W63.岩手の山巡り
(兜明神岳・姫神山・七時雨山・安家森)

1.動 機
日曜日に孫の来訪を楽しみにしていたが、風を引いたとのことで駄目になった。急に暇になってどうしよう? 和子が、岩手県山田線の区界高原をベニバナイチヤクソウがピンクに染めているというニュースをJRジパングクラブの雑誌に見つけ、見に行こうよと言い出した。区界高原から兜明神岳という山に登るところに咲いているという。丁度図書館から借り出していた「東北百名山」を開いてみると、兜明神岳という山名は、山頂部にある蛇紋岩の岩塊が武者のかぶとに似ていることから名付けられたという。兜明神岳の近くには姫神山、七時雨山、安家森(あっかもり)という面白そうな山が載っており、いずれも2〜3時間で登れるようなので二日間でこれらを纏めて登ると面白かろうと考えた。東北地方は月曜日、火曜日とまずまずの天気予報だったので、急遽日曜日の夕方茨城を出発した。

2.データ
a)山域:兜明神山(1005m)、姫神山(1124m)、七時雨山(1060m) 、安家森(1239m)
山名をクリックすると夫々の山行記録に飛びます。
b)登山日:2009/06/15(月)曇時々晴、16(火)曇
c)コースタイム:
14日:日立自宅 18:40 日立南IC = 22:40 柴波SA(車中泊)
15日:柴波SA(朝食) 6:10 = 6:15 盛岡南IC = 7:00 ウオーキングセンタ 7:25 ---- 8:15 兜明神岳 8:50 ---- 9:45 ウオーキングセンタ = 道の駅区界高原(昼食) = 11:30 一本杉駐車場 11:45 ---- 13:20 姫神山 13:50 ---- 14:45 こわ坂登山口 ---- 15:25 一本杉駐車場 15:55 = 16:15 ユートランド姫神(入浴・夕食) 18:15 = 18:20 道の駅西根(車中泊)
16日:道の駅西根 5:35 = 6:20 七時雨牧野登山口 (朝食) 7:05 ---- 8:20 七時雨南峰 8:25 ---- 8:40 七時雨北峰 9:00 ---- 9:15 七時雨南峰 ---- 10:25 七時雨牧野登山口 10:30 = 11:20 道の駅くずまき高原(昼食) 12:10 = 12:50 安家森登山口 13:00 ---- 13:35 安家森 13:50 ---- 14:45 安家森登山口 15:20 = 16:15 九戸IC = 19:30 国見SA 21:15 = 23:00 湯ノ岳PA 23:25 = 0:10 日立南IC = 0:20 日立自宅
d)同行者:和子
e)地形図:1/25000 「区界」「渋民」「七時雨山」「安家森」(ヤマケイ「東北百名山」)

3.山行記録
(前夜:アクセス)
森山自宅 18:40 18:50 日立南IC = 20:00 三春PA 20:10 = 22:40 柴波SA(車中泊)

岩手まで走ると高速代が1万円近くかかるが、日曜日のうちに出発すれば1000円也で済みETC割引の効果が高い。早めに夕食を済ませて出発し、日立南ICから高速に乗り終点盛岡南IC近くの柴波SAで車中泊した。駐車場から走行車線が近くて少々煩かったが、立ち寄る車は少なくてゆっくりと眠った。

(1/4 兜明神岳 )
兜明神岳の標高は1005mあるが、登山口のウォーキングセンターがすでに750mあるので、山頂まで標高差250mしかない。

柴波SA(朝食) 6:10 = 6:15 盛岡南IC = 6:50 道の駅区界高原 6:55 = 7:00 ウオーキングセンタ 7:25 ---- 8:15 かぶと広場 ---- 8:20 下山口分岐 ---- 8:30 兜明神山頂(下山道探し) 8:50 ---- 9:00 下山口分岐 ---- 9:20 かぶと広場 ---- 9:25 山小屋 ---- 9:45 ウオーキングセンタ 9:50 姫神山へ
(兜明神岳登山コース)
(兜明神岳登山コース詳細)

