Y64.甲武信ヶ岳
(シャクナゲとベニバナイチヤクソウ)

1.動 機
甲武信ヶ岳はシャクナゲが綺麗だと有名で、ここのところ毎年この時期を狙って計画をしていたが、天気予報が悪かったり他の予定が重なったりで登れないでいた。先日日光黒檜岳のシャクナゲを見て、今年はどうしても登ろうと決め、梅雨の合間の降水確率30%の2日間を狙って前夜発、山小屋一泊で出かけて来た。展望は良くなかったが、毛木平のベニバナイチヤクソウと十文字峠のシャクナゲが丁度見頃で迎えてくれた。

2.データ
a)山域:甲武信ヶ岳(2475)、木賊山(2469)、三宝山(2484)、武信白岩山(2288)、大山(2225)
b)登山日:2011/6/13(火)曇、14(水)曇後晴、15(木)曇
c)日程:
アクセス:6/13 日立自宅 17:25発 = 日立南IC = 横川SA(夕食) = 佐久平PA(車中泊)
6/14 佐久平PA 5:50発 = 佐久IC = 佐久コンビニ(朝食) = 毛木平 7:50到着
山行:6/14 毛木平 8:20発 ---- 千曲川源流遊歩道 ---- 甲武信ヶ岳 ---- 木賊山 ---- 荒川水源地 ---- 甲武信小屋 16:05着(泊)
6/15:甲武信小屋 6:00発 ---- 三宝山 ---- 武信白岩 ---- 大山 ---- 十文字小屋 ---- 乙女の森 ---- カモシカ展望台 ---- 一里観音菩薩像 ---- 毛木平 12:35着
(甲武信ヶ岳周回ルート)
(甲武信ヶ岳周回ルートの標高差)

帰途:毛木平 13:30発 = 海の口温泉(入浴)= 佐久南IC = 横川SA(夕食) = 日立南IC = 日立自宅 18:00帰着
d)同行者:和子
e)地形図:1/25000 「金峰山」「居倉」

3.山行記録
アクセス:6/13 日立自宅 17:25 = 17:40 日立南IC = 18:35 都賀JCT = 18:40 岩船JCT = 19:15 藤岡JCT = 19:40 横川SA(夕食) 20:20 = 20:35 佐久平PA(車中泊)
6/14 佐久平PA 5:50 = 6:05 佐久IC = 6:30 佐久コンビニ(朝食) 6:40 = 7:50 毛木平

和子のお友達との会合が終わってから出発、ガソリンを満タンにして日立南ICから高速に乗り、全通したばかりの北関東道を通って一気に横川SAまで走ってレストランの夕食を取る。夕食を終ったのは20時過ぎ、毛木平まで一般道を75km走ってから車中泊してもいいが、高速PAの方が明かりもあって便利だしトイレも快適、それに明日になってから高速を下りた方が高速利用料金が安くなる。明日の山行には時間的ゆとりもあるので次の佐久平PAで車中泊したが、夜明しするトラックが多くて騒音が少々煩いのが難点だった。
朝5時過ぎに起きだしてお湯を沸かしてポットに入れて出発、佐久ICで高速を深夜割引で降りて、佐久の街中のコンビニで朝食を取り、昼食のおにぎりを買って毛木平に入った。

山行:6/14 毛木平 8:20 ---- 8:25 十文字峠分岐 ---- 8:45 大山祗神社 ---- 9:50 休憩 10:00 ---- 10:15 滑滝 10:20 ---- 11:35 水源地標(昼食) 12:10 ---- 12:25 縦走路 ---- 12:50 甲武信ヶ岳 13:35 ---- 13:50 甲武信小屋 14:40 ---- 15:00 木賊山 15:05 ---- 15:20 甲武信小屋 ---- 15:35 荒川水源地 15:45 ---- 16:05 甲武信小屋(泊)

毛木平駐車場の100mほど手前の山中がピンクに染まっていた。路側に車を停めて見ると、一面満開のベニバナイチヤクソウだった。ベニバナイチヤクソウは2年前に岩手の山巡りをした時に兜明神岳でお目にかかって感激したが、それどころではない大群落、靴を履き替えてシャッタを押しまくった。
そこから駐車場はすぐだった。前に駐車していた男性から「ベニバナイチヤクソウってありました?」の問いかけあり、「一面ピンクでしたよ。明日は雨かもしれないから今日見ておいた方が良いですよ。歩いて行っても100mほど」とお勧めした。
駐車場の右肩の斜面を今度はレンゲツツジがところどころ紅色に染めていた。勿論これにもシャッタを押した。
(ベニバナイチヤクソウ)
(レンゲツツジ)

