V91.福島の山のピークハント(4)
(高森山、高舘山、金石ヶ鳥屋山)

1.動 機
久しぶりに晴天が続く天気予報になって、暫く山歩きを休んでいた和子の足慣らしに出かけることにした。「福島県の山」完登で残っている会津の西部にあるマイナーな山、高森山、高舘山、金石ヶ鳥屋山あたりが手軽だろうと、三座をまとめて2日で歩くことにした。

2.データ
a)山域:高森山(1100m)、高舘山(848m)、俎倉山(963m)、金石ヶ鳥屋山(970m)
b)登山日:2008/09/08(月)〜09/09(火)
c)日程:
9/08日:日立自宅 = 日立北IC = 小野IC = 磐梯高原SA = 会津坂下IC = 沼沢湖 = 玉梨牧場登山口 ---- 高森山 ---- 玉梨牧場登山口 = 阿久戸登山口 ---- 高舘山 ---- 阿久戸登山口 = 湯ら里
9/09日:湯ら里 = 日宮沢口 ---- 俎倉山 ---- 金石ヶ鳥屋山 ---- 日宮沢口 = 道の駅馬頭= 日立自宅
d)同行者:和子
e)地形図:1/25000 「沼沢沼」「野尻」「会津小林」


3.山行記録
アクセス:
日立自宅 6:30 = 7:00 日立北IC = 7:50 小野IC = 7:55 磐梯高原SA 8:15 = 9:05 会津坂下IC = 9:35 沼沢湖 9:45 = 10:00 玉梨牧場登山口

朝早く我家を出て渋滞が始まる前に日立を通過して日立北ICから高速に乗り、阿武隈高原SAで朝食をとって会津坂下ICで高速を降りて沼沢湖畔で一休みしてから玉梨放牧場わきの高森山登山口に向かった。

1日目:高森山
コースタイム:玉梨放牧場登山口 10:25 ---- 11:05 山ノ神 ---- 12:05 高森山 12:50 ---- 13:45 山ノ神 ---- 14:05 玉梨放牧場登山口 14:15 = 14:45 高舘山阿久戸登山口

高森山は沼沢湖の南にある1100mの山で、去年、惣山−前山から沼沢湖一周した時に、ついでに登ろうとして時間切れになった経緯がある。高森山には沼沢湖畔と西の玉梨放牧場側に登山口があるが、情報によると玉梨放牧場側からの方が手入れがいいらしいので、くねくね道を玉梨放牧場に向かった。
(高森山の登山コース)

(高森山登山コースの高低差)

玉梨放牧場に近付いたが牧場らしき景観はなく、登山口の駐車場脇にうつくしま百名山の標識があり、山頂まで3kmとあった。道の向かいの登山道に入ると、しばらくは下草が茂っていて煩かったが、日当りが悪い植林に入ると下草が減って歩きやすくなってきた。
道がやや急になってきて尾根に登りつくと小さな石の祠と「山の神」の道標があり、道標には山頂まで2kmとあった。
(登山口の標識)
(山ノ神の標識)

一般的には尾根に上がると道は緩やかになるのが普通だが、山ノ神からは道は一段と急になり、2箇所にロープも張られていた。
汗を搾られて最初のピークに登りつくと、下に沼沢湖の青い湖面があり、その上はるかに飯豊山の長大な山並みが広がっていた。今の時期、飯豊山の雪は殆ど消えていて、初夏に見るほどの美しさはなかった。
(ロープも張られた急登)
(沼沢湖と飯豊山:下山時撮影)

最初のピークからまた二つのピークを越える。痩せ尾根を歩いて登りついた3つ目のピークからは高森山の台形の山容が全体像を現した。随分登るのだなと覚悟した。ここから高森山に向かうと、痩せ尾根を下った先に数箇所の岩場もあった。小さな岩場だが、滑ったら両側の谷底に墜落してしまいそうで慎重に登った。
岩場をこなすと山頂直下は鼻こすりとでも言いたいような物凄い急登になった。地形図ではいったんトラバースして登るようになっているが、山頂まで直登が続いてロープが付いていた。
(2箇所岩場もあり)
(山頂直下は一番の急登)