朝目覚めると、空には半分青空が広がっている。喜んでそそくさと朝食をとって出発し、盛岡南ICで東北道を降り、県道、R4を繋いで宮古へ通じるR106に入った。工事場所の多い曲がりくねった道を走って行き、区界峠(くざかい)のトンネルを通過して区界集落に入るとすぐに綺麗な道の駅があった。トイレ脇から見上げると、高原のなだらかな斜面の上にちょっぴりと飛び出している大岩が見えた。これが兜明神岳の山頂の兜岩だ。
R106を進むと、兜岩の崖の形がはっきりと見えてきて車を停めてパチリ。もう少し走ったところから左に分岐する道に入ると登山口のウオーキングセンタに到着した。。
(国道からの兜明神岳:山頂の兜岩が目立つ)

ベニバナイチヤクソウの群生場所を尋ねたかったが、ウオーキングセンタはまだ開いていなかった。広い駐車場入口にも通行止めがしてあったので、センタ事務所前の駐車場に車を停めて歩き出した。案内板によると兜明神岳へ登る周回コースが5本整備されており、草原コースを登って見晴山コースを下ることにした。歩行時間1時間半ほどのようだ。
スキー場だったらしい草原の斜面をゆるやかに登って行きながら、ミヤマオダマキ、キンポウゲ、アズマギクなどが咲く草原の中にイチヤクソウを探すが見当たらない。
(兜ウオーキングセンタ)
(草原コースを登る)

あった! 草原から樹林帯に入ると、ピンクのベニバナイチヤクソウがチラホラと咲いていた。オダマキやスズランはあちこちに群落を作って綺麗に咲いているが、ベニバナイチヤクソウは騒ぐほどには咲いていない。
(ミヤマオダマキ)
(スズラン)

樹林帯を抜けると再び芝生の草原になり、宿泊施設やバーベキュー施設があり「かぶと広場」の立札が立っていた。ここが下山時の見晴山への分岐点だ。
「かぶと広場」から「兜明神岳」方向の登山道に入ると、あった!! 群落を作ってベニバナイチヤクソウが咲いていた。これでやっと、はるばる茨城からやってきた甲斐があったというものだ。
(かぶと広場)
(岩っぽい登山道)

(ベニバナイチヤクソウ)

樹林帯を登ったところに「上り道」と「下り道」の別れがあり、「上り道」を進む。登山道は岩っぽい急坂になり、兜神社からの道を合わせると、もう山頂まで0.3kmの標識が立っていた。ここから岩登りらしくなり、一寸登った平らなところに山名方位版があり、早池峰、栗駒、和賀岳、駒ヶ岳、岩手山、姫神山などずらり名山の名前が並んでいた。(ここから360°の展望があるわけがなく、狭い山頂に設置しては危険が増すと考えてこんなところに設置したのだろう:登頂後の感想)
山名方位版の後ろに兜岩を巻くように岩棚が伸びており、和子が偵察に行ったが行き止まりのようだという。
兜岩を見上げると、高さは20〜30mほどだが、なにしろ岩だけである。適当にでこぼこが付いていて足がかり手がかりには不自由しないようだが、蛇紋岩は滑りやすいとも聞いている。しばらく思案したが、ここまでやってきて山頂に立たないでは笑いものだ。意を決して攀じ登り始めた。
(行き止まり!?)
(兜岩に取り付く)

和子は中段の休み場でまた一思案していたが、山の会の山行であちこちの岩場で鍛えられただけのことはある。なんとか山頂まで攀じ登ってきた。
(ここで止めようかな)
(やっぱり登ろ)

(ここで十分)
(眺めも良いし)

(山頂で呼んでいる)
(山頂まで頑張ちゃった)

小さな石祠のある兜岩の山頂は、まさに360°の大展望と言いたい所だが、石祠の後は崖になっていて平らな場所がない。支える物もないので、恐る恐る首を回しながら周りを見渡してみた。残念ながら雲が多くてすぐ近くの岩手山や姫神山の姿も見えず。早池峰山がやっと雲間に頭を出しているだけだった。危なっかしい狭い岩場では、いつものツーショットの証拠写真も撮るわけにいかず、コーヒの乾杯もしないで早々に退散した。
「下山道」の標識を探してあちこちの踏跡に入り込んだが、満開のヤマツツジを堪能できたが、ついに「下山道」を見つけることができず登ってきた「上り道」を下った。
(早池峰山)
(ヤマツツジ)

「下り道」の標識のところで「下り道」の探索に分岐に入った。踏跡は分岐の先ですぐに二股にわかれ、テープのある兜岩を巻く道を半周してみたが登り口は見つからなかった。分岐に引き返して兜岩に直登するような踏跡に入ると岩場の急登になり、登りついたところは兜岩の崖下で、登る時に和子が偵察した岩棚のすぐ下だった。見上げる兜岩の絶壁にも足跡が付いていたが、よくもこんなところに取り付く人がいるものだ。
(兜岩の裏側)
(下山道)

