないので、この格安旅行に参加することにした。黒部ダムで許された時間は1時間ほどだったが、めぼしい展望台を歩き回って色々な角度から放流中のダムを眺めることができ、行き帰りには、スイス村や大王わさび園に案内されて、結構面白い一日になった。

2.データ
a)山域:黒部湖
b)登山日:2015/8/25(火)
c)旅程:自宅5:30 = 5:40日立スーパ駐車場5:50 = 6:05常陸太田スーパ駐車場 = 6:30那珂IC = 6:55笠間PA7:10 = 8:50横川SA9:10 = 10:25安曇野IC = 10:35スイス村11:10 = (車中昼食) = 12:05扇沢駅12:30 = 12:45黒部ダム駅(ダム散策)14:05 = 14:20扇沢駅14:40 = 15:30大王わさび園16:00 = 16:10安曇野IC = 17:10佐久平PA17:15 = 17:35横川SA17:55 = 19:45笠間PA19:55 = 20:20那珂IC = 20:45常陸太田スーパ駐車場20:50 = 21:10日立スーパ駐車場 = 21:20自宅
d)同行者:バス旅行参加者80名、和子
e)地形図:1/25000 「黒部湖」「大町」

3.山行記録
往路バス
 朝の出発も早い、目覚まし時計に起こされて、着替えだけしてマイカーで我が家を出発、近くのスーパの駐車場に車を入れて、待っていたバスに乗り込んだ。出発の10分前に着いたのだが、もう皆さん殆ど揃っていた。予定時間になって出発し、隣町・常陸太田市のスーパ駐車場に入ると、常陸大宮からやって来ていた1号車が待っていた。日立からの我々のバスは2号車、1号車に乗りきれなかった数人が乗りこんできて2台揃って出発した。
 台風16号と15号が近付いてきていて、数日前から今日の天気がどうなるか心配していたのが、長野県の天気予報は今日だけ雨マークのない曇になっていた。日立では青空も見えたのに、笠間PAで休憩して西に走ると空模様は段々と怪しくなってきて、笠間の低山は見えていたが、筑波山も見えていなかった。
(スーパ前からバス出発)
(茨城の山は見えていた)
 群馬県に入ると赤城山は全く見えず、横川SAの先の浅間山も雲の中。長野道に入っても北アルプスは姿を現わしてくれなかった。それでも喋りっぱなしのガイドさんのお話が面白く、道中バスの中は明るい雰囲気でいっぱいだった。
(浅間山は雲の中)
(北アルプスも雲の中)
1)スイス村
 安曇野ICで高速を下りて少し北上して「スイス村」に到着した。「スイス村」は道の駅のようなところで、お土産店やお食事処などが並んでいて、農産物直販店もあった。お土産店のサンプル品を味見をしながら歩き回って、いくつかのお土産を買い込んだ。
 2階へ上がる階段に北アルプスの展望写真が貼ってあって、山の形、並びから山名を当てようとしたが、なかなか山の名前が出てこない。痴呆が進んでいるのを思い知らされる。
 階段に沿って色々な写真が飾ってあったので、2階にはアルプス関連の展示室があるのかと期待して上がってみたが、2階には団体用の食事室が並んでいるだけだった。
(スイス村)
(北アルプスのパノラマポスタ)
 スイス村を出発してから、バスの中で予約していた弁当を受け取って、お奨めで扇沢に着くまでのなだらかな道を走るバスの中で頂いた。色とりどりに並べられて弁当は味も良くて、車窓から高瀬川河床などの眺めを楽しみながら頂く弁当は格別だった。
(バスの中でお弁当)
(高瀬川)

