W82.花の名山・白山

1.動 機
(ハクサンフウロ)

白山は、富士山や立山とともに日本三名山といわれ、高山植物の宝庫だといわれている。学生時代に一度登ったことがあるのに花の記憶が全くないので、改めて登ってハクサンの名の付く花を現地で見てみたいと思っていたが、我家から遠くてなかなか果たせないでいた。高速料金が1000円で済むというのでその気になり、近くの荒島岳と抱き合わせで登る予定で出かけた。花の盛りは少し過ぎていたが、たくさんの花々に出会うことができ、好天気にも恵まれて、美しい日の入り、日の出の両方を拝むこともできた。次の日が迷走台風の影響で雷雨の予報になり、荒島岳には登らないで帰ってきた。

2.データ
a)山域:白山(2702m)
b)登山日:2009/08/11(火)晴時々曇、12(水)晴後曇
c)コースタイム:
9日:日立自宅 9:25 日立南IC 阿賀野川SA(昼食)= 金沢西IC = 17:30 道の駅瀬女(車中泊)
10日:道の駅瀬女(朝食) 9:30 = 11:55 市ノ瀬ビジタセンタ(車中泊)
11日:市ノ瀬ビジタセンタ 6:00 =(シャトルバス)= 6:15 別当出合 6:25 ---- 甚之助避難小屋 ---- 黒ボコ岩 ---- 室堂センタ ---- 御前峰 ---- コザクラ園地 ---- 御池巡り ---- 室堂センタ(泊)
12日:室堂センタ 3:40 ---- 御前峰(日の出) ---- 室堂センタ (朝食) 7:00 ---- 殿ヶ池避難小屋 ---- 禅定道分岐 ---- 10:50 別当出合 =(シャトルバス)= 市ノ瀬ビジタセンタ = 14:25 大野市旅館(泊)
13日: 大野市旅館 8:10 = 荒島岳登山口 = 9:30 白鳥IC = 有磯海SA(昼食)= 小野PA = 日立南IC = 17:40 日立自宅
d)同行者:和子
e)地形図:1/25000 「白山」

3.山行記録
(1日目:アクセス)
(道の駅瀬女)

日立自宅 9:25 9:40 日立南IC 12:30 阿賀野川SA(昼食)13:05 = 14:50 蓮台寺PA 15:10=16:20小矢部川SA16:30 = 16:45 金沢西IC = 17:30 道の駅瀬女(車中泊)

ETC割引を最大限活用するために、日立南ICから常磐道に乗って北に向かい、磐越道から北陸道と繋いで金沢西ICまで高速を走った。582km、一日仕事のドライブだった。高速を降りてからさらにR157を南下して、白山スーパ林道に向かうR360沿いにある道の駅瀬女まで35km走って車中泊した。
夜間にラジオの天気予報を聞くと、低気圧が台風9号に成長して北進中、明日は雷雨のおそれありという。暗然とした気持ちで眠った。

(2日目:停滞)
道の駅瀬女(朝食) 9:30 = 10:00 ハーブガーデン10:30 = 10:45 手取川ダム11:15 = 11:55 市ノ瀬ビジタセンタ(車中泊)

朝起きてからも天気予報を確認したが、まだ雷雨注意報が流れており、白山登山を一日延期することに決めて、今夜の室堂センタと明日の大野市の宿屋に連絡して予約を一日ずつ延期してもらった。
近くには手取川渓谷や白山一里野公園など散歩する場所もあったが、歩くことに気乗りがせず、近くのハーブ園を散策してからR157に戻って巨大な手取川ダムを見物し、白峰温泉から県道33号に入った。道すがら「天狗壁」の絶壁や巨大な流石「百万貫の岩」を眺めながら市ノ瀬ビジタセンタの駐車場に入った。明日までこれから先は一般車進入禁止で、シャトルバスで別当出合登山口まで運ばれる。駐車場には多くの車が停まっており、これらの車の人達は今朝のシャトルバスで入山した人たちと思われた。
ビジタセンタ前の旅館で昼食を取り、温泉に入って登山用の衣装に着替えをした。あとはビジタセンタの白山に関するビデオをゆっくりと勉強してから駐車場で車中泊した。夜間も警備員が見回っており、夜間照明もあって助かった。夜中起き出して空を見上げると満点の星空だった。
(手取川ダム)

