X82.御岩山(ロープワーク講習会)

1.動 機
今月末に水戸アルパインの特別企画として槍ヶ岳から穂高まで縦走する大キレット通過の山行がある。今回はもし落ちたら命が無い岩場の連続なので、参加者は岩場を通過するときにはカナビラやスリングの安全具を使って安全を確保しながら慎重に歩くことが条件になっていた。このため、安全器具の使い方を予め習得していこうと器具操作の講習会を御岩山の岩場で行ってもらえた。
(ロープにスリングをぐるぐると巻きつけてロックを利かせるる結び方をオートロックと書いていて、正しくはオートブロックだとの指摘をいただき修正した:2010/8/24)

2.データ
a)山域:御岩山(530m)
b)登山日:2010/08/22(日)、晴れ
c)コースタイム:
日立自宅 8:10 = 8:45 向陽台駐車場 9:15 ---- 9:55 賀毘禮の峰 11:00 ---- 11:50 一枚岩下 12:00 ---- 13:50 賀毘禮の峰(昼食) 14:20 ---- 14:45 一枚岩下 ---- 15:00 賀毘禮の峰 15:30 ---- 16:00 向陽台駐車場 16:10 = 18:00 日立自宅
d)同行者:水戸アルパイン会員他17(男7、女10)、和子
e)地形図:1/25000 「町屋」

3.山行記録
集合時間の15分前に向陽台の駐車場に到着したが、殆んどの人がすでに到着済だった。今回の大キレットに対する皆さんの意気込みが感じられた。
器具の追加配布や説明があって9時15分に駐車場奥の旧車道を歩き始めた。
(向陽台駐車場に集合)
(旧車道から歩き始め)

暑さがぶり返して、天気も良くて暑くて大変だ。神峰山分岐を曲がって御岩山の岩場上の広場に着いた時はもう汗でぐったり、水をがぶがぶ飲む。
私は槍穂縦走の身なりで登ってきたが、今日は器具の取扱いに慣れることに重点を置いて、空身で実習する事になった。重いザックを置いて、早速、ヘルメットをかぶってハーネスを取り付け、リーダの説明を聞く。
(登りに汗を絞られた)
(賀毘礼の峰で基本講習)

広場の周りにロープが張られ、先ずは配布されたスリングをロープに巻きつけて、これにハーネスのカナビラをひっかけて身体を確保する「オートブロックノット」という結び方の説明だった。全体重を掛けてもびくともしないが、このスリングの結び目を手で握った時だけロープとの結合が弛んで移動できる不思議な結び方だ。
説明の後、みんなそれぞれロープにスリングを巻きつけて機能を確認し、何回も繰り返しては要領を習得していた。
(オートブロックノットの説明と実習)

次はトラバースの時のカナビラの付け外しの要領の実習だ。カナビラ一つでは鎖の固定部分を通過するときにカナビラを鎖から外さなければならないが、その瞬間身体の確保が留守になる。そのため二つのカナビラを付けておいて、固定部に着いたら、一つずつ次の鎖に掛け直す。
めんどくさい操作だが、絶対の安全を確保するためには、面倒を厭わない心がけだ大切だ。みんなカナビラの取り付け取り外しを素早くできるよう何度も練習した。
(トラバース時のカナビラ操作の説明と実習)

基本操作が出来るようになったら、実際の岩場を上り下りしての実習だ。リーダが先に下ってロープを張り、それにカナビラで身体に繋いだスリングを巻きつけてオートブロックノットを作って下る。一歩一歩、スリングを握ってはオートブロックを解除しないと次に進めない。そうかと言ってスリングを握りっぱなしで歩いたのでは、安全装置にならない。一人一人が操作の指導を受けながらの下りなので、長い渋滞が続いた。
今までになかった操作が一つ加わったわけで、始めはなんとも面倒な操作に思われた。特にこの道は何も安全装置なしで下ったことのある道なので、余計にその感が強かった。でも、だんだんと慣れるに従って、手順にも慣れてくるものだ。
(早速下りでオートブロックの実習)

下りの練習を終わって一枚岩の岩場の下まで歩くと、今度は殆んど垂直に見える岩場を、オートブロックを操作しながら登る練習だ。登り始めのところで、岩から手を離して万歳をして、オートブロックだけで身体が確保されることを確認してから登り始めた。急な岩場もオートブロックが利いていると思うと安心して登ることができる。
上に上がったリーダが補助ロープで投げてくれて、各人はこれに腰のカナビラを繋ぎ、万一オートブロックが不動作の時でも大きく落下しないよう安全が二重に確保された。この補助ロープの操作方法は随分面倒そうで、一人が登り終えてから補助ロープが投げ返されるまで随分時間がかかったように思えた。途中でサブリーダが補助ロープ操作を引き継いだが、この技術伝授にも時間がかかっていた。
一歩登ってはオートブロックノットを滑らせて持ち上げなければならないが、下るときより登りの方が少しやりにくい。岩場の足がかり、手がかりを探しているうちにその操作が頭から消えてしまい、うっかりするとオートブロックが下から引っ張る状態なってしまう。それでも一枚岩を登り切る頃には手順にも慣れてきて、動きがスムーズになってきた。
(オートブロックの効果確認)
(岩場直登)

一枚岩から賀毘禮の峰への登り返しの岩場は、ロープが引かれていない。最後近くに一枚岩を登った私の前後には誰もいない。何となく心細い気持でみんなの後を追いかけた。途中の岩場の上からは男体山など奥久慈の山並みを見渡して一息入れた。
賀毘禮の峰に登りつくと時刻はもう午後2時に近い、先着の皆さんはもう弁当を広げてぱくついている。水も持たないで歩いたので喉もからから、まだ凍っていたペットボトルの水が美味しかった。
(心細い岩場)
(岩場から奥久慈の展望)

30分の休憩後、もう一度上り下りの実習をすることになった。今度は時間を短くするために、順コースと逆コースに2班に分けられ、いつも遅れる私は逆コースになった。
先ほど一人で心細く登ってきた岩場にもロープが張られ、オートブロックを利かせながら歩いたら随分と楽な気分になっていた。
(下りでの再確認)

登りは朝下ってきたコースを登ったが、一枚岩よりも怖くないし、オートブロックの操作にも慣れてきていたので、15分ほどで登り返すことが出来た。
(登りでの再確認)

みんなが登り返してきてから、最後に登ってきたサブリーダがロープを回収して来た。
最後に、実習中に気が付いた不具合点などについて質疑応答があり、ハーネスの調整の仕方など追加の説明、ロープもからまないように巻取る方法などの説明があった。
(ハーネスの調整)
(ロープの収納)

真夏の太陽が射す中での講習会だったが、一日の実習で岩登りの安全確保の基礎を教わり、いよいよ近づいてきた大キレット越えへの自信のようなものが生まれてきた。なかんずく、「自分の安全を確保するのに一番大事なものは面倒な操作を厭わない事である」と身にしみて感じ取ったのが一番有益だったことのように思った。


inserted by FC2 system