駐車場に停まっている車は20台もあったが、広い駐車場はまだまだがらんとした感じだった。身支度を整えて綺麗なトイレで用をたして駐車場を出発したのは8時20分、緑滴る林道に入って行った。
シラカバ林の中、十文字峠への分岐を左に見送って林道を歩いて行くと、マルバタケブキはまだ葉を茂らせるだけだったが、ノウゴウイチゴが白い花を散りばめたように咲いており、ハシリドコロが赤紫の花を咲かせていた。
(毛木平駐車場)
(十文字峠分岐)

やがて左下に千曲川源流の清冽な流れが見えはじめ、岩を食むせせらぎの音も快い。
気持よく歩いて行くと右に大山祗神社の古びた木の鳥居が見えてきて、ここで沢は左の東沢、右の西沢に分かれる。今日の安全をお願いして西沢沿いの登山道を行く。
(千曲川源流)
(大山祗神社)

ここから「千曲川源流遊歩道」となり、少し歩くと道は少し急になり、根っ子や岩が目立ってきて山道らしくなってきた。見渡す限りの倒木や岩が苔むしていて、もののけ姫が出てきそうな雰囲気もある。大きな自然石の上に慰霊の碑が立っていたが、どんな人の慰霊なのだろうか。
そんな中にも、苔の上一面にミツバツツジの薄紫の花が散り敷いていたり、苔の間からミヤマカタバミが清楚な花を咲かせていたり、谷間に見える高木には白い花も咲いていた。落ちていた枝の花から見るとミヤマザクラのように思ったが、真偽のほどは?
カエルの声を聞きながら一休みしていると単独行の男性が追いついてきた。山口からJRを使って来たとのことで、バス便などの都合で甲武信小屋と十文字小屋両方に泊る積りと超贅沢なお話を聞かせていただいた。駐車場でベニバナイチヤクソウをお勧めした男性も追いついてきて、ここから甲武信小屋まで4人が追いつ追われつ歩くことになった。
西沢も急流になってきて小滝が続き、カエルの鳴き声とともに沢の音も大きくなってきたように思われる。少し大きめの綺麗な滝があってこれが滑滝だと思って何枚もシャッタを押したが、そのすぐ上流に一枚岩を滑るように流れ下る美しい滝があって「ナメ滝」の立札が立っていた。毛木平から歩き始めてここまで2時間が経っているが「甲武信ヶ岳まで2時間」の表示があり、山頂までまだまだ遠い。
(千曲川源流遊歩道)
(滑滝)

滑滝を過ぎると流れは細くなり、左岸、右岸と渡りながら登って行く。もののけ姫の森の雰囲気が続くが、足元にはミヤマカタバミ、キバナノタカノツメ、タチツボスミレなど結構賑やかだ。歩いていて本当に気持ちのいい道で、「登山道」ではなくて「遊歩道」と名付けてあるのがうなづける。
(千曲川源流を右に左に)

滑滝から75分で「千曲川・信濃川水源地」の大きな標柱の立っている広場に到着した。山口の男性とシャッタの押し合いをした。木立の中には「千曲川源流調査記念・植田電力センタ」の木柱も立っていた。
広場は格好の休憩場所になっているようで、山頂から下ってきたグループがザックを置いて弁当を広げ、それぞれコップを手に、源流部に下りて行って水を汲み始めた。谷間に下りてみると上流部はロープで通せんぼしてあるが、ちょろちょろと水が流れてきていた。黒部源流では涸れ沢のあちこちから清水が湧き出していて本当に最初の一滴が生まれる水源地の感があったが、ここの源流は小さいながらももう流れになっていた。私も真似して水を掬って飲んでみたが、なかなか美味しい水でありました。
(水源地標)
(水源の水を汲む)