下りは「かぶと広場」から見晴山方向に向きを変え、山小屋の先で見晴山を巻く道を下った。こちらから登ってくる人にも出合ったが、草原コースよりも花数は少なかった。キンポウゲやオダマキに混じって、先日笠ヶ森で出合った名前の分からないランにまた出合った。帰宅後再調査したら「コケイラン」又の名を「ササエビネ」という花だった。
(山小屋)
(コケイラン)

ウオーキングセンタに着くと、数台の車でやってきた団体さんが車を停める場所で苦労していた。今日は月曜日で事務所は休館日かもしれない。広い駐車場の入口は通行止めのままだった。早々に駐車場所を譲って次に向かった。


(2/4 姫神山 )
かって岩手山に登った時に眺めたきれいな円錐型の山容が気に入って一度登りたいと思っていた。標高差は一本杉登山口から600mあるが2時間ほどで登れるらしい。

一本杉駐車場 11:45 ---- 12:00 一本杉 ---- 12:40 八合目 ---- 13:20 姫神山 13:50 ---- 14:45 こわ坂登山口 ---- 15:25 一本杉駐車場 15:55 = 16:15 ユートランド姫神(入浴・夕食) 18:15 = 18:20 道の駅西根(車中泊)
(姫神山登山コース)
(姫神山登山コース高低差)

道の駅区界高原まで出てからレストランで昼食をとり、R106からR4に出て北上し、渋民の啄木記念館の先で姫神山登山口に向かって右折した。登り坂の車道をどんどん走ると右上に第一駐車場があったががらんとしている。もう少し走らせるとその上に第二駐車場があり、大型バスを含めて10台ばかりの車が停まっていた。
駐車場の正面に綺麗な山容の姫神山が聳えていた。高度差600m、朝の兜明神岳の2倍以上ある。気を引き締める。
(一本杉駐車場からの姫神山)

トイレの中に登山届用紙がおいてあり、登山届を書いてその脇の草原の中の登山道を歩く。一本杉登山口の標識が草原の先の右側にあった。
登山口からは樹林帯になり、少し行ったところで林道が横切ると大きな杉の木が多い林になる。全国の植林の苗木の親になる「精英樹展示木」の説明板があり、ここにも2本の精英樹指定の杉が立っていた。高木と笹が茂った雰囲気の良い中を登った。
(登山口)
(杉の遊歩道)

右脇に水場があったが「この水は飲んではいけません」の注意書きがあった。その上に一回り大きな一本の杉の木があり、これを持って一本杉登山口というらしい。
一本杉を過ぎると道は急になり、「ざんげ坂・頂上まで1500m」の看板が立っていた。特に懺悔しなければならないことはないが、丸太の階段道がどこまでも続いて苦しい。一頑張りして尾根に上がると道はやや緩やかになって「五合目・頂上まで1360m」の看板がある。続いて六合目、七合目と続くが登り一辺倒の登山道は疲れる。もう下ってくる人との出合いが多くなり、よたよた登っている老夫婦を見て「頑張って」と声をかけてくれる。ヤグルマソウやマイヅルソウに慰めながら頑張る。
(一本杉)
(ざんげ坂)

新緑の鬱蒼とした登山道を登ると八合目の看板があり、道が左に大きく曲がる。今までの黒土や木の根の登山道から、石や岩がごろごろした登山道に変わる。坂も益々にきつくなってきて、石や岩を乗り越えて歩くのに疲れる。
山頂に近付くと岩も大きくなり、面白い形の岩にも慰められる。高木もなくなり、急な登山道を岩の積み重なりを乗越えながら登ると山頂の一角に出た。
(岩の登山道)
(怪獣の口が重なる)

山頂から丁度下山準備を始めていた団体ツアー一行の賑やかな声が聞こえていた。山頂は広く、団体さんがいなくなるとゆっくりできる。岩だらけの山頂にはアズマギクがあちこちに咲いていた。一等三角点の標柱はあるが、四角の標石が見当たらない。山頂標柱の前で証拠写真を撮った。
岩のゴロゴロした山頂からは360°の大パノラマ、生憎の曇り空とガスだが、早池峰山がすっきりと見えていた。岩手山が相変わらず頭を隠しているのを見て、岩手山と早池峰山を含めた三角関係の伝説をどこかで聞いたのを思い出す。二つの山が晴れると残りの一座は必ず曇るという話だ。今日は岩手山が焼餅を焼いているらしい。
(山頂の岩越に兜明神岳・早池峰山)
(姫神山山頂)

