X63.二王子岳

1.動 機
亀楽会では月例山行が月2回程度行われてきたが、我家の日程となかなか合わず、一月の日立アルプス以来不参加が続いていた。6月の2回目の山行がこの二王子岳で、登りたいと思っていた山だったので久しぶりに参加申し込みした。二王子岳は普通は日帰り登山の山だが、亀楽会は避難小屋に一泊して飲みながら懇談するのを楽しみにするので、今回も山頂の二王子小屋に一泊して、翌日に二王子岳−二本木山と歩いて帰ってくる予定だった。梅雨空の小雨模様の天気だったので、初日は三合目の一王子小屋まで登って泊りになり、翌日二王子岳をピストンするという計画に変更された。楽しみにしていた山頂での飯豊山の展望は濃いガスに遮られて全くなかったが、代わりにゆとりが出来た時間ゆっくりと飲みながら楽しい一夜を明かし、昼間は登山道脇に咲いているいろいろな初夏の花々愛でながら嬉しい山歩きをすることが出来た。

2.データ
a)山域:二王子岳(1420m)
b)登山日:2010/06/19(土)曇一時小雨、20(日)曇
c)コースタイム:
1日目)日立自宅 6:50 = 7:20 日立駅 7:40 = 7:50 日立中央IC = 9:30 磐梯山SA 9:40 = 10:35 安田IC = 11:50 駐車場 12:20 ---- 12:25 二王子神社 ---- 13:25 休み 13:35 ---- 13:45 一王子小屋(泊)
2日目)一王子小屋 5:30 ---- 6:05 独標 6:10 ---- 7:00 油こぼし 7:05 ---- 7:45 二王子山頂 7:55 ---- 7:55 二王子小屋 8:30 ---- 10:25 一王子小屋 10:45 ---- 11:30 二王子神社11:40 ----11:45 駐車場 11:55 = 12:25 二王子温泉 12:55 = 13:30 レストラン 14:00 = 14:45 安田IC = 14:50 阿賀野川SA 15:00 = 16:25 阿武隈高原SA 16:35 = 17:50 日立南IC = 18:00 日立自宅
(二王子岳登山コース)
(二王子岳登山コースの標高差)

d)同行者:亀楽会会員6名(男5、女1)、和子
e)地形図:1/25000 「二王子岳」「上赤谷」

3.山行記録
今回は参加者8名で、2台の車に乗り合わせて出かけた。日立は雨模様だったので、常陸太田在のAsさんの車に我家の庭先まで入っていただいて乗り込み、近くのUeさんを拾って集合場所の日立駅に向かった。リーダから「今日は天気が良くないようなので、今日登るのは下の一王子小屋までにして、明日二王子岳を往復する。」と計画変更が発表された。軟弱な我家が期待していた通りの計画になったので、皆さんにあまり迷惑をかけないで歩けるだろうとホッとした。
7時50分に日立中央ICで高速に乗り、磐梯山SAで休憩し、10時35分に安田ICで高速を降りた。空いているR290を快調に北上して新発田のコンビニで昼食や飲み会の材料を調達して、登山口の二王子神社に向かった。狭い田舎道や山道が続いたが、Asさんも我家と同じくカーナビ活用派、ナビゲータのUkさんも道路地図に首っ引きになる必要もなく、12時前に山奥の駐車場に到着した。
奥の二王子神社前にも駐車場があるらしいが、少し手前の橋を渡ったところにある先客4台が停まっている登山者用の駐車場に車を入れた。ここで昼食をとり、身支度をして歩き始めた。少し雨がチラチラとしてきたので、気温は24℃あって少々蒸し暑いとは思ったが全員雨具を付けた。水場のある一王子小屋までなら、水は500ccペットボトルで十分だろうと、我家から持参した2Lの水は捨てて少し身軽になった。和子は頑張って1.5Lの水を捨てないで持ち上げていた。
5分足らず歩くと二王子神社の前庭に着き、今日の天気の回復を願って神社にお参りした。神社脇には広場があり、テーブル、ベンチや自炊のための洗い場があった。簡易水道の水は「ここの水は沸かして飲むこと」となっていたが、そのすぐ奥の斜面には山からの湧水が流れでている数本のパイプがあり、柄杓も用意されていたので、こっちの水はそのまま飲めるようだ。
(二王子神社手前の駐車場)
(二王子神社キャンプ場)