2)黒部ダム
旅程:12:05@扇沢駅12:30 =(Aトロリーバス)= 12:45B黒部ダム駅12:50 ---- 12:55Cダム展望台13:05 ---- 13:10放水観覧ステージ ---- 13:15E新展望台13:20 ---- 13:25Fレストハウス前 ---- 13:35I黒部湖駅入口 ----13:40H慰霊碑 ---- 13:45B黒部ダム駅14:05 =(Aトロリーバス)= 14:20@扇沢駅14:40
(黒部ダムの観光ポイント)
 扇沢駅に到着した時には、ガスで周りは何も見えない状態、先が思いやられる。ガイドさんは「上は晴れているかもよ」と励ましてくれる。
 1号車のガイドさんが黒部ダムまでのトンネルを走るトロリーバスの乗車券を買いにいって、2号車のガイドさんが全員を3階のトロリーバス乗り場まで案内して6列に整列させる。乗車できるまでの長い待ち時間を和ませてくれることで有名な駅員姿の名物売り子さんが現れ、名演技、名セリフが始まって笑いが湧き起こる。私のようにシャッタを押す人も多かったが、色々と土産物を注文する人も結構いた。
(@扇沢駅)
(@名物売り子さん)
 各自往復乗車券を受け取って、3つの改札口でバーコードを読み取られて通過して乗場に入ると、トロリーバスが6台も並んでいる。帰りの便とトンネルの中間の道幅が広くなったところで交差するので、何台ものバスが連なって運行される。今回は6台だったがそれでも席に座れない人が大勢いて、黒部ダムが人気の観光地であることを実感させられた。
 15分ほど狭いトンネルの中を走って黒部ダム駅に12時15分に到着し、13時50分に集合と指令されて後は自由行動。「左にいって階段を下ると黒部ダムが近いですよ」と案内されたが、我家はあらかじめ予定していた右の階段道に挑戦することにした。ここのところ運動不足の私には220段の階段登りはきつかった。それでも休んでいては1時間では一回りできそうにないので頑張るしかない。途中に破砕体の冷たい水が出ているという水飲み場があったが、行列が出来ていたのでパス。
(ABトロリーバスで黒部ダム駅へ到着)
(Bダム展望台へ220段)
 なんとかダム展望台まで登りきってトンネルを出るとダム展望台、1508mの看板の前で和子に万歳をして貰って記念写真を撮った。
 心配していた雨は降っておらず、南に大タテガビンの鋭鋒が屹立しているのが見えていた。その絶壁をへつる様に作られた狭い道「下の廊下」を恐々と歩いたことを思い出さされた。
(C今日の最高地点)
(C大タテガビン)
 反対側の黒部ダム方向の眺めが圧巻だった。高さ186mのアーチ式ダムの全容と、その上に満々と水を蓄える黒部湖が奥深くまで伸びており、更にその奥には赤牛岳が見え、右上には立山連峰が並んでいる。残念ながら雄山は雲に遮られていたが、大観峰のロープウエー駅の展望台がはっきりと見えていた。
 上から見るとアーチ式ダムの両端が折れ曲がっている。ダム建設当初は両端まで円弧状の完全アーチ式ダムだったらしいが、両岸の脆い地質をカバーするために構造を変えられたとのこと。
(Cダム展望台から)
 ダム展望台からは外階段を下って行った。高さが変わるに従って黒部ダムや放流ジェットの様子が少しづつ変わってくるので、度々シャッタを押しながら下って行った。
 階段途中に、ダム建設時に使われた巨大なコンクリートバケットや滑車、直径10cmのクレーンワイヤなどが展示されていた。
(D外階段途中から)
(Dコンクリートバケット)
 長い外階段を下ってレストハウスの高さまで下ると、谷側に出っ張ったステージがあった。放流観覧ステージという場所で、レストハウスから平らに歩いてきて放流ジェットを眺めることができる。ここから眺める毎秒10トン以上の水を吹き出すジェットはなかなか迫力があった。
 ジェットは噴出されるとすぐに霧状になっている。日が当たれば霧に虹が出来て観光客を喜ばせるが、もともとは放水の勢いで川底が削れてしまうのを防ぐためである。吹き出し口にハウエルバンガーバルブという構造が使われているからだが、現役時代にこのバルブの噴射模型試験をしたことがある。
(F放流観覧ステージから)
 放流観覧ステージのところから右に別れる階段があって、これを下ていくと2003年に新たに作られた新展望台に降り立つ。ここからはダムを正面寄りから見ることになり、ダム堰堤を見上げる格好になって一層迫力を持って迫ってきて、放水ジェットも着水点まで見ることができた。
(E新展望台から)
 新展望台の脇には「黒部の物語」という展示室があり、中には黒部ダム建設の目的や歴史、かかわった人たちの情熱などの説明板が数多く展示されていてちょっと勉強をした。
(E黒部の物語館)
(E展示)
 新展望台から階段を登りかえしてレストハウス前に着いたのは黒部ダム駅集合時間の25分前だった。ダム堰堤を往復して歩いてみたいが時間に間に合うかどうかと迷っていると、バスのガイドさんと出くわし、「ダム展望台まで上がってきてこの時間なら健脚みたい、十分間に合うから行ってらっしゃい」と送り出してくれた。
 それではと歩き始め、行きは右手の黒部川方向を見下ろしながら歩いて、ところどころで立ち止まっては放流ジェットの見る角度による変化を楽しんだ。
(Fレストハウスまで登り返し)
(Iダム堰堤道路)
(右レストハウス側から)
(真上から)
(左黒部湖駅側から)
(I堰堤上からの放流ジェット3態)
 黒部湖駅トンネルの入口まで来ると、ツアーの団体さんが出てくるところだった。急いで記念写真を撮る。読売新道を歩いた時に、ここに出てきてホッとしたことを思い出す。
 あらためて黒部河を見下ろすと、これを渡る細長い歩道橋が見えていた。下の廊下に向かった時に渡った橋で、その日は10月16日土曜日、放流は15日でお終いになっていて見ることができず、間近に巨大なアーチ式ダムを見上げながら「休日の今日までサービスしてくれればいいのに」と恨み言を言いあったことを思い出す。
(I黒部湖駅入口)
(I下流の橋)
 帰りはダム湖側を歩いて、広大な黒部湖を眺めながら引返した。 
(I黒部ダム湖)
 レストハウス前まで戻って、中に入って土産物を漁ったり冷たいアイスを食べたりしてみたいと思ったが時間が危ない。三階のくろよん記念館も見てみたいが、黒部の物語を見たのでまあいいか。和子がレストハウス前に流れだしている黒部の冷たい水をペットボトルに入れている間に、私は反対側の黒部ダム碑のある広場にいって殉職者慰霊碑などを見て回った。
(I引返す)
(H慰霊碑)
 ダム駅へのトンネル内に入るとひんやりと寒い感じがし、歩いて行く途中にあった温度計を見ると10℃を示していた。
 無事集合時間前にダム駅に到着してガイドさんを安心させ、また6列に並んでしばらく待ってトロリーバスに乗って扇沢駅に戻った。
(B黒部ダム駅)
(A@扇沢駅に到着)
 バスを降りて駅舎に入ると、ドライフルーツを売っている店子さんは、出発時に名セリフでみんなを笑わせていた中里さんだった。本業はこの店子さんで、バスの出発の度ごとに出発ロビーに足を運んでみんなを笑わせてくれているのだろう。
 駅舎を出てバスが待つ駐車場に出ると、ガスが濃くてバスも良く見えないほど、小雨も降っていた。黒部湖でこんな天気でなくて良かったあ!
(@今度は店子)
(@雨)

2)大王わさび園
 扇沢駅でバスに乗って、くねくね道を下って行くとすぐに雨は止んで、だんだんと明るくなってきた。1時間近く走って大王わさび園に到着し、30分の自由時間になった。
 「御法田・大王農場」の石碑や「大王わさび農場百年記念館」の建物の向こうに売店があって大きな案内図があった。ワサビ田の中を巡る遊歩道があるようなので、一部を回ってみることにことにした。
 売店前を左に進むと、綺麗な二つの川が平行に流れているのが見え、左脇にコットン水車が廻っていた。道端に「珍百景の二つの川」と題した説明板があった。
    一般河川の万水川(奥の方)と、湧水100%の蓼川(手前)の水質が全く異なる二つの川が、中の島をはさんで、いかにも一つの川のように流れています。蓼川は何十カ所かの小、中わさび畑を巡り巡った後に安曇野でももっとも低い(海抜520m)この地に集まり、犀川・千曲川・信濃川となり日本海へと流れこみます。蓼川を流れる湧水の量は1日70万tとも言われます。水温などの違いから双方の水は、しばらくの間混じろうともせず並行して流れます。
(大王わさび園)
(珍百景・二つの川)
 ワサビ田の中の遊歩道に入ると、ワサビ田の上には黒いネットが張り巡らされいて、ネットの下には作業をしている人が見えていた。期待していた緑色一色のワサビ田を見ることはできなかったが、ワサビを綺麗に育てるためには致し方ないか。
 ワサビ田の小道を歩いて行って農園の中央部に出ると、大王神社という小さな神社があった。昔このあたりにいた豪族の「魏石鬼八面大王」を祀っているとのことだが、両脇には何故か大きなわらじが飾られていた。
(回遊路あり)
(大王神社)
 大王神社の境内には、大王わさび農園の創始者夫妻と2代目夫妻4体の胸像が立っていた。ご夫人と一緒にご夫婦を祀られている所は珍しいのではなかろうか。
 神社から売店方向に歩いて行くと石のベンチがあって、その脇に何か飾り物が見えた。近くで見るとワサビのオブジェだった。一回りして喉が渇いたので、売店でワサビソフトを買って舐めたが、ほとんど辛みが感じられなくて物足りなかった。2001年の北アルプス表銀座縦走の帰りに立ち寄ったワサビ園で食べたワサビソフトは、随分と辛くて参ったように記憶するのだが---。世の中、何事も子供にも受けるように変わってきているのだろうか。
(貢献者夫妻の胸像)
(わさびのオブジェ)
 帰りのバスは安曇野ICから高速に乗って往路を戻ったが、途中、佐久平PAに臨時駐車、往路車内販売で予約していた野沢菜漬を届ける車がここに入って待っていた。なかには10個も予約した人がいて「重いから帰り気を付けて下さい」とガイドさんが気を遣っていた。二人分を代表者で申し込んでいたことが分かってガイドさんも一安心していた。
 悪天候を心配して出発したバスツアーだったが、要の観光場所では雨に会わず、長いバス運行の中では、しゃべりっぱなしの明るいバスガイドさんのお蔭で面白い旅になりました。
 帰宅後、孫のアキちゃん(もう高校生)から「槍ヶ岳に登って来たよ」という嬉しい知らせが入ってきた。


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