(百万貫岩)
(市ノ瀬ビジタセンタ)


(3日目:白山登頂)

(1日目コースの高低差)


市ノ瀬ビジタセンタ6:00=(シャトルバス)=6:15別当出合6:25---- 7:10 中飯場 7:15 ---- 7:55 別当覗 8:00 ---- 8:35 甚之助避難小屋 8:55 ---- 9:15 南竜分岐 ---- 10:00 延命水 ---- 10:10 黒ボコ岩(昼食)10:35 ---- 11:00 室堂センタ 11:25 ---- 11:40 青石 ---- 11:45 高天ヶ原 ---- 12:05 御前峰 12:20 ---- 13:00 大汝分岐 ---- 13:55 コザクラ園地 ---- 15:10 大汝分岐 ---- 15:25 千蛇ヶ池分岐 ---- 御池巡り ---- 16:30 室堂センタ(泊)

夜明け前に起き出して身支度を整え、朝食をとってから6時発のシャトルバスに乗った。(バスの始発は5時で20分間隔で運転されているが、それほど急ぐこともなかろうと1時間遅らせた)バスは狭いくねくねとした林道を走りながら高度を上げていき、市ノ瀬の820mから標高1,260mの別当出合まで440m高度を稼いでくれた。この道を自分で運転するのはずいぶんと気を遣いそうで、一般車通行止めの日で幸いだったような気がした。
15分ほどで登山口に到着し、トイレなど使って歩き始めた。ガイドブックでお奨めの通りに、右の砂防新道から登って、左の観光新道に下ってくる予定だ。登り口の吊橋は大きく揺れる小さな吊橋を予想していたが、実物は長さ114m幅1.2mの頑丈な大吊橋だった。説明板によると、古い吊橋は5年前の土石流で破壊され、一段高い位置に2倍以上の長さで今の形に作り直されたとあった。
(シャトルバスで出発)
(吊橋を渡って砂防新道へ)

登山道は誰でも登れるように見事に整備されている。大きな石を階段状に並べてあるところなど、どうやってこんなに大きな石をこんなにたくさん運んだのだろうかと、整備の苦労が思いやられた。適当な間隔で、中飯場、別当覗、甚之助避難小屋、南竜分岐、黒ボコ岩と休憩所が用意されていた。同じシャトルバスに乗ってきた人たちと追いつ追われつ、ゆっくりと歩いていった。
道沿いには歩き始めから色々な花が咲いていた。下の方の中飯場から別当覗、甚之助避難小屋あたりのでは、ソバナ、ノリウツギ、オオレイジンソウ、カニコウモリ、センジュガンビ、トリアシショウマ、ノコンギク、ツルリンドウ、ホツツジなど野の花が咲いていた。
上の方の甚之助避難小屋から南竜分岐、黒ボコ岩のあたりでは、ところどころお花畑のようなところもあり、シラネニンジン、ハクサンボウフウ、シモツケソウ、ダイモンジソウ、マツムシソウ、クルマユリ、トウウチソウ、サラシナショウマ、ニッコウキスゲ、オタカラコウ、ヨツバシオガマ、ハクサントリカブト、ハクサンフウロなど高山の花々が見られるようになった。
(手入れの良い砂防新道)
(上の方ではお花畑)