岩手山の左には雪渓を残した秋田駒や和賀岳が見え、右には八幡平、明日登る予定の七時雨山の相似峰も見えていた。そのずっと右には安家森も見えているはずだが、どの峰だか特定できなかった。
(大展望)

下山は団体ツアーが下っていった「こわ坂コース」を歩いた。下山後舗装された車道を1.6km歩くが、距離は「一本杉コース」と余り変わらない。一本杉コースとは違って、山頂からすぐに樹林帯の中に入っていく。岩の道ではなくて黒土の道だ。
ツアーのリーダが「滑りやすい道だから注意」と一行に言っていたが、斜度も急でぬかるんだところは滑り落ちそうなコースだった。所々にロープが張ってあり、これに掴まりながらゆっくりと足を運んだ。麓に近付くと登山道も平坦になてきた。
(下りはこわ坂コースを下る)
(滑りやすいドロンコ急坂)

こわ坂登山口の車道まで下ると、また賑やかな声が聞こえてきた。ツアーの団体さんが一本杉登山口の駐車場で見た大型バスに乗り込んで出発するところだった。30分早く下り始めたわけだが、20人もの団体がドロンコ道を下るのだから無理もない。
車道でバスに追い越されるのは癪だったが、車道の脇には山菜の恵みが一杯あって、こちらにはこれを収穫しながら歩く余得があった。
(こわ坂登山口)
(1.5kmの車道歩き)

一本杉駐車場に戻ると残っている車はもう一台もなかった。がらんとした駐車場の大きな近辺案内図を眺めると、30分のところにユートランド姫神という日帰り温泉施設があった。R282近くまで走ってユートランドで汗を流し、リーゾナブルなお値段の夕食を腹いっぱい頂いた。外に出ると岩手山が夕焼けの雲から頭を出していた。今回の山行で最初で最後に見る岩手山だった。
R282を北上するとすぐに道の駅西根があり、ここで車中泊することにした。数台の車が車中泊していたが、静かな夜だった。
(夕焼けの岩手山)


(3/4 七時雨山 )
七時雨山(ななしぐれやま)という山名にロマンチックな響きを感じて、一度登ってみたいと思っていた。山名の由来は、一日のうちに七回も雨が降ったりやんだりする天候の不安定な山だということらしい。一般的には北側の七時雨山荘から登ることが多いらしいが、展望が良いという南側の七時雨牧野から登ることにした。

道の駅西根 5:35 = 6:20 七時雨牧野登山口 (朝食) 7:05---- 7:20 賽の神 ---- 7:55 展望台---- 8:20 七時雨南峰 8:25 ---- 8:40 七時雨北峰 9:00 ----9:15 七時雨南峰 ---- 9:30 展望台 ---- 9:50 車之走峠 10:00 ---- 10:25 七時雨牧野登山口 10:30 = 安家森へ
(七時雨山登山コース)
(七時雨山登山コース高低差)

道の駅で目覚めるとあたりはどんよりと曇り空、ままよと起きだして北に向かって発進した。ナビには牧野の中の林道が表示されないので、県道17から県道227に入ってやみくもに北進すると、七時雨鉱泉の手前で左側にある分岐に『七時雨山登山口』の標識を見つけた。1車線の細い道路を進むと牧場内の道に入り、さらに心細い道になった。対向車が来ないことを祈りながら走ると分岐があり、また「七時雨登山口」の標識があった。途中から広い舗装道になり気持ちよく進むとダートな道になり、その先も標識を頼りに走ると番小屋があってその手前のゲートが閉まっていた。愕然として良く見ると「牛馬の放牧中のためゲートは必ず閉めて通行願います・西根町」の注意書きがしてあった。
ほっとしてゲートを開いて通過すると次にも同じゲートがあり、これを通過した先の3番目のゲートには「関係者以外、車両通行禁止」の立札があり、その手前が駐車場になっていた。ここに駐車して朝食をとっていると、土地の人の車が入ってきた。登山道を尋ねるとゲート右の踏跡を行くとすぐに登山道に合流するよ。ゲートを通過して林道を行くとバラ線があったりして歩きにくい」と教えてもらえた。
踏跡に入ると「マンダ並木」のところで右から来る登山道と合流した。2番目のゲートあたりから入るのが、その昔、盛岡と秋田県鹿角市を結ぶ鹿角街道だったという正規の登山道らしかった。
(牧場近くで3連続ゲート)
(登山口はマンダ並木)

