X93.急登の未丈ヶ岳と岩場の荒沢岳

1.動 機
水戸アルパインクラブの9月例会は、一日目が平ヶ岳か未丈ヶ岳の選択、二日目が荒沢岳と越後の山づくしの計画だった。平ヶ岳は百名山だが一昨年歩いたのと同じコースだったので、未丈ヶ岳と荒沢岳を案内してもらった。1日目はマムシで知られる未丈ヶ岳はなかなかの急登だったが一匹の蛇にも出合う事もなく気持よく歩き、全員参加の岩場の荒沢岳ではゆっくりと賑やかに歩いて、次々と現れる岩の悪場を無事通過して素晴らしい展望も楽しんできた。

2.データ
a)山域:未丈ヶ岳(1553m)、荒沢岳(1969m)
b)登山日:2010/09/25(土)曇り、26(日)晴(前夜発)
c)日程:
9/24:日立電鉄南営業所 = 水戸IC =
9/25:小出IC = 泣沢登山口 ---- 未丈ヶ岳 ---- 泣沢登山口 = 銀山平(泊)
9/26:銀山平 ---- 荒沢岳 ---- 銀山平 = 湯之谷温泉 = 小出IC = 水戸IC = 日立電鉄南営業所
d)同行者:水戸アルパイン会員22名(男8、女14)、和子
e)地形図:1/25000 「未丈ヶ岳」

3.山行記録
アクセス
日立自宅 20:30 = 20:40 日立電鉄南営業所 20:50 = 21:20 勝田駅 21:25 = 21:40 水戸駅 = 22:10 水戸IC = 22:35 桜川RP 22:45 = 佐野藤岡 = 0:00 太田桐生IC = 0:50 赤城高原SA 1:00 = 2:10 小出IC = 2:15 道の駅湯之谷 3:10 = 3:40 船着き場 4:00 = 4:00 伝の助小屋 5:10 = 5:15 泣沢登山口

ゆっくりと夕食を食べてから我家を出て、日立電鉄の営業所から20時50分始発のバスに乗り込んだ。東海駅、勝田駅、水戸駅と走って桜川ロードパークで24人目の仲間を拾って北関東道から関越道に回って小出ICで高速をおり、道の駅湯之谷でトイレを使って身支度をし、隣接のコンビニで食料品を買いこんだ。R352からトンネルが続くシルバーラインを走り銀山平に入って船着き場でトイレ休憩してから、今夜の宿舎伝の助小屋に約束の4時に到着した。
平ヶ岳に登る15名はここから宿のバスに乗り換えてすぐに出発して行った。未丈ヶ岳組9名は、明るくなってから歩き始めることになり、ここで朝食を取りながら出発を待った。

1日目:未丈ヶ岳
泣沢登山口 5:30 ---- 6:10 黒又川橋 6:15 ---- 7:00 尾根 7:05 ---- 7:40 ・974 7:45 ---- 7:55 松の木ダオ ---- 8:25 休み 8:30 ---- 9:05 休み 9:15 ---- 9:45 未丈ヶ岳(昼食) 10:10 ---- 10:15 草原 10:20 ---- 11:00 ・1204 ---- 11:35 松の木ダオ 11:40 ---- 11:50 ・974 12:00 ---- 12:55 黒又川橋 ---- 13:35 泣沢登山口 14:10 = 14:20 伝の助小屋(泊)
(未丈ヶ岳登山ルート)

(未丈ヶ岳登山ルートの標高差)

バスはシルバーラインに戻って黒又トンネルと湯の沢トンネルのつなぎ目まで走ると、車道の上に「緊急時避難所」の表示があり、東側に大きなシャッタがあった。大きさに似合わず軽く開けることが出来て、外に出るとそこは広場になっていた。バスはここで待っているわけにはいかないので大湯の宿に向かった。
広場で準備運動をして歩き始めると、少し先の広場には数台の車が停まっていた。テントで朝食を取っている土地の人もいて、そばにはキノコや山ブドウを沢山収穫した籠があった。「この先で三回沢を渡らなければならないよ」と注意してくれた。
(シャッタの泣沢登山口)
(駐車場)

ススキの中をなだらかに数分歩くと沢に急降下する。一つ目は飛び越えられる程の小さな枝沢だったが、二つ目三つ目は泣沢の徒渉で川幅も広くて石の頭を拾いながら渡った。苔むして滑りそうに見えて気持悪く、ジャブジャブ水の中を歩く仲間もいた。
(沢に下る)
(三回徒渉)