最初の休憩所の中飯場までは傾斜も緩くザレた道だが、ここを過ぎると傾斜が急になって登山道らしくなり、石や丸太で補強された道を登ることになった。右下を見下ろすと柳谷川に何段もの巨大な砂防ダムが建設されており、その上流には数段の滝が流れ落ちていた。
別当覗に到着すると、左の別当谷側の崖崩れが進行していて、その先端には立ち入り禁止と注意書きされていた。どっちの谷も崩壊が進んでいるようだ。別当谷の向こうに山の稜線が見え、ここを観光新道が通っていて明日の下山時に歩くのだと思いながら見上げた。
(谷間は大規模な砂防工事中)
(観光新道の尾根道)

甚之助避難小屋前では多くの人が休んでいた。私達もトイレを使い、ペットボトルの水を冷たい水に入れ替えて一休みした。
甚ノ助避難小屋から急な石段を頑張って南竜道分岐に着くと、周りはお花畑で、シモツケソウやサラシナショウマが綺麗だった。上から下ってきた人たちが休んでいて、高齢の人が「黒ボコ岩ルートはきついよ。エコーラインがなだらかでお奨めだよ」と声をかけてくれた。
お礼を言いながら予定通りの黒ボコ岩コースに向かった。道は山腹を巻き、沢をいくつか渡ると、十二曲りの急な登りになった。ここで反省しても遅い。周りの花に慰めながら頑張って登っていくと延命水という水場があった。備付のコップで湧き水を飲んでみると冷たくて美味しかった。このあたりで、20分後のシャトルバスに乗ってきた元気な単独行の人たちに追い越されるようになった。
延命水で一息入れて元気を付けてもう一頑張り、ようやく黒ボコ岩に到着した。なかなか迫力がある大岩で、これを見ると上に上がってみたくなる。バンザイをして記念写真を撮っていると、回りから拍手が起こり、次々とバンザイの写真撮影が始まった。
黒ボコ岩は砂防新道と観光新道の分岐点になっていて、ここで昼食のパンをかじっていると、観光新道から登ってくる人も結構あった。きつい登りがあるらしいが、花が多い道だと聞いている。明日の下りが楽しみだ。
(延命水で元気をつける)
(黒ボコ岩)

黒ボコ岩前を回りこんで弥陀ヶ原に出ると風景は一変、平原の中に水平な木道が伸びており、その向うに御前峰の雄大な姿があった。これまでの苦労を忘れさせるすばらしい景色だった。
木道を歩いて行くと、足元にハクサンフウロ、イワギキョウ、タテヤマリンドウが見られ、平原のあちこちにコバイケイソウの見事な大群落が見られた。今年は数年に一度しか咲かないコバイケイソウの当たり年だと聞いていた。
エコーラインへの分岐点を過ぎると最後の五葉坂の登りになり、100m登ってやっと室堂センタに到着した。室堂センターには数棟の宿泊棟があり、近年改築が進められているようで、受付のビジタセンタも真新しい感じだった。受付の人にお目当てのクロユリの開花状況を聞くと「弥陀ヶ原はお仕舞い、御池巡りやお花松原には咲いていると聞いている」とのこと。当初の予定は1日目は近くを散歩するだけだったが、今日の天気が余りにいいので、今日のうちに御前峰に登ってお花松原まで足を延ばしてみようということになった。受付は12時からなのでチェックインは後回しにして、ザックを置いてナップザックに雨具と水、お八つを入れて歩き始めた。
(弥陀ヶ原)
(室堂センタ)

センタ後ろの神社脇を通って御前峰への登山道に入った。毎朝暗いうちに大勢の登山者がご来光を拝みに登る道なので道は綺麗に整備されている。
途中には、青石という有難そうな石があったり、高天ガ原の標柱が立っていた。振り返ると弥陀ヶ原のなかを2本の木道がうねっているのが良く見えた。山頂を見上げると奥宮の社が見えていたが、ここから山頂まで疲れた足にはなかなか長かった。
(白山比盗_社)
(御前峰登山道)