グループと一緒になって賑やかに昼食をとってからまた登り始めた。ここからも相変わらずもののけ姫の森が続くが、道は斜度を増してきて汗が滲んできた。15分頑張ると、金峰山から来る奥秩父主脈縦走路に飛び出して一息ついた。
縦走路はしばらく平坦な道が続き、シャクナゲの茂みもあるのに花は一輪も咲いていない。少々がっかりするが、高度が高いからだろうと慰め合う。途中、右のガレ場に上がって見ると、向かいに国師ヶ岳から黒金山の山々が並び、その左に甲武信ヶ岳が大きく聳えていた。何か所ものガレた斜面が続くその上に、細長い標柱が立つ甲武信ヶ岳の山頂があった。
(急登)
(奥秩父主脈縦走路)

道の斜度が増してくると木の根っこの道になり、やがてガレた斜面に飛び出してジグザグに登って行くことになった。
ガレ場を頑張るとすぐに山頂に飛び出す。早速山頂標柱の前で山口の男性に証拠写真のシャッタを押してもらった。
(山頂直下のガレ場)
(甲武信ヶ岳山頂)

山頂には甲武信ヶ岳に何度も登ったことがあるというご夫婦がいて、周りの山々の名前を教えていただく。雲が厚くて富士山やアルプスなど遠くの山は見えないが、五丈岩が目立つ金峰山を中心に、左に国師ヶ岳、北奥千丈岳、黒金山、乾徳山、木賊山、右に瑞牆山、小川山、飛んで三宝山と並ぶ。三宝山の右は完全に雲の中だった。
小川山と三宝山の間にポコポコした山や鋸の様な小さな山が見えていて、西上州の山々かと思って地図を開いたら少し方向が違う。男山、天狗山、御座山という山で長野県の端にある山々だった。
三宝山の山頂近くに大岩が見えていて、三宝岩といって眺めが良いから登ると良いよと勧められた。
(金峰山方向)
(三宝山)

ゆっくりと山座同定したり山談議に花を咲かせてから甲武信小屋に向かって下り始めた。木賊山を目の前にして進むと立枯れの木が立ち並んで一風変わった風景になり、その先に石を高く積んだケルンが並んでいた。ケルンの周りにコイワカガミが数輪咲いていたのが健気で可愛かった。
ケルンの先で展望が開け、木賊山との鞍部に甲武信小屋が見えていたが、山頂から400mとあったが、随分下らなければならないように見えた。
(山頂を下る)
(木賊山と甲武信小屋)

小屋に着いたのは13時50分、小屋の扉を開けると中には誰もいなくて「受付は14時からです」の表示があり、2階の部屋の準備中だった北爪青年が顔を出して「もう少し待ってね」と申し訳なさそう。
こやの奥に回ると高みに「奥秩父遭難者慰霊碑」と「荒川水源の碑」と昭和二年の「村越忠雄君追悼の碑」が立っていた。北爪青年の話では日出はここからでも拝めるとのことだった。こちら側にトイレ棟が新設されていて、バイオ式で気持が良い。
(甲武信小屋)
(奥秩父遭難者慰霊碑)

受付が14時からなのは周知の様で、時間になると 数組が集まってきて、それぞれに受付を済ませて2階の部屋に上がった。建物は古いが綺麗に掃除されていて気持ちが良い。二階も2部屋に分かれているが、今日の予約は15人、1部屋だけでもゆっくりと寝ることができそうだ。
コーヒを飲んでゆっくりと休憩したが、まだたっぷり時間がある。北爪さんに伺いをたてると「木賊山の山頂は展望ないが、中腹に展望のいいところがあってそこから見る甲武信ヶ岳の格好は立派。千曲川の源流を見てきたのなら荒川の源流までくだってみるのも面白いでしょう。20分もあれば着くよ。」とのこと。
ザックを置いて空身で木賊山に登り始めると数分のところにヘリポートの様な空き地があり、目の前に甲武信ヶ岳の三角形の山容が聳えていた。甲武信ヶ岳の左には小川山、金峰山、国師ヶ岳を見渡すことができてなかなかの展望だった。「これで目的は達成したのだからもう引き返そうよ」との声もあったが、余りにあっけなく、ここが北爪さんのお薦めのビューポイントとは思えず、少し頑張ってみようと10分ほど登って行くと、次のザレ場に出た。ここまで登ると更に展望が広くなっていた。
ここでゆっくりと展望を楽しんでいるよという和子を置いて、一人で木賊山の山頂に向かった。余り待たせて和子におかんむりになられては大変だと急ぐが、山頂まで丸太の階段道が続き、息が切れて来る。山頂は小広くなっているがお言葉通り樹木に囲まれて展望はなく、三等三角点と山頂標柱があり、そのそばに木のテーブルがあった。証拠写真を撮りたいが三脚も置いてきた。テーブルの上に直にカメラを置いてセルフタイマーを掛けるが、テーブルの板がデコボコで調整に苦労する。特に三角点は低いので調整に手間取って写真撮りに5分もかかってしまった。急いでザレ場まで駆け下ると、視界が前よりも良くなっていて、甲武信ヶ岳の右に三宝山が見えるようになっていた。
(木賊山山頂)
(甲武信ヶ岳と三宝山)