二つ目の徒渉をすると、対岸は急な岩壁になっていて狭い足場をたよりにへつりながら歩かなければならなかった。最後の徒渉点は両側がキレット場になっていて、岩場にロープもつけられていた。
キレットを登って山道を歩いた先に黒又川があり、赤い鉄の橋を渡った。橋の両側には綺麗な水が流れる美しい渓谷美があった。
(岩壁をへつる)
(黒又川を橋で渡る)

この先2ヶ所に分かれ道があったが、未丈ヶ岳への道標が立っており、これに従って歩くとすぐに尾根道の登りになった。尾根は両側の切れ落ちた痩せ尾根だったが、樹木が生えているので怖くはない。
未丈ヶ岳はマムシの多い山として有名らしく、リーダはいつもは使わないストックを二本持って前を払いながら歩いてくれた。このストックのおかげか、登山道が綺麗に刈り払いされていたおかげか、今日は気温が低かった所為か、今日一日一匹の蛇にも出合う事がなかった。もし、一度でもマムシに遭遇していたら、蛇嫌いの和子はどうしていただろう。
尾根に上がれば、明日登る予定の荒沢岳を見ることが出来ると楽しみにしていたが、残念ながら頭を厚い雲の中に隠していた。今日は雨が降らなかったのが儲けもの、荒島岳は下り道でも見ることが出来なかった。
(痩せ尾根)
(雲に隠れた荒沢岳)

しばらくなだらかな尾根道が続いたが、まただらだらとした上り坂になり、30分ほど登って・974mのピークに登りついた。目の前の未丈ヶ岳の山頂もガスの中だった。
(急登)
(・974mピーク)

ピークから60m下った所に枯れて根本だけが残った松の木(?)があり、「松の木ダオ」の標識が取り付けてあった。枯れた木は松ではなくて、このあたりには松の木が多いので「松の木ダオ」の名が付いたのかもしれない。
ダオからの登りはブナの木が多くなり、道傍にはいろいろなキノコが生えており、キノコ好きの仲間の足がしょっちゅう止まることになった。路傍にはイワカガミやイワウチワなどの葉が色々と残っており、初夏には賑やかな道になりそうだったが、今は、ところどころにオニシオガマやダイモンジソウ、アキノキリンソウぐらいが咲いているだけだった。
(ブナの美林)
(オニシオガマ)

・1204mとペンキで書かれたブナの木を過ぎると少しガスが薄くなって、目の前の尾根筋の向こうにかすかに未丈ヶ岳の山頂が見えていた。ここまでもキツイ登りだったが、この先もまだまだ長く見えてうんざりさせられた。実際にはここから急登ではあったが、10分少々で山頂に登り着いた。
(・1204の先から見えた未丈の山頂)
(山頂近くのガレの急登)

山頂は一面の笹原で囲まれており、天気が良ければ360°の展望が楽しめるのだろうが、残念!、ガスは一段と濃くなって視界はゼロだった。今朝道の駅で仕入れたおにぎりを食べながらゆっくりと休憩した。
リーダは「山頂近くに良い草原があるはずだ」と言いながら、あちこちの笹を掻き分けながら歩きまわって、ついに探し当ててくれた。その草原は登ってきた方向に少し戻ったところにある東の踏跡を少し下った所にあり、食事後、下山途中でみんなで立ち寄ってみた。ガスで端が見えないほど広い草原で、一面の緑の中に、ところどころイワショウブやオヤマリンドウが咲いていたが、散ったばかりのキンコウカが大きな群落になっていたので、時期にはまっ黄色になって綺麗になるのだろうと思われた。
(未丈ヶ岳山頂)
(山頂部の草原)

