S76.ニッコウキスゲの和賀岳

1.動 機
和賀岳は花の百名山の一座だが、標高が1440mと低い割に山が深く、アクセスの林道が長くてツアーには不便なためか知名度が低い。しかし、登りは自然環境保全地域に指定された豊かなブナの原生林、稜線からは開放感溢れる草原とお花畑があり、いまだに仙境の感を受ける原始の山だといわれ、魅力ある山である。かねてから登りたいと思っていたが、今回、岩手山に登りに東北に来たのにあわせて、森吉山と一緒に和賀岳にも登ってきた。期待にたがわぬ面白い山行でした。

2.データ
a)山域:和賀岳(1440m)
b)登山日:07/20(水)晴後曇
c)コースタイム: 
ろくのへ旅館6:00 = 6:40高下登山口7:15 ---- 7:55赤沢分岐 ---- 8:20高下分岐 ---- 9:00和賀川徒渉点9:30 ---- 11:00コケ平11:15 ---- 12:05和賀岳山頂(昼食)12:40 ---- 13:15こけ平 ---- 14:20和賀川徒渉点14:40 ---- 15:25高下分岐 ---- 15:45赤沢分岐 ---- 16:00高下登山口16:20 = 17:00真昼温泉17:40 = 18:00 湯田IC = 20:50阿武隈高原SA(夕食)21:20 = 22:25日立南IC = 22:35自宅
d)同行者:和子
e)地形図:1/25000 「松川温泉(南東)」

3.記 録 
森吉山と岩手山の登山途中、土地の登山者から「岩手側は登山道が手入れされていないので、藪漕ぎが深く道がはっきりしていない。」「和賀川の徒渉が深くて流れが冷たく大変、渡っても帰りに増水で渡れなくなったこともある。」「虫がうるさくて大変だった。」と夫々にいろいろと脅され、揃って「和賀岳に登るなら秋田側から登ったほうがいい」と薦められた。秋田側はコースタイムが8時間以上と長く、林道も14kmあり高速道も長くなり日立に帰るのに時間がかかり過ぎるので不採用として、岩手側の沢内村に宿に予約を取っていた。和子は土地の人の話に恐れをなして、「和賀岳には一人で登っていらっしゃい」と言い出したが、ろくのへ旅館の主人に「大丈夫ですよ。この宿からもしょっちゅう和賀岳に登っていくよ。先日、村民登山大会をやって皆で歩いたばかりだから、道もはっきりしてるよ。」と言われて、やっと同行する気持ちになった。
朝食用と昼食用のおにぎりを持って、宿を6時に出発し、県道から林道に入ると両側から草が伸びだして車幅がやっとに広さしかない。やがて道は未舗装になると、ところどころ水抜きの溝を掘ってあり、溝が深すぎて車の底を打つ音が聞こえてドキンとする。林道は6.7kmのはずだが、なかなか駐車場に着かない。道を間違えたかと心配になったが、車のナビには表示されない道、ポケナビを出して確認して安心して再出発した。やっと登山口の大きな表示板を見つけた時はホッとした。
(高下登山口)
(ブナの原生林の中を登る)

駐車場には先客は居なかった。朝ごはんのおにぎりを食べて身支度を整えて歩き始めた。 登山道ははじめ杉の造林地の中を進み、やがてブナ林が現れると急勾配の道になり、今日は昨日よりも暑くて汗を搾られる。雨水で流され根っこで出来たような急坂を登ると赤坂分岐に着き、高下岳からの尾根に出る。そこからうっそうとしたブナの原生林におおわれる。勾配が緩んで足元の花にも目をやりながら歩くと、やがて高下岳への分岐に着いた。山腹斜面のなだらかなコースを歩くと水場の分岐が現れ、その先の自然環境保全地域の看板のところからは、和賀川徒渉点まで一気の下りとなった。地形図では200mの下りなので風神山程度と多寡をくくっていたが、坂道は急な上に荒れており、歩けど歩けど谷底は見えてこない。心配になった頃やっと沢の音が聞こえ始めた。沢の音がゴオゴオと大きく聞こえ、和子は今度は「流れが急そうだ」騒ぎ出した。右にカーブすると、やっと和賀川の河床に着いた。役場で確認したとおり、川幅5メートル、膝下ぐらいの水深で、徒渉に問題はなさそうで安心する。
(裸足になって徒渉)
徒渉点を点検したり、写真に写したりうちに、和子はさっさと裸足になって靴を担いで渡り始めた。「冷たくて気持ちいい!」とニコニコしている。川を渡って、足を乾かしながら一休みした。
河床のすぐ上に小広場があって焚き火の跡があり、キャンプ場らしい。この先コケ平まで標高差600メートル、距離2kmの急坂が続く。ブナの大木に囲まれて気分は悪くないが、いかんせん道が荒れ放題。登山道は完全に雨水の溝と化しており、その脇についた踏み跡を笹竹や樹木につかまって落っこちないよう気にしながら一歩一歩登っていった。
(薬師岳から和賀岳の稜線)

