Z722.桃洞渓谷
(MACの東北山行(2日目))

1.動 機
 北秋田市観光情報サイトによれば「桃洞、赤水渓谷は、太平湖・小又峡上流部のノロ川 源流部にあり、なだらかなU字渓谷に大小 のおう穴と滝が点在し、清流のきらめきと稜線の鮮やかな彩りの中を散策するコースは天国の散歩道と呼ばれています。桃洞渓谷は森吉山野生鳥獣センターから桃洞(とうどう)滝まで4.2キロの遊歩道が整備され、途中、クマゲラが生息するというノロ川ブナ原生林ではそのクマゲラの気配を感じながらの森林浴や自然観察などが楽しめ、渓谷では桃洞滝を始めとする滝めぐりができます。」とあり、
 森吉山ネイチャー協会のトレッキングガイドによれば「さらに桃洞滝上流には支流の9段ノ滝、中ノ滝、男滝が連続する奥森吉の源流部の一つである。おう穴を飛び越えながら遡行すること約2時間で裏安歩道に出会う。」とある。
 赤水渓谷から玉川温泉へ抜けるコースや、大平湖から小又渓谷を遡上するコースも検討していたが、結局仲間からの希望が強かった桃洞渓谷になった。桃洞滝から奥の沢登りを無事に歩き通せるかどうか少なからず心配していたが、稲田さん持参の荒縄による滑り止め効果と、永井リーダの完璧なコース取りやペース配分、要所でのロープ張りなどによって全員無事歩き通すことができ、今回一番(今年一番)の感激山行になった。

 計画時点から相談に乗っていただいていたNPO法人 冒険の鍵クーンの村田君子さんに、「みんな大満足の山行になりました」とお礼のメールを送ったところ、不思議に思っていた人数制限の橋と男滝のロープの部分に付いて下記解説を送ってもらえました。
@木橋の一人づつ渡るべし・鉄板のには何もない
 理由は、本来は水平のものでしたが豪雪の重さで中央が少しづつ窪み、年々その歪みが増しております事からです。鉄板の橋は増水毎に(年に数回)破壊され架け替えております。補修ごと強度を確認しております。深秋には橋を撤去します
A中滝にはロープがあり、男滝にはなかった
 理由は、ハッキリしませんが、中滝のロープは写真を撮る時に目立ちません(木々に隠れて)が、男滝は周囲に木などがなく、ロープがクッキリと目立ちますので、人々が多く入るようになってからは時々除去されることがあります。苦労された模様、申し訳ございませんでした(ロープが無くても手足で右側を登れますが、難儀の様子が伺えました)
(男岩をよく見つけましたね)

2.データ
a)山域:桃洞滝(670m)、高場森(900m)
b)登山日:2012/7/23(月)晴時々小雨
c)コースタイム:
森吉山荘 7:00 7:30 野生鳥獣センタ 7:45 ---- 8:00 森吉山分岐 ---- 8:35 赤水渓谷分岐 8:40 ---- 8:55 徒渉点 9:15 ---- 9:20 桃洞滝 9:25 ---- 9:45 九段滝 ---- 10:05 中滝 ---- 10:10 男滝 10:45 ---- 11:45 裏安歩道出合(昼食) 12:10 ---- 12:50 高場森 12:55 ---- 13:30 割沢分岐 ---- 13:50 黒石林道 14:00 ---- 14:45 黒石分岐 ---- 15:25 森吉山分岐 ---- 15:35 野生鳥獣センタ 15:45 = 16:15 県道309 = 16:40 R105 = 17:10 R285コンビニ 17:20 = 17:40 道の駅ひない 17:45 = 17:50 R103 = 18:10 十和田IC = 18:35 安代IC = 19:00 七時雨山荘(泊)
(桃洞渓谷遡上コース)
(桃洞渓谷遡上コース高低差)

d)同行者:水戸アルパイン会員12名(男7、女5)、和子
e)地形図:1/25000 「森吉山」「玉川温泉」
 
3.山行記録
 昨夜作り置きの朝食を食べて、7時に森吉山荘を出発、途中路肩が崩れた所もあったが、30分で無事野生鳥獣センタの駐車場に到着した。まだセンタは開いていないが、周りを歩くと監視カメラが後を追って首を振るのが面白かった。
 センタ前の広場で準備運動をして「桃洞滝4.2km」の道標に従って舗装された歩道を歩き始めた。
(野生鳥獣センタで準備運動)
(スタート)

