X81.旭岳トムラウシ縦走と十勝岳

1.動 機
水戸アルパインの8月例会は5泊6日で北海道中央部を歩き、旭岳からトムラウシ山まで縦走と十勝岳登山をする計画だった。特に旭岳からトムラウシ山への縦走はお花いっぱいのコースだが、昨年のツアー登山で8名もの遭難者を出した痛ましい事故があったほど厳しいコースなので個人ではなかなか挑戦しにくい。もちろん大喜びで参加したが、はじめ雨模様のお天気で予想通り厳しい山行で始まったが、日を追って天気は回復し、頼もしいリーダの統括と、いつもの仲間の団結力で思い出に残る楽しい山行になった。頑張って歩いた御褒美に、最後の一日、旭山動物園など北海道の観光まで楽ませてもらった。
いままで、2003年利尻岳、2006年羅臼岳、斜里岳、阿寒岳、2007年羊蹄山、幌尻岳と久弥の百名山6座を連れ歩いてもらっており、今回の旭岳、トムラウシ山、十勝岳の3座で北海道にある百名山9座を全部制覇したことになった。

2.データ
a)山域:旭岳(2291m)、間宮岳(2185m)、北海岳(2149m)、忠別岳(1963m)、五色岳(1868m)、トムラウシ山(2141m)、扇沼山(1065m)、十勝岳(2077m)
b)登山日:2009/08/6(金)晴、7(土)雨、8(日)曇一時雨、9(月)曇、10(火)晴一時曇、11(水)雨
c)コースタイム:
前夜アクセス(8/6)日立電鉄南営業所 4:00 = 4:20 那珂町 = 4:40 水戸駅南 = 4:55水戸IC = 5:45 守谷SA 5:55 = 7:10 羽田空港 9:35 = 11:05 新千歳空港 11:50 = 13:10 砂川ハイウエーオアシス 13:50 = 14:55 ひがしかぐらコンビニ 15:05 = 15:55 旭岳温泉(泊)
1日目(8/7)旭岳温泉 5:45 ---- 5:50 旭岳駅 6:00 =(ゴンドラ)= 6:10 姿見駅 6:35 ---- 6:50 大雪の鐘 6:55 ---- 8:05 地獄谷 ---- 8:55 旭岳 9:00---- 10:10 間宮岳 ---- 10:20 荒井岳---- 10:50 松田岳 ---- 11:05 北海岳 ---- 12:20 白雲岳分岐 ---- 12:55 白雲岳避難小屋(泊)
2日目(8/8)白雲岳避難小屋 6:50 ---- 7:55 高根ヶ原分岐 ---- 8:50平ヶ岳下 ---- 10:20 忠別沼 10:25 ---- 11:30 忠別岳 11:50 ---- 12:50 忠別岳分岐 ---- 13:10 五色岳前 13:20 ---- 13:55 五色岳 14:00 ---- 14:45 神遊びの庭 14:55 ---- 15:30 天人峡分岐 ---- 16:30 ひさご沼避難小屋(泊)
3日目(8/9)ひさご沼避難小屋 5:30 ---- 5:50 雪渓 ---- 6:20 化雲岳分岐 6:25 ---- 7:05 天沼 7:15 ---- 7:45 日本庭園 7:50---- 8:10 ロックガーデン ---- 9:10 北沼 9:20 ---- 9:55 トムラウシ山 10:15 ---- 11:15 南沼 ---- 13:05 三川台 13:15 ---- 14:00 辺別川徒渉 ---- 14:35 稜線 14:40 ---- 15:35 鞍部 15:45 ---- 15:50 扇沼山 ---- 16:30 沢道 ---- 17:50 台地林道 = 19:30白金温泉(泊)
4日目(8/10)白金温泉 5:35 = 5:55 望岳台 6:00 ---- 7:05 美瑛岳分岐 ---- 8:00 ケルン 8:10 ---- 8:40 昭和噴火口 8:45 ---- 9:35 稜線 9:40 ---- 10:00 十勝岳 10:30 ---- 11:00 尾根 ---- 11:25 昭和噴火口 ---- 12:15 避難小屋 12:25 ---- 13:15 望岳台 13:20 = 13:30 白金温泉(泊)
5日目(8/11)帰途白金温泉 7:35 = 8:00 北西の丘展望公園 8:10 = ケンとメリーの木 = 8:20 セブンスターの木 = 9:00 富田ファーム 9:40 = 10:45 旭山動物園 12:30 = 13:20 砂川ハイウエーオアシス 13:40 = 15:10 新千歳空港 17:30 = 19:00 羽田空港 19:30 = 20:50 守谷SA 21:15 = 22:00 水戸IC = 23:25 日立電鉄南営業所
d)同行者:水戸アルパイン会員7名(男3、女4)、和子
e)地形図:1/25000 「旭岳」「愛山渓」「層雲峡」「白雲岳」「トムラウシ山」「白金温泉」
(旭岳−トムラウシ山縦走コース)

