V72.火打山と妙高山

1.動 機
戸隠山に登りに上信越に来た時、道の駅から朝日に輝く火打山や妙高山を眺めて、そのうちにこの綺麗な山にも登ってみたいものだと思ったのは去年の10月だった。今回、水戸アルパインで2山を2日で縦走する山行が計画されたので、これ幸いと参加した。火打山が花の百名山の一つだ程度は知っていたが、両山ともに予備知識が余りなく、名前の印象から優しいハイキング程度の山だと思っていた。実際に歩いてみると、ハイキングの山とはとんでもない、笹ヶ峰登山口から火打山−黒沢池までは距離がたっぷりあり、黒沢池から妙高山までは急登が続き、妙高山から燕温泉までの下りは鎖場をふくむ急坂の連続で実に厳しい登山コースであった。

2.データ
a)山域:火打山(2462m)、妙高山(2446m、2454m)
b)登山日:2008/07/26(土)晴、27(日)晴、前夜発
c)コースタイム:25日:日立自宅 20:45 = 20:50日立電鉄南営業所 21:00 = 22:30 水戸IC = 23:10 守谷SA 23:15 =
26日:= 1:15 横川SA 1:30 = 野尻湖SA 4:30 = 5:25 笹ヶ峰登山口 5:55 ---- 7:00 黒沢橋 7:10 ---- 7:50 十二曲上 8:00 ---- 9:15 富士見平 9:25 ---- 10:20 高谷池ヒュッテ 10:40 ---- 10:55 天狗の庭 11:10 ---- 11:50 雷鳥平 ---- 12:35 火打山山頂(昼食)13:00 ---- 13:30 雷鳥平 ---- 14:35 分岐 ---- 15:10 茶臼山---- 15:40 黒沢池ヒュッテ(泊)
16日:黒沢池ヒュッテ 5:30 ---- 6:30 大倉乗越 6:05 ---- 6:50 長助池分岐 7:00 ---- 8:30 妙高山山頂 8:45 ---- 8:50 南峰 9:00 ---- 10:20 天狗平(昼食)10:45 ---- 11:35 称名滝上11:40 ---- 12:40 麻平 12:45 ----13:30 燕温泉(入浴)14:30 = 15:00 妙高高原IC = 16:30 横川SA 16:50 = 17:55 太田桐生IC = 18:45 道の駅みかも19:10 = 20:30 桜川筑西IC = 21:10 水戸IC = 22:00 日立電鉄南営業所 22:05 = 22:15 日立自宅


d)同行者:水戸アルパイン会員15(男7、女8)、和子
e)地形図:1/25000 「妙高山」

3.山行記録
(アクセス)
夕食後準備して、21時に日立電鉄南営業所を始発するバスに乗って、東海駅でリーダが乗り、勝田、水戸を仲間15名が全員乗って水戸ICから高速に乗った。守谷SAと横川SAで休憩して黒姫野尻湖SAで時間調整の仮眠をとって4時30分に出発、朝食をとりながら5時25分笹ヶ峰登山口の駐車場に到着した。広い駐車場はマイカーで一杯になっていた。
(1日目)
帰りの入浴のための荷物はバスに残してトイレで用を足し、ラジオ体操とストレッチをして6時前に歩き始めた。
ウツボグサやシラギクなどが咲き乱れる草地の中の木道を歩くとすぐに立派な入口建屋がたつ登山口に入った。小学生の集団が列を作り、低学年は天狗の庭まで、高学年は火打山山頂まで歩くのだと言う。
(笹ヶ峰登山口で準備運動)
(立派な登山口)

登山道に入っても道はなだらかで木道がどこまでも続いたが、笹ヶ峰遊歩道の別れあたりから木道が消えて道の勾配がやや急になった。緩やかに登って行くと沢があり黒沢橋がかかっていた。涼しい風が吹いていて、流れは綺麗で冷たい水を飲みながら小学生の集団と一緒に一休みした。
ここから一気に急坂になり、何度もジグザグを繰り返して200mも登って尾根につくと「十二曲り」の道標が立っていた。曲がった回数はとても12回どころではなかったように思えた。一休みしてここからは楽になるかと思って歩き始めたが、尾根筋の直登道も同じように急坂が続いてたっぷりと汗を搾られた。
(木道で整備された登山道)
(十二曲りの急坂)

