D114.県北アート・常陸大宮と道の駅常陸太田

1.動 機
 今日の日曜日、日立市と常陸太田市の境界にある旧町屋変電所で、赤い建屋と銀杏をライトアップし、周りの田圃に数多く設置した行灯に灯を付けるという「行灯あかりの赤レンガと銀杏いちょうまつり」という祭りが行われ、お天気もいいので見に出かけてきた。夕方までの時間を使って、県北アートフェステイバルでまだ歩いていない茨城県北西部の常陸大宮市の展示ポイントを廻ってきた。道の駅常陸大宮だけは物凄く混雑していて諦め、次の日に出直すことになった。

2.データ
a)山域:常陸大宮市、常陸太田市
b)登山日:2016/11/13(日)、14日(月)
c)コースタイム:
自宅9:05 = 10:10旧美和中学校(E-01〜E-09)11:40 = 12:30旧家和楽青小年の家(E-10〜E-13)13:05 =レストラン(昼食)= 14:00旧ゲームセンタ(E-15)14:15 = 14:15旧衣料品店(E-16,E-17)14:25 = 14:50道の駅常陸太田(D-16、昼食)15:35 = 15:50旧町屋変電所(行灯祭りの様子は後日報告)17:20 = 17:55自宅、14日(月):道の駅常陸大宮(E-14)
d)同行者:和子
(県北アート(常陸大宮と道の駅常陸太田)の展示ポイント)

3.山行記録
 我家を9時過ぎに出発して、常陸太田の市街を抜けて県道29を延々と走って、常陸大宮市街北でR118を通り越し、1時間のドライブでやっと旧美和中学校に到着した。
 旧美和中学校
 校庭下の駐車場に車を入れて坂道を登っていくと、去年閉校になったばかりでまだ古さは感じさせない校舎が見えてきた。
 校門を通って立ち並ぶ県北アートの旗や、校歌を彫った石碑、卒業記念のモニュメントなどを見て、案内標識に従って校舎に入って受付すると、眼光の光る真っ黒い兵士のお出迎えを受けた。この旧美和中学校にはE-01からE-09まで、常陸大宮市の半分以上のアートが展示されている。作者の趣旨を予習して行けば良かったのだろうがが、私の感覚ではアートとは思えない作品がほとんどだった。
(旧美和中学校)
(お出迎え)

 最初のアートは、四隅で仕掛けで支えられた板の上で足踏みをすると、それに合わせて何か音楽の様な音が出てくる仕掛けだった。和子もその上に上がって、やったこともないタップダンスの真似事をやって、出てくる音を楽しんでいた。
E-01:Sound of TapBoard
 タップダンサーの超絶的な足踏みがリズミカルな音を生み出すタップダンス。もしシューズが床を叩く音以外の音が出たら?この作品では、不思議で驚きに満ちた体験が味わえます。タップボードの上で足踏みし、聞こえる音を楽しんでください。アナログにデジタルを挟み込むことで、直接的な物理音とかけ離れた音を可能にするこの観客参加型の作品は、様々なスキルを持つ個人が短時間でチームを結成しアイデアを持ち寄り実現するコンペティション「3331a Art Hack Day 2015」でプロダクト・サービス部門グランプリに輝きました。その最新版を紹介します。メンバーは、米澤一平(タップダンサー)、佐藤ねじ(デザイナー)、水落大(プログラマー)、池澤あやか、中農稔(エンジニア)。

 次のアートは、窓側に置かれた黒いいぼいぼの板に、透明なシャボン膜が張られたリングが対向した仕掛けが数個並んでいて、その中のいくつかに蝶々の形をした青い映像が浮かんで見えた。綺麗だが、科学実験みたい。
E:02:コロイドディスプレイ ほか
 美和の山並みを背景に、蝶々の映像がシャボン膜に浮かんでいます。超音波の周波数によって極薄のシャボン膜を微細に振動させることで、映像の投射を可能とする画期的な作品です。落合が東京大学大学院に在籍していた時、Alexis Oyama(カーネギーメロン大学)、豊島圭佑(筑波大学大学院)とともに開発されました。コロイド状の液体でできたスクリーンは、光を乱反射させ質感の変化を生み出すため、反射し光る映像がとりわけ映えます。最先端の科学技術とアートの融合によって、リアルとヴァーチャルが重ねられ、はかなくも不思議な世界が実現したのです。
(E-01:Sound of TapBoard)
(E:02:コロイドディスプレイ)