(旭岳−トムラウシ山縦走コースの標高差)


3.山行記録
前回の黒部五郎、笠ヶ岳では体調を崩して皆さんに迷惑をかけたが、その後の養生が上手くいって二人とも上々の体調で参加することが出来た。ただ、テント、シュラフ、食糧など避難小屋連泊の野営装備を詰めると、ザックの重さは13kg、最近背負ったことがない重さだが、他の男性のザックはもっと重い。弱音を吐いてはおれないが、私の身体がザックの重さに耐えられるか少々心配しながらの出発だった。

(前日:アクセス):
日立電鉄南営業所 4:00 = 4:20 那珂町 = 4:40 水戸駅南 = 4:55水戸IC = 5:45 守谷SA 5:55 = 7:10 羽田空港 9:35(朝食) = 11:05 新千歳空港 11:50 = 13:10 砂川ハイウエーオアシス(昼食) 13:50 = 14:55 ひがしかぐらコンビニ 15:05 = 15:55 旭岳温泉(泊)

早起きして我家を出発、日立電鉄南営業所を4時丁度に出発、那珂町、なかみなと、水戸と回って今回の参加者9名が揃って、羽田に向かった。途中、400mを越したスカイツリーがみんなの注目の的だった。羽田から飛び立つと富士山も見えて、幸先がいい旅立ちになった。
(現在世界一のスカイツリー)
(富士山が見えた!)

定刻に新千歳空港に到着すると、チャータしてあった富良野バスの運転手さんが待っていた。旭川空港に到着すれば近いのだが予約がとれずやむなく新千歳着になったのだが、運転手さんの話を聞いたり景色を眺めたりしながら長い道程を楽しく走った。途中、砂川SAにつながる砂川ハイウエーオアシスで北海道の食事をとり美味しいアイスを頂いた。
(新千歳空港からのチャータバス)
(砂川ハイウエーオアシス)

到着した宿舎は、旭岳ゴンドラ乗り場のすぐそばの豪華ホテルだった。バイキングの夕食会場に入るのに浴衣はダメと言われたのが窮屈だったが、十勝牛のステーキもある豪華なバイキングを腹いっぱい頂いて明日の体力を蓄え、寝心地の良いベットでぐっすりと眠った。
(ホテルベアモンテ)
十勝牛のステーキ)

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(1日目:旭岳温泉−旭岳−白雲岳避難小屋)
旭岳温泉 5:45 ---- 5:50 旭岳駅 6:00 =(ゴンドラ)= 6:10 姿見駅 6:35 ---- 6:50 大雪の鐘 6:55 ---- 8:05 地獄谷 ---- 8:55 旭岳 9:00---- 10:10 間宮岳 ---- 10:20 荒井岳---- 10:50 松田岳 ---- 11:05 北海岳 ---- 12:20 白雲岳分岐 ---- 12:55 白雲岳避難小屋(泊)

今日の天気予報は曇り後雨、出来るだけ早く山小屋に着きたいので、6時発の一番ゴンドラに乗ることになった。正規のバイキング朝食では間に合わないので、ホテルで準備してくれた仕出し弁当をロビーで頂いて出発した。10分前に駅に着くとすでに50人以上の人が列を作っていたが、ゴンドラが100人乗りと大きいので何とか潜り込むことが出来た。10分近くの空中遊覧を楽しんだと言いたいところだが、周りはガスで真っ白、何も見えない世界だった。
姿見駅で降りると外は霧雨模様、他の登山者と一緒に雨具を付けた。周りの人は殆んど姿見平や裾合平を周遊したりなど日帰りの人ばかりで、トムラウシまで縦走する人の話は聞けなかった。去年の遭難事故以来、この人気コースも敬遠されるようになったようだ。「どこまで行くの」と聞く人に「山小屋2泊でトムラウシまで」と答えると、すぐに「天気が悪いから気を付けて」の言葉が返ってきた。駅舎の展望台に上がってみたが。ガスで何も見えなかった。
(先ずはゴンドラで)
(ガスの姿見駅)

ガスの中にぼんやり見えるチングルマの白い果穂やアキノキリンソウの黄色い花を眺めながら、丸太や自然石で出来た階段道を登って行くと、上から姿見展望台の大雪の鐘の音が響いてきた。姿見展望台に上がっても雨は止んだが一面ガスの中、上に見えるはずの旭岳はもちろん、すぐ下の姿見池さえも見えず、大雪の鐘を打ち鳴らして天気回復と今回の縦走の無事を祈った。
旭岳への登りは大きな岩のゴロゴロする急坂の登山道、黙々と登った。リーダがゆっくりペースで登ってくれるので、心配したザックの重さは大丈夫のようだ。途中、硫黄の臭いがかすかにして硫黄谷の上を歩いているなとは感じたが、噴煙を見ることは出来なかった。
(大雪の鐘)
(旭岳へ)