全行程9kmの登山道脇には1km毎に道標が立っていて励みになった。登りが緩やかになってキヌガサソウやツマトリソウ、ゴゼンタチバナ、マイヅルソウなど白い花を愛でながら頑張ると4/9kmの道標があり、その少し先が黒沢池ヒュッテへの分岐がある富士見平だった。ここから「火打山」の標識に従って左に曲がると木道になった。行く手の火打山は雲に隠れているが、右に黒沢岳を見上げながら、登山道脇のアキノキリンソウやミゾホウズキ、クルマユリなどの花を愛でながらゆっくりと歩いた。
やがて三角屋根の高谷池ヒュッテが現れ、その前庭のベンチで休憩した。火打山が雲から頭を出し始め、キャンプ場まで足を運んでみると、池塘と火打山との組み合わせが綺麗だった。
(1km毎の道標)
(高谷池ヒュッテ)

ヒュッテからしばらく歩くと火打山が大きく見え始め、池塘をちりばめた天狗の庭に着いた。ハクサンコザクラやイワイチョウの大群落があり、どこまでも続くワタスゲの群落も見事だった。
(ワタスゲ咲き乱れる天狗の庭:焼山と火打山)

湿原の木道から登山道を少し登って振り返ると、歩いて来た湿原が池塘をちりばめて綺麗だった。その上に妙高山が見えるが山頂部は雲に隠されていた。またすぐになだらかな木道になり右手に鬼ヶ城絶壁を見て、ヨツバシオガマやマルバタケブキ、サンカヨウなどを愛でながら歩くとライチョウ平の標柱が立っていた。幸か不幸かライチョウには出会わなかった。ライチョウを見ると雨が降るという。
(切り立った鬼ヶ城の岩壁)

わずかに残った雪渓を越えたところでまた急坂になって、階段状に整備されていた。ウサギギクやミヤマタンポポが目を引いたが、山頂直下ではミヤマキンポウゲの黄色い群落が見事だった。
山頂に登りつくと大きなケルンが積んであり、不安定に立った三角点標石と字が消えかかった山名標柱が立っていた。条件がよければ北アルプスがずらりと並ぶのだろうが、今日は霞んで何も見えない。先はまだ長いので集合写真と証拠写真を撮りあって、茨城から持参した弁当を広げてそそくさと食べてから下山にかかった。
(山頂直前でまた急登に)
(全員揃って火打山踏破)
下山は花を愛でながらの稜線漫歩、花を愛でながら天狗の庭まで下ると妙高山が綺麗に頭を出していた。これなら明日もいい天気になりそうだと元気が出てきた。出発前の天気予報では明日は降水確率50%、雨を覚悟して出てきたのだ。
(キンポウゲの登山道を下る)
(天狗の庭から妙高山が)

高谷池ヒュッテの手前に黒沢池への分岐があり、この道も多くは歩きやすい木道で、ピークの茶臼山を越えると、眼下に黒沢池の湿原が広がり、黒沢池ヒュッテも見えてきた。長かった今日の歩きもやっと終わりになるとほっとする。
六角屋根のヒュッテに着くと、前庭のベンチで多くの登山者がビールを飲んだりしながらくつろいでいた。笹ヶ峰登山口の駐車場の込み具合を見て超満員かと心配したが、案内された部屋は別館の2階、我がグループだけの独占だった。部屋の中は暑かったが、窓を開けると涼しくなった。本館の三階に泊まった人は、窓がなくて一晩中暑くて参ったとこぼしていた。
(茶臼山から黒沢池、妙高山)
(黒沢池ヒュッテ)

山小屋の管理人は愛想がなく殿様商売を地で行く人物、泊めてやるの態度をあらわに出してくるので評判が悪かった。ここの水は生では飲まないようにとの注意書きがあるが、水を買おうとすると500ccのペットボトルが1本400円と言う。多くの人が必要とする物が高いのはこの管理人の仕業ではないかと憎らしくなってくる。