やがて、背丈ほどのササやハイマツの道となり、さらに進むと展望が開けて、砂利を敷きつめたようなコケ平に着く。眼前に薬師岳−小杉山−和賀岳の秋田側コースの長い稜線が見えていた。後ろの東側には高下岳が見えていたが、その向こうに見えるはずの早池峰山は見えなかった。
和賀岳への稜線は草原状で、ミネウスユキソウ、ノギラン、トウゲブキ、コガネギク、シシウド、ハクサンシャジンなどが咲き誇っていた。その中に鮮やかな赤紫のハクサンフウロがとても印象的だった。ハクサンシャクナゲは膝ほどの笹原の下に潜った感じに咲いていた。低い姿勢で強風に耐えているのであろう姿がけなげに見えた。笹原の中に見える登山道を辿ると、和賀岳への最後の登りになる。このあたりからニッコウキスゲが見え始め、見上げると山頂まで点々と黄色い花が散らばっている。登りになるとまた道が悪くなった。笹が覆っていて見えないが、下にハイマツの幹が隠れていたり、道に段差があったり、気をつけて歩かないと危ない。山頂までニッコウキスゲの間に、イワイチョウやホツツジ、ウラジロヨウラクが咲いており、オニアザミも背伸びして咲いていた。
(ミネウスユキソウ)
(トウゲブキ)
(コガネギク)

(シシウド)
(ハクサンフウロ)
(ハクサンシャクナゲ)

(イワイチョウ)
(オニアザミ)
(ムカゴトラノオ)

ほどなく和賀岳の平らな山頂に着くと、山頂山名板の向こう側は目を見張るようなニッコウキスゲの大群落だった。山頂にこれだけの群落があればニッコウキスゲで花の百名山に上げられたのも当然かと感じ入った。山頂にはムカゴトラノオも群落になって、コガネギクやハクサンシャジンと一緒にお花畑を作っていた。
(山頂はニッコウキスゲの大群落)

残念ながら展望は利かないが、可愛い花たちに囲まれて、おにぎりの楽しい昼食になった。
(和賀岳山頂にて)
展望は諦めて、もう一度ニッコウキスゲの群落に挨拶をして下山にかかった。下りは、コケ平までは笹に隠れた段差やハイマツに注意し、そこから先は笹や樹木に掴まりながら溝に落っこちないよう気をつけながら下ると、意外と楽だった。和賀川の徒渉をもう一度楽しんだ後の200mの登り返しがきつかったが、ほぼコースタイムで無事登山口に到着した。
登山口には監視員の人と若者一人が話し込んでいた。ここから往復してきたと言ったら、「秋田に抜ければ楽なのによう。」と同情された。和賀岳のガイドも勤める人のようで、いろいろ話しかけられたが、花の名前など地方の名前のようだし、東北弁は理解できないところも多かった。「秋も良いから又おいで」の声に送られて発車した。
林道をゆっくり走って、沢内村南部の真昼温泉に立ち寄って汗を流した。温泉は315円(村民210円)と安いが気持ちのいい温泉だった。石鹸を忘れて入ったので、村の入に借りたが、気持ちよく使わせていただき話が弾んだ。
高速まで30km、湯田ICに18時に乗ったが、秋田道、東北道、磐越道、常磐道と空いていて気持ちのいいドライブだった。途中、阿武隈高原SAで夕食を取って、日立南ICに無事到着した。



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