Z102.黒斑山(関東百名山)

1.動 機
 台風通過後、一泊して「関東百名山」のNo.8の鼻曲山とNo.6の黒斑山に登ってきた。一日目の鼻曲山登山は前報で報告し、今回は黒斑山に付いて報告する。2年前の5月に前掛山に登った時に黒斑山に続く外輪山の荒々しい岩壁を眺めてその上を歩きたいと思ったことを思い出し、車坂峠から黒斑山に登りJバンドで沼の平に下って草すべりを登る周回コースを歩いた。

2.データ
a)山域:黒斑山(2404m)、蛇骨岳(2366)、仙人岳(2320)、トーミの頭(2298)、鋸岳(2254)
b)登山日:2012/10/5(金)
c)日程:
アクセス:池の前山荘 7:25 = 8:00 車坂峠駐車場
歩行:高峰高原駐車場 8:20 ---- 8:25 表コース登山口 ---- 9:45 赤ゾレの頭 ---- 10:00 トーミノ頭 10:05 ---- 10:20 黒斑山 10:35 ---- 11:00 蛇骨岳 11:10 ---- 11:25 仙人岳 11:35 ---- 11:50 229○(昼食) 12:15 ----12:25 Jバンド分岐 ---- 12:30 鋸岳 12:35 ---- 12:40 Jバンド分岐 ---- 13:15 前掛山分岐 ---- 13:30 草すべり分岐 ---- 14:30 トーミの頭 14:35 ---- 14:40 中コース分岐 ---- 15:30 高峰高原駐車場
宿へ:高峰高原駐車場 15:45 = 16:20 あぐりの湯 17:25 = 17:30 小諸IC = 19:30 笠間PA(夕食) 19:55 = 20:20 日立南IC = 20:35 日立自宅
(浅間外輪山周回コース)

(浅間外輪山周回コースの標高差)

d)同行者:和子
e)地形図:1/25000 「車坂峠」

3.山行記録
 朝起きると空は薄曇り、6時半に用意して貰った手作りの朝食とヨーグルト、フルーツを腹一杯頂いて7時半発車、空は相変わらず曇っていて浅間山は見えない。天気予報では朝から晴れマークだったのに、と不満に思いながら車を走らせてチェリーパークラインを登っていくと、途中から空がパッと真っ青に変身した。周りの山もくっきりと見えるようになり、八ケ岳の左に富士山も見えてきた。雲の上に出たのだった。これからは気分を良くして運転し、8時に高峰高原ビジタセンタの駐車場に入った。
 駐車場は整備工事中だったが、10台ほどの車の横に車を停め、ビジタセンタの綺麗なトイレ(協力金要)を使わせて貰って靴を履き替えて歩き始めた。
(富士山)
(車坂峠駐車場)

 「浅間連峰周辺案内図」がある高峰高原ホテル前の表コース登山口から山道に入り、登山者カウンターを通過して樹林帯の中を緩やかに登って行く。道はゴロ石だらけで歩きやすいとは言えず、歩き始めの所為か、意外ときつかった昨日の鼻曲山の疲れも残っているのか二人とも足が重い。それでも、周りの黄葉し始めたカラマツや、足元に咲き残っているヤマハハコグサの花、いっぱい実をつけたシラタマノキなどに慰められながら黙々と登って行った。
 一つ小さなピークを越えると向こうに黒斑山が見えはじめ、随分と高いんだなあと愕然。折角登ったのにどんどん下る。鞍部から登り返すあたりで右の展望が開けるところがあり、八ケ岳連峰とその右奥に中央アルプスがくっきりと見えていて立ち休み。
(表コースへ)
(黒斑山)

 道はガラガラの道になり結構な急登、重い足を引き上げながら頑張る。気温が低いので汗をかかないのが救い。
 更に登っていくと突然開けた所に出て、振り返ると先ほど眺めた八ケ岳、中央アルプスの他に、高峰山湯の丸山・水の塔山・篭の登山の緑の山塊、その右には四阿山も見えていた。
(岩道)
(展望ガレ場)

(八ケ岳・中央アルプス・高峰山・湯の丸山・篭の登山・水の登山・四阿山)

 ここからまた樹林帯の中へ入り、少し登ると道はなだらかになり丸い形の前掛山の山頂部が見えてきた。だが、すぐに急登の再開、丸太の階段で整備されているが歩幅が追い付かず、階段を避けながら登って行く。
 急坂をひとしきり登ると、突然目の前に鉄板製のシェルターが現れ、更に一登りすると浅間山(前掛山)の全身を眺められる展望台に出た。ここが赤ゾレの頭という所で、先着の男性にツーショットのシャッタを押して頂いた。この男性は前掛山にも登る積りでやってきたが、ビシタ―センタで「前掛山に登ると日が暮れるよ」と諭されて、我家と同じコースを歩く予定にしたとのこと、これから先何度も顔を合わせながら歩くことになった。
(シェルタ)
(赤ゾレの肩)

 赤ゾレからの景色は雄大で、正面に