V633.飯森山

1.動 機
飯森山は福島県と山形県の県境にあり、一般にはあまり知られていない山である。コースも登り5時間10分、下り3時間30分と長いので近付きかねていたのだが、「福島県の山」完登を宣言した以上アタックするしかなく、それならば我家の大好きなヒメサユリが咲くという6月中旬の今出かけることにした。
覚悟していた通りコースはとんでもなく長かったが、この時期には谷間に雪渓が残っていて夏道よりも歩きやすくなっており、雪渓の近くには多くの花が色とりどりに咲いていて、なかなか楽しく充実した山行になった。

2.データ
a)山域:飯森山(1595m)、鉢伏山(1576m)
b)登山日:2008/06/18(水)晴
c)日程:
喜多の里5:45 = 6:00日中ダム駐車場6:40 ---- 6:45登山口 ---- 7:25見晴台 ---- 8:10薬師 ---- 9:15遭難の碑 ---- 10:05大倉の頭 ----10:20高倉窪キャンプ場 ---- 10:45鉢伏山11:50 ---- 11:50飯森山12:40 ---- 13:35鉢伏山 ---- 13:50高倉窪キャンプ場 ---- 14:10大倉の頭 ---- 14:50遭難の碑 ---- 15:35薬師 ---- 16:00見晴台 ---- 16:30登山口 ---- 16:35日中ダム駐車場16:50 = 17:30熱塩温泉18:20 = 18:55会津若松IC = 19:50小野IC = 21:00日立北IC = 21:40日立自宅
d)同行者:和子
e)地形図:1/25000 「飯森山」


3.山行記録

道の駅喜多の里で多くの車と一緒に車中泊して、夜明けを待って餅ラーメンの朝食を作って食べ、5時半に車で出発した。途中、コンビニで昼弁当と行動食のアンパンを買いこんで日中ダムに向かい、ダムには6時に到着した。

高さ100mのロックフィルダムの傍らのダム管理事務所の先に広い駐車場があった。一台の先客があり、身支度を整えている間に、もう一台の車が入ってきた。車から出てきたのは郡山のYさん、飯森山が大好きで毎年7〜8回この山に登りに来ているとのことで、いろいろと話を聞くことが出来た。
「この山に登りに来る人は少なく、めったに人に会わない。今日みたいに2台も車があるのは珍しい」「鉢伏山からまん前に飯豊山がドーンと見えて素晴らしい」「コースが長く最後の鉢伏山から飯森山までの上り下りがきつくて、鉢伏山で満足して帰る人が多い」「私は登り3.5時間下り2.5時間だが、普通は登り5時間、下り4時間は見ておきなさい」「この山は秋の紅葉が素晴らしく、私は一番好きだ」「ここの沢登りは面白いよ。二人で登るのなら何かあっても安心だからお奨めだよ」「人が少ないから熊のメッカで時々出くわす。逃げては駄目。熊が逃げるまでにらめっこしていること」などなど。面白い話を聞いているうちに出発は6時40分になった。
登山口は駐車場からダム湖沿いの車道を100mも歩いたところにあり、石の祠に鳥居が立ち、真新しい登山口の標柱が立っており、コースの案内板もあった。ここまでYさんも一緒に歩いて、記念写真の撮り合いをした。
(日中ダム湖)
(登山口)

登山道は始めから大変な急登、薄暗い樹林の中をジグザグに登る。しばらくは登山口で別れたYさんの後姿を追ったが、そのうちどんどんと離れていった。
15分頑張ったら尾根に上がり、少し楽になるかと思ったら、尾根道もとんでもない急坂、直登なのでなお厳しい。
頑張って登るとやがて見晴台の看板が立てかけてあった。見晴台と言っても、樹の間にわずかに隙間があるだけ、どこが見えているのか見当が付かなかった。こんな看板が要所要所に転がっていたが、合併で管理者がいなくなったのか、錆びてペンキも剥げて現在地が消えたものが多かった。
(急登が続く)
(道標)

見晴台からは今までよりも少し勾配がゆるくなったが、依然としてきつい登りが続いた。尾根沿いの道が東側に移ると、樹間に日中ダムが見下ろせたり、樹林が切れたところでは磐梯山が見えたりして気分転換になった。
Yさんの話では花は殆ど見られないとのことだったが、始め、ヤマツツジやドウダンツツジ、マイヅルソウなどが見られるようになった。花や山の写真をとり始めたらとたんにペースが遅くなってきた。
(磐梯山−猫魔−雄国山)