小屋まで下って、更に荒川水源地まで下る。ここもまた苔蒸したもののけ姫の森、その急斜面にヘアピンカーブを切ってあり、20分と聞いて多寡をくくっていたがなかなか着かない。先に下っていたご夫婦が登ってきて、「もうすぐよ。雪渓も残っているわよ」と励ましてくれた。
「荒川源流点」の標柱が立つ谷底まで下ると、そこは二つの沢の合流点だった。これまた最初の一滴とは程遠く、さらさらと水が流れていた。コップも置いてきたので、手で掬って源流の水を味わってみた。千曲川の水と荒川の水の違いは分りませんでした。
(苔むした道)
(荒川水源地)

小屋まで戻る登りがきつかった。甲武信小屋から木賊山まで標高差100mだが、荒川源流までは150mある。荒川源流を先にしていたら、木賊山登りの気力は残っていなかったかもしれない。
16時に小屋に戻って、17時半の夕食まで皆さんと同じに布団にもぐってひと眠りした。「夕食の準備ができましたよ」の声に起こされると、カレーの良い匂いが漂っていた。一階に下りると、今日は北爪さん一人で頑張っていて、各自お盆におかずとデザートとカレー皿を載せて順番に北爪さんにご飯を盛り付けカレーをかけて貰う。美味しいカレーだった。
夕食後は、大きなモニターを使って小屋のオーナの徳さん作成の甲武信岳のビデオ放映があり、その後に追加で、テレビ局が作成した徳さん北爪さんが出演する東沢遡行のスリリングな場面の放映があった。満足な一日の夢を見ながらぐっすりと眠った。

6/15:甲武信小屋 6:00 ---- 6:10 甲武信岳分岐 ---- 6:40 三宝岩 6:55 ---- 7:00 三宝山 7:05 ---- 8:05 武信白岩標識 8:10 ---- 8:30 武信白岩分岐標 ---- 9:25 大山 9:35 ---- 10:15 十文字小屋 10:20 ---- 10:25 乙女の森 10:30 ---- 10:45 カモシカ展望台 10:50 ---- 11:00 十文字小屋 ---- 11:05 十文字峠 ---- 11:30 八丁坂の頭 ---- 12:20 一里観音菩薩像 ---- 12:25 霧橋 ---- 12:35 毛木平(昼食)

4時18分の日出時間に外に出て、遭難者慰霊碑のところまで上って見たが、一面のガスで日出は拝めなかった。5時からの朝食を頂いてから爪さんに見送られてみんな三々五々小屋を出てゆく。今夜十文字小屋に泊る山口の男性はまた甲武信ヶ岳に登って行くが、我家は避難者慰霊碑のところの鹿よけの(?)扉を開けてから巻道に入った。
コメツガの密集する森は、ここもまた緑の苔がいっぱいでもののけ姫の森、朝の空気を吸いながら気持よく歩いて行った。
(爪さんと一緒に)
(巻道)

巻道を10分歩くと甲武信ヶ岳山頂からの道と合流し、三宝山に向かって右に進む。ガスが濃くなって幻想的な雰囲気になってきた。展望は望めなくなるが、この雰囲気も悪くない。
合流点から木の根っこや岩の出っ張る道を緩やかに登って行くと、三宝岩の分岐点があった。道標は古くて目立たないし、道も狭いのでうっかり見逃しそうだったが、丁度ご夫婦が三宝岩から帰って来たところだったので、素通りしないで済んだ。
(三宝山へ稜線の道)
(三宝岩分岐)

