T61 大東岳

1.動 機
HESCOの山岳会から大東岳登山のお誘いを受けた。大東岳の名前は聞いたこともなかったが、調べてみると、仙台近くの二口山塊の主峰で、標高は1366mほどの低山だが、何度も渡渉を繰り返し、長い急坂を登らなければならないなかなか大変な山らしい。今回の計画は、登山口まで車で入り、大行沢を遡る裏コースを桶の沢避難小屋まで歩き、時間があれば小東岳を往復して一泊、翌日ここから「弥吉ころばし」を登って大東岳山頂に登頂し、急坂の「鼻こすり」がある表コースを登山口まで下る計画だった。重い食料と炊事道具を担いでこの急登に挑戦するのは大変だが、ベテラン揃いの山岳会と一緒なら大丈夫だろうと参加した。低山ながら登りでがあって、変化の多い面白い山だった。

(大東岳登山ルート)

2.データ
a)山域:大東岳(1366m)
b)登山日:2006/06/3(土)曇、06/4(日)曇後晴
c)コースタイム:
6月3日:大甕駅 6:35 = 6:44日立駅 7:00 = 7:10 日立中央IC = 8:30 安達太良SA8:45 = 9:40 仙台南IC = 10:20 二口キャンプ場P 10:40 ---- 10:45 登山口 ---- 11:30 雨滝(昼食)12:00 ---- 13:25 桶の沢避難小屋
6月4日:桶の沢避難小屋5:30 ---- 6:30中段6:40----7:10 弥吉ころばし上 7:15 ---- 7:35 大東岳 8:10 ---- 9:10船形山展望所 9:20 ---- 10:25 登山口 ----10:30 二口キャンプ場P10:50 = 11:00 磐司山荘(入浴、昼食)12:15 = 12:55仙台南IC = 13:50安達太良SA 14;00 = 15:15 日立北IC = 16:20 森山自宅
d)同行者:HESCO山岳会8名、和子
e)地形図:1/25000「作並(西部)」

3.記 録 
6月3日: 
一泊とはいえ避難小屋泊なので、雨具や水と一緒に食料やバーナ、鍋などを詰め込むと、他の荷物は最小限にしても、私のザックは12kg、和子は8kgになった。担いで見ると、普段の日帰り登山より重いが、何とか歩けそうだ。悪名高い大東岳の急登は少なからず心配ではあったが。
JR大甕駅で二人の山岳部の方と合流し、日立駅で10人が揃って定刻7時に出発した。1台のセダンに我家と2人、ワンボックスカーに6人が乗って日立中央ICから高速に乗った。一度安達太良SAで休憩して、仙台南ICで下りて、R286から県道62を秋保温泉の奥の二口温泉まで走った。温泉の奥にあるキャンプ場のトイレ付き駐車場に駐車した。
身支度を整えて、10時40分に駐車場を出発し、来た道を少し引き返したところが登山口で、広い駐車場があった。登山道の案内板があり、たくさんの車が駐車していた。尾根道の表登山道と沢筋の裏登山道がここから分かれている。裏登山道に入ると、始めのうちこそ作業道のような広いなだらかな道で、タニウツギやシラネニンジンなどの綺麗な花を愛でながら歩けた。沢筋の道なのでずっと楽チンコースが続くと思い込んでいたが甘かった。丸太を渡した橋を渡って雨滝に近づくと様相が変わってきた。山登りそのもののような急な坂道を登ったり、岩場を乗り越えたり、重いザックがこたえる道になった。
(雨滝)
急坂を登ったところに雨滝があり、この脇で休憩になり昼食を取った。食後、滝の方への踏跡に入ってみるとベンチのある展望所になっていて、50mぐらいありそうなオーバハングになった真上の岩壁から、水が雨のようにぱらぱらと降っていた。もっと水量が多くなれば迫力が出るのだろうが、今日は少し淋しい。写真には写りそうになかったが、一応シャッタを押した。
雨滝から、登山道はますます険しくなり、滑りやすい石を踏みながら沢を渡ったり、岩っぽい急坂をロープを頼りに登ったり、大きな橋が朽ちて歩行禁止になっていて、崩れそうな斜面を踏跡を辿って沢に下りてまた登り返すなど苦戦が続いた。それでも、途中では、向かいの裏磐司岩の大岸壁が眺められたり、いくつも小さな滝が続いたり、目を楽しませてくれた。下に見える大行沢の流れも、滑滝になったり大滝になったり、素晴らしい眺めが続いた。この大行沢は沢登りの名所らしく、滑りそうな滑を歩いたり、深みを泳いだり、滝を登ったり大変なコースらしい。
(沢コースにも急登あり)
(裏磐司岩)
午後1時半ごろ避難小屋に到着した。2階建ての30人は泊まれそうな綺麗で立派な建物で、すぐ近くに水場もあり、申し分のない避難小屋だ。2時前に到着したら小東岳まで往復する予定になっていたが、空模様が曇りがちで展望が利きそうにないので、このまま小屋に沈没することになった。小屋にはまだ誰も入っておらず、2階が明るいのでみんな荷物を持ち上げた。早速、持参のアルコールと肴を持ち出して酒盛りが始まった。話はあちこちに飛んだが、今日は山に登っていないからか、不思議に山登りの方にはさっぱり向かわなかった。
(桶ノ沢避難小屋に一泊)
4時半ごろから、めいめいに夕食の準備にかかったが、皆さんは慣れたもので、要領が良い。我家がもたもたしてやっと食べ始めた頃にはほとんど食事は終わっていた。片づけをして、もう何もすることもなく、6時過ぎにはみんなシュラフの中に潜り込んで眠りに付いた。何枚か備え付けの布団があったので、下に敷いて眠ったので快適だった。登山口の駐車場には多くの車が止まっていたが、ほとんどは早めに歩き始めて一日で周回するらしく、何組かのグループが小休止しては通り過ぎて行き、我々以外に小屋に泊まったのは単独行の男性一人だけだった。
6月4日: 
早く眠りについたので、4時過ぎには誰からともなく起きだして、朝食を済ませて5時半には歩き始めた。出かける前に、リーダは「来た時よりも綺麗にして帰ろう」と使った二階を率先して箒で掃いて綺麗にした。入った時も箒と塵取りを使っていたが、見習わせていただこう。
始めはガクリ沢沿いのごろ石の多い道を登った。三度渡渉を繰り返したあたりから、ところどころに雪が残っているところも現れ、ニリンソウやミヤマカタバミなど山の花が見え始めた。沢を詰めたところで小休止になったが、ポケナビを覗いてみると地形図の破線の道が右に曲がる地点よりもずっと上までまっすぐ登っていた。
ここから急斜面を登ることになったが、その斜面にシラネアオイが数輪綺麗に咲いていて喜ばせてくれた。尾根に上がるまで、岩の斜面のトラバースがあったり大変だったが、尾根に上がるといよいよ「弥吉ころばし」の急登が始まった。土の斜面にはステップが切ってあり、木の根っ子があったり、滑らないようにはなっているが、何しろ傾斜が急である。45度ぐらいはありそうな坂がどこまでも続く。枝が登山道に出っ張っているところでは、その度にしゃがみこんでやり過ごす。重いリュックがこたえて、汗が拭けども拭けども止めどなく流れ出してくる。マイヅルソウやシロヤシオの群落が現れたので、カメラを構えるが、手が震えていてピントがなかなか合ってくれない。あとで眺めると、このあたりの写真には手ブレでぼけた写真が多かった。
(弥吉ころばしの急登)
急登も終わりになると上から歓声が聞こえてきた。肩まで登りきって振り返ると素晴らしい展望だった。一面の雲海の上に、蔵王連峰の山並みが黒々と浮かんでおり、その右に大朝日連峰、更にその右に月山が白い峰峰の頭を出していた。リュックを置いて一休み、大喜びでシャッタを押した。
ここからは潅木の平原状の登山道になり気分よく歩けたが、山頂近くでもう一度小さな登りが待っていた。たいした登りではないのだが、平地歩きになれた足にはきつかった。
山頂に着くと、ここからも月山や船形山、泉ケ岳の展望が素晴らしく、石で出来た立派な山名方位盤があった。小さな祠の近くにシラネアオイやイワカガミが咲いていて、我々を歓迎してくれているようだった。小さな頭を出している山まで山座同定に精を出しながら楽しんだ。30分ばかりゆっくりと展望を楽しみ、山名板の前と一等三角点の前で証拠写真を撮って下りにかかった。
(蔵王連峰)
(大東岳山頂にて)
下りは表登山道に向かう。道標には登山口まで5.3kmとあるが、すぐに急坂になり、鼻こすり坂の看板のところからは、いよいよ本番の急坂になった。ロープをつかんだり、立ち木に掴まったり、下りなのに汗をかきながら慎重に下っていった。1kmほど下って「こぶし平」の標識の立つ7合目まで下るとやや緩やかになり、「船形山展望所」の立札のある5合目に着いてやっと一休み。展望所とはいえ、周りの新緑は綺麗だったが、雲が出てきて視界はゼロになっていた。山頂で展望が良かったのは一瞬のことのようで今日は本当にラッキーだったようだ。
(立石沢の渡渉)
何組かの登山グループと出会いながら3合目まで下ると立石沢沿いの道になり、この沢の渡渉を3回繰り返した。ここの沢巾はガクリ沢よりも広いので、石伝いに渡るのに気を使った。やがて登山口の駐車場に着くと、駐車場は満車で、道路まで車があふれていた。下の川沿いには釣りをしている人や昼のバーベキュウの用意をしている人たちもおり、向かいの山に山菜取りに入って行く風体の人もいて、全部の車が登山ではなさそうだったが、仙台に近いだけに、アウトドアの人気スポットになっているようだ。
キャンプ場の駐車場に戻り、靴を洗ったりしてから近くの磐司山荘に立ち寄って、温泉に浸かって汗を流し、丁度昼時だったので、岩魚の料理の美味しい昼食を頂いた。
帰りは、来た道をそのまま走って、日立北ICで下りて、川尻と大甕駅まで仲間を送ってからそのまま我家まで走ってもらった。



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