マンダ(シナノキ)の巨木があったり、タニウツギ、バイカウツギ、ズダヤクシュ、ミヤマオダマキ、ササギンランなど花の多い道を歩くと「賽の神群」の立札があり、その先に分岐があって、右向きに「七時雨山頂(南峰)1270m」の立札があり、直進が旧鹿角街道で「車之走峠」に通じらしい。
山頂に向かって歩くとなだらかな道が続き、まわりにノリウツギやセンニンソウなどの花のほかにワラビも生えていて気になった。分岐から5分歩くと「新日本百名山・七時雨山へようこそ」の大きな看板が立っていた。それまで七時雨山が新日本百名山になっていることを知らなかった。思い立って出発するまでが忙しすぎた。
(タニウツギの道)
(新日本百名山)

さらに10分歩くと中間点の道標があり登りが急になってきた。ブナやダケカンバの森の中を登っていく気持ちの良い登山道だった。
急登を頑張ると「山頂まで270m」のところで南側が開けた「展望台」があり、眼下に緑の七時雨牧野や一方井ダムが見渡せた。一面に広がる雲海は美しかったが、天気が良ければ、八幡平、岩手山、姫神山などの雄大な展望が開けているのだろうから、気持ちの良い登山道と合わせて、岩崎さんが百名山に選んだのもうなずける。
(ダケカンバとブナの森)
(展望台から牧野を見渡す)

展望台から急登が続き、ヤマツツジを愛でながら頑張っていると、足元に思いがけずハクサンチドリが咲いていた。こんなところでこの花に出会えるとは思ってもいなかったので嬉しくなった。
(ヤマツツジと雲海)
(ハクサンチドリも)

山頂に登ればもしかしたら北側の展望が開けるかと期待して頑張ったが、300m先の北峰が見えるだけだった。厄除け祈願の宝剣がおかれた石の祠がある山頂で証拠写真を撮って北峰に向かった。
(最高点・南峰山頂)
(北峰を見る)

60mほど下ってから登り返した北峰には一等三角点があった。こちらの標高は1060m、南峰の標高は1063mとあったから、南峰の方がわずかに高い。それでもこちらの山頂標には「七時雨山」とあり、南峰には「七時雨山(南峰)」と但し書きの付いた山頂標が立っていた。
山頂標と一等三角点の前で証拠写真を撮ってから、綺麗な雲海を眺めながらしばし休憩して下山にかかった。
(一等三角点峰・北峰)
(3m高い南峰を見る)

下山は分岐点まで下り、車走峠に曲がった。峠には「車の走り峠」の標柱のほかに「旧鹿角街道」とか「大滝まで4.0km」の道標があった。
峠は牧場に接しており、入口にゲートがあった。「東北百名山」の地図を見ると牧場に入っていくと林道に入れそうだ。ゲート脇のバラ線の隙間をくぐって牧場を歩くと、向かいに馬がたむろしていた。近付くと拙かろうと牧柵脇を歩いて行くと牧柵の隙間から林の中に踏跡が伸びていたのでこれに逃げた。踏跡を辿るとすぐに「賽の神群」の標柱の所に出て、思惑の林道ルートは歩けなかったが、無事駐車場に戻ることができた。
(車之走峠に寄り道)
(牧場内に侵入)

車に乗って往路を引き返すと、路側の所々に車が停まっていた。土地の人たちが牧場の中でワラビを採っている姿が見え、車座になって歓談している仲間もあった。時間があれば我家も寄り道したいところだが、ワラビは次の安家森にもあるだろうと期待して通過した。
途中の車中からは、牧場の中に朝には見かけなかった沢山の牛馬が草を食んでいるのが見え、雲に隠れていた七時雨の双耳峰が綺麗に見えていた。
(帰途の放牧場)
(七時雨山を振り返る)




(4/4 安家森 )
安家森(標高1,239.1m)は北上山地の北部、太平洋に注ぐ安家川の源流域・袖山高原にあり、安家森の山名はアイヌ語の「ワッカ」(清流)からきていると言われている。標高は高いが登山口の袖山高原が1160mもあるので標高差はわずかだ。山頂からは太平洋や早池峰山、岩手山も展望できるらしい。