分岐点から数分歩くと岩の重なるところに出た。一番大きな岩に見当を付けて、わずかな手掛かりを頼りに攀じ登った。周りに邪魔するものがないので絶好の展望台のようだが、今日は残念ながらガスが深い。すぐそこに見えるはずの甲武信ヶ岳さえも見えなかった。しばらく待って見たが好転に兆しはなく、次のご夫婦もやってきたので諦めて降りることにした。
分岐に戻って三宝山はすぐだった。一等三角点があり、標高も甲武信ヶ岳よりも高いが、周りが樹木に囲まれて展望が良くない。埼玉県の最高峰とのことであるが、展望が良くないからかあまり有名でない山である。山頂近くにシャクナゲの樹叢があったが花は咲いておらず、我家も証拠写真だけ撮って次に向かった。
(三宝岩)
(三宝山山頂)

三宝山からの下り道が、もののけ姫の森の名に一番ぴったりの雰囲気だった。宮之浦岳の辻峠やニュージーランドのルートバーントラックにも負けていないねと話しながら気持よく下って行った。
鞍部まで下ると尻岩という変わった名前の付いた大岩があった。巨人のお尻に見立てたのだろうか。
(三宝山下り)
(尻岩)

尻岩からは大きな岩が点在するようになり、岩の山頂を巻くような道を根っ子を踏んだり岩を越えたりしながら登って行った。
ピークを巻くと山頂に引き返す踏跡があった。「もしかして武信白岩山かな」と言うと「武信白岩山にしては三宝山から近過ぎる」と和子が言い張る。武信白岩は登山禁止になっているほどの凄い岩山だから確かに違いそうだが、時間はあることなのでとにかく踏跡に入り込んでみた。少し登るとシャクナゲの木の陰の石柱の上に「武信白岩山」の看板が取り付けてあった。ポケナビを見ると、確かに2288mのピーク点を示している。武信白岩山にも登っちゃった!勿論証拠写真も撮りました。
(岩の登り)
(武信白岩山)

登山道に引き返して先に進むと、これまでよりももっと岩っぽい道になり梯子まで出て来た。岩の重なりを縫うように右に左にしながら登って行く。こんなところが好きな和子は嬉々として登って行く。
大岩の向こうに凄い岩山が姿を現した。てっぺんに山頂標らしき大きな木柱も見えるので、これが本当の武信白岩山に違いない。
(その先はもっと岩の道)
(本当の?武信白岩)

武信白岩の山容が見えてから少し下ると、今度は鎖のある岩場の登りになってきた。これを登ると山頂を巻く道になった。
巻道を行くと、右手の山頂部の岩に何か所も真っ赤なペンキで大きく「」を書いてあった。諦めきれず登るルートを探っていると「絶対だめ!」と和子の声が飛んでくる。まあ2288mには登ったのだから、このピークはパスしてもいいか。
(武信白岩の巻道)
(進入禁止)

本当の?武信白岩を下る辺りからシャクナゲの花が見られるようになってきた。岩場は温まりやすいからなのだろうか、他のところよりも一足早く咲いている。咲き始めだから花の色も新鮮でとても綺麗だ。シャッタを押しながら下って行った。
次の小さなピークに登り返して越えたところで、目の前に尖った山が見えて来た。大山の筈である。
(シャクナゲ咲き始め)
(大山)

下り切ってからの登りが短いが大変な急登だった。岩場を登り切ると左手に展望がよさそうな岩棚があった。上って見たが、やはり今日は何も見えない。
後ろに大山の山頂があり、人の話し声が聞こえる。そちらに上がって見ると山頂はシャクナゲの花園だった。、大山を示す山名標識は見つからなかったが、ここが大山でシャクナゲと展望の両方を楽しめるところのようだった。山頂部を下ったり登ったり、新鮮な花を見付けてはシャッタを押しながら楽しんだ。
(大山へは急登)
(大山山頂)

十文字峠の道標の方向に下ると、鎖場もある岩場の下りが続いた。誰でも上り下りできる岩場のはずだが、慎重に一歩一歩足元を確認しながら下って行った。
岩場を下るとコメツガの林の尾根道になり、木の根っこ道になってきた。なかなかの急坂が続いた。
(大山の下り)
(尾根道)

