S55.西上州山巡り
(荒船山・物見山・裏妙義丁須岩)

1.動 機
(憧れだった荒船山)
写真で見る荒船山の艫岩は、切り立った大きな断崖が印象的で、以前から一度その上に立ってみたいと思っていた。登るのにそれほど困難はなさそうだが、日立から遠いのでなかなか出かける機会がなかった。下仁田町付近には面白そうな山がたくさんあるので、とにかく荒船山に登って下仁田に一泊し、翌日は後で考えることにして出かけた。実際には1日目に念願の荒船山に登り、その日のうちに物見山にも登って艫岩を展望し、翌日、裏妙義の丁須ノ頭まで登ってちょっぴりスリルを味わって帰ってきた。

2.データ
a)山域:荒船山(1423m)物見山(1375m)丁須ノ頭(1057m)
b)登山日:2005/05/26(木)晴一時曇、27(金)晴一時小雨
c)コースタイム: 
5月26日:森山4:50 = 6:30下館6:40 = 9:05本庄児玉IC = 9:30下仁田IC = 10:10内山峠P 10:25 ---- 11:25一杯水 ---- 11:50艫岩(昼食)12:30 ---- 13:05荒船山(経塚山)13:20 ---- 13:50艫岩14:00 ---- 15:00内山峠15:10 = 15:25神津牧場P = 16:00物見岩16:10 ---- 16:40物見山17:00 ---- 17:35神津牧場P 17:40 = 18:10民宿神津荒船
5月27日:民宿神津荒船7:40 = 8:30国民宿舎裏妙義8:45 ---- 9:30木戸 ----10:50丁須ノ頭11:25 ----11:40チムニー11:50 ---- 12:00鎌沢分岐 ---- 13:10木戸 ---- 13:45国民宿舎裏妙義14:05 = 14:25松井田妙義IC = 15:05伊勢崎IC = 15:50(R50)= 19:00日立
d)同行者:和子
e)地形図:1/25000 「荒船山(北西)」、「信濃田口(北東)」、「南軽井沢(北東)」

3.記 録 
a)荒船山
朝5時頃出発し、笠間から延々とR50を走り、本庄児玉ICで高速に乗り、下仁田ICで下りて10時過ぎに内山峠の登山口に到着した。朝食休憩を含めて5時間のドライブだった。駐車場には4台の先客があり、すでに下山して来る人もいた。
(登山道からの艫岩の眺め)
整備された歩きやすい道を登りはじめると、すぐに真っ赤なヤマツツジの群落の出迎えを受けた。その先、アップダウンの繰り返しになったが、赤紫のミツバツツジがあちこちに咲き乱れていた。20分も歩くと、艫岩が望めるようになりミツバツツジと合わせて撮影したいが、新緑に遮られてうまくいかない。崖を削り取って登山道を作ったようなところなどもあったが、気持ちのいい新緑の登山道を1時間ほど歩いて一杯水に到着した。「登山者はみんなここで一杯の水を飲んで喉を潤す」という看板があったが、水量も少なく、あまり綺麗な水場とは思えなかった。
ここからしばらく岩場の急登になったが、大して怖さはなく、すぐにクマザサの道になった。20分も登るとクマザサの台地になり、そこは艫岩の東端だった。案内板があり、その裏に回ると展望が開けていた。前に進んで下を覗いてみると、はるか下方に下仁田の樹林帯、切れ落ちた崖の上で高度感に足がすくむ。R254コスモス街道のくねくね道、広い緑の広場を見せる神津牧場と内山牧場、その上にアンテナが立つ物見山のピラミダカルな山容が展開していた。
(艫岩からこわごわ覗く)
(物見山)
台地を5分歩くと休憩舎やトイレ、ベンチがあり、その先に艫岩展望台。遮るものもない展望所で、条件がよければ、八ケ岳、北アルプス、谷川岳など望めるらしいが、今回は春霞にさえぎられて、浅間山も見えない。代わりに崖っぷちにミツバツツジが咲いていた。絶壁近くの岩の上に陣取って、山名同定をしながらゆっくり弁当を食べた。
荒船山の最高地点の経塚山に向かう。台地の上を星尾峠の別れまで20分の平らな道を歩く。途中小さな祠の近くに10mもありそうな大きなミツバツツジの木が満開で見事だった。ここから山頂まで10分の急登。たった10分だが、ここまで平地を歩いてきたので、結構きつく感じた。山頂には祠や三角点とともに、33回国体の聖火の採火記念碑があったが、展望は木立に囲まれていてあまり良くなかった。南方だけ開けていて、立岩らしいとがった岩山が見えていた。明日はここに登ろうかなと考えながら、ツツジを近景にしてシャッタを押した。
(ミツバツツジ)
(経塚山山頂)
艫岩まで引き返して展望に名残を惜しんで、くだりにかかる。午後は日当たりがよくなったので、ツツジの色合いも一段と綺麗になっており、下から見る艫岩の岩肌も迫力があった。登りと同じ場所でまたシャッタを押した。
15時に内山峠に下り立ち、宿に入るには早すぎるので、目の前に見えている物見山に今日のうちに登ってしまおうと話が決まった。明日登る山は今晩ゆっくり考えることにした。
b)物見山
内山峠から物見山登山口である神津牧場の駐車場まで、林道を走って15分ほど。神津牧場で遊んでいるらしい車がたくさんとまっていた。牧場で美味しいソフトクリームを食べてみたい気もしたが、あまりゆっくりしていると日が暮れる。直ぐに駐車場奥の石段を登って、登山道に入った。登山道を20分も歩いていくと、車道にでた。ここから物見岩への登山道に入る。「ここまで車でくれば楽だったのに」と文句を言われる。今朝は早起きだったので、荒船山だけでお疲れのようだ。ここから10分登った物見岩からは、ツツジの花越しに艫岩が目の前に見えていた。その左に鹿岳、四ツ又山、右にローソク岩など西上州独特の岩山群が見えており、物見山も目の前だった。
(物見岩から西上州の山展望、中央に艫岩と経塚山が見える)