七時雨牧野登山口 10:30 = 11:20 道の駅くずまき高原(昼食) 12:10 = 12:50 安家森登山口 13:00 ---- 13:35 安家森 13:50 ---- 14:45 安家森登山口 15:20 = 16:15 九戸IC = 19:30 国見SA 21:15 = 23:00 湯ノ岳PA 23:25 = 0:10 日立南IC = 0:20 日立自宅
(安家森登山コース)
(安家森登山コース高低差)

林道から県道227に出て、県道17、R4からR281に入って西走したが、この国道はカーブがやたらに多い。大坊峠を越えた先に道の駅葛巻があり、ここのレストランで昼食をとった。
ゆっくり休憩してから更に西に向かい、葛巻の町に入って久慈市方向に向かい、4kmほど先で「袖山高原」の看板を見て右折した。曲がりくねった狭い舗装道を走ってどんどん高度を上げると、行く手のガスの中に3台の風車が回っていた。左にレストハウスを見てさらに進むと右手に舗装された広い駐車場があった。ここまで来てから風車の写真を撮ろうと楽しみにしていたのだが、ガスが一段と濃くなってきて何も見えない。茨城近くの山ならこの状態で山登りなど見送るところだが、はるばる岩手まで来たので未練が残る。トイレの手前に土地の人らしき車があったので、安家森登山ルートについて聞いてみた。北海道からの出稼ぎのご夫婦で山についてはご存じなかったが、「このあたりでは太平洋の湿気が上がってきて良くこんな濃霧になることがある。風向きが変わるとすっと消えることもある」と教えてくれた。
駐車場の道路向かいの登山口に「安家森1.3km、遠別岳3km、平庭岳7.7km」の看板があった。
(濃霧の袖山高原駐車場)
(登山口)

手入れの良い登山道の脇にはスミレやニリンソウ、ズダヤクシュなど花が多かったが、クリンソウが咲いていたのには驚いた。
(ニリンソウ)
(ズダヤクシュ)

花を愛でながら登山道を進むと牧場に突き当たり「遠別岳分岐200m」の標識があり、すぐ先にパイプで作った牛馬は通行できないゲートがあった。
ゲートを通って濃いガスの中、牧場の中の踏跡を辿った。周りは何も見えないが、足元にアズマギクやキンポウゲが咲いているのが唯一の慰めだった。
(ゲートを通過)
(霧の草原)

草原を進むと突然岩くれの原になった。草原でははっきりしていた踏跡が怪しくなってきた。
慎重に方向を定めながら進むとガスの中に牧場のバラ線柵が現れ、一箇所色の変わった棒が立っていた。ここが出入りのゲートで、電線で縛ってある棒を外して通過した。
(瓦礫の原になる)
(柵を開いて通過)

柵の先にケルンが積んであり、これを過ぎると笹の多い樹林帯になり、「安家森」の道標があった。登山口以降はじめて見る道標だった。
少し登ると一等三角点のある安家森の山頂だった。相変わらずガスは濃いままで、すぐ先に見えるはずの遠別岳も見えなかった。お八つを食べながらしばらく様子を見たが、好転の兆しはなく証拠写真だけ撮って下山にかかった。
(道標あり)
(一等三角点・安家森山頂)

アズマギクやレンゲツツジ、ベニバナイチヤクソウを愛でながら牧場に戻った。
(アズマギク)
(レンゲツツジ)

途中で表示の消えた道標があり、もしかして遠別岳への別れかと想像してその方向に向かってみた。少し方向を誤ったようで高度を下げるので向きを補正したが、この濃霧で知らない山に登っても意味無と思いなおして往路に戻った。
往路に戻ったところで驚いた。ガスの中から沢山の牛さんたちがこちらを向いている。人懐かしそうに近寄ってくる。こちらが呼んだわけではないので、遠回りして逃げるようにゲートに向かった。
濃霧の中で訳のわからない山行だったので、帰宅後netで安家森の山行記を呼び出してみると、天気のいい時には広い牧場の上すぐに安家森と遠別岳が見えており、道標など必要がない楽しいハイキングコースのようだった。
(遠別岳へ)
(牛さんが近寄ってくる!)

帰りはナビの指定に従ってR340を北上して九戸ICから高速に乗り、国見SAで夕食をとって仮眠し、湯ノ岳PAで休憩して日立南ICを0時10分に降り、無事我家に戻ることができた。長い長い600kmのドライブでした。





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