だんだんとシャクナゲの木が多くなり、花数も多くなってきた。十文字峠が近くなると左下の谷間に一面シャクナゲの花で埋め尽くされているところもあった。これが後で訪れた乙女の森だったのだろうと思われた。
十文字小屋まで下ると、十文字小屋は大輪のシャクナゲの花に囲まれていた。山口の男性から十文字小屋の女主人が乙女の森と一緒に丁寧に手入れされているからだと聞いた。見事なシャクナゲを眺めながら小屋の周りを一回りした。薄紫のミツバツツジの花も咲いて異彩を放っていた。
(十文字小屋に近づく)
(十文字小屋)

小屋前の休憩所にザックを置いて、空身で乙女の森に出かけた。カモシカ展望台への道から左に分かれて少し登るとすぐにシャクナゲの花の森、乙女の森だった。一面シャクナゲの花ばっかりだ。先日の日光黒檜岳など目ではない。
小さな展望台(足場)が作られていて、一面の花園を少し上から鑑賞できるようになっている。始めの展望台では先客が乗って熱心に撮影中だったので、もっと奥に進むともう一つの展望台があり、先客に席を譲ってもらえた。登って見ると、すぐ近くに大輪の花があり、向かいの斜面にも一面に花開いていた。綺麗な花をゆっくりと鑑賞し、写真を何枚も撮ってから、次にやってきたご夫婦に席を譲った。
(乙女の森(奥の展望台から))

入口近くの展望台に戻って登って見ると、谷全体のシャクナゲを綺麗に見渡せるようになっていた。
(乙女の森(手前の展望台から))

シャクナゲの花を心ゆくまで楽しんで分岐まで戻り、どんなところか判らないが、カモシカ展望台まで足を伸ばしてみることにした。5分歩いて谷間まで下ると十文字小屋でキャンプする人のための水場があり、ホースから水が流れ出ていた。
カモシカ展望台はここから10分歩いたところにある岩棚の上で、視界が悪いとはいえ、歩いてきた大山や武信白岩が見えていた。
(水場)
(カモシカ展望台)

十文字小屋に引き返してザックを背負ってすぐに十文字峠に下った。ガイドブックでは峠から十文字山に向かいその先にもシャクナゲが多いところがあるらしいが、乙女の森で充分に満足、十文字山を巻いて下る一般コースを下ることにした。
しばらくなだらかな下り坂が続いたが、八丁坂の頭からは急斜面をヘアピンを繰り返しながら下る長い長い下り坂になった。登って来るグループに何度も出合ったが、みんな息を切らしながら登っていた。余り変化のないこの坂を登るのはつらそうだ。綺麗な千曲川源流遊歩道を登りに選んで良かったと思う。
(八丁坂の下り)

急坂を下り切ると、沢沿いの道になり、徒渉をを2度繰り返すと一里観音菩薩の石像があった。その先で丸太の橋を渡って広くなった道を辿ると立派な霧橋があり、ここからすぐに林道に出て、そのさき500mで毛木平の駐車場に戻った。
(沢を渡って)
(千曲源流狭霧橋)

毛木平のレンゲツツジは一晩のうちに開花が進み、一段とあでやかになっていた。ツツジを眺めながらベンチに座って山小屋で入れて貰ったポットのお湯でコーヒを飲みながら行動食で空腹を満たした。
(2日目のレンゲツツジ(1))

(2日目のレンゲツツジ(2))

車に乗ってベニバナイチヤクソウの森に移動すると、三脚でかまえるプロの?カメラマンがいた。我家ももう一度撮影を始めた。良く見ると林道の下の森の中にも一面ベニバナイチヤクソウが咲いていた。陽が当たらないので目立たないが、花数は下の森の方が多そうだった。
(2日目のベニバナイチヤクソウ(1))

(2日目のベニバナイチヤクソウ(2))

帰途:毛木平 13:30発 = 14:10 海の口温泉(入浴) 15:20 = 16:20 佐久南IC = 16:45 横川SA(夕食) 17:15 = 19:10 日立南IC = 日立自宅 18:00帰着

イチヤクソウの森を過ぎると、高原野菜の畑の中の道になる。全面白いピニルシートで覆われた野菜畑が何処までも続く光景が印象的だった。
(マルチングされた高原野菜畑)

海の口温泉で汗を流し、開通したばかりで無料開放中の佐久南ICから高速に乗り、横川SAで昼食とも夕食とも付かない食事を取って日立に帰ってきた。シャクナゲとベニバナイチヤクソウで満足いっぱいの山行だった。


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