U811.北海道南部の山
(その1.幌尻岳)

1.動 機
水戸アルパインの北海道南部の山を5日間で歩く計画に参加し、その最初に幌尻岳に登ってきた。幌尻岳は額平川を何度も渡渉しながら登る山として有名で、増水時には腰まで水につかりながらの渡渉ときいていたが、今回は水量が少なく楽な渡渉だった。今回の予定は、幌尻山荘に一泊して幌尻岳山頂に登って戸蔦別岳に回り六の沢へ下りる周回コースを歩く予定だったが、お天気が悪くて幌尻岳へのピストンに終わった。展望は楽しめなかったが、山頂付近の意外に大きかったお花畑を堪能し、メインの渡渉を楽しく歩くことが出来て満足いっぱいの山行だった。

2.データ
a)山域:幌尻岳(2052m)
b)登山日:2007/08/01晴〜02曇
c)日程
8月1日:日立自宅1:40=日立電鉄南営業所2:00 = 水戸IC3:15 = 4:50羽田空港6:55 = 8:15千歳空港8:45 =チャータバス= (R237額平橋10:20)= 11:30額平川林道臨時ゲート12:25 = タクシ = 12:30奥幌尻橋本ゲート12:25 ---- 13:55取水口14:00 ---- 16:25幌尻山荘(泊)
8月2日:幌尻山荘 3:15 ---- 4:55命の水5:00 ---- 7:40幌尻岳8:00 ---- 9:40命の水9:45 ---- 10:40 幌尻山荘12:00 ---- 14:00取水口14:30 ---- 15:30奥幌尻橋本ゲート15:40 ---- 16:15額平川林道臨時ゲート16:30 = 17:40日帰り温泉18:40 = 19:00平取温泉(泊)
d)同行者:水戸アルパイン(男8、女7)、和子
e)地形図:1/25000 「幌尻岳」「二岐岳」


3.山行記録
0)アクセス
珍しく早寝して、深夜の我家を出て、日立電鉄南営業所にマイカーを駐車、2時出発のバスに乗り込んだ。バスは東海、那珂町、勝田、水戸を17名の仲間を乗せて水戸ICから常磐道に乗り、羽田に向かった。みんな寝不足なので眠りながら羽田に着いた。朝食をとってJALに乗り込み7時前に飛び立ち、富士山を見送ったり、岩手山を見下ろしたりしているうちに、1時間少々で千歳空港に着いた。
空港には、チャータしたバスが待っていた。これから5日間、このバスと運転手のお世話になった。バスは途中コンビニに立ち寄って、今日明日の食料を買い入れ、R36を南下、当面無料になっている高速に乗って東進し、R237を北上、額平橋の先の荷負から県道71に入った。運転手の話では幌去橋の手前から入るよりも道がいいらしい。とはいえ、道は狭く、対向車が来ると、どちらかがバックを余儀なくされる。幸い対向車の少ない時間帯で、国道から分かれて1時間ちょっとでバス終点の臨時ゲートのところに着いた。広い駐車場があり、トイレや入山届けのポストが置いてあった。以前は2.5km先の奥幌尻橋まで一般車も入れたらしいが、現在はここに臨時の鎖のゲートが張られて、登山者はここから歩くことになっている。ここで幌尻山行に必要なものだけを持って、残りの着替え、嗜好品などはバスの中に残した。男性陣に共同装備の配布があり、私には熊撃退スプレーだけが割り当てられた。いざ熊と対面した時に、落ち着いて操作できるかどうか問題だ。
林道歩きが長いので、この臨時ゲートから奥幌尻橋の本ゲートまでジャンボタクシが予約してあった。ジャンボタクシは10人ぐらい乗れるが、町に一台しかない。17人を2回に分けて運んだ。本ゲートから取水口までがもっと長いが、この間は人を乗せた車は走れないことになっているとのこと。本ゲートのところにいつもデポしてあるという軽トラをタクシの運転手が運転して、ザックだけを取水口まで運んでくれた。長い林道歩きも、空身だと快調である。
臨時ゲート脇の広い駐車場
鍵のかかった鎖の臨時ゲートとたて看板