登りきると奥宮があり、その後ろの高みに立派な山名方位盤があった。残念なことに北アルプスが見えるはずの向かいの東方向にはガスがかかっていて、何も見えなかった。北に目をやると、池を散りばめた火口跡を挟んで御前峰と剣ヶ峰が対峙していた。真ん中に見えるはずの大汝峰はガスの中だった。
(御前峰山頂・紺屋ヶ池・剣ヶ峰)

山頂標のある御前峰山頂で記念写真を撮って、お花松原に向かうべく北に向かった。この方向はお池巡りコースの道になっていて、ガレバにも道ができていた。ジグザグの急なガレバを注意して下る。
(御前峰山頂)
(大汝峰分岐へ)

始めの紺屋ヶ池まで下ると道がなだらかになり、イワギキョウ・コイワカガミ・チングルマ・アオノツガザクラなどが咲き乱れる楽しい道になった。お花を楽しみながら御前峰の裾を巻いて油ヶ池、翠ヶ池を巡り、血の池の手前から大汝峰登山口の分岐にショートカットした。
(翠ヶ池)
(お花畑)

大汝峰の登山口からは中宮温泉への道が下っており、お花松原はこの途中にあるはずだ。岩っぽい斜面の中、雪渓の脇の薄い踏跡を辿る。どんどん下るので、後で登り返すのが大変そうだと心配になってきた。
(大汝峰分岐を中宮温泉へ)
(急坂を下る)

大きな雪渓脇を過ぎ、次の小さな雪渓の下まで来ると、思いがけずハクサンコザクラの花が咲いていた。コザクラの大きな群落の脇にはお目当てのクロユリの群落もあり、お手軽夫婦は「お花松原まで歩かなくても、ここで十分満足したね」ということになる。
100mほど先の見通しのいいところまで歩いてみると、お花松原は一つ先の尾根の向うのようだった。大汝山分岐まで高度差300m近くを登り返すことを考えると、あと1kmも先まで歩くのは無理、もう限界だとしてここで引き返すことにした。
(ハクサンコザクラの群生)

(ハクサンコザクラのアップ)
(石川県の花・クロユリ)

帰りの登り道は 下りで見落としてきたミヤマキンバイやキヌガサソウ、ツガザクラなど可愛い花々を愛でながらゆっくりと登り返した。この頃からまた視界が晴れてきて、大汝峰の岩峰を見上げながら火口原まで登り、登りつめたところからは、白山の火口原の上に荒々しい剣ヶ峰と御前峰が聳えていた。
(火口原と剣ヶ峰・御前峰)

大汝分岐まで引き返し、広い遊歩道を千蛇ヶ池分岐まで歩くと、小さな子供連れの若夫婦が地図を広げながらお休み中だった。室堂への道を尋ねると「右がお池巡りのコースで私達も歩いて来た。これから室堂に戻るのに御前峰を越えるか真ん中の近道にするか迷っている。御前峰の道はどんな具合?」と逆質問。「岩を越えるところもあって、この時間からでは小さなお子さんにはきついでしょう」と答えると、へたり込んでいた子供達は「近道、近道」と嬉しそうだった。
近道は少し登るようなので、お池巡りコースを歩くことにした。千蛇ヶ池は雪渓の池で、雪渓の上で二人の男性が測量中だった。その反対側に、五色池と百姓池という小さな池があった。
ここから先にも池が点在するのかと思っていたが、室堂までもう池を見ることはなかった。少し先でガラガラの急坂を下るとお花畑になり、クロユリ、イワカガミ、ヨツバシオガマなどたくさん咲いており、特にコバイケイソウの群落が見事だった。弥陀ヶ原よりも花をすぐ近くに見ることができたので、一層綺麗に見えた。
途中には「ハイマツ林」の看板がある一面ハイマツで覆われたところがあり、その下にゴゼンタチバナがひっそりと咲いていた。室堂に近付くとクロユリがいっぱい咲いていた。
(五色池と大汝峰)
(ハイマツの先に室堂センタ)

(コバイケイソウの当たり年)