  次のE-03の旧職員室、雑多なものが詰め込まれた部屋は見たことがある様な気はするが、実際にに見たかどうか自信がない。添付の写真もKYO-ZOの写真なのか定かでない。
 生徒の作成した失敗した大煙突の展示の説明には、日立鉱山の大煙突の中には失敗したものもあり、その痕跡が今も残っているとの記述があったが、失敗の痕跡は見たことなく、失敗したという話も聞いたことがなくびっくりした。
 人間の骨格模型は、小さいころ見て怖い思いをしたことを思い出さされた。この写真はもしかしたら理科室だったかも。
E-03:KYO-ZO
 旧職員室が、不思議な空間へと変貌します。暗闇の中、無数の赤いレーザー光線と音像が来場者をスキャンするように導いていきます。目が慣れて見えてくるのは、かつて使われていた職員室の机や椅子、加えて様々な校内の家具や備品がところ狭しと詰め込まれた光景です。職員室といえば、生徒にとっては入りづらく緊張感をともなう場所。しかしここでは学校で見慣れた有象無象(うぞうむぞう)の事物がランダムに空間に積まれ散らばり、レーザー光に攪拌 (かくはん) されて光と影の中に浮かんでいます。具象と抽象、立体とシルエット、意味と無意味の間に彷徨いながら。この場所に存在したであろう日常が、非日常として交錯する「KYO-ZO【響像】」の場、そこでは観客もその一部となることでしょう。
(失敗した大煙突)
(人体の骨格模型が懐かしい)

 次のE-04のCALARinkの部屋には、かたつむりの面白い映像の出てくる映像や、二人のおんなの子が繰り広げる漫画チックな物語の画像集などあって面白かった。
E-04:CALAR.ink
 旧音楽室が、不思議な世界に変貌する体験型作品です。空間を順番に巡るとカラフルな映像が次々と現れ、私たちを翻弄し魅了します。空間全体がインタラクティブ(双方向的)な「絵本」となり、ストーリーが展開するのです。その展開は偶然によるものでしょうか、必然でしょうか? 様々なスキルを持つ個人が短時間でアイデアを持ち寄り、企画を作るハッカソンイベント「3331α Art Hack Day 2015」で、チアキコハラ(芸術家)、只石快歩(建築家)、坪倉輝明(メディアアーティスト)、瓜田裕也(フロントエンジニア)、衛藤慧(webエンジニア)は、アナログを大切にしたテクノロジーアートとして本作を制作し、アート部門最優秀賞を受賞しました。その最新版を、大掛かりなインスタレーションとして展開します。
(かたつむりの映像)
(画像集)