旭岳に登りつくと、1900年に設置された一等三角点があったが、自慢の展望はまるで利かない。再び小雨が降り出して気温は14℃、風が強くてじっとしていると少々寒い。ここのところ札幌で35℃という気温の高い日が続いたので「少し寒いな」で済んでいるが、これより5℃も低かったらどんなに寒い思いをするだろうかと、去年の遭難者の事を思った。山頂には2,3グループの登山者がたむろしていたが、我々は集合写真を撮ってすぐに次に向かった。
ガラガラの急坂を下って行くと、いろいろな花が咲いているのが見え始め、目を楽しませてくれた。間宮岳に登り返す道もチングルマ、アオノツガザクラ、エゾツガザクラ、チシマギキョウ、チシマツガザクラ、ウサギギク、アキノキリンソウなどなかなか賑やかだ。雨が降っていては写真はままならない。
(旭岳山頂)
(チシマギキョウ)

(チシマツガザクラ)
(アキノキリンソウ)

中岳への分岐点間宮岳を過ぎるとなだらかな稜線歩きが続き、荒井岳や松田岳など知らないうちに通り過ぎて北海岳を下ると、またなだらかな平原歩きが始まった。初めて見るキバナシオガマが咲いており、コマクサも姿を現し出し、ヨツバシオガマ、イワウメ、ミネズオウ、イソツツジなどがが賑やか、咲き残りだがイワブクロやキバナシャクナゲも綺麗だった。
(北海岳)
(キバナシオガマ)

(ヨツバシオガマ)
(イワウメ)

(イワブクロ)
(キバナシャクナゲ)

天気が悪く展望が期待できないので白雲岳へ登るのは止めにして白雲岳分岐を通過して、小さなピークを越えると、向かいの丘の上に白雲岳避難小屋が見えてきた。鞍部まで下った沢のほとりにエゾツツジやリューキンカが咲いており、避難小屋の周りにはトウヤクリンドウに似たクモイリンドウがたくさん咲いていた。
(丘の上に白雲岳避難小屋)
(クモイリンドウ)

13時前にびしょ濡れで避難小屋に入ると、管理人さんとお手伝いをしているボランテアの男性がいて、「9人の団体さんは二階に上がって」と言いながら、濡れた雨具の置き場などをテキパキと指定し、みんなのザックを二階に持ち上げてくれた。こんなに親切な山小屋は初めてだ。ザックを降ろすと肩が凝っていて少し痛いが、他は何ともなく至って元気、明日もちゃんと歩けそうだ。
二階に上がると、急に雨が屋根を叩き始め、風音も強くなってきた。もう少し遅かったらこの物凄い風雨の中を歩く事になっていた訳で、早立ちして良かったと心底思った。
雨の中では食事が思うように取れなかったので、二階でお湯を沸かしてもらってゆっくりと昼食をとった。広い2階は最後まで9人の貸し切り、いろいろな山談議の末、明日の予定の話になり、天気がこのまま回復しなければこの小屋にこのまま停滞するか、遅くにでも雨がやめばゆっくりと出発して一つ先の忠別岳避難小屋まで歩いて泊ることも考えるということになった。明後日になれば天気は良くなるはずだから、最終日の十勝岳を諦めれば済むことで、明日悪天候で無理をすることはない。夕食は暗くなる前にと18時前に済ませて早々に就寝、朝までぐっすりと眠った。

(2日目:白雲岳避難小屋−忠別岳−五色岳−ひさご沼避難小屋)
白雲岳避難小屋 6:50 ---- 7:55 高根ヶ原分岐 ---- 8:50平ヶ岳下 ---- 10:20 忠別沼 10:25 ---- 11:30 忠別岳 11:50 ---- 12:50 忠別岳避難小屋分岐 ---- 13:10 五色岳前 13:20 ---- 13:55 五色岳 14:00 ---- 14:45 神遊びの庭 14:55 ---- 15:30 天人峡分岐 ---- 16:30 ひさご沼避難小屋(泊)

朝起きると外はまだ雨模様だったが、朝食を済ませて様子を見るうちに雨は止んできた。天気予報を聞いて余り悪い天気にはなりそうにはないと読んで、7時前に歩き始めた。この時間に歩き始めれば、次のひさご沼の避難小屋までゆとりを持って歩くことが出来る。
白雲岳避難小屋からナナカマドが茂りトリカブトも咲く斜面をゆるやかに下ると、チングルマの原っぱになった。半分は散っているがまだ十分に綺麗だった。その先の雪渓の上を通過する所にはトウウチソウやクロトウヒレン、アザミ、ウサギギク、タカネヨモギなど賑やかになってきたが、お目当ての一つホソバウルップソウは完全に花時期が終っていた。
(白雲岳避難小屋を出発)
(咲き残りチングルマの道を歩く)