室堂センターに戻って宿泊手続きをとる。宿泊棟のこざくら荘に案内されて説明を受けた。板間を挟んで2段のベットになっていて、細長い敷布団が5枚づつ、合計20枚が敷いてある。宿泊棟は3棟、各棟11室あるので合計660名がゆっくりと寝られる。ほかに自炊の棟もあるので定員750名ということらしい。乾燥室や女性用の着替室もあり、トイレは簡易水洗で快適だ。チェックインが遅かったので、夕食は5時40分からの最終番だったが、なかなか美味しい食事でご飯と味噌汁はお代わり自由だった。
夕食後、室堂前の展望所に出てみた。始め東側の展望所に出てみると、雲海の上に乗鞍岳と御岳山の2つの大きな山が頭を出していた。周りにハクサンシャクナゲの咲き残りが見つかり、これでハクサンの名前が付いた花をいくつ見つけたことだろう。
次は日の入りを見るべく西側の展望所に席を移した。はじめは一面の雲海だったが、やがて南に別山が頭を現わしてきた。格好の良い山だった。別山や夕日を眺めながら、多くの人が西の展望所で夕日を沈むのを待っていた。ビジターセンタの自然解説員も出てきて、白山の山の歴史、日の出の話など面白く解説してくれた。明日の日の出の時刻は5時7分で、鷲羽岳の上に出るだろうという。
(別山)
(日没を待つ)

午後6時40分ごろから空が赤く萌え始め、辺りを真っ赤に染めた夕日が雲海に消えてゆく幻想的な変化が始まった。夕焼けは明日の晴れのシグナルだと言う。明日の日の出が楽しみになった。
(日本海へ沈む夕日)

感動的な日没に満足して部屋に戻り、昨夜は南竜山荘に泊まったと言う隣でお休みのご夫婦のお話を伺う。「日の出1時間前の太鼓を聞いてから登ったのでは、行列に巻き込まれて日の出に間に合わないかもしれない。2時半には起き出して早めに登り始める積りだ」とのこと。我家も3時には起きようかと話を決めて眠りに着いた。外に出て満点の星空を楽しんでいる人も多かった。

(4日目:ご来光を仰いで下山)
(1日目コースの高低差)

室堂センタ 3:40 ---- 4:30 御前峰(ご来光) 5:15 ---- 5:40 室堂センタ (朝食) 7:00 ---- 7:20 黒ボコ岩 ---- 7:35 蛇塚 ---- 8:00 馬の立髪 ---- 8:30 殿ヶ池避難小屋 8:40 ---- 9:20 仙人窟 ---- 9:45 禅定道分岐 ---- 10:30 水飲場 10:35 ---- 10:50 別当出合 11:00 =(シャトルバス)= 11:15 市ノ瀬ビジタセンタ 11:35 = 12:25 勝山市モール街(昼食)13:05 = 13:25 大野市役所 14:00 = 14:25 大野市旅館(泊)

深夜にトイレに起き出して外に出てみると、空は満天の星空だった。安心してまた眠りに着いた。

隣のご夫婦が出て行ってからゆっくりと起き出して準備をし、ヘッドランプを付けて3時40分に昨日登った神社脇の道を登り始めた。風も吹いてきて涼しいので、昨日の登りよりは楽である。後ろを振り向くと、室堂センタからヘッドランプの明かりが点々と繋がっていた。その遥か向うに街の明かりが見えていたが、どこの町だろう。4時になってしばらく耳をすましてみたが、風に飛ばされるのだろうか神社の太鼓の音は聞こえてこなかった。
山頂に近付くと、まだ日の出の40分前だが東の空が赤く染まりはじめているのが見えてきた。山頂に向けて足を速めた。
御前峰の頂上に着くと、山頂の向うの空が真っ赤に燃えていて、北アルプスの峰々がシルエットになってずらりと並んでいた。これだけくっきりとした北アルプスを見るのは、はじめてのような気がする。風が強くて寒いので、カッパを着込んで岩陰に座り込んで山座同定をしながら日の出を待った。右の方の御岳と乗鞍岳は昨日室堂平からも見えたので簡単だ。その左の尖った山並は槍ヶ岳と穂高連峰。左の方の尖った山は剱岳、その右に立山、凹みの右が先週歩いた越中沢岳と薬師岳だろう。地図を持たなかったが、何とか山の並び順番が頭に入ってきた。
(日の出前の北アルプス稜線)