 200mで階段道になり、これを下ると沢を飛び石で渡る。ここで滑ってはみっともないので慎重に渡る。
 飛び石の先で道はバリアフリーの遊歩道に入り、快適に歩いて行く。
(飛び石)
(遊歩道)

コンクリートの橋を渡って歩いて行くと、分岐に立派な木の橋が現れた。桃洞渓谷にはこの橋を渡るのだが、「一人ずつ、橋の上では立ち止まらずに渡って下さい。」の注意書きがあり、「どうしてこの橋が定員一人なの?」と言いながらも間隔を開けて渡って行った。
すぐ先に鉄板で作られた頼りなさそうな橋が現れたが、こちらには何も注意書きがなくどんどん渡って行った。前の立派に見える橋には何か設計ミスでもあったのかな。
 現地からのコメント
 理由は、本来は水平のものでしたが豪雪の重さで中央が少しづつ窪み、年々その歪みが増しております事からです 鉄板の橋は増水毎に(年に数回)破壊され架け替えております。補修ごと強度を確認しております。深秋には橋を撤去します。
(一人づつ)
(制限なし)

 橋を渡るとノロ川遊歩道に入り、間もなく「割沢森、森吉山方面」への分岐があったが、帰りにはここに出てくるはずだ。
 分岐を直進するとノロ川遊歩道が続きブナ林の真っただ中を歩いて行く気分、気持よく歩いて行く。
(森吉山分岐)
(ブナ林)

 野生鳥獣センタから50分で赤水沢への分岐点に着いて一休み。赤水渓谷から玉川温泉に行くにはこの川を渡るらしい。
 赤水沢分岐から300mの所で、左の川に黒い一枚岩の滝が現れた。横滝だ。水量が少なくて迫力が今一つだが、雨上がりなどで水量が増えると迫力満点の滝になるのだろう。
(赤水渓谷分岐)
(横滝)

 横滝を過ぎると両側の山が迫ってきて遊歩道がなくなり、川の畔の岩棚を歩くようになり、桃洞滝には川を渡って対岸に渡る。この徒渉点には丸太を飛び石のように並べてあったが、途中の丸太が壊れて横倒しになっていて、流れに入って渡るしかない。やむなくここで足周りを登山靴から沢歩きに切り替えた。フェルト底の沢歩き用の靴を用意して来た人は、今日最初からこれを履いてきているので、みんなを眺めているだけ。
 事前に現地ガイドさんに問い合わせし「新しい地下足袋ならスパイク付でなくても大丈夫」のコメントを貰って、幌尻山の時の草鞋を付けることは皆さんには薦めていなかったのだが、稲田さんが荒縄をたっぷり持参してくれていて、地下足袋の人はこれをしっかりと巻きつけた。この荒縄は苔の生えた岩を歩く時に効果絶大で、一人も転ぶ人が出なかったし、なにしろ安心して歩けた心理的効果が大きかったように思う。
 20分かけて足周りをしっかりとさせて川を渡る。冷たい流れが気持ちいい。
(沢登り装束)
(徒渉点)

 川を渡って次々と現れる小さな滝(段差)を眺めながら右岸の岩棚を歩いて行くと、桃洞渓谷のシンボル女滝が見えて来た。
(桃洞滝へ)
(桃洞滝が見えた!)