 日立市など県北の町に電波反射器をを置いて、この位置関係と人工衛星の写した画像を組み合わせて合成画像を作るプロジェクトとのこと。屋上の電波反射器は見に上がったが、肝心の二階の大映像は見ていない。説明も読まないで忙しく走り回った所為。
E-05:だいちの星座 ―いばらきけんぽく座―
 地域の人々とともに、大地に星座を描くという壮大な参加型プロジェクトです。JAXAの地球観測衛星「だいち2号」が県北地域を撮影するタイミングで、グラウンドなどの広い場所に複数の電波反射器を設置し、大地に散らばる星のような風景を記録する仕組みを利用し、本プロジェクトは行われます。6月に2回にわたる説明会と反射器制作ワークショップを開催。8月11日には、各市町6ヶ所で反射器や反射する衣服に身を包んだ参加者と共に撮影が行われました。6つの市町の星を結んで生まれたのが「だいちの星座いばらきけんぽく座」です。けんぽく座の写真やこれまでの「だいちの星座」の映像や関連資料を展示しています。また、屋上には6市町で実際に使われた電波反射器の実物を、各一基、東西南北のポジションに沿って展示しています。
(E-05:だいちの星座 ―いばらきけんぽく座―)
 理科室にはいろいろな実験器具が展示されていて、音叉の調整などして遊んだが、調理室で見たスライスされた大根の透視画像が綺麗だった。
E-06:茨城インベントリウム
 分子生物学者から転じたデジューは、県北の雑草に強い関心を抱き、自然の中での採集やリサーチ、地域でのワークショップを経て「茨城インベントリウム」を展開します。「発明(インベンション)」+「-ウム」(場所を意味)の本人による造語で、南北の植生をもつ茨城の自然そのものと、実験・検証の場である理科室という2つの要素をアートとして統合した「想像的発明のための場」といえるでしょう。理科室や理科準備室では、標本や実験器具、地域の植物などを活用したインスタレーションが、調理室には、スライスした地元の野菜を観察するための望遠鏡が置かれます。温室では雑草が育ち、隣には虫のための「バグ・ホテル」が登場します。この地の環境とつながりながら、生命変化のプロセスを取り込む作品です。
(E-06:理科準備室)
(E-06:スライスした野菜)

 暗い部屋におかしな人物像に眩しい光が当てられていた。生徒が授業に興味を持つようにと必死だった先生の像だとのこと。
E-07:GREAT TEACHER
 小さい頃、校長先生の話を聞くのが退屈だった経験はありませんか?それをまぎらわすべく、話以外で面白いことを探すのに必死だったと語るmagma(杉山純と宮澤謙一)。話す時の表情や抑揚、繰り返される仕草、厳粛な空気だからこそ感じられる滑稽さ…そのような緊張と緩和をテーマに旧校長室をハッキングしました。入学から卒業するまで入る機会がほぼない校長室、暗い空間に偉人のロボットや肖像画が並び音や光や動きを発します。えもいわれぬ不気味なおかしさが、magmaにとっての校長先生、校長室なのでしょう。magmaは2階の木の部屋も変貌させています。校舎の各所にもオブジェが点在しています。建物を巡り、ユーモアと驚きに満ちた世界を堪能して下さい。

 机や椅子、スピーカや動物模型など木造製品が、部屋いっぱいに並べられていた。全て美和の木材で作られたものとのこと。
E-07:WOODSTOCK
 天井、壁面、床など木で埋め尽くされた部屋。林業が盛んなこの地・美和の木材によるものです。木の香りと温もり感に溢れたこの空間が、magma(杉山純と宮澤謙一)によって一風変わったショップ&レストスペースとなりました。様々な素材を組み合わせ、ファニーでカラフルな世界が得意な彼らが空間を見た第一印象は、「広大なサウナ室に入っているよう!」。それを増幅するかのように木の濃淡だけで制作された作品からは、木琴や森の音など木にまつわるのどかな音が聴こえてきます。意味するのは調和か、はたまたユーモアに満ちたナンセンスでしょうか?magmaは、1階の旧校長室も変貌させています。また校舎の各所にもオブジェが点在しています。
(E-07:GREAT TEACHER)
(E-07:WOODSTOCK)

 部屋の真ん中に飛行機の木の模型が吊り下げられていて、模型の後部から覗いて方向を変えると面白い画像が見えるらしい。左右に振ってみたり、上に向けて見たりして変化する風景らしい画像を覗き見た。カメラにも撮ってみたが、次の人が列を作って待っているので慌ただしく、うまく撮れていなかった。
E-08:Fly Me to the Earth
 旧教室の中に、飛行機型のオブジェが吊られています。その後部にはレンズが付いていて、その内部を覗くと、飛行機が雲海を飛行しているアニメーション映像が広がります。飛行機の向きを上下左右に動かすことでパノラマ映像が変化し、鑑賞者はヴァーチャルな世界をめぐることができます。雲の合間からは、常陸大宮市の風景が垣間見えます。いわゆるAR(拡張現実)を利用したアートの一つですが、リアルな映像にアニメーションが重なるのではなく、アニメーションの向こうにリアルな風景が重なって見える一風変わった手法です。体験者は、幽体離脱したかのように、上空から自分がいるこの場所を想像できるでしょう。
(E-08:Fly Me to the Earth)