ケルンが積まれたガレ場の道になるとコマクサも姿を現し、イチヤクソウを見ることもできた。
(コマクサ)
(イチヤクソウ)

小屋から1時間歩いて高原温泉への分岐標が出てくると、ここのところ毎日降り続いていたと言う雨が登山道に溜まって小川のようになっている。周りの籔の中に足場を探しながら進んでいく。体力も時間も2倍消費する。
(高原温泉分岐)
(水浸しの登山道)

数か所の水たまりを通過したと思ったら、今度は小川を徒渉する所に出た。普段ならじゃぶじゃぶと歩けるところだろうが、今は膝上までの水深があってとても渡れない。20mほど上流に戻って浅いところで徒渉して、対岸の背丈もある這い松の中を潜ったり乗越えたり、太い枝と格闘しながら汗をかきながら通過した。
(ここは渡れない)
(這い松と格闘してやっと通過)

これを過ぎる這い松の中の道になったが、やがて木道のある原っぱになって歩きやすくなった。周りにクロウスゴやガンコウランの実を見付けて、時々立ち止まってつまんでは口に入れた。乾いた喉にはとても美味しい自然からの贈り物だった。
(クロウスゴの実)
(ガンコウランの実)

ガレた道を登って行くと、下に沼が見えてきた。忠別沼で、畔に木道が敷かれていて、エゾカンゾウやワタスゲ、ハクサンイチゲ、クロトウヒレン、ウメバチソウ、タカネトウウチソウなどが綺麗に咲いていた。
(高根ヶ原の木道)
(忠別沼)

(エゾカンゾウ)
(ハクサンイチゲとワタスゲ)

忠別沼のほとりで一休みすると、忠別岳への今日一番の登りになった。ガレていたり、大きな石があったり、いろいろな花は咲いているが、雨具の下は汗でしっとりと濡れてきた。
(タカネトウウチソウ咲くガレ道)
(大石もゴロゴロ)

沼から1時間で忠別岳の山頂に登りついて一休みした。山頂はアキノキリンソウの群生地で一面真っ黄色になっていた。
証拠写真を撮ってお八つを食べながら休んでいるうちに、ハサミやなたを持った作業服姿の3人の男性が反対側から登ってきた。忠別岳避難小屋に寝泊まりしながらこの辺りの登山道の整備をしているとのことだった。「五色岳の方は終わったが、こっちはこれからだ。もう3日も遅く来ていれば全部歩きやすい道を歩けたんだがね。ここからの下りの這い松も大変だよ」
忠別岳からの下りは、始めはクロトウヒレンの群落があったり、リシリリンドウやウメバチソウが咲いていたりして歩きやすかったが、すぐに整備の人達のお言葉通りに這い松との格闘の道になった。這い松をかわしたら、その先に浮き石があったり落とし穴があったり、汗をかきながら下って行った。
(忠別岳のいい男達)
(クロトウヒレン)

(ウメバチソウ)
(這い松を漕ぐ)

忠別岳を下ると道は平坦になって歩きやすくなり、足元にはコマクサやリンネソウなどが咲いていた。
忠別岳避難小屋への分岐点を過ぎるとまた這い松の道になり、休みながら1時間ほどで登り切ると五色岳の山頂だった。山頂近くには犬のような形をした自然石の造形があった。
反対側から若者が登ってきたので、「この先花は咲いていますか」と聞くと、あまり花には詳しくはないようだったが、「チングルマは半分終わっていたが、綺麗な花がいっぱい咲いていたよ。」と嬉しい話を聞かせてくれ、「木道を過ぎると登山道が水でいっぱいになっていて大変だったよ」と付け足した。
(五色岳)
(造形)

下り始めると、すぐにトリカブトの群生地があった。みんなしばらく立ち止まってシャッタータイム。
(大パノラマ)
(トリカブト)

五色岳の先はすぐに平坦な原っぱになり、木道が敷かれていた。短い木道を過ぎると、若者の言葉通りに沢のような登山道になった。経験済だから驚かない。
(五色岳の木道)
(また水浸し道)

沢の道を過ぎるとお花畑の原になり、エゾヒメクワガタやヨツバシオガマ、エゾフウロ、ハクサンイチゲ、イワシモツケなど綺麗になった。
(エゾヒメクワガタ)
(ヨツバシオガマ)

(エゾフウロ)
(ハクサンイチゲ)

その先では一面のチングルマの花畑になり、座り込んでゆっくりとお休みした。
(チングルマのお花畑)

