S23.北八ケ岳スノーシューハイキング
1.動 機 今年最初の水戸アルパインスノーシューハイキングとして、前夜茨城を出発、車中泊して、坪庭から縞枯山、茶臼山、白駒池、中山と歩いて黒百合ヒュッテに泊まって、翌日天狗岳に登るという北八ケ岳を縦走するコースが募集された。北八ケ岳には、旅行社のツアーで坪庭から北横岳に登り、白駒池まで麓を歩いた夏の経験があるだけだったので、楽しみにして参加した。参加者は15名、そのうち女性11名、女性が元気な水戸アルパインを象徴するような構成だったが、絶好の天気に恵まれて素晴らしい展望を堪能しながらの楽しいハイキングであった。 2.データ a)山域:中山(2496m) 、東天狗岳(2646m) 、西天狗岳(2646m) b)登山日:2005/02/11(金)〜02/13(日)晴 c)コースタイム: 11日:日立計算センタ前21:30 = 23:00 水戸IC = 12日:= 2:10双葉SA(仮眠)4:30 = 諏訪IC = 5:30セブンイレブン(朝食)6:30 = 7:15ピラタスロープウエー麓駅8:00 = 8:35メルヘン街道車止め 8:50 ---- 9:50 日向木場展望台 10:05 ---- 11:35 麦草峠 ---- 12:00 白駒池入口 ---- 12:20 白駒池 13:00 ---- 13:55 高見石 14:05 ---- 15:30 ピーク---- 15:35 雪穴 15:45 ---- 16:00 展望台 ---- 16:10 中山 ---- 16:45 黒百合ヒュッテ 13日: 黒百合ヒュッテ7:30 ---- 8:30 東天狗岳8:45 ---- 9:00 西天狗岳 9:15 ---- 9:30 東天狗岳分岐 ---- 10:15 黒百合ヒュッテ 11:10 ---- 12:00 八方台分岐 12:05 ---- 12:40 渋の湯温泉13:50 = 14:40 諏訪南IC = 双葉SA = 石川PA = 17:00 高井戸 = 18:05 守谷SA18:40 = 19:20水戸IC = 20:30日立計算センタ前 d)同行者:男性3、女性11、和子は不参加 e)地形図:1/25000 「蓼科」 3.記 録 a)登山口へ 夜9時30分にいつものように日立でトップ乗車した。ここで腕時計を忘れたのに気がついたが後の祭り、後で不便を感じることになった。東海、勝田、水戸で全員乗車して、11時に水戸ICから高速に乗る。双葉SAで仮眠を取って、諏訪ICで下り、近くのコンビニで昼弁当を購入して朝食をとった。7時15分ピラタスロープウエーの山麓駅に到着したが、ロープウエーの始発は9時とのこと。それから坪庭に上がって縞枯山と茶臼山を越えるのでは、更に中山を越えなければならないので、参加者の体力を勘案すると明るいうちに黒百合ヒュッテに着くのは無理と判断されて、ルートが変更された。平坦なメルヘン街道を歩くことになり、別荘地の先の車止めまでバスで移動して、9時に歩き始めた。 b)一日目 交互に縦と横に並んだ兎の足跡のどちらが前足でどちらが後ろ足か教わったり、 破片状になった雪がきらきらと七色に光っているのを眺めて何故だろうと話しながら楽しく歩く。はじめ右手に蓼科山、北横岳、やがて登るはずだった縞枯山や茶臼山が格好よく見え始め、左手には、樹木が切れたところから、南アルプスから中央アルプス、乗鞍などの雪山が見えてきて、その都度シャッタを押す。やがて日向木場に着くと立派な展望台があり上がってみると、これらの山々を一望にでき、みんな大喜びでシャッタを押した。麦草峠まで国道を登ると登山道への分岐があったが、白駒池入口までらくちんな国道をそのまま歩いた。ここで丁度正午になったが、少し風が強くて寒いので、更に白駒池まで20分ほど山道を歩いた。白駒池は全面真っ白に氷結しており、風も弱くて、日差しのもとで気持ちがいい。めいめい湖上に陣取って弁当を食べた。 食後、緩やかな坂道を1時間ほど高見石まで登る。登山道は樹林帯の中で展望はないが、幹や枝葉に雪が張り付いて色々な造形を作っていて美しい。中にはムーミンや動物そっくりなものがあって、ストックで目玉や口を書き込んで遊びながら歩く。高見石の岩場に上がると、行く手に中山が、後に縞枯山など北八ケ岳、眼下に真っ白い白駒池、その間に浅間山が薄い煙を上げていた。展望を楽しみながら休憩して、集合写真を撮る。 ここから中山までは少々きつい登りになった。1時間半で登りきったところで、明日登る天狗岳の東峰と西峰が並んで見えた。ここで事件を起こしてしまった。 c)遭難寸前 「少しだけ脇に入ったところに展望の素晴らしいところがあるよ」とのリーダの話を聞きつけて行って見たくなり、踏み跡が無いので少し迷いはしたが、自分の踏み跡が残るので間違いなく戻って来れると確信して踏み込んだ。尾根筋を少し入ったところで、左手に樹木が無い広場が目に入り、ここが展望台だろうと向きを変えた。広場に出ると天狗岳や中央アルプスが良く見える。写真を撮るには数本立っている枯木が邪魔になり、その前に出ようと前に出たら突然身体全体が雪の中に沈んでしまった。 スノーシューを履いた足が何かに挟まって立つ事が出来ない。