U106.リベンジ・展望の七ケ岳
1.動 機
2.データ
朝起きると、空には雲ひとつなく、放射冷却で氷点下の寒さだった。車のフロントガラスに霜がびっしりと張り付いていて、水道ホースを借りて視界を確保した。民宿近くからは七ケ岳の山並みが朝日を受けて輝いていた。民宿のお父さんが丹精込めた新米の朝食をいただき、ゆっくりとご家族との会話を楽しんでから7時半に出発した。 「七ケ岳林道」の道標のところで広いR289からいきなりダートな林道が始まった。普通乗用車では尻を打ちそうな轍が掘れ込んだ道を10分ばかり走ると、七ケ岳(護摩滝)登山道入口の標柱があり、広い駐車場があった。一台の軽自動車が駐車していたが、この悪路をよく運転してきたものだ。林道には「これから先伐採作業のため荒海山には通り抜け出来ません」の立札が立っていた。無関係と思ったこの立札が、後で意味が分かることになった。 入口のポストに登山者カードを投函して歩き始めた。
水も流れるような藪っぽい登山道を進み、何度か沢を渡ると、ブナなど雑木の黄葉が綺麗な山道になった。やがて道は沢に下り、ごろ石の間を縫いながら沢筋を登っていった。
護摩滝の下に着くと、急な岩場をなめる様に下る流れはところどころで凍っていた。向かって右の急坂の中の巻き道を攀じ登ると、滝の中段に出た。ここで左手に渡ると、滝の左端にロープがぶら下がっていた。日の当たらないこちら側は、あちこちに凍っているところがあり、氷を踏むとつるりと滑る。ロープを頼りに一歩一歩慎重に登って行った。もう一週間遅かったら全面凍ってしまって登れなかっただろうと思った。
2連のロープ場を登ると、その先にはロープがなくなった。高くなると氷も多くなり、更に慎重になるが、滑滝のような沢はどこまでも続いた。
30分も沢を登ると、左手に「七ケ岳登山コース」の道標が現れ、登山道が分かれていた。藪のうるさい掘れ込んだ道は視界が利かなかったが、急登を登ったところで後を振り返ると、雪を頂いた飯豊連峰が見えていて一息ついた。
更に一踏ん張りで尾根に登りつくと、向かいに高杖スキー場からの道を合わせていた。南東方向に展望が開けており、塩原の山並が意外に近いところに見え、その右に釈迦ケ岳、荒海山、日光の山々、大嵐山、田代山、燧岳と続いていた。
七ケ岳山頂に登ると360°の大展望が待っていた。山が沢山ありすぎて、山名同定も適当になる。
間もなく、賑やかな6人の栃木の人たちがやってきて「平滑沢から登ってきた」という。お互いに証拠写真の取り合いをした。展望を楽しみながら弁当を食べていると、護摩滝を登ってきた男性2人が登ってきた。
賑やかな山頂を後にして、全山縦走路の下りにかかった。下岳まで七つか八つ、その先にも二つのピークを越える。第三峰への登りがきつかったが、目の前にこれから越していくピークが見え、後に越えてきたピークが見え、右に田島の町と那須や塩原の山並み、左に会津朝日や浅草岳が見え、楽しい尾根歩きだった。 こちらの登山道は下岳まで殆ど笹に覆われていた。笹のしたには石や根っこが隠れていて、右に踏み外すと崖からまっ逆様というところもあり、一歩一歩気を使いながら歩いた。
尾根が尽きるところに道標があって、左の下りに入った。ここからは不思議なほど笹が少なくなり、歩きやすいハイキング道になった。29分気持ちよく下ると林道にでた。
林道に下りて山を見上げると、全山綺麗な紅葉になっていた。林道歩きもこれなら苦にならないと、紅葉を楽しみながら気持ちよく林道を歩き始めたが、間もなく杉の伐採現場になった。3箇所で伐採されたばかりの杉の大木が何十本も道を横断して横たわっており、その度に藪の中に追い出されて、藪漕ぎしながらかわさなければならなかった。
3kmの林道を歩いて午後3時過ぎに駐車場に着き、車に乗ってR289に出て右折し、さらにR121に入って南下、R352沿いの会津高原駅近くの夢の湯で汗を流した。ここからも今日は渋滞もなく快調に走り、常陸太田のレストランで夕食を取って無事9時ごろ我家に帰ってきた。それでも、その先の長い林道の道傍にはススキの穂がたなびき、紅葉とのコントラストが美しかった。歩いているうちに、伐採で不機嫌になっていた気分もすっかり元に戻っていた。
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