そのうちに、タムシバ、オオカメノキ、ギンリョウソウ、イワカガミ、ミツバオウレン、ツマトリソウ、はてはヒメサユリまで現れてきて、その都度立ち止まっていると、山頂には何時到着できるのか心配になってきた。花の写真は下りでゆっくりと撮ることにして、ひたすら登りに専念することにした。
それにしても今日は暑い!汗がどんどん噴き出してきて、喉も渇く。水の消費も早く、二人で持ち上げた4Lの水も下りまで持つか心配になってきた。
(タムシバ)
(オオオオカメノキ)
(ミツバオウレン)
(ツマトリソウ)
(アカヤシオ)
(ヒメサユリ)

大倉の頭あたりから先を見ると、前方に高い山が聳えており、さらにその上にわずかに頭を出しているのが飯森山、午前中には十分に登りつけそうだと見当をつけた。しかし、やがてそれは鉢伏山であることが判り、その先にまだ1時間の上り下りがあるのだと愕然とする。
大倉の頭から下る道沿いに小さな渇いた池があり、「血の池」の看板があった。さらに鞍部まで下ると少し平らなところがあって、「高倉窪キャンプ場」の看板があった。ここまでの急登を重いテントなど担ぎ上げて、水もないここでテント泊とはまた大変だなあと思う。
キャンプ場からまた急坂を頑張って鉢伏山の山頂に登りつくと、Yさんのおっしゃるように飯豊山が目の前にドーンと見えていた。嬉しい光景である。ここまでの苦労もどこかに飛んでいく。コーヒを入れながら休憩していると、無数のブヨが飛んできて、手といわず顔と言わず襲ってきて煩くてたまらない。しつこくって用意してきた虫除けスプレーを吹きかけても利くものではない。退散するしかない。
今日はもう十分に歩いたのでここで引き返したい気分だが、「福島県の山」完登のためにはもう一頑張りだ。励ましあってザックを担いで飯森山に向かった。
(鉢伏山からは飯豊山がドーンと)

ここから飯森山までは、一旦200m大きく下らなければならない。その途中でYさんと出会い、「元気に歩いているね。下は雪渓が残っていて随分楽だよ」と励ましてくれた。
少し下るとその言葉通りに雪渓が現れた。まだ広い雪渓なのでどこを歩けばいいか悩むところだが、Yさんの足跡が残っていたので安心して歩くことが出来た。雪渓の下にはシラネアオイが咲いており、登山道脇にはハクサンチドリが華やかだった。
頑張って山頂に上がると、広い展望と一等三角点があり、写真を撮って昼食にした。ザックを開くとなんとコンビニで買った弁当が入っていない。車の中に置いてきたのだ。大目玉を食いながら、行動食のアンパンと非常食のカロリーメイトで腹を満たした。相変わらず襲い掛かってくるブヨを追い払いながら。
ザックを山頂に置いて、大朝日方向の展望を見ようと登山道を先に進んでみた。100m先に2体の祠があり、小広くなっていた。飯森神社らしい。
その先にも「沢コース」の道標がある下り道があったが、歩く人が少ないのかすぐ先で藪に覆われていた。多分、これがYさんお奨めの沢コースで、飯森沢からここに上がってくれば周回コースが取れる。
(鞍部は雪渓)
(一等三角点の飯森山山頂)

心置きなく展望を楽しんでから下りにかかった。下りでは目の前に飯豊山を見ながら下るので気分がいい。ところが肩のところまで来ると、目の前に鉢伏山がせりあがっているのが見えて、愕然とする。今度はあれを登らなければならないのだ。
(下りは飯豊山を正面に)
(鉢伏山へ登り返し)

登りでは見るだけにして通過した雪渓脇の花の写真もゆっくりとカメラに収めた。
(シラネアオイ)
(コイワカガミ)
(ハクサンチドリ)
(カタクリ)

鉢伏山への登りをこなした後も、小さなアップダウンが何回もあった。登る時には登り一方に見えて下る時は楽だろうと思っていたのだが、いざ下り道を歩いてみると結構な登りもあって、水の消費が進む。見晴台のところで最後の一滴で喉を潤して登山口まで無事下りついた。
本当に長い行程だった。それでも飯豊の展望に綺麗な花たちのおまけが付いて満足いっぱいの山行だった。

ダム直下の日中温泉で汗を流そうと立ち寄ってみたが、日帰りは14時まででおしまい、熱塩温泉まで走って老舗旅館の温泉に入った。会津若松ICから高速に乗り、通勤割引の小野ICで一旦下り、休憩がてら差塩PAに立ち寄って残ったコンビニ弁当の夕食を食べた。日立ICまで走って一般道に下り、日立市内は海岸通りを走ると快調に通過でき、我家に21時40分到着できた。早々に布団に入って綿のように眠った。




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