(2日目)
ヒュッテの朝食は、食堂前に並んだ順番だ。この管理人はあらかじめ時間を指定しておくなどの手数は掛けない。みんな揃って一番の朝食を食べて早出をしようと計画していたが、要領が良くわからず2人が乗り遅れて2番目の朝食になった。朝食はクレープにジャムとコーンスープ、それに缶詰の桃が付いている。山小屋では初めてお目にかかったメニューだが、お代わり自由でお腹一杯頂いた。
今日は朝から上天気、全員揃ったところでヒュッテの前庭でいつものラジオ体操を始めたら、良く通るリーダの掛け声に合わせて、前庭にいた他のグループも体操を始めた。
ヒュッテの前庭から「妙高山」の道標に従って大倉乗越に向かって歩き始めたが、のっけから急登だった。石ころとドロンコの道を足元を選びながら登るのは疲れたが、途中で振り返ると、樹間から昨日登った火打山が朝日に輝いて綺麗だった。
(前庭で準備運動)
(大倉乗越まで急登)

大倉乗越に登りついて一休みし、少し下ればトラバースと思って下り始めたが、どこまでも急坂が下っていく。ロープ場まで現れた。
100mも下ってやっとトラバース道に入ると、目の前に立ちはだかる妙高山を眺めながらの歩きになった。高度差400mの急登が待っているが実感として迫ってくる。
(大倉乗越から急坂下り)
(妙高山を仰ぎながらトラバース)

キヌガサソウやヒメシャジンの花に慰められながらトラバース道を歩き、雪渓の残る谷を渡ったところに長助池への分岐があった。今日の体調が悪くて2人が妙高山登頂を諦め、ここから妙高山を巻いて燕温泉に下ることになった。
2人と分かれて妙高山へ登り始めた。深く掘れ込んだ狭いゴロ石の道なので、追い越しもままならない。前をゆっくりグループが歩いている時、後から元気グループが追いついてくる。せっつかれてもどうしようもない。この時ばかりはしんがりを歩くのも容易ではなかった。
ところどころある広いところで何度か休みながら、やっと妙高山の山頂に登りついた。広い山頂には大きな溶岩がゴロゴロと重なっていて、どの岩の上に登っても山頂に立った気分になれる。生憎雲が沸いてきて視界はきかない。
(長助池分岐から急坂続き)
(やっと山頂)

山頂標柱の前で集合写真を撮って、すぐ近くの南峰に移動した。標高はこちらの方がわずかに高くてお宮が祀ってある。暫くすると視界が少し良くなって、火打山や焼山が展望できるようになった。残念ながら、期待していた北アルプスや戸隠あたりの山は遠くてやはり見ることは出来なかったが。
(南峰からの展望:薬師岳−焼山−火打山)

下りは燕温泉に下った。標高差1300m以上あり、岩場あり、雪渓あり、急坂の連続で大変な登山道だった。登ってくる人に何人も出合ったが、下りでも苦労しているのに、この道を登ってくる苦労は大変なものだろうと同情した。
500m下った天狗平という広場でヒュッテで受け取った弁当を広げて笑ってしまった。スーパで売っているビニルパック入りの即席赤飯と五目釜飯を暖めたものだった。こしゃくだが、並みのおにぎりよりも美味しかった。
(岩場の下り下山道)
(雪渓もあり)

天狗平からさらに200mジグザグに下って北地獄谷沿いを下り、称名滝の上で谷を渡ってさらに下っていった。
途中で見えた三段になって落ちる称名滝は見事だったが、先日のノルウエーのフィヨルドで飽きるほど滝を眺めてきたばかりなので感激は今一つだった。
下りでも急坂を下るので汗を搾られ、徒渉の度ごとにタオルを濡らして身体を拭くのが気持ちよかった。途中に小さな風穴があり、穴に顔を近づけると冷たい風が吹いてきて、これまた気持ちがよかった。
(三段の称名滝)
(急坂がどこまでも)

巻き道との合流点の麻平に出たが、ここからの下り坂も物凄い急坂だった。やっと楽になったのは吊橋を渡ったときで、ここからは林道を10分ほど歩いて燕温泉に到着した。登頂を諦めて巻き道を下った2人は先に着いて汗を流してさっぱりしていたが、こちらも途中ドロンコ道があったりで苦労したとぼやいていた。待っていたバスに乗って温泉旅館に入って汗を流した。
(吊橋で終わり)
(燕温泉で汗を流す)

温泉で汗を流している間に稲光がひかりだし、バスに乗り込むと雨が降り出した。山行中に雨に会わなかったのは幸運だったと喜びあったが、この雨は高速に乗ると風も出てきて大嵐になり、横川SAでトイレに走る間傘を差していてもびしょぬれになってしまった。首都高の渋滞情報を聞いて、上信越道から関越道に入って北に向かい、北関東道とR50を繋いで水戸ICまで帰ってきた。




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