物見岩を下って車道を横切って再び登山道を進むと、また車道に出た。物見山登山口に車が止まっている。登っていくと大きな望遠レンズを構えて、じっと向こうを睨んでいる青年がいた。鳴き声が聞こえている鳥が現れるのをじっと待っているのだという。話をしていては邪魔になる。早々に通り過ぎて山頂に向かう。
山頂は360°の展望だとの歌い文句だが、樹木が育ってきたからか、展望は半分だけだった。浅間山の雄姿を期待したが、ここでも雲に隠れて山頂は見えなかった。妙義山がよく見え、表妙義と裏妙義が別々の山塊としてはっきり見えていた。実は、表妙義と裏妙義とは同じ山を表と裏から登るのだと思い込んでいた。5年前に表の洞門めぐりをやったので、妙義はおしまいと思っていたのだが、裏妙義が別の山ということになれば、やはり登ってみたくなる。明日はこの山に決めた。
(物見山山頂)
(裏妙義と表妙義)
下山は物見岩登山口まで車道を歩き、ここから往路を下って17時半頃駐車場に着いた。民宿に着くと、「荒船の湯に行ってらっしゃい」と入浴券を渡された。4kmを車で引き返して、ゆっくりと汗を流した。民宿はドライブイン兼業で、泊まりは我が家だけ、風呂を沸かすのはもったいないということだ。夜中中、R254を疾走するトラックの轟音が絶えなかった。
c)裏妙義(丁須ノ頭)
7時40分に民宿を出て、国民宿舎裏妙義に50分で到着、登山届けを出して8時45分に国民宿舎脇の登山口から登りはじめた。最初は杉林の中の緩やかな道を登ってゆき、雑木林に変わると沢筋を辿るようになる。この沢は籠沢といい流れはほとんどない。両側には絶壁が天に向かって聳え立ち、妙義独特の雰囲気を醸し出していた。ゴロゴロとした大岩が行く手を阻み、鎖を頼りにしながらこれを乗越え黄色のペンキを辿って高度を稼いでいく。木戸という絶壁に囲まれた曲がり角を過ぎると、やがてガレバの急坂になる。落石を起こさないよう、所々に設置された鎖も使って慎重に登る。最後の長いルンゼを鎖で登るとようやく稜線に立つ。 視界が開けるが、遠くの山は霞んで見えない。
(国民宿舎)
(籠沢の岩場)
切り立った丁須岩の垂直な岩壁の北を巻く道を進むと、直進方向に進入禁止の立札がたっており、ここから左の岩に取り付く鎖があった。少し登ってから水平にトラバースするのだが、足場が不ぞろいで鎖もなく今日一番緊張させられた場所だった。トラバースを終えてほっとしていると、目の前の崖にロープがぶら下がっているのが見えた。さっきの進入禁止の立札を通り越したところから登ってきており、ロープは長いが、怖いトラバースがないだけこっちの方が楽そうだった。あの立札は誰が何のために立てたのだと腹が立つ。
(丁須ノ頭へ)
(丁須ノ頭の前で)