明るさが増すにつれて人の数はどんどんと増えてきて、夫々に見やすい場所に陣取って今や遅しと日の出を待つ。酒盛りをはじめた賑やかなグループもあった。
澄み渡っていた目の前に、5時15分前ごろから御前峰の左裾からガスが流れて来始めた。ガスはだんだんと濃くなってきて目の前の剣ヶ峰を乗越えて流れ、時折北アルプスを隠すようになった。これで日の出は拝めるのか。
5時丁度、白山比盗_社の神主さんが現れて、岩の上に上がって説明が始まった。下駄履きだった。慣れた口調、良く通る声で、白山登山の歴史や日の出参拝の意義、目の前の北アルプス連山の山名などの話をされた。
(日の出直前にガスが)
(下駄履きの神主さん登場)

5時5分、北アルプスのシルエットの上の一点にポッと明かりが点いた。明かりはどんどんと大きくなり、5時7分、太陽がまん丸になった。薄く張られたガスのカーテン越しのご来光は、一段と神々しい雰囲気があった。
(ガスで幻想的になった日の出)

神主さんの発声で、みんな揃って万歳三唱をした。その後、「日の出の後には、ブロッケン現象が見えるかも」と神主さんに言われて、みんな反対側に回ってしばらく待ったが、日の出側のガスが濃すぎたのかブロッケンは現れなかった。
素晴らしいご来光を拝めた余韻を残しながら室堂センタに戻って、すぐに朝ご飯を頂いた。朝食は時間制限無しでめいめい勝手な時間に食堂に行く。朝もご飯味噌汁はお代わり自由だった。
食後、南アルプスなど遠くの山並みが見えないかと、センタ前の展望所に出て見たが、見通しは利かず、御岳山頂も雲を頂いていた。
(バンザイ三唱)
(御岳山もガスの笠)

黒ボコ岩まで石だらけの五葉坂を下り、弥陀ヶ原の木道を歩いた。黒ボコ岩から始まる観光新道は、登ってきた砂防新道よりも歩く人が少ないのか、歩きにくいほどではないが道幅が少し狭かった。それでもシシウドやシモツケソウ、ハクサンフウロ、シオガマなど色とりどりの花は砂防新道よりもこちらの方が賑やかに思えた。蛇塚、馬の立髪、殿ヶ池避難小屋あたりまでニッコウキスゲ、ハクサンシャジン、コゴメグサ、カワラナデシコ、マツムシソウ、カライトソウなど更に賑やかになった。
(お花畑を下る)
(ハクサンシャジン)

トイレのある殿ヶ池避難小屋で一休みしてからは、道に石の段差が多くなり少し歩きにくくなった。避難小屋までは子供連れのご夫婦と追いつ追われつ賑やかに下ってきたが、小さな子供さんにはきつい下りになったようで、これから先では姿を見ることがなくなった。
痩せ尾根を歩いて行くと大岩の重なりの下を潜る仙人窟があり、道標によるとここが丁度室堂と別当出合の中間点だった。このあたりで小雨がぱらつき始め、ザックカバーをしたがすぐに止んだ。
(途中までは尾根下り)
(仙人窟くぐり)