急登を頑張って登ってなだらかな山頂部に上がると、珍しいトンボソウがひとかたまり咲いていた。先ずは山頂に急ごうと、花は下山時に撮影することにして先に進むと二等三角点があり、そのそばの立ち木に立派な山名板が取り付けてあった。早速証拠写真を撮った。
北西面が開けていて、飯豊山や御神楽岳が見えていた。北東方面が見えないかと沼沢湖方向に少し歩いてみたが、立ち木が茂っていて展望はなさそうだった。
(高森山山頂にて)
(御神楽山遠望)

ゆっくりと山名同定してから下山にかかったが、山頂近くの急坂や岩場は下りの方が気を使った。岩場を下りたところで、カメラがケースから飛び出して崖の方に落下した。いつもはカメラを紐に取り付けているのだが、三脚で証拠写真を撮ったときに結びなおすのを忘れていたのだ。またデジカメを失くして皆に笑われそうだと崖を覗いたら、幸運にも直ぐ近くの潅木に引っかかっているカメラが見えた。一安心してザックを置き、潅木に掴まりながら何とかカメラを回収できて和子の勘気をこうむらないで済んだ。
カメラをしっかりと紐に付け直して、来た道をそのまま下っていった。登る時よりも天気が良くなって、周りの山々の展望が一層よくなっていて、カメラの無事回収もあって気分良く下ることが出来た。

1日目:高舘山
コースタイム:阿久戸登山口 14:55 ---- 15:15 沢終点 ---- 15:45 神社 ---- 16:05 高舘山 16:15 ---- 16:30 神社 ---- 16:50 沢終点 ---- 17:10 阿久戸登山口 17:15 = 16:35 湯ら里

(高舘山の登山コース)

(高舘山登山コースの高低差)

高舘山は「福島の山」ではルートファインデイングの山とあり、歩行時間は2時間と短いが、道がわかりにくい山らしいことを覚悟していた。
高森山から駐車場所に戻ったのは、時刻は既に午後3時に近かった。次の高舘山に登るのを明日に回すかどうか悩んだが、往復2時間ほどの山なので、今日のうちに登ってしまおうと決めて、高舘山の登山口まで15kmばかり車を走らせた。
途中、R400から高舘山の丸い頭が見えてきた先の国道沿いに、高舘山登山道入口の道標を見つけて狭い生活道路に入りこんだ。集落の中の曲がり角の広いところに車を停め、登り口を捜してうろうろしたが登山口がわからない。
民家で作業中のご婦人に尋ねると、その家の裏が登山口だと言って案内してくれた。「どこまでもこの沢筋を歩くんだよ。そのうち山道に出るから。」「今から登るんかい。きつい山だが大丈夫かい。この山は熊も出るよ。鈴をつけているから大丈夫だろうが。」と色々と心配して親切に教えてもらえた。
(麓から高舘山)
(国道沿いの案内標識)

登山口には「他市町村の者の入山を禁止する。違反者は処罰される」との立札があり、マジックの手書きで「高舘山へ」と書き足しがあった。
少し入るととんでもない藪に阻まれた。踏跡も何もない。ご婦人の話で「この沢筋を進めば良い」と言われていたので、思い切って強行突破してみると、その先の萱の藪には踏跡があった。
(登山口、ここに駐車可)
(物凄い藪漕ぎ)

沢沿い右岸(下流に向かって右)の茂みの中に道らしき踏跡が続いていた。じめじめとしたところどころ水も流れる道だった。やがてその道も途絶えると、沢の向かいに踏跡が見つかった。2度左岸に渡って、渡り返して右岸を進むうちにまた踏跡が途絶え、3度目の徒渉かと思ったが対岸も歩けそうにもない。思いなおして周りを見直すと左上に上がる踏跡が見つかった。沢道はここまでのようだ。
(沢沿いの道)
(徒渉を繰り返す)

