S91.三千米峰・仙丈ケ岳

1.動 機
北岳や鳳凰山からその雄姿を眺め、中央道を走っている時、いつも気になっていた山がある。独立峰のように聳える甲斐駒ケ岳とその横に控える仙丈ケ岳である。北沢峠に入ると両方の百名山に同時に登ることができる。9月初めは台風や秋雨前線の停滞、中旬になって雑用が立て込んできて出かけられず、15日になってやっと自由になり天気予報もまずまずになったので、18日の孫の運動会に間に合うよう急遽出かけた。1日目仙丈ケ岳の山小屋まで登って一泊し、次の日仙丈ケ岳に登頂してから駒ケ岳の麓の山小屋に泊まり、3日目に駒ケ岳に登頂して帰ってきた。思いがけないほどの好天に恵まれて素晴らしい展望を楽しんできた。本報に仙丈ケ岳、次報に甲斐駒ケ岳と報告を分割した。

2.データ
a)山域:仙丈ケ岳(3033m)、小仙丈岳(2855m)
b)登山日:2005/09/15(木)晴れ後曇り、16(金)晴れ後曇り
c)コースタイム: 
9月15日: 森山自宅3:30 = 3:35日立南IC = 4:40三郷IC = 渋谷IC = 一般道 = 6:00調布IC = 6:30談合坂SA6:35 = 7:05甲府昭和IC = 7:45芦安駐車場(朝食)9:40 =10:00夜叉神峠11:00 =(バス)= 11:40広河原(昼食)12:20 =(バス)= 12:45北沢峠12:50 ---- 13:05大平山荘 13:10 ---- 15:10大滝の頭分岐 ---- 15:30馬の背ヒュッテ(泊)
9月16日:馬の背ヒュッテ5:35 ---- 6:35仙丈小屋6:40 ---- 7:05仙丈ケ岳(朝食)8:00 ---- 8:55小仙丈岳9:10 ---- 10:00大滝の頭10:05 ---- 11:40北沢峠11:45 ---- (昼食)---- 13:00仙水小屋(泊)  
d)同行者:和子
e)地形図:1/25000 「仙丈ケ岳(北東)」

3.記 録 
9月15日(木)(ドライブ)
朝3時半に我家を出発して、取り付けたばかりのETCの夜間割引を活用するため朝4時前に日立南ICで高速道に乗った。早朝のドライブは気持ちが良い。快調に首都高に入ったが、途中で4号線に曲がり損ねて3号線に入ってしまい、渋谷で下りて初台で3号線に戻ろうとしたが工事中、高井戸で乗ろうとしたが入口が分からず、うろうろしながら調布ICまで一般道を走ってやっと中央道に戻ることが出来た。30分以上のロスだった。甲府昭和ICで下りたが街中が混んでいたりして、芦安温泉の駐車場に到着したのはバス発車時間の7時10分はとっくに過ぎていた。タクシで広河原まで入って、北沢峠までの予定のバスに乗ろうと思っていたのだが、時間帯で通行制限しているのでタクシも駄目、2時間先の次のバスを待つしかないとのこと。案内所の人が気の毒がって北岳の絵葉書セットをプレゼントしてくれた。
2時間遅れると、予約していた山頂の仙丈小屋に15時(小屋の要求)に到着するのは不可能になった。仙丈小屋の予約を取り消し、中腹の馬の背ヒュッテに予約を取りなおした。駐車場でゆっくり朝食を食べ、南アルプス芦安山岳館を眺めたりしながら時間を潰し、一般車乗り入れ可能な夜叉神峠まで車で入った。一昨年登った鳳凰三山への登山道脇にいろいろな花が咲いていて、撮影したりしながらバスを待つ。40分バスに揺られて昼前に広河原に着いた。お腹は空かないが40分も待ち時間があるので、3年前の北岳を思いだしながらここで昼弁当をいただく。さらに絶壁上の林道をくねくねと走るバスに25分揺られ、12時45分に北沢峠にやっと着いた。途中、谷間の先に仙丈ケ岳の頂を仰ぎ見ることが出来てわくわくしてきた。
(登山一日目)
(藪沢沿いの登山道)
林道を北沢峠バス停から戸台側に歩いたところに大平小屋への指標があり、樹林の中を下った。また林道と合流する点に大平小屋があり、リンドウやハハコグサが綺麗に咲いていた。ここから登山道らしくなり、暫く急坂を登ると滝の音が聞こえてきて、右下にわずかに大滝が見えた。さらに登って藪沢沿いに出ると、ごつごつした登山道になるがトリカブトやサラシナショウマなどの花が多くなり目を楽しませてくれる。このあたりから後を振り返れば駒ケ岳が見えるはずなのだが、今日は雲の中に隠れていて姿が見えない。ナナカマドの真っ赤な実が目立つ沢沿いをさらに登って、小仙丈ルートの5合目からの分岐道と合流すると、登山道は右の山手に入っていく。シナノキンバイやマルバタケブキの葉が多くなり、夏に来れば一面まっ黄色になって見事だろうと想像してみた。
馬の背ヒュッテの直前で和子がしゃがみこんで動かなくなった。高山病の気配が出てきたようで、ヒュッテは直ぐそこだと言っても効き目がない。しばらく休んでなんとかヒュッテまで歩いたが、山頂の仙丈小屋まではとても登れなかっただろう。ハプニングで山小屋の予約を変更していて幸いだった。
ヒュッテに入ると、今日の宿は我々二人だけの貸切、広い山小屋の中に二人だけでは寒々としている。ストーブ2台を付けてもらって暖をとった。17時半から夕食だったが、小さなカツの入ったカレーライスだけ。お代わり自由だが、これで2000円。朝食はコンビニ弁当に味噌汁で1000円。宿泊代入れて7500円。部屋は清潔で、小屋番の若者達は明るくて気持ちが良いのだが、食事代だけが気に入らなかった。
9月16日(金)(登山二日目)
昨日寝不足だったので、朝4時30分までぐっすり眠った。目覚めると空には星がきらめいている。やがて東の空が赤らみ始めると甲斐駒ケ岳が黒く浮き上がってきた。5時に出されたお湯を味噌汁の素に注いでコンビニ弁当をいただく。朝に弱い和子は味噌汁だけを飲んでいた。
(ヒュッテからの甲斐駒ケ岳)
(仙丈ケ岳の広いカール)