下山は往路をそのまま下ったが、登りではきつかった道も、下りでは手入れの良い登山道を気持よく下って行った。途中、荒沢岳の代わりに中岳と越後駒が姿を現してくれた。
気持の悪い徒渉や崖のへつりをこなして登山口に戻って、トンネル内に設置されていた電話でトンネル管理所に連絡して、伝の助小屋経由で大湯温泉で宿泊中の日立電鉄のバスに迎えに来るよう連絡を取ってもらった。面倒な事だが、携帯電話が圏外なので止むをえない。30分ほど待ってやってきたバスに乗って伝の助小屋に入った。
平ヶ岳組はまだ帰ってきておらず、彼らが帰ってくる前の空いている温泉風呂に入って汗を流した。やがて平ヶ岳組も帰ってきて、夕食前に冷たいビールや日本酒で大いに盛り上がった。リーダは一人「明日は暗いうちに出発するから、道を間違えないように下見してくる」と言って出て行き、30分ばかりして帰ってきて「上まで調べてきたから大丈夫」と満足顔、有難いことだ。。
17時半から夕食になり、宿からの地酒荒沢岳の寄進もあって、仲間内での乾杯の挨拶が欲しかったが、長い事で有名な宿の御主人の食事についての説明が長々と続いたので、目で合図しあっての乾杯になった。
食事はご主人の説明通り、土地の食材で調理されたてんぷら、酢の物、お浸し、煮物、佃煮、刺身、焼魚と食卓狭しと並んで美味しく頂いた。
裏庭に簾の子に囲まれた露天風呂があったので、就寝前に男三人で入ってみた。丁度満月が上がってきて気持のいい温泉気分を味わうことができた。
お山も結構、料理も結構、お酒も結構、温泉も結構、静かなお部屋で良い気分で眠りに着くことが出来ました。
(伝の助小屋の御主人)
(露天風呂と満月)


2日目:荒沢岳
伝の助小屋 4:40 ---- 4:42 登山口 ---- 5:45 前山 5:55 ---- 6:45 休み 6:50 ---- 7:20 岩場始点 ---- 8:45 前ー 9:05 ---- 9:55 休み 10:00 ---- 10:45 荒沢岳山頂(昼食) 11:15 ---- 12:40 前ー 12:45 ---- 13:30 休み 13:40 ---- 14:20 休み 14:25 ---- 15:25 休み 15:30 ---- 16:00 水タンク 16:05 ---- 16:10 伝の助小屋
(荒沢岳登山ルート)

(荒沢岳登山ルートの標高差)

荒沢岳は岩場の多い山で、それも相当怖いところが多いらしい。高所恐怖症の女性一人は只見湖の遊覧船を楽しむことになったが、それでも23名の大部隊で歩くので、難所ごとに渋滞することが考えられ、朝4時半、まだ暗いうちに出発することになった。
小屋の庭で準備運動をして国道を3分歩いたところに登山口の標識があり、脇道に入って水タンクがあるところから登り道が始まった。ヘッドランプを点けて歩くが、何となく足が重い。昨夜は温泉で温まって早めに寝たので寝不足はないはずだが、お酒の飲み過ぎだったのだろうか。
(暗いうちに出発)
(ヘッドランプで登る)

足元に気を付けながら登って行くと、東の空がだんだんと明るくなってきた。地平線に雲が出ていて、朝日はなかなか出てこなかったが、雲が朝焼けに赤くなるころには、ヘッドランプがなくても歩けるようになってきた。
朝日が出てくると、周りの木々の葉が朝日を受けて美しく輝きだし、気持のいい山歩きになってきた。今日はいいお天気になりそうだ。なかなかの急登が続いて、暑くなってきて一枚脱いだ。
歩き始めて1時間で三等三角点のある標高1091mの前山に登り着いて一休みした。登山口から320mの急登だった。前山のすぐ先に分岐標があり、登る方向には「山頂へ」だが、下り道が二手に分かれ、登ってきた道には「登山口へ」右に下る道には「伝の助小屋へ」となっていた。地形図ではどっちを歩いても似たような距離に見える。
(朝焼け)
(朝日を受けた広葉樹林)

前山から少し下ってからまた登り返したが、1206mのピークからは小さなアップダウンを繰り返すなだらかな尾根歩き、少し先でまたお休みした。
この辺りからは目の前に荒沢岳とその前に立ちはだかる前ーの険しそうな山容が見えだし、その遠さと険しさに気を引き締めさせられた。後ろには日向倉山の左に昨日登った未丈ヶ岳が見えていた。なかなか格好の良い山容をしており嬉しくなった。左手には越後の名山が並んでいるはずだが、左の展望は木立に遮られて見えない。
(荒沢岳の前に立ちはだかる前ー)
(昨日の未丈ヶ岳と日向倉山)

前ーに近づいてくると赤く「これより岩場注意」と書いた札が立木に取り付けてあり、いよいよ岩場の始まりになった。ストックをしまい、ハーネスを付けて準備した。
(日出ヶ岳山頂展望台)
(一等三角点)

大石の重なる急登の道になり、進行速度が急にスピードダウンして来た。大集団では仕方がない。このあたりから、登山者が後ろから追いついてくるようになり、道を譲ってどんどんと追い越してもらった。
険しいところには鎖が付いていたり、梯子になっていたりで助かったが、岩が濡れていて滑りそうで気を遣いながら登って行った。
(岩場の始まり)
(梯子や鎖が続く)