斜面を登ると、綺麗に刈り払いされた登山道が現れた。いままでの沢筋の道と同じ山の登山道とは思えない歩きやすい道である。あまり大勢の人に入って欲しくないので、沢道はわざと手入れされていないのだろうか。ご婦人の話を聞いていなかったら、我家も藪の手前で撤退していたかもしれない。
暫くは気持ちよく歩いたが、途中から急坂の直登になった。茨城の山でも、小さい山には直登が多くあったが、ここの300mの直登はきつかった。さすがの和子も、何度も立ち止まっては肩で息をしていた。
(山に入ると刈払いされた登山道)
(急坂の直登が続く)

中腹に小屋があったが、中を覗くと小さな神様が祭ってあったので、これがガイドブックにある愛宕神社のようだった。(下山後商店で聞いた話では、昔は小学校の集団登山でこの神社まで登っていたとのことだった。)
神社で一息入れてまた急登を頑張って山頂に登りついたが、周りは樹木に囲まれて視界は利かなかった。山名標はなく三等三角点だけがあり、その前で証拠写真を撮って直ぐに下山にかかった。
(小さな愛宕神社)
(三角点だけの山頂)

滑らないように気を使いながら急坂を下り、徒渉しながら藪のところまで無事引き返した。藪を避ける歩きやすい道はないかと探してみたが、どこにも見つからず、また藪を強行突破して登山口に帰り着いた。無事下山したことをご婦人に報告しなければと思っていると、丁度家の裏庭で作業中で「良く無事に帰ってきたね、神社にもお参りしたかい。」と労ってくれた。
車に戻って、明日登る金石ヶ鳥屋山の近くにある湯ら里までR400で峠越えをして走り、R289沿いの温泉でゆっくりと汗を流した。

2日目:金石ヶ鳥屋山
コースタイム:湯ら里 7:35 = 7:40 日宮沢口 8:05 ---- 8:20 こうの沢分岐 ---- 8:30 日宮沢観音堂跡 8:35 ---- 8:45 こうの沢分岐 ---- 9:50 鳥屋山分岐 ---- 10:00 俎倉山 10:40 ---- 10:50 鳥屋山分岐 ---- 11:25 金石ヶ鳥屋山(昼食) 12:00 ---- 12:30 鳥屋山分岐 ---- 13:40 日宮沢口 14:00 = 15:20 道の駅田島 15:40 = 16:15 道の駅塩の香 16:30 = 17:50 道の駅馬頭(夕食) 18:30 =19:40 日立自宅
(金石ヶ鳥屋山の登山コース)

(金石ヶ鳥屋山登山コースの高低差)

「福島の山」では金石ヶ鳥屋山は狭い林道を辿って登る山とある。車高の高い愛車ならば山頂近くまで車でラクチンできるかなと思って出かけた。
R289から亀岡橋を渡って対岸に渡り、途中から急に細くなった道を走って、登山口に到着した。そこには大きな水門がある調整池があり、水は伊南川の反対方向に向かって流れていた。あとで調べると、近くの取水堰から導水して、山向うの只見川沿いの東北電力伊南川発電所までトンネルで水を送っているのだ。只見川本流にあって、どうして伊南川発電所と呼ばれるのか不思議だったが、今回解決した。
登山口には「工事車両が往来するのでご協力を」の看板があったので、バックが苦手な私は、狭い林道で対向車にあったときの事を心配し、今日はこの山だけ登れば終わりだからゆっくり歩けば良いと考えて、ここから林道を歩くことにした。ガイドブックではこの林道は、一台が走るのがやっとの表現だった。
林道を歩くと舗装道路が続いたが、途中沢と交差するところでは、橋ではなくて沢水が道路の上を越えて流れるようになっていた。橋を作るよりも建設費もメンテナンスも楽なのだろう、この林道の終点まで何箇所も沢水が横断していた。
(調整池制御所の向うに登山口)
(沢は林道を越えて流れる)