 一部屋使って茨城出身の漫画家がかいた「爆弾とリボン」の人気漫画が入った額がずらりと展示されていた。なんでこれがアートなの、の思いが強く、出てくるのが女生徒の所為もあってか、見ても懐かしい気持ちは湧いてこなかった。
E-09:『爆弾にリボン』の教室
 普通の女子学生が通う学校の情景と、そこで起こる小さなハプニングを描いた山本美希の長編漫画『爆弾にリボン』。山本の作品の中では最初に単行本が出版されたもので、瑞々しい感性があますところなく発揮された、代表作の1つです。県北芸術祭では、その原画を特別編集し、旧美和中学校の教室で展示します。山本自身も茨城県出身であり、学校という場と作品内の空間はどこかオーバーラップするところがあるかもしれません。また、私たちの多くは、似たような学校の風景・時間を経験しています。この新しい手法を用いたインスタレーションは、作家個人の記憶と結びつくと同時に、多くの人にも懐かしい気持ちを喚起するのではないでしょうか。
(E-09:『爆弾にリボン』の教室)
 屋上には日立駅に展示されていたのと同じような望遠鏡が据え付けられていた。覗いて見ると、大宮の山並みの上に女の子の絵が重なって見えていた。
(望遠鏡の中のアート)
 肉眼で見ると、三つの山が目の前に連なっている。登ったことのある山があるかどうかわからないが、脇に立っていた常陸風土記の解説文にカビレの高峰という山が出ているがあるのだろうか。
(美和中学校から見える山並み)

旧家和楽青少年の家
 旧美和中学校の駐車場をでてから、R118に引返して北上し、家和楽青少年の家の駐車場に入った。この会場には3つの面白いアートが展示されていた。
(旧家和楽青少年の家駐車場)
(旧家和楽青少年の家入口へ)
 広い体育館に入ると、広い会場いっぱいに白い敷物が拡げられていて、その上一面に黒い草が植えられていた。一見、敷物は白い布かと思って見たのだが、実は細かい砂が一面に厚く敷かれているのだった。それに厚紙を切り抜いて彩色した色々な草が植え込まれているのだった。入口脇には砂の見本が箱に入っていて、触ってみることができた
E-10:ブラックフィールド
 砂の上には、黒い林のような風景(ブラックフィールド)が広がっています。静謐なその世界は、一つひとつが小さく繊細な金属製の草花の切り抜きで構成されており、その数は約27,000本。全ての形象は植物図鑑からとられた実在の草花です。大小寄り添うように壮大な風景を形成しています。展示空間を進み、作品を反対側から見るとそれぞれ華やかな色彩に彩られていて、驚かされます。花は様々な文化的背景をもつ人たちによって塗られ、一つとして同じ色がありません。最初モノクロームに見える風景は、背後にカラフルな風景を隠しています。多様な植物と多様な人間が共存することで、世界が形成されていることを思い起こさせます。
(E-10:ブラックフィールド、入口側から)
 反対側に回ってみると、黒かった草は緑の葉に赤や黄色の花を付けている華やかな眺めに変わっていた。草の裏には色付けがしてあったのだった。面白いシーンを二つ味わうことができた。
(E-10:ブラックフィールド、入口側を見る)
(E-10:ブラックフィールド拡大、裏表)