お花畑の中にはチングルマに交じって、エゾコザクラやリシリリンドウ、エゾツガザクラ、アオノツガザクラ、クモマユキノシタ、エゾカンゾウ、タカネトウウチソウなどが見られた。ホソバウルップソウも一房だけ紫の花を残していた。このあたりを「神の遊び場」と言うところなのだろうか。
(エゾコザクラ)
(リシリリンドウ)

(エゾツガザクラ)
(ホソバウルップソウ)

花を楽しみながら歩いて行くと化雲岳への分岐があったが、化雲岳は巻いてひさご沼に下って行った。イワイチョウやアオノツガザクラなどたくさん咲いているが、岩のゴロゴロした道は歩きにくかった。以前ここを歩いたことがあると言う仲間は、前はこの辺りは雪渓だったはずと言っていた。7月に雪渓を歩いた方が随分と楽なことだろう。
湖畔に下りると木道を歩いて小屋まで5分ほどだった。いつも満員かと思っていたひさご沼の避難小屋も、去年の遭難事故のあおりか、先客は二人だけ、それも9人の入場で1人はテントに逃げて行った。あとから御夫婦が小屋の中を覗いて「入れますか」と聞いてきたが、「二階は貸切だからどうぞ」と答えると黙って出て行ってしまったので、これもテントにしたのだろうか。
(ひさご沼への下り)
(ひさご沼避難小屋到着)

女性陣が湖畔の沢から水20Lを取って来てくれ、これを沸かして今晩と明日の行動中のための水を作った。明日朝用には朝また追加に沸かすことになっている。アルファ米やラーメンなどめいめい準備した材料で夕食を作ってなごやかに食べたが、一人の同宿者にはこの騒ぎが煩さくて腹に据えかねたのか、朝2時に起きだした彼は、ガタゴトと大きな音を立てながら臭いの強いラーメンを作り、ズルズルとすすって朝食を済ませ、またガザゴソと荷造りをして、部屋の中からリンリンと鈴を鳴らしながら小屋を出て行った。


(3日目:ひさご沼避難小屋−トムラウシ山−三川台−硫黄沼山−台地林道−白金温泉)
ひさご沼避難小屋 5:30 ---- 5:50雪渓 ---- 6:20 化雲岳分岐 6:25 ---- 7:05 天沼 7:15 ---- 7:45 日本庭園 7:50---- 8:10 ロックガーデン ---- 9:10 北沼 9:20 ---- 9:55 トムラウシ山 10:15 ---- 10:40トムラウシ温泉分岐 11:00 ---- 11:15 南沼 ---- 13:05 三川台 13:15 ---- 14:00 辺別川徒渉 ---- 14:35 稜線 14:40 ---- 15:35 鞍部 15:45 ---- 15:50 硫黄沼山 ---- 16:30 沢道 ---- 17:50 台地林道 = 18:50 美瑛コンビニ 19:00 = 19:30 白金温泉(泊)

予定の朝4時に起きだすと、空は日の出も見えそうなほどの好天気。朝食を済ませて5時半に歩き始めた。湖畔の道は始めは木道だったが、昨日下ってきた分岐を過ぎると石がごろごろする道になり歩きにくくなった。まわりにはイワイチョウ、チングルマ、タカネトウウチソウ、アオノツガザクラ、エゾノツガザクラと色とりどりに綺麗だったが、あまり脇見をしていては危ない。
(ひさご沼湖畔を歩く)

階段道をのぼると雪渓登りになり、リーダの作ってくれたステップを一歩一歩辿りながら登って行った。雪渓歩きは6月の手白沢温泉行で小滑落をして以来慎重になっている。
雪渓の上は大岩の重なる斜面になる。岩の頭を拾いながら登って行くが、踏み外したら只では済まないので気持ちが悪い。
(雪渓を登る)
(大岩の重なりを)

小屋から50分で稜線まで上がると、左の稜線に向かって「トムラウシへ3.6km」の道標があった。稜線上も岩の重なる道が続いて見えた。
斜面を登り切ると広い平原状の丘になり、ところどころには木道が整備されており、あちこちに造形のような岩峰が連なって見えていた。日本庭園の入口に入ってきたようだ。
(稜線も岩の道)
(日本庭園)

視界も開けてきて、後ろにはガスの合間に化雲岳や五色岳が見えるようになったが、正面のトムラウシ山はいつまでもガスの中だった。左眼下にひさご沼が日を受けてキラキラと光って綺麗だった。
周りの石の造形も色々な形の物があって、みんなで名前を付けるのが面白かった。

(ひさご沼を見下ろす)
(何に見える?)

気持よく日本庭園を歩いて行くと天沼という小さな沼があり、木道に座り込んで一休みした。周りにはイワイチョウやハクサンイチゲ、ヨツバシオガマ、バイケイソウなどいろいろな花が咲いていた。
イワイチョウはこの先にも大きな群落が続き、多くは花は終わって葉が黄葉していた。イワイチョウが黄色になったのは初めて見たが、なかなか美しい風情だった。
(天沼)
(黄葉のイワイチョウ)

オトギリソウやウメバチソウ、トリカブト、アキノキリンソウ、ヒメカタバミ、イワシモツケ、リシリリンドウ、ウスユキトウヒレン、イワブクロなどあちこちに咲く可愛い花を眺めながら平らな日本庭園を過ぎると大岩の重なりになり、また石の頭を拾いながらの急坂登りになった。これを登れば山頂かと錯覚して長い岩場を頑張ったが、登り切ったところはまだ北沼だった。
ここからトムラウシ山を巻いてトムラウシ温泉への分岐までトラバースする道が分かれている。去年の遭難事故はここまでで体力を消耗してトムラウシ山は諦めて巻道に向かったが、慣れない数人が増水した北沼への沢をなかなか渡ることが出来なくて全体が停滞し、待つ間に冷え切って低体温症になったと聞く。
今日は幸い天気も良く、みんなも元気いっぱい、同じ山好き仲間である遭難者の冥福を祈ってトムラウシ山に向かって登って行った。
(ロックガーデン)
(北沼)

トムラウシ山の山頂近くは岩を登る難所が続いて大変だと聞いて鳥海山程度を覚悟していたが、北沼までも大変だったし、北沼から上も鳥海山など比べようもなく長い岩場の連続だった。それだけに山頂に登りついた喜びは言い尽くせないものがあった。旭岳から長い道のりで色々あったが、リーダと仲間のお陰で登りつくことが出来た。バンザーイ!!
(山頂間近)
(トムラウシ山頂)

時々ガスが流れて周りの展望が見えそうになるが、一瞬にしてまた真っ白な世界になる。展望を入れた集合写真を撮ろうと待ってみたが何時までたっても展望は得られず、タクシーとの待ち合わせ時間もあるので、山頂に登頂したことに満足して20分で下山することになった。
下りは反対方向の下山路を下ったが、こちらには岩場は少ないが急坂が続き、返って滑りやすいという面があり、注意深く下って行った。
急坂を下るとトムラウシ温泉への分岐があるキャンプ指定地だった。一休みしながら振り返ってみたが、トムラウシの山頂はガスの中だった。一休みして平地の先まで歩くと、ガスも晴れてきて、後ろの岩場の上にトムラウシの山頂が頭を出しているのが見えていた。
(下りも急坂)
(キャンプ指定地)

南沼に下ると「三川台まで3.3km」の道標があって道がまたなだらかになり、タカネトウウチソウやアキノキリンソウ、ムカゴトラノオなど花も賑やかになった。
(南沼へ下る)
(タカネトウウチソウ)

気持よく歩いて行くと広い黄金ヶ原の端を歩くようになる。反対側は大きなカールになっていて、その底にはいくつもの池塘がちりばめられていて、一幅の絵を見るようだった。
(黄金ヶ原)
(カールの底を見下ろす)

三川台まで気持のいい平原歩きを続けて一休み、振り返るとトムラウシにつながる山々が峰を連ねていて、あそこに登ったんだなあとしばらく感慨深く見上げていた。
(トムラウシ山塊のパノラマ)

三川台は三叉路になっていて、「硫黄沼通って白金温泉に出るコースは通行禁止」の立札が立っている登山道が硫黄山を通って台地林道に通じる道だ。しばらく這い松の中を歩いて行くと目の前に兜岩の鋭鋒が迫り、これに連なる硫黄山への稜線が見えてきた。
(三川台から硫黄沼山稜線)
(三川台から硫黄沼山稜線へ)

笹を刈り払って手入れされた登山道を下って辺別川源流の小さな沢を渡ると、硫黄山の稜線へトラバース状にゆるやかに登る坂道になった。
だらだらと登る道が沢を横切るところには、エゾレイジンソウやカニコウモリ、ハハコグサなどここまで出合わなかった花も咲いていた。
(硫黄沼山稜線へ登り返し)
(エゾレイジンソウ)

稜線まで登り切ると稜線の向こうに美瑛川源流の谷間が見えていた。一休みしてから稜線を歩いて行くと左下に硫黄沼が見えてきた。
稜線に出てから1時間歩いて硫黄沼真上まで来ると、赤く錆びた四本丸棒の標柱が立っていて、沼の反対側に下る道があった。
(稜線歩き)
(硫黄沼を見下ろして反対側に下る)

道標はなかったがこのしっかりとした道を下ると、やがて大石がゴロゴロ重なったところに出た。土で汚れた踏跡を辿って大石の頭を拾いながら下って行った。
大石を下ると沢沿いの道になったが、ここで時刻は16時30分、タクシの待ち合わせ時刻に1時間と迫っていた。ここから林道までどれだけ時間がかかるか判らないが、タクシーに行かれてしまってはお手上げだ。リーダは一人スピードをあげて歩いて行った。
(大岩堆積を下る)
(長かった沢沿いの道)

沢道は一本道で迷う事はなかったが、飛び石を渡るところやドロドロのところがあったりして苦戦しながら歩いて行った。「トムラウシ温泉への道の方がまだましだった」とぼやく仲間もいた。途中の沢の水は冷たくて美味しそうだったが、エキノコックスはやはり怖い。残り少なくなったボトルの水をチビリチビリ飲みながら我慢した。途中引き返してきたリーダの出迎えを受けて、タクシの待つ台地林道に出た時は約束の時刻を20分過ぎていた。ひさご沼を出発してから12時間20分、予想以上に長がーい山歩きだった。
林道の鍵を開け閉めして走るジャンボタクシの運転手は「以前はここまでよく登山者を運んだものだが、今年はこれが初めてだ」と言っていた。長い山歩きで喉はからから、冷たい飲み物が飲みたいが、林道から街に出るまで1時間かかった。飛び込んだコンビニで手に入れたコーラの美味しかったこと。
白金温泉のホテルに着いたのはレストラン締切の30分前、シャワーだけ使ってバイキングの夕食を腹いっぱい食べたら元気が出てきた。タクシの中ではみんな「明日は休養日だ」と言っていたが、食事中の話題はだんだんと明日の山行の計画になってきた。
(タクシざんお待たせしました)
(バイキングで英気回復)

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(4日目:望岳台−十勝岳 往復)
今日は予備日の設定だったが、昨日まで頑張って旭岳からトムラウシまで予定通りに歩き通したので、今日は御褒美の登山日である。百名山十勝岳コースと百名山を終った人のために富良野岳コースが用意されていた。ふくらはぎに肉離が起きたリーダと、今日は大事をとるとおっしゃる最高齢のFさんはお休みで、十勝岳我家を含めて5名、富良野岳2名で出かけることになった。今日はお天気も良く、ザックも日帰り登山の身軽な格好での出発である。

白金温泉 5:35 = 5:55 望岳台 6:00 ---- 7:05 美瑛岳分岐 ---- 8:00 ケルン 8:10 ---- 8:40 昭和噴火口 8:45 ---- 9:35 稜線 9:40 ---- 10:00 十勝岳 10:30 ---- 11:00 尾根 ---- 11:25 昭和噴火口 ---- 12:15 避難小屋 12:25 ---- 13:15 望岳台 13:20 = 13:30 白金温泉(泊)
(十勝岳登山ルート)
(十勝岳登山ルートの標高差)

富良野岳組と一緒にジャンボタクシに乗って登山口の望岳台に向かった。途中路上にタクシを止めて十勝連峰の展望写真を撮ったが、登山口の望岳台の方が眺めが良かった。富良野岳組は同じタクシーで十勝岳温泉に向かった。
(望岳台駐車場からのパノラマ)

駐車場で準備運動をして歩き始めたが、駐車場のすぐ上に大きなケルンが組まれていて望岳台のモニュメントになっている。この前で登山前(使用前)の元気は姿の写真を撮った。
ここからしばらくはなだらかな上り坂が続いた。目の前に十勝岳を見上げながら気持よく歩いて行った。
(望岳台から出発)
(始めはなだらか)

砂礫の道に生きている植物は少なく、そのなかでオンタデとエゾリンドウが元気に花を咲かせていた。
(オンタデ)
(エゾリンドウ)

白銀荘分岐から避難小屋まで傾斜が少し急になり、好天気の太陽に照らされて暑くなり汗が噴き出してきた。避難小屋の上のケルンの日影に座り込んで一休みした。
ケルンから少し登ると「前十勝コースは立ち入り禁止」の立札があり、左に曲がって沢を渡って尾根の急坂登りになった。昭和噴火口の立札まで20分の急登だった。
(避難小屋)
(噴火口まで急坂)

「十勝岳へ1.6km望岳台へ3.6km標高1720m」の標柱がある昭和噴火口に登りついたが、周りがガスで囲まれて噴火口がどこだかよく分らなかった。下山時にはガスが晴れて、下のような写真を撮ることが出来たが、この火口には噴煙はなかった。南の尾根の向こうには62U噴火口の噴煙が勢いよく舞い上がっているのが見えていた。
(昭和噴火口)

昭和噴火口から広い火山灰の尾根を歩くルートになり、十勝岳が近く高く聳えて見えるようになった。十勝岳の右の尾根に登りつくようだが、そこへの斜面はとんでもない急坂のように見えた。
斜面に近づくと予想通りの急坂だったが、ジグザグに踏跡が付いており、足元も割合しっかりしていて思ったよりも楽に登ることが出来た。下から登ってくるグループもあったので、落石を起こさないようにゆっくりと登って行った。
(広い火山灰原)
(火山礫の急坂)

稜線まで登りついて山頂を見上げると、下から眺めた時にはゆるやかに見えた尾根道が意外に急坂に見えてがっかりした。一休みして気を取り直して歩き始めたら、山頂には20分で登りつくことが出来た。望岳台から丁度4時間、コースタイムぴったりだった。
山頂で喜びの集合写真を撮ってから、トムラウシ山を見ようと北側に回ってみたが、旭岳もトムラウシも雲の中だった。しばらく待っていれば晴れてくるかもと座り込んで弁当を広げた。30分待ってもガスが晴れないので、下山にかかった。
(稜線)
(十勝岳山頂)

下りは登り道をそのまま下った。悪路に慣れないご婦人や、小さな子供も多くて何人か追い越しながら下って行き、途中、携帯でリーダを通して富良野岳組と連絡をとりながら歩いて行った。
下りついて望岳台のモニュメントのところで使用後の写真を撮ったが、どう見ても下山後の方が御機嫌がよく元気に見えた。
駐車場に下ると丁度富良野組を乗せたジャンボタクシが入ってきて、売店でコーラを買って飲みながらホテルに戻った。
(往路を戻る)
(登り始めより元気)

ホテルに帰ったのは13時30分、今日はたっぷりと時間がある。温泉にゆっくりと浸かってから、レストランの食べ放題のバイキングを肴に、全員北海道百名山完登の乾杯をし、今日が誕生日のSさんのお祝いまでして大いに盛り上がった。


(5日目:道央観光・帰途)
今日は茨城まで帰る日、飛行機の出発時間が17時半、たっぷり時間があるので、美瑛地区の車窓観光と、富田ファームと旭山動物園の入場観光という楽しい観光旅行が織り込まれていた。

白金温泉 7:35 = 8:00 北西の丘展望公園 8:10 = ケンとメリーの木 = 8:20 セブンスターの木 = 9:00 富田ファーム 9:40 = 10:45 旭山動物園 12:30 = 13:20 砂川ハイウエーオアシス 13:40 = 15:10 新千歳空港 17:30 = 19:00 羽田空港 19:30 = 20:50 守谷SA 21:15 = 22:00 水戸IC = 23:25 日立電鉄南営業所

朝起きると十勝連山の上の雲が朝日に燃えていた。早速カメラを持ち出してパチリ。昨日歩いたルートも良く分った。
(朝焼けの十勝山塊)

バイキングの朝食をゆっくりと頂いて、迎えに来た初日に乗った美瑛バスに乗りこんで出発した。出発時間になると雨模様になってきた。
先ずは美瑛に向かい、途中車窓から見えた色彩の丘のお花畑がとても綺麗で印象的だった。
先ずは北西の丘展望公園の展望台に登った。展望台は三角のピラミッド型で格好がよかったが、見えるパッチワークは余り鮮やかでなかった。お天気も良くないが、今は時期外れだったかもしれない。大雪山連峰を一望できるらしいが今日は残念でした。
(北西の丘展望公園)
(四季彩の丘)

次いでセブンスターの木やケンとメリーの木を眺めながら走った。運転手さんは木がよく見えるところで速度を落としてくれたので、ゆっくりと見物して写真も撮れた。
ケンとメリーの木は昭和48年頃にケンとメリーのスカイラインのCMに使用されたものだが、Ozさんが若いころ、このケンとメリーを乗りまわしていたと話題を振りまいていた。
(セブンスターの木)
(ケンとメリーの木)

次に富良野の富田ファームに入って一回りした。店員が今年は花の生育がおもわしくないと言っていたが、どの花も今一つ鮮やかさに欠けていた。ビデオで流されていた写真が一番見事だった。
(富田農場)

最後に旭山動物園に入った。夏休みの所為か大変な人が入っており、人気の展示館には行列が出来ていて、2時間の自由時間に入るのは無理だった。
それでも、色々な動物の生態を眺めながら、みんなで童心に帰ってわいわい楽しく歩きまわった。
(チンパンジーの親子)
(アザラシ館)

(オオカミ)
(アライグマ)

(シロクマ)
(ヒグマ)

動物園を出てから高速に乗り、砂川ハイウエーオアシスに立ち寄って試食で腹を満たしてお土産を買い込み、新千歳空港から羽田に飛んで、守谷SAで夕食を食べて茨城に帰ってきた。始めはお天気を心配した山行だったが、日に日に天気が回復して、全員充実した山歩きが出来て大満足の北海道山行でした。




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