臨時ゲートから奥幌尻橋までタクシに乗る
奥幌尻橋から取水口までザックを軽トラで運ぶ


1)1日目:額平川から幌尻山荘まで
北海道電力の水力発電所取水口の堰の脇には、管理小屋と駐車場があった。ここで軽トラで運んでもらったザックを受け取って、背中に担いで右岸を5分歩いたところから、幌尻のメインイベントの渡渉が始まった。
河原で地下足袋に草鞋を履き、脱いだ山靴はぶらぶらしないようにザックにしまいこんで流れに足を入れる。今まで雨が少なかったようで、心配した水深は膝下、怖い思いをしなくてザブザブと歩ける。水温も低すぎることはなく、返ってほてった身体を冷やしてくれて気持ちがいいほどだ。それでも、川底にはところどころに滑りやすい石があり、男性の仲間一人が足を滑らせて横転してすぶ濡れになった。お陰で、全員注意深くすり足で歩くようになり、このあと転ぶ人は一人も出なかった。薦められたダブルストックも心強かった。
幌尻山荘に着くまで2時間半、ところどころで休みながら渡渉を楽しみながら歩いていった。渡渉の回数は、登りでは数えるゆとりがなかったが、気持ちにゆとりが出来た下りに女性陣が数えたところ30回も流れを横切ったと言う。渡渉よりは嫌だったのは、河原を歩く時石頭を拾ったり避けたりと足場を確認しながら歩かなければならなかったのと、何度も繰り返した高巻きだった。履き慣れない地下足袋が親指を苛めて痛くて参った。
(取水口の先の河原で地下足袋と草鞋をつける)
(足回り準備完了)

(渡渉開始)
(河原を歩いたり)

(岩を越えたり高巻いたり)
(30回渡渉を繰り返した)

渡渉が終わるとすぐに山荘前に出た。前庭には大きなビニルシートが敷いてあり、数人の先客が休んでいる。ここにザックを下ろし、濡れた地下足袋、草履、靴下、サポータを脱いで登山靴に履きかえた。濡れ物は小屋の周りの針金や棚の上に並べて干した。小屋の中には寝具だけ持ち込むようにとの管理人の指示があり、明日のザックの中身を整え、食料品と寝具の三つに分けた。明日のザックと食料は床下の収納庫に収め、寝具だけを持って小屋の中に入った。靴の持ち込み禁止は床を濡らすのが拙いとのことなので、なくなっては命取りなので靴もビニル袋に入れて持ち込んだ。
2階には団体の先客が入っており、我々グループは一階を指定された。板敷きの床は綺麗に掃除されており、真ん中に大きなストーブがあって暖かい。重ねてある毛布を並べて敷いて、それぞれの寝場所を割り当てた。一階には管理人室とストーブ、炊事場があるが、我々17人と単独行一人には十分の広さだった。以前は大変な混み様だったらしいが、去年から完全予約制になり、今年から更に人数を絞ったらしい。宿泊者は30〜40人程度だと思われた。
小屋にはつっかけも置いてあり、これを使わせてもらって夕食の準備、スープとインスタントラーメンが配られ、自前のα米に、小屋前の簡易水道の水を沸かしたお湯を注いで夕食準備完了。渡渉の感想など話し合いながらそれぞれに夕食を終わった。エキノコックス対策に追加のお湯を沸かして明日の行動中の水の準備もした。
ストーブのお陰で夜中も暖かく、毛布だけでも過ごせそうだったが、折角運んだシュラフに潜り込み、毛布を下に敷き、マットを枕にして寝ることにした。トイレは別棟が二棟あり、いずれもバイオ式だが、宿泊棟側が新しくて洋式便器なので快適だった。ただ靴をスリッパに履き替えるので、出発直前の使用には面倒だ。バイオ処理の機械が宿泊棟の床下にあり、床下には他にも発電機やストーブのバーナも設置されているようで、夜中中ゴンゴン、ガーガーと床を震わせながら音を出すのには参った。耳栓もバスの中に置いてきて、防御策もなく一晩中騒音に悩まされていた。どう考えても設計ミスとしか思えない。
(幌尻山荘到着、前庭にビニルシート)
(早速夕食準備)