仙人窟から30分ほど階段道などを下った先に市ノ瀬に直接下る禅定道への分岐があり、この分岐点から別当出合までの下りが大変な急坂だった。石の大きさが歩幅に丁度良い大きさで、大股にならなければならないところはなくて助かったが、なにしろ、いくら下っても終わりがない。曲がりの先は少しなだらかになるかと期待しても、その先もやはり急坂が待っている。この急坂を登ってくる何組もの人たちに出合ったが、みんな息絶え絶えの風情だった。ガイドブックで薦めないだけのことはある。
分岐点からの急坂を1時間近く下ると石を並べた休憩所があった。水飲み場となっているが「ここの水は飲めません」と注意書きしてあった。
ここで一休みしてから別当出合まで残り1km、やや緩やかになった坂道を30分下って別当出合にたどり着いた時には心底ほっとした。自動販売機で買った冷たいコーラの美味かったこと。
(後半は長い長い急坂下り)
(水飲場で一休み)

待っていたシャトルバスに乗って市ノ瀬ビジタセンタまで下り、マイカーに乗り換えて今夜の宿の大野市に向かった。ラジオの天気予報を聞くと、明日は台風8号の影響でまた雷雨になりそうだという。
大野市の手前の勝山市のモール街に立ち寄って昼食を取った。疲れた身体に美味しいエネルギーをいっぱい詰め込んだ。
大野市に入って市役所の観光案内所で色々と資料を貰い、大野城などを紹介されたが、外の気温は34度、とても歩き回る元気が出ない。涼しい市役所の中でしばらく休んでから旅館に向かった。旅館の展望風呂で汗を流し、テレビで天気予報を確認したが、やはり明日は雷雨の恐れありという。標高300mから1500mまで暑い雨の中を無理して登っても、展望がなくて白山も見えないでは、いくら久弥の百名山だと言ってもつまらない。明日は我家に直行と腹を決めて、豪華な夕食を頂いて布団に入った。

(5日目:帰宅)
大野市旅館 8:10 = 8:25 荒島岳登山口 8:30 = 8:50 道の駅九頭竜 9:00 = 9:30 白鳥IC = 10:00 ひるがの高原SA(給油)10:05 = 11:45 有磯海SA(昼食) 12:20 = 12:55 名立谷浜SA 13:20 = 16:10 小野PA 16:20 = 17:30 日立南IC = 17:40 日立自宅

大野市の朝市は朝7時から毎日行われており、街の名物だと言う。朝食後、宿に車を置かせて貰って散歩してきた。小雨が降っていて出店の数は少なくなっているようだったが、野菜や花、工芸品などが並べられていた。安い野菜を買い込んでから、大野城の天守閣を下から眺めながら宿に戻った。
帰途は荒島岳の勝原スキー場の登山口に立ち寄ってみた。広い駐車場には5台の車が停まっており、土浦NOの車もあった。はるばる茨城からやってきたのだから、この程度の雨なら登ってしまうのが普通かなとは思ったが、やはり雷の予報は怖かった。
(大野の朝市)
(荒島岳登山口

ここから大きな九頭竜ダム湖の湖畔を延々と走って白鳥ICから高速に乗った。対面交通になる下り線が大渋滞。10km走るのに30分かかった。満車状態のひるがの高原SAで給油だけしてからは割合順調なペースで走れるようになったが、この東海北陸自動車道は長いトンネルの連続で疲れる。それも最速でワイパーを回しても先が見えないような豪雨にもなって、ゆっくり運転になった。
複線の北陸道に入ると快調に走ることができたが、有磯海SAで昼食を食べてからは眠気との戦いが始まった。名立谷浜SAで濃いコーヒで脳を刺激してから磐越道まで一気に走った。郡山JCTを過ぎると磐越道も混んできた。磐越道が完全複線化されて走りやすくなったので、東北道の渋滞を警戒して空いている常磐道に回る車が多くなったのだろう、猛スピードで走る車も多かった。この車の数だと磐越道唯一の阿武隈高原SAは大混雑だろうと予測して手前の三春PAで休憩したが、阿武隈高原SAを通過するときには入口道路には幹線まで駐車待ちの車の列ができていた。あとは順調に走って日立南ICまで朝から720km、無事到着できた。




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