 吹き抜けの部屋には白く大きなバルーンがあり、その中に入れるようになっていた。数人づつに入場制限させるので、受付には行列が出来ていた。順番が来て、階段を下っていくとバルーンのすぐ傍を通るとき、バルーンに触ってふわふわの感じとその大きさを実感することができた。
E-11:No.85
開放的なガラス張りの吹き抜け空間にあらわれた大きなバルーン。半透明でソフトな存在感が、不思議な魅力を放っています。バルーンは外から見たり触るだけでなく、内部に入ることができます。外から見るのと違って、内部は異世界的な環境です。体験者は普段の知覚や身体感覚から自由になり、内部を巡ることで、バルーンを動的に変容させていきます。外から見ると、体験者の動きとバルーンが、ひとつの生き物のように見えるかもしれません。テユは「空間がそこにある」という感覚を、ファブリックを通して探る様々な試みを続けてきました。空間が変容し、人々が作品の一部になり、あらゆる人々がともに遊び楽しむことのできる場を、ぜひ体験してください。
(順番待ち)
(階段を下りてバルーン接近)
 バルーンの中にはもう一つの平らなバルーンが入っていて、その上を歩いて一回りするようになっていた。ふわふわの上に寝っころがって遊ぶ子供たちもおり、少し先に行った和子は深く降り積もった雪山の中にいるようにも見えた。
(E-11:No.85 バルーン内部)

 展示室には、色々なところで撮った綺麗な久慈川の風景写真が展示され、川床から採った小石や陶器のかけらも展示されていた。
E-13:反芻ー久慈川にて/The Sun Returning
 マシュー・ジェンセンは、写真、ウォーキング、歴史、採集など、様々な表現手法を組み合わせ、多分野を横断するアーティストです。風景、特に公共スペースのありふれた風景を、特別なものとして感じさせるようにするのが、彼の試みるテーマです。今回展示されている大きな写真は、県北地域を流れる久慈川の太陽の反射を上空から捉えたもの、そして、これまで世界各地で撮影された同シリーズの写真作品です。また、展示場所周辺の散策から発見されたものも同会場にインスタレーションされます。太陽の光があまねく降り注ぐ地表の上に私たちがいることを感じながら、普段とは違う視点で家和楽、そして県北地域を見てみてください。
(E-13:反芻ー久慈川にて/The Sun Returning)

 屋外にはE12が展示されていたらしいが見落とした。
 E-12:イレギュラー・テトラヘドロン
この三角錐の形をした彫刻は、30°、60°、90°の角を持つ三角定規の形が基礎になっています。そして、この展示場所である旧家和楽青少年の家の緯度と経度から軸の傾きを割り出して、この作品は作られました。タワッシャイ・プンサワッは既成概念による感覚の固定化を避け、子どものときのように世界を純粋に知覚する歓びへと私たちを誘います。さらに、この彫刻は木を抱えるように設置されました。それは、自然環境との応答によって成り立つ世界観を見せたいという作家の希望によるものです。

道の駅おおみや
 青年の家を出てからR118を南下して、次の展示場所の道の駅常陸大宮に向かった。途中から物凄い渋滞になりノロノロ運転、道の駅の駐車場に入る順番待ちの車が、R118の交差点のこちら側まで繋がっていて、そのために起きた渋滞だった。新しく出来たこの道の駅は日曜日は何時も渋滞してるのだった。開場直後の今年4月に山歩きの帰途立寄った時にも平日なのに近辺が渋滞していたが、今でも休日はアートの所為だけではなく混雑しているようだった。時間をかけて駐車場に入る気はしなくなり、道の駅は今回パスして大宮市街の展示場に向かった。
 県北アートの全展示場を回る目的を達成するために残ったのは、この道の駅と、日立シビックセンタの天球劇場だけになった。翌日の月曜日、我家からここまで出掛けてくると、駐車場にもすんなりと入ることができ、E-14のアートもゆっくりと感賞することができた。
 道の駅の久慈川を向いた展望デッキに、てかてか光る黒や白色々な色をしたの石が八角形の敷物の上に並べられていた。陶器で作った石で、形も丸みがあってなんとなくやわらかい感じがする。多くの人が眺めていったが、小さな子供さんが石に抱き着いて嬉しそうな顔をしていた。アートが分かるらしい。(触ってみるのもご自由にとあり)
 一回りして違う方向からシャッタを押してみたが、題名から見てやはり久慈川を背景に入れるのが良さそう。
E-14:川床/寄り添う人々
 久慈川の清らかな流れに臨む道の駅かわプラザの展望デッキ。その一角に、陶器の彫刻群が加わりました。彫刻は、悠久の流れによって丸みを帯びた川底の石のように、サイズも色も質感も様々、寄り添うようにこの場を共有しています。それはまた、この場所に集いひとときを過ごす人々を象徴するようです。県北の最北・八溝山に発する久慈川は、この地に自然の豊かな恵みをもたらしてきました。かわプラザの近くには遺跡もあり、古くから人々が住んでいたことがうかがえます。長い時の流れの中でこの地に集っていた人々に思いを馳せることもできるでしょう。作品には直接触れていただけます。陶器ならではの触感をじっくり味わってください。芸術祭終了以降も、本作は恒久設置されます。
(E-14:川床/寄り添う人々)