周りの雪を掻き分けると、さらさらと下に落ちてゆく。やっと状況が把握できた。ここは檜の幼木の植林帯で、私は枝葉のハンモックの上に乗っかっており、上部には1m程度の雪が乗っているが下は空洞になっているのだった。苦労して足を絡みから外して立ち上がると、雪面は首より下、もう一段下に落ちていたら大変だったが、ここなら何とか這い上がれそうに思えた。 這い上がろうと雪層に足を差し込んで体重を掛けると雪は崩れて下に落ちてしまう。周りの枝に足を乗せたり、木にしがみついたりして這い上がろうと何度ももがいたが、雪に体重を掛けた途端、雪は無情にも崩れて下に落ちてしまう。みんなも待っているだろうなと気になりだし、段々と頭に血がのぼってきて焦りも出てき、雪山の遭難にはこんなのもあるんだと思い知らされ恐怖心も沸いてきた。 慌てるなと自分に言い聞かせ、少し雪の固まったところを探して移動することにする。斜面の上に向かったほうが良いに違いないと、雪を崩しながら、枝の上を渡りながら、5mも山側に進むと雪層が少し固くなってきた気がした。リュックを背負っていては重さでも不利だとやっと気がつき、リュックとストックを雪面の上に投げ上げる。スノーシューも脱いだ方が動きやすいが、脱いでは上に上がってから歩くことが出来なくなるので仕方がない。 高めの枝に足を乗せて、エイヤッと身体を雪面に投げ出した。ああ、無情!身体は雪面まで上がりきらず、ドサッと雪は崩れ落ちた。雪まみれになって泣きたくなる。下まで落ちなかったのが幸運よと思い直して、再度上がれそうな場所を選んでリュックとストックを移動させた。今度はもっと高いところから上がろうと、しっかりした枝の上に雪を積んで足場を作ったら、雪面は臍下まで来た。今度は慎重に、立木にしっかり掴まって身体を引き上げる。幼木の頭を持って引っ張るとずるずると雪の上に横たわることが出来た。助かった!まだまだ慌てるな。慎重にゆっくりと立ち上がり、まず目の前のストックを掴み、これでリュックを引き寄せた。 雪を払ってリュックを背負って振返ると、5m角ぐらいの大きな穴が開いている。よくももがいたもんだ。穴ぼこの写真を撮っておこうとカメラを向けたが、寒さのためか作動しない。風景も撮れず残念だが、電池を入れ替えるよりも早く戻らなきゃと登山道へ向かった。歩いてきた踏み跡は大分離れているので、とにかく高い方へと立木の間を歩いたらすぐに元の登山道に戻ることができた。 時計が無いのでわからないが、おそらく10分ぐらいの悪戦苦闘だっただろう。ここからは登山道を進めば良いのだが、疲れ果てて足取りがふらふらする。よたよたと歩いているところを、心配したリーダが迎えに来てくれた。神様に見えた。もう単独行動はやりませんと謝る。 下山さんの迎えも受けて元気を取り戻したが、汗をかいた身体には中山山頂の−20°ぐらいありそうな冷たい強風はこたえた。ここで電池を入れ替えてみたがカメラはやはり作動しない。風景写真は下山さんにお願いし、山頂標識前の証拠写真を撮ってもらう気にもならずせっせと歩いて、黒百合ヒュッテ寸前でみんなにやっと追い付いた。夕方5時前にヒュッテに入ったら、宿の主人が帽子に付いた雪を見てどこから歩いて来たのよと不審がられた。リュックのポケットやカメラケースの中には雪がたくさん詰まっていた。 黒百合ヒュッテは大きな山小屋で、大きな薪ストーブ2台で暖かく、トイレは水洗、夕食のおかずの品数が多く、ご飯と味噌汁はお代わり自由、申し分なし。2階3階が寝室になっていて、3連休の中日のこととて随分混んではいたが、一人に一枚確保できた布団の中で、7時過ぎから朝6時前まで綿のように眠った。 d)二日目 夜明けと共にすっきりと目覚めて外に出てみると、空には星が見えていて今日も良い天気、入口にぶら下がった大きなアルコール温度計は−19℃を指していた。今日の天狗岳は昨日の中山山頂よりももっと寒そうだと観念して、ダウンジャケットを追加して着込んで登ることにした。女性陣のうち6名が、寒さと雪の急登を警戒してヒュッテで待機することにしたという。昨日、中山山頂で私を待っている間の寒さがこたえたのかなあ。 東天狗岳への上りはガレ場で結構な傾斜だが、雪のお陰で反って歩きやすかった。ヒュッテから山頂まで1時間、随分速いとリーダに褒められた。山頂からの360°の展望は素晴らしい。富士山だけが雲に遮られているのが少し残念だったが、目の前に見える横岳・赤岳・阿弥陀岳の南八ケ岳が圧倒的だ。今年の夏は夫婦揃ってこっちを歩きたいと思う。 ゆっくり東天狗岳からの展望を堪能してから、50m下って登り返し、隣の西天狗岳に登ってまた展望を楽しんだ。西側を遮るものが無くなり、展望が更に良くなった。改めて山名同定を確認して、パノラマ写真を撮った。 待っていたバスから着替えを取り出し、渋御殿湯で汗を流して14時前に帰途についた。バスの中からの眺めがまた絶景だった。一般道では南北八ケ岳が一列に並び、中央道からは南アルプスが迫ってきて、おいでおいでと言っている様だった。 山頂では見えなかった富士山も少し姿を見せてくれた。3連休の最終日にも関わらず、中央道も首都高も殆ど渋滞が無く、守谷SAで夕食を取って、水戸ICに19時20分に帰着できた。 |