5時半に出発して馬の背にむけて登っていくと、すぐに朝日に真っ赤に燃えた仙丈ケ岳が樹間に見えてきた。さらに登ると、駒ケ岳とその後に八ケ岳が雲海に浮かんでいるのが見え始め、馬の背を超えると北アルプスも見えてきた。穂高や槍はもちろん、先月登った蓮華岳もはっきり確認できて嬉しかった。でも、目の前の大きなカールを抱えた仙丈ケ岳を中心にした稜線が現れてきて、その迫力には圧倒される思いだった。登山道に従ってカールの中に入っていくと、道はロープで囲われ一面のお花畑になる。残念ながら今咲いている花は少ないが、ところどころにトウヤクリンドウが咲いており、ウラシマツツジが真っ赤な葉を這わせている。
仙丈小屋に着くと、前庭は絶好の展望ポイントだった。ここに泊まれば、中央アルプスから北アルプス、八ケ岳、甲斐駒とぐるりと展望でき、居ながらにして日の出も拝める。ゆっくりしたいが、ここにはまだ陽が当たらず寒くて我慢できない。展望写真を数枚撮って早々に出立し、右手の稜線に向かって登り、松峰分岐から稜線を登って7時に仙丈ケ岳山頂に着いた。
(仙丈ケ岳山頂・北アルプスが見える)
(富士山と北岳)

山頂からの展望はまさに360°、いままで眺めながら登ってきた北や中央のアルプスの山々、八ケ岳、甲斐駒のほかに、富士山が第二の高峰・北岳の左に並んで見え、右には間ノ岳、農鳥岳、さらに塩見岳など南アルプスの山々が並んでいる。お天気の良い日に登った幸せをつくづく思う。風もなく暖かいので、2回目の朝食をゆっくり食べ、遠くの山々まで山名同定しながら1時間を過ごした。
(北岳・間ノ岳など南アルプス)

十分に満足して下山にかかった。空模様もだんだんと下り坂になり、急坂を下って小仙丈岳に登り返した時には駒ケ岳や富士山は完全に雲の中になり、南アルプスの頂も雲をいただくようになってきた。ここから先では登ってくる登山者と何組も交差するようになってきたが、仙丈ケ岳も雲の中に入ってしまった。気の毒で展望が良かったよとは吹聴しがたいが、山登りは早出がいいのだ。
(下山道からの仙丈ケ岳)
(小仙丈岳では雲が出てきました)

小仙丈からは、急坂の下りになる。北沢峠まで2時間の長い下り坂が続いた。私の弱い膝には酷だが、今日は登りの歩行時間が短かかったからか、まだ応えてこない。途中、バス停と野営場との分岐があったが、今日の宿泊地仙水小屋には野営場方向が近道だ。
北沢峠から仙水小屋までは沢沿いの40分の登り、途中河原で昼食をとって13時に小屋に着いた。すぐ上には駒津峰と双児山が見えていた。小屋の前庭にはテーブルとベンチが並んでいて小屋番さんが一人読書していた。一番乗りなのでいろいろ話を伺う。
小屋の直ぐ下の沢で目にした水車発電機が気になったので型式を尋ねた。話してくれた分解した時の様子から察するとペルトン水車のようだった。最近冷蔵庫も入れたので水車だけでは電力が足りなくなって、太陽光発電も取り入れたとのこと。パネルは屋根の上だけでなく、立ち木にぶら下げてあるのもあった。どこの山小屋でもつき物のジーゼル発電のうるさい音はここでは聞こえてこない。平屋の母屋のほかに2階建ての宿泊棟があるが、食事の準備が面倒になるとの家主の意向で予約は30名までしか受けないとのこと。いつでも布団一枚に一人ゆっくり寝ることが出来る。今日の宿泊客は15名なので宿泊は別棟だけ、我々は2階、12畳に8人、私以外は皆女性だった。5人組の女性が入ってくると少々姦しくなってきた。トイレは下の樋に沢水を流しっぱなしの水洗トイレ、汚物はヘリコプターで回収すると書いてあったが、どんな方式か聞き損ねた。
(仙水小屋の夕食は美味しかった)
夕食会は外のテーブルで4時半から皆揃って行われた。食事は6品のおかずに3種の果物のデザートが塗り物のお盆に盛られ、お代わり自由の美味しいご飯にけんちん汁がついた。6500円で旅館並みの夕食に感激し、昨夜の馬の背ヒュッテの話をすると、登山者からあそこはいつもカレーだよとの返事が返ってきた。
小屋に着いたとき、「消灯は自然消灯だよ」との説明を聞いていたが、夕方になっても宿泊棟には照明は点かず、日没とともに暗くなると言う意味であった。外には常夜灯が一晩中ついていたが、朝、3時ぴったりに明るい蛍光灯がつくまで部屋には照明はなく、姦しい5人組みも静かに寝るしかなかった。静かになると代わりにいびきが聞こえてきて、耳栓をして寝ることになった。



戻る

inserted by FC2 system