丁須の頭はその後すぐあらわれた。まさにその名のとおり、丁の字、かなづちの形をした岩が山頂ににょきっと出ている。岩場を鎖でいっきに登る。丁須の頭は狭く切れ落ちていて落ち着かないが、表妙義をはじめ、右に浅間山や鼻曲山、浅間隠、左に昨日登った荒船山や物見山など西上州の山々が並んですばらしい眺めだ。さらに左に裏妙義縦走のハイライト、赤岩や烏帽子岩の岩峰があり、高さ100mもありそうな絶壁をトラバースする岩場がみえていた。
(丁須ノ頭から赤岩、烏帽子岩)

ここで山名同定したり写真を撮ったりしてるうちに、ヘルメットをかぶり腰にベルトを着けカラビナをぶら下げた本格的装備の男性が登ってきた。友人に八海山の岩場より手強いよと言われて覚悟してきたが、これから縦走して谷急山まで登って国民宿舎に泊まるという。シャッタを押し合って、我々は一足先に出発した。
岩場を下りるとすぐに鍵沢の別れ。この先に岩稜があり、ナビの調整をしている間に和子はここに登って展望を楽しみ、行き止まりだよ言いながら下りてきた。巻き道を進むと3mほどの岩場を下る。下りた右手に鎖が見えたが、これを無視して左手の踏み跡を辿って進むと絶壁上に出て行き止まり、引き返して上に登ってもこちらも絶壁で行き止まり。また引き返して足元を見ると「イキドマリ」と書いた板が転がっていた。わおー、この鎖をつたってこの崖を下りるのが縦走路なのだ。そういえばチムニーの20mの下りに注意とあったっけ。穴のような岩場を覗いてみるとはるか下に狭い平地が見える。垂直の絶壁の途中で腕が疲れてきたらどうするの、など考えると自信がなくなり引き返すことにした。
くだんの男性が追いついてきて、「枝道があちこちあって手間取った。ここも右の道は駄目?ここが例のチムニーですか。お先にどうぞ」と言われたが、我々はここで引き返すと言って辞退した。男性は、こともなげに鎖につかまって下りはじめ、中間では両側の岩場の出っ張りを手がかりにして鎖から手を離してしまい、最後、また鎖につかまって見事に下り立った。ずっと見学させてもらったが、ものの1分もたっただろうか。
上手な人が下りた直後は何とかなりそうな気分になり、彼も「手がかりが多いから大丈夫ですよ」と言ってくれたが、「気をつけていってらっしゃい」といって別れた。
(チムニーを下るベテラン)
(丁須ノ頭を眺めて下る)

帰りに丁須岩をもう一度じっくり眺め、あの怖いトラバースは避けてロープ場を下りた。ルンゼの岩場を下りた辺りで雷鳴が鳴り出し、下るにつれて両側の岸壁にこだましてごろごろと響き渡って物凄い雷鳴になってきた。雨もパラパラと降り出して、縦走していたらどうなっていたかと、引き返した残念さを忘れることにした。本格的な降りになる前にと、バナナやパンを胃袋に流し込んで、急いで下っていった。ガレバで小石を跳ね飛ばして、先行する和子のふくらはぎを直撃した。大事にはならなかったが、急いでもあわてるな。
斜面のトラバース道に上がる地点を見逃して沢床を下り続けて、ペンキや道標を見失ってしまったが、間違える人も多いようで、薄い踏み跡を辿ったら登山道に戻った。杉の植林まで下りたら、雨もやんで陽が照りだした。これなら、あの男性の無事縦走完了できるだろうと安堵した。
(麓から妙義山を振り返る)


14時に国民宿舎を出発し、妙義山を振り返りながら走って松井田妙義ICから高速に乗り、藤岡JCTで北に曲がって、高崎JCTで北関東自動車道を終点の伊勢崎ICまで走って(北関東自動車道は我が愛車のナビには入っていない)、足利市手前でR50に入って、19時頃日立に着いた。レストランで夕食をとって無事自宅まで帰りついた。



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