 目の前にガイドブックで何度も眺めた美しい滝を目の前にして、みんな息をのんで声も出ない。あまりじっと眺めていると、少し気恥ずかしくなってくる形でもある。
(桃洞滝:女滝)

 美しい滝を眺めてから集合写真を撮って、更に上流部の桃洞渓谷の遡上に向かった。この女滝を本当に登れるのか心配になってきたが、リーダが左岸を登って行く後に付いてて行くと、不思議に足場も見えてくる。
 それでも登るにつれて後ろから登って来る仲間の姿が小さく見え、高度感も増してきて、「ここで足を滑らせたらお終いだ」と緊張感で一杯になる。
(女滝脇を登る)
(上から)

 女滝を上がると、ここからは観光客は見られない桃洞渓谷の核心部に入る。一枚岩の滑滝と甌穴の連続の絶景が続く。岩の表面は一面濡れていて、景色に気を取られてうっかり気を抜くとズルッとくる。
(滝の上に上がって)
(浅瀬を登る)

流れの水深は深くはないが、至るところに小滝やトロバが続くので、右や左の岩棚を歩いて行く。
(右岸をへつったり)
(左岸をへつったり)

 岩棚の傾斜がきついところは少し高巻いたりするが、滑ったらポッチャンだ。こんなところは這いつくばって登って行く。
 夢中になって渓谷を上がって行くと、少し開けたところで右に分かれる小滝の連続する沢があった。九段滝だ。滝を数えてみたが八っつしか見えなかった。この滝も登って来ることができるらしいが、本流を歩くだけで桃洞渓谷を十分に堪能している。
(高巻いたり)
(九段滝)

沢の斜度が少ないところでは水深の深いところも出てくるが、水が綺麗なので底まで綺麗に透き通って見え、ジャブジャブ歩くのも気持がいい。ところどころに甌穴が潜んでいるのも見え、こんな深みにはまったら嫌なので慎重に両側の浅瀬を歩いていく。
(狭くなったり)
広くなったり)

(また狭くなって)
(くびれた滝)

(ジャブジャブ)
(魚が泳いでる!)

なだらかなところでは岸辺のキスゲやオオバツツジなどを愛でるゆとりもあったが、大かたは緊張の連続、目の前に少し落差なる滝が見えて来た。中滝らしい。どうなる事かと、皆さんの後ろに付いて行くと、滝の左にロープが張ってあった。無事通過。
(中滝、どうしよう)
(右岸にロープがあった)

 中滝を登って、少しナメの感触を味わいながらゆっくり登って行くと、前の女性陣が後ろを振り向いて騒いでいる。追いついてみると男岩が突っ立っていた。道鏡もびっくりするような立派な一物である。
(まだまだ)
(男岩!)

 男岩の先に大きな滝が現れ、それほど豪快な滝ではないが、この男岩にあやかって男滝と命名されている。
 NETでは男滝には右に固定ロープがあって楽に登れたとあったが、どこにもそのロープが見つからない。茂みに巻き取ったロープがあったが、ロープが劣化して切れそうになっていたので撤去され、そのままになっているらしい。
 現地からのコメント
 理由は、ハッキリしませんが、中滝のロープは写真を撮る時に目立ちません(木々に隠れて)が、男滝は周囲に木などがなくロープがクッキリと目立ちますので、人々が多く入るようになってからは時々除去されることがあります。苦労された模様、申し訳ございませんでした(ロープが無くても手足で右側を登れますが、難儀の様子が伺えました)
(男岩をよく見つけましたね)
(男滝:左岸にあるはずの固定ロープが切られてる!)

 ロープの助けなしでは難儀しそうな崖を目の前にして愕然としていると、永井リーダがザックからロープを持ち出し、足場を確かめながら崖をよじ登って、崖の上端にロープを固定してくれた。
 お陰さまで全員なんとか無事に男滝を乗越えることができました。
(ロープ敷設)
(お陰さまで登れました)

 男滝の上にまた滝壺があり、その手前の浅瀬が滑りやすかった。私がズルリっとやって危うく落下しそうになり、上で見ている皆さんに悲鳴を上げさせた。荒縄がなかったら完全にドボンしていただろう。
 男滝の上は沢の斜度も増して、岩登りの様相になる。
(男滝の上で一休み)
(ガンバロウ)

 目の前のトロバにでっかいケーキが浮かんでいた。小滝が落下する時生まれる泡が少しづつ集まり塊に成長してきたものらしい。この美味しそうなケーキ、これから上部で何ヶ所かで見ることができた。
 U字峡は段々と狭くなり、次々と小滝やトロ場、甌穴が出てきて飽きることがない。
(泡のケーキ)
(U字峡)