「登り4時間、下り2時間30分」とある案内板の脇を通って山道に入った。始めは植林帯の中の沢沿いをゆるやかに登る道だったが、沢を渡って歩くうちにいきなり急坂になってきた。雨具の中は熱気でむんむん、外からは濡れなくても中から濡れてくる。
(始めだけゆるやか)
(急登が続く)

大きな神子石の脇をすり抜けて、石が重なったような登山道を登って行くと、やっと休憩になった。雨も止んできたので、雨具を脱ぐとホッとする。
ここからひと踏ん張りすると、「水場へ1分」の立札があり、すぐその上に二階建ての小屋が見えた。三合目標高720mにある今夜泊る予定の一王子小屋である。時刻はまだ14時前、山頂の二王子小屋まで上がれない時間ではないが、ここで水を補給して蒸し暑い中を登るのは大変だ。計画変更でここに泊ることになって本当に良かった。
(神子石)
(一王子小屋)

ザックを小屋に降ろして水場まで下りていくと、2本のパイプから豊富な水が流れ出ていた。この冷たい水で顔を洗い、濡れたタオルで身体を拭くと元気が戻ってきた。水場近くはタニウツギやオオカメノキ、ヤグルマソウ、ツクバネソウ、カニコウモリなどが咲いていたが、ミズバショウの群生はオバケになっており、サンカヨウももう実になっていた。
貸し切りの小屋の中に自分の寝場所を準備して、14時過ぎから定例の酒盛りが始まった。こんなに早くから飲み始めるのは私には始めての経験だが、皆さんは心得たもので、色々と話は弾んでも飲み過ぎになることはないようだ。2時間ほどで打ち切って、めいめいに夕食を作って明るいうちに眠りに着いた。
(一王子の水場)
(今日はじっくり討論)

翌朝は夜明けとともに起きだして朝食を作って食べ、寝袋やマット、食器など重いものは小屋に置いて、日帰り登山の身軽なザックで5時半に歩き始めた。夜明け前に雨音が屋根を叩いていたいたが、出発時にはすっかりやんでいて、今日は雨具を付けなくてもいいのが助かる。それでも気温は朝から20°あり、急坂を登ると汗が出て来る。
いい加減汗をかいて疲れたころに、「五合目」の表示がある独標(定高山994m)に着いて一休みになった。独標は小広くなっており、三角点の脇に残雪の深さを示すm表示が付いたコンクリートの柱が立っていた。
(今日も急登で始まる)
(5合目独標で一休み)

このあたりからサンカヨウの白い花が見られるようになり、コイワカガミがあちこちに咲いていた。ここのイワカガミは白い花が多かった。
木立の中に小さな水たまりがあり、白いモリアオガエルの卵が浮いていた。鴨池というらしい。鴨池の先で雪渓も見られるようになると「6合目」の立札があり、久しぶりに見るシラネアオイが咲いていたり、ウラジロヨウラクやチゴユリ、マイヅルソウ、ショウジョウバカマの群落もあってみんなを喜ばせた。
雪渓を過ぎると急登になり、ロープがぶら下がっている「油ころばし」の急坂になった。これを越えると「7合目」の立札があり、ここで2回目の一休みになった。
(モリアオガエルの鴨池)
(油こぼしの坂)

7合目を過ぎると雪渓が多くなり、雪解けの跡には、カタクリが咲き、ショウジョウバカマも一際新鮮な色で咲いていた。三王子の祠を過ぎると、タムシバがおおきなまっ白な花を付けており、思いがけずヒメサユリのピンクの花が咲いているのを見つけてみんな歓声を上げた。
さらに雪渓を横切って歩いて行くと、「9合目」の看板が付いた丸いドームの気象観測所があり、すぐその先に石組の台座だけが残る「二王子神社奥ノ院」跡があった。
(何度も雪渓を渡る)
(奥ノ院跡)