15分も歩いたこうの沢への分岐のところに「日宮沢観音へ300m」の道標があり、今日は時間があるからと寄り道してみることにした。日宮沢沿いの登山道のような道をどんどん歩いていって、とっくに300mは過ぎたと思っても「日宮沢観音」の道標は見つからなかった。訝っているときに、後ろから茸採りの土地の人が登ってきた。観音様のことを尋ねると、「その下の鉄塔の所から沢に下りるのだ。草に覆われて道が分りにくいかも知れないが、沢には橋が架かっているよ。」と教えてもらえた。鉄塔まで引き返して草地の中のかすかな踏跡を辿って沢に下りると、板で出来た立派な橋があった。その橋を渡ってちょっと登ったところが広場になっていて、石の灯篭と祠があり、由緒を書いた看板が立っていた。山の上には由緒書きの通りに、そう言われれば観音様に見える大きな岩があった。看板には「ここにお堂が作られたが、大雪で倒壊した。新福寺奥の院であり毎年4月に例祭がある」とあり、「この先300mに奇岩ビッキ岩がある」ともあったが、これ以上は登る気はせず引き返した。
ここからこうの沢の林道は長かった。俎倉山頂のデジタル放送設備の工事のために道路は拡張整備されたようで、大型車でなければ対向車と交差も出来そうだった。朝日に背中を照らされて汗が止めどもなく流れ落ちる。何度か軽トラの工事車に追い越されながら「車で来ればよかったのに」と林道歩きを嫌がる和子の繰言に「藪漕ぎよりはましでしょ」と言い返しながらも、やはり九十九折の林道を汗を拭きながら歩くのは辛かった。
(祠の向うに岩観音)
(長い長い林道歩き)

登山口から1時間半林道を歩いてやっと俎倉山の山頂に辿りついた。山頂には大きなブルドーザもおいてあり、放送設備を入れる建物の建設に数人の人が作業中だった。作業の邪魔にならないように山頂に上がると、素晴らしい展望が開けていた。すぐ近くには、これから登る金石ヶ鳥屋山の双耳峰が見えていた。
(俎倉山山頂は工事中)
(金石ヶ鳥屋山)

地図を持ち出して、御神楽岳、浅草岳、会津駒ヶ岳、帝釈山、七ヶ岳、志津倉山など確認していると、作業中の若者も寄ってきて山談義が始まった。作業者は土地の住人ではなかったので、期待した金石ヶ鳥屋山の情報は得られなかった。
(山頂からの大展望の一部)

展望に夢中になって、山頂での証拠写真を撮るのを忘れて次に向かった。10分ほど下ったカーブのところに茸採りらしい軽トラが停まっていて、地形図通りに金石ヶ鳥屋山への登山道が見つかった。
少し下って暫く藪っぽい道を歩くと、最初のピークへの急登が始まった。藪はないが苔むしたような滑り易い道でゆっくりと歩いた。ピークに登りついて一息入れてから急坂を70m下りるとワラビを掻き分けて歩く道になり、その先でまた120mの急登に汗を搾られた。
(金石ヶ鳥屋山への登山道入口)
(藪っぽい登山道)

この山頂にも山名板はなく、三角点の前で証拠写真を撮った。周りには樹木が多くて展望は俎倉山ほどではなかった。NHKの放送設備があり、軽い昼食をとってからそのテラスに上ってまた展望を楽しんだ。俎倉山の上にどこからでも目だって見える二岐山の双耳峰があった。
(ここも三角点だけ)
(俎倉山と二岐山)

下りにかかったが、急坂の下りで2度も足を滑らせて尻餅をついてしまった。そろそろ疲れが出てきたのだろうか。帰りも同じ長さの林道歩きだったが、午後は太陽が樹木で遮られていて助かった。展望がよかったことに満足したので和子の繰言も消えてしまい、色とりどりの花を愛でながら楽しい気分で駐車場所まで歩くことが出来た。
自宅への帰りは一般道を走った。昼食が軽かったのでお腹が空いて、田島と塩原の道の駅に立ち寄ったがいずれのレストランも休店中で振られてしまい、馬頭の道の駅でやっとありついたステーキがとても美味しかった。




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