(滑りそう!)
(川底が見えている)

(どっちを登ろ?)
(倒木に掴まったり)

どんどん登って行くと、渓谷の先に桃洞杉が見られるようになって来て、甌穴が連続したり、一味違う渓谷歩きになってきた。
(桃洞杉)
(甌穴の連続)

 倒木が堆積していたり、源流の雰囲気が出て来た。
(いよいよ源流)
(倒木が遮る)

 いよいよ奥まって来た時、突然右に進路が変わった。いぶかりながら付いて行くと、右の沢の入口に赤いテープがぶら下がっていた。沢は一段と狭くなってきた。
(枝沢へ)
(狭い枝沢)

 最近大雨があったらしく、沢を覆うような倒木があったり、ビーバ堰の様な土手ができていたり、少々歩きにくくなってきた。こんなことは茨城の山ではしょっちゅうあることで慣れているはずなのだが、この桃洞渓谷ではここまで気持よく快調に登ってきたので、大変な邪魔物が現れた様な気がしたのでした。
(障害物)
(ビーバダム)

 この沢を登りつめると土手に突き当り、ここをよじ登ると裏安歩道に飛び出した。
(THE END)
(裏安歩道)

 裏安歩道まで登りつめることができて一安心、ここからは普通のハイキングになるので地下足袋を山靴に履き替えて、森吉山荘謹製の弁当を食べながら一休みした。
 ここから野生鳥獣センタまで帰り着くまで、まだまだ長い道のりが残っている。気持ちを入れ替えて桃洞杉とブナの木が茂る森の中の裏安歩道を下り登りして高場森に着く。
(桃洞杉とブナ)
(高場森)

 山頂がはっきりとしない高場森で一休みして、割沢森方向に向かう。一旦下ってからの割沢森分岐までの登りが結構きつかった。桃洞渓谷を登っている間は沢の流れで涼しかったが、ここでは暑さがそのまま伝わってくる。「今回の桃洞渓谷はよかったねえ」と話し合いながら汗を拭き拭き登って行った。
(下って)
(登って)

 峠まで登りつめたところが「割沢森分岐」で「ノロ川まで5.1km」とあった。
(割沢森分岐)
(なだらかに下る)

 明るいブナの林の中を緩やかに登ったり下ったりしていると、いろいろな奇形のブナの木が目に入る。「癌にかかっても長生きしている」と痛々しさを感じながらも、生命力の強さに感じ入る。
 途中で、今日初めて登山者二人と出会う。東北弁なので、この辺りの道に詳しい土地の人だろうと思って話ししていたら、どうも話がおかしい。桃洞ノ滝を眺めて帰る途中、道を間違えてこの辺りまで迷い込んだ来たらしい。ここから我々一行と一緒に歩くことになって命拾いされた。
(ブナの奇形)

 ポケナビを覗いていると、道はどんどん桃洞渓谷に近づいて行き、このまま渓谷に降りるのかなと思い始めた時「黒石分岐標柱」があり、「野生鳥獣センタへ3km」とあった。ノロ川歩道には下りないで直接野生鳥獣センタへ向かった。
(黒石分岐)
(ブナ林)

 黒石分岐から40分で朝通過した「森吉山分岐」に出て一安心、遊歩道を10分歩いて野生鳥獣センタに到着した。
 野生鳥獣センタは開いていて、館長さんの労いの言葉を頂きながら館内に入らせてもらってトイレを使わせていただいた。館内にはたくさんの資料が展示されていたが、これから七時雨山荘まで長いバス旅があり、見学は諦めてバスに乗りこんだ。
(遊歩道へ戻って)
(野生鳥獣センタ)

(野生鳥獣センタの壁画)

 七時雨山荘には大平湖畔の道を走れば近道だが、この道は狭いくねくね道でバスでは無理、一旦R105に出て遠回りして走り、山荘に着いたのは日が暮れてしまった19時、大急ぎで汗を流して用意されていた和風膳を頂いた。




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