旧ゲームセンタ
 大宮市街に入って、マップを見ながら走って展示場の駐車所に車を入れ、先に旧ゲームセンタに入った。
 入口の広間には、墨で色々な模様を描いた白い反物が干すようにぶら下げられたロープが雑多に張り巡らされていた。このアートを作るローラー式の印刷機が展示してあった。
(旧ゲームセンタ)
(墨絵の反物)
 部屋の半分の吹き抜け部分には、大きな円筒状のアートがああった。障子の様な四角い格子に和紙が貼られていて、空いている格子の間からは、中にお宮の屋根の骨組みが見えていた。アートの題名の趣旨が判らないが、見応えのあるアートだった。
E-15:ジョイ・センターの客
 日常生活にありふれた素材を、驚くようなやり方で変貌させ、大規模な彫刻空間を作り出すミヒャエル・ボイトラーが、常陸大宮市の旧ゲームセンターの空間に挑みます。もともと日本の障子の技術などからインスパイアを受け、自身の彫刻に活かしてきたというボイトラー。今回は宮大工の方とのミーティングを行い、日本の若手芸術家、そして一般参加者と共に、地域の素材を使った遊び心に満ちた大規模な空間展示を行います。
(E-15:ジョイ・センターの客)
 内部に入ると、骨組みだけのお宮を真下から見上げることができ、大きさを実感した。
(内部のお宮)

旧衣料品店
 駐車場のあった近くの旧衣料品店に戻ると、入口に2つのアートがあるとの案内板があり、入口ごガラス戸を開けると、に入ると目の前に黄色いアートが見えていた。
(石沢地区空き店舗アート案内板)
moon satellite入口
 これがE-17:moon satelliteで、幅が10mもある黄色い巨大な絵画が、斜めに飾ってある。黄色は月をイメージしているとのことで、外の明かりを受けて綺麗に輝いているように見えた。すぎて上が閊えて垂直には立てられないらしいが、どうやって中に入れたのか、つまらんことを心配した。
E-17:moon satellite
 《ムーンウォーク》と名付けられた絵は、なんと10mx7.6m。通常絵画は壁に展示されますが、空間に斜めに差し込まれ物質感さえ感じられます。異なる黄色のドットによる表面は、月が太陽光を受け留め光るかのよう。まず広大な色面に遭遇し、次にインスタレーションとして体験でき、重なる絵の具のテクスチャーも楽しんでいただけます。巨大な絵画の背後には対となる光る作品が、他の壁にも月をモチーフとした作品が配置されています。「人工衛星(サテライト)」になったかのように、自身の軌道で空間を巡ってください。夜間には巨大絵画がライトアップされ、ネオン作品の光とともに空間が黄色く浮かび上がります。道の駅ひたちおおたのレストランでは、星をモチーフとした絵画を展示しています。
(E-17:moonwalk)
 右側の壁には黒と白の通常サイズの絵が飾ってあって、新月の月表面をイメージしているとのこと。
 大きな画像の裏側には、何も描いてないカンバスが黄色い光を受けていて、ネオンと言う副題がついていた。
(moonwalk(油絵・水彩画))
(moonwalk(ネオン))
 左側の壁には楕円状にポツポツとだけ印があり、展示されていた大きなアート絵が落ちたのかと思ったが、一つ一つの印に近付いてみると、それはドットに描かれた小さな絵だった。月を回って月の表面を見た絵を、円環上の軌道上に張り付けてアートかと推察した。
(moonwalk(円環))
(moonwalk(円環)のポイント拡大)