笹原の道を進むと、右に「二本木山」への分岐があった。お天気が良ければこの山に行くのもいいが、展望のない今日はパスである。
その先に赤いドーム型の二王子小屋があり、その裏が二王子岳の山頂だった。7時30分に登りついた山頂には「二王子岳1420.3m」の真新しい立派な石柱が立っており、その上に「青春の鐘」がぶら下がっていた。青春を思い出しながら思い切りこの鐘を打ちならしたら、びっくりするほど大きな音がして仲間を驚かせてしまった。
飯豊連山の山名版があったが、残念ながら周りは360°まっ白なガスの世界だった。長居は無用なので、全員集合の写真を撮ってから、すぐ下の二王子小屋に入ってコーヒタイムを持った。まだこの時間には山頂まで登っている人はなく、これまた貸し切りの懇親会になった。
(二王子小屋)
(二王子岳山頂)

8時30分に下り始め、一王子小屋まで休みなしに下った。今日は日曜日、登ってくる人が多くて、挨拶が忙しかった。途中、空に青空も見えてきて、雲海に浮かぶ山々が美しく見えていた。「これからゆっくり登れば、飯豊山がバッチリですね」と息を切らせながら登ってくる人達を励ましたが、間もなく空は雲に覆われてきた。
私はOs嬢と二人でみなさんから遅れながら、可愛い花々をもう一度写真に収めながら一王子小屋まで下ると、部屋はもう綺麗に掃除されていた。デポした荷物を回収してパッキングし直し、水場の水を汲み直して出発した。ここからは、登りではパスした一王子神社の石祠に寄道してから下った。
(ヒメサユリ)
(シラネアオイ)
(サンカヨウ)
(コイワカガミ)
(タムシバ)
(ウラジロヨウラク)

二王子神社のキャンプ場の冷たい湧水で喉を潤したら、これも冷たくて美味しい水だった。泥んこになった靴やストックを洗い、二王子神社には、「雨を降らせず、色々な花を見せていただいた」ことへのお礼を言ってから駐車場に戻った。
(キャンプ場の人造小滝)
(二王子神社)

途中で二王子温泉に立ち寄って汗を流した。この温泉は日本庭園もある広い敷地の一角にあるが、敷地の入口に500円を受け取る若者がいるだけで、時々「こんにちは」と挨拶をする入口にいた九官鳥の声が聞こえたが、敷地の中では他に店員らしい人の姿は見えなかった。3つの温泉のある温泉棟に入ると、土地の入浴客が「こっちの部屋には今団体が入っているので、隣の部屋の湯船に入りなさい。女性は入口に使用中の立札を立ててある部屋に入ること」と教えてくれた。脱衣場には脱衣かごは二つしかなく、洗い場は湯船の周りで湯船のお湯を掬って身体を洗う。和子が入浴中の土地のご婦人に聞いた話では「この温泉は石鹸は使用禁止になっている。昔は繁盛した温泉だったが、石鹸が使えなくなってから入浴客が減ってしまった」とのこと。どこにも「石鹸使用禁止」の表示はみえなかったが---。汗を流して外に出ると、「釜飯」の幟は立っているが、どこの建物で食事が出来るのかさっぱりわからない。入口で「近くに食事が出来るところはないか」と尋ねると、来合せた社長らしき人物が「うちの釜飯以外に近くには店はないよ」と機嫌の悪いご返事。「どこで釜飯を食べさせてもらえるのか判らなかったよ」と言い置いて、温泉を後にした。
ナビで探し回って新発田駅前まで移動し、目にとまった居酒屋で日曜日限定の日本海サービスメニューで空腹を満たした。空腹もあってか、なかなか美味しい食事だった。
お腹を満たしてから、Asさんの車は安田ICから磐越道、常磐道を走り、日立南ICで高速を降りて我家の庭先まで入った。今回は運転もしないで、随分と贅沢な山行をした気分になった。


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