一登りすると、目の前に前ーの切り立った岩壁が見えてきた。慎重派の男性Taさんがこの岩壁を見て恐れをなし、ここで待機することになった。
どこから取り付くのか心配になったが、先ほど我々を追い越して行った登山者が、岩壁の下の方のトラバース道を歩いていたり、その先の垂直に見える岩場をよじ登っているのが見えて、大体のルートが合点できた。
(荒沢岳と前ーの岩壁)

急な一枚岩の崖を2ヶ所鎖を頼りに下り、その先でトラバース道になった。道とはいえないほど狭く、踏み外したらはるか下まで転落して只では済みそうにない。鎖から手を離さないように慎重に歩いて行った。
(一旦下って)
(岩壁をトラバース)

長いトラバースの先で急坂の登りになった。長い鎖を一人づつ使うので、大渋滞になるのは仕方がない。奥只見湖を見下ろし、遊覧船を見つけたりしながらゆっくりと順番を待つ。
(長い岩場の急登)

その先にも岩場が続き、前ーの山頂に着いた時には心底ほっとした。重い足を引きずってよくここまで来たもんだ。
前ーからは荒沢岳の山容が全部見渡せ、登山ルートもはっきりと見えていた。山頂はまだまだ遠く、高度差も400m以上ある。ゆっくりと休んで英気を養った。
(前ーへの最後の登り)
(前ーの標柱)

前ーから荒島岳左肩までは岩場もなく、それほどの急登でもないのだが、登り一辺倒の道で汗を絞られた。だんだんと雲も薄くなってきて、平ヶ岳も見えてきて展望を楽しみながらゆっくりと登って行った。
(前ーから荒沢岳)
(長い急登)

荒沢岳の左肩まで登ると、また岩壁の登りになった。岩尾根を岩の割れ目に足を掛けながら右に左にと登って行く。
(山頂近くの岩壁)

その上にも、大石の重なりを登るところがあり、これを越えれば山頂かと思って一気に登り切ると、山頂はその又先で、草付きの道を登ってやっと山頂に登り着いた。
(山頂への最後の岩場)
(荒沢岳山頂)

山頂は360°の大展望、山座同定をしながら伝の助小屋謹製のおにぎりをほおばった。越後駒、八海山、中の岳、谷川連峰、武尊山、平ヶ岳、日光白根、燧ヶ岳、会津駒、未丈ヶ岳、浅草岳とみんな見えていて嬉しかった。
(荒沢岳山頂からの展望)

それぞれの記念写真を取り、全員での集合写真を撮ってから下山にかかった。前ーまではますます視界が良くなった展望を楽しみながら賑やかに下った。
(下りは好展望)

前ーからの岩場は、登りよりも気を遣う。リーダが取り付けてくれた補助のロープに助けられながら慎重に下って行った。先を行く女性陣が岩場を下り切った時には大きな歓声が上がっていたが、後ろを歩く男性陣は、この声を聞きながらまだまだ緊張を強いられていた。
難所を無事通過してみんな満足いっぱいだったが、精神は疲れ果て、いつも賑やかに歩く女性陣もこれから先は静かな山行になった。
(岩場は登りよりも下りの方が怖い)

何回か休憩を取りながら登山口まで下り、水タンクの蛇口から流れ出る水を飲んだ。冷たい水でとても美味しく、心行くまでガブガブと飲んだ。ビールを美味しく飲むために水は飲まない方がいいと言って伝の助小屋に急いだ仲間もいたが。

4日目:帰宅
伝の助小屋 16:25 = 16:50 湯之谷日帰り温泉(入浴) 17:30 = 17:45 コンビニ 17:50 = 17:55 小出IC = 18:40 赤城高原SA(夕食) 19:25 = 20:25 太田桐生IC = 21:00 佐野藤岡IC = 21:45 桜川RP 21:50 = 22:20 水戸IC = 22:40 水戸駅 = 23:00 勝田駅 = 23:30 日立電鉄南営業所 23:35 = 23:45 日立自宅

伝の助小屋に帰りついて、部屋から荷物を取りだし、靴を履き替えて待っていたバスに乗り込んだ。伝の助小屋の風呂は小さいので、みんなが入り切るには時間がかかる。帰途、湯之谷の日帰り温泉に立ち寄って汗を流し、赤城高原SAで夕食を食べて、一路茨城に帰ってきた。岩山はやっぱり面白い。今日は標高差1200m以上の登りもあって疲れ果てたが、みんなの満足げな寝顔を乗せてバスは走った。


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