 別室にはE-16の「森の記憶」というアートが展示されていた。別部屋に入ると、天井近くに木の小枝がいっぱい吊り下げられていた。窓明かりでみるのと、ライトを当てられたのでは随分違って見えた。特に、壁に写った影と混在した構図は綺麗に見えた。
E-16:森の記憶
 天井には、黒く焼け焦げた小枝が膨大な数、吊られています。枝々には光が当たり、壁面には複数の枝の影が樹木の形で浮かび上がっています。枝への光が、実際には存在しない樹木をシルエットで出現させるのです。小枝自体も黒く焼かれ、シルエットに近い存在です。このインスタレーションは、幻想的な美をたたえながら、同時に人間が開発で消滅させた樹木や森の記憶へと誘います。空間内にいる人々の影もこの世界に無縁ではありません。鑑賞者も世界の一部なのです。人間と自然の関係とは何なのでしょうか?おのおのの負っている「責任」がこの作品では問われています。
(E:16:森の記憶)

道の駅常陸太田
 町屋変電所に向かう途中、県北アートを最初に見に出掛けたD103:常陸太田の時には、マップに書かれた「レストランご利用のご利用のお客様のみ鑑賞可能」との但し書きがあったのでパスしたD-16の展示がある道の駅常陸太田に立寄った。
 道の駅の入口前の休憩所の上には常陸太田名産の葡萄の棚があり、その周りにたくさんの鈴や可愛い手作りの人形がぶら下げられていて綺麗だった。
(道の駅常陸太田)
(道の駅の前休憩所の上)
 レストランの入口には「只今テイータイム中、食事はできまでん」の立札が立っていた。店内に入って「食事なしなので、今はアートを見ることができないのですか」と尋ねると、「そこにありますからどうぞ見ていって下さい」と有り難いご返事。がらがらのテーブルを縫って奥に入ると、壁に一つの星形のアートが展示されていた。絵が星形なのも変わっているが、色は青色で星にしては変わっている。有名なガガーリンが言った「地球は青かった」の言葉を思い出すと、このアートは地球を表しているのだと納得した。

D-16:STAR.b
 絵というより、「大きな青い星」という印象の作品です。美術館やギャラリーに飾られた多くの絵画は、矩形をしています。しかし内海聖史の作品は、その常識を軽やかに覆す存在感を放っています。星を星型という記号で表す場合、私たちは黄色のイメージを持ちがちです。また、青い星と言えば、私たちが住む惑星・地球のイメージで、それは宇宙から観測された色です。この星型の絵画では、記号としての星のかたち、実際の星の色が合体しているのです。よく見ると、青は微妙な色のバリエーションを持ち、繊細なドットで描かれています。絵の具が立体的に立ち上がり形成されたミクロな風景は、惑星の表面のようです。内海は、月をテーマにした巨大な黄色い絵画を、常陸大宮市の石沢地区空き店舗に展示しています。ぜひそちらもご覧ください。
(D-16:STAR.b)

 道の駅で野菜などを漁っていると、町屋変電所のライトアップに丁度いい時間になってきた。町屋変電所ではライトアップされた赤い建屋と黄色い銀杏の樹、暗闇にほのかに灯る行灯の列、丁度出てきたスーパームーン、と素晴らしい情景を目にすることができたのだが、写真も多くなりすぎるので、翌日訪れた日立最後の日立シビックセンタの宴旧劇場の様子と一緒に、別に報告することにします。


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