2)2日目:幌尻山荘から幌尻岳往復、額平川登山口まで
今日の予定は幌尻岳山頂に登り、戸蔦別岳も登って六の沢へ下りるコースタイム13時間のロング周回路を歩く予定なので、朝2時起床、3時出発の指令である。熱いお湯を貰ってスープとおにぎりの朝食を取り、小屋に置いていく寝具を床下収納庫に仕舞って3時15分にヘッドランプを頼りに歩き始めた。
のっけから急登で始まったが、リーダは心得てゆっくりペースで導いてくれるので助かったが、尾根に上がるまでは無風状態で熱くてたまらず、汗が止めどもなく流れ出した。
(ヘッドランプを付けて出発)
(命の水まで急登の連続、暑い!)

命の水を過ぎても急登が続き、尾根に上がるとハイマツ帯になり、ハイマツの根っこが登山道を横切っていて歩きにくい。このあたりから幌尻岳の姿が見え始めるらしいが、今日はガスで視界が遮られて何も見えない。
(命の水からも急登)
(尾根に上がるとハイマツの歩きにくい道)

ハイマツ帯を過ぎると岩っぽい道になり、風が急に強く吹き出した。ガスが吹きまくるので寒い。雨具を付けて歩いた。山頂近くなると、意外なほど大きなお花畑が広がった。ガスで視界が狭いが、ハクサンチドリ、ミヤマアズマギク、ウサギギク、マルバシモツケ、イワギキョウなどおなじみの花や、チシマフウロ、エゾツツジ、チシマツガザクラなど北海道の花も多い。一つ一つシャッタを押しながら、みんなの後を追った。
(ゴゼンタチバナ)
(マルバシモツケ)
(ウメバチソウ)
(ハクサンチドリ)
(イワブクロ)
(チシマギキョウ)
(エゾツツジ)
(チシマフウロ)
(ミヤマダイコンソウ)
(コガネギク)
(イブキトラノオ)
(サマニヨモギ)
(ミヤマアズマギク)
(ウサギギク)
(エゾシオガマ)
(ヨツバシオガマ)
(タカネバラ)
(ミヤマヒゴタイ)
(リンネソウ)
(コバノイチヤクソウ)
(アオノツガザクラ)
(イワヒゲ)
(シナノオトギリ)
(エゾハクサンイチゲ)
(チシマツガザクラ)
(エゾヒメクワガタ)

小雨模様の強風に耐えながら、お花畑を楽しみながらみんなの後を追っているうちに山頂に到着した。山荘から高度差1100mもあるはずだが、視界が利かないのであまり長い距離を歩いた感じがしなかった。4,5人の先客がいたが、山頂の記念写真を撮るのに苦労している。強風と濃いガスでピントが合わないのだ。
(とにかく幌尻山頂万歳!)
(誰が写っているのでしょう)

ここから戸蔦別へは稜線歩きが続き、強風で危ないし視界が利かなければ2時間も余計に歩く苦労も報われそうにないので、ここから山荘に引き返すことになった。
そうと決まれば視界の利かない山行に長居は不要だ。集合写真を撮ってさっさと下山にかかった。下りでは女性陣の足取りが速い。リーダはどんどん引っ張っていくが、男性陣が遅れ気味になる。休みながら10分ばかり遅れて山荘に着いた。
山荘前で地下足袋草鞋姿に履き替えし、ザックの荷造りのやり直しをしてから昼食を取って下山にかかった。下りは気持ちにゆとりが出来て額平川の渡渉も楽しみながら下った。一箇所、登りに通らなかった高巻きの道をとったが、とんでもない急坂で女性陣にはきつい修行の場になった。
コース変更で予定よりも早く取水口に着いたので、予約の軽トラはまだ着いていなかったが、、靴を履き替えながら暫く待っていると運良く別客の荷物を運びあげて来た。軽トラにザックを預けて空身で奥幌尻橋まで歩くと、今日待っていたのはジャンボではなくて普通のタクシーだった。2回に分けて臨時ゲートまでピストンしたが、あぶれた元気なお方には林道を全部歩いていただくことになった。
臨時ゲートに待っていたバスに乗り込んで、運転手が準備していた冷たいビールで乾杯!今日の宿の風呂は小さいので、途中二風谷ファミリーランドのびらとり温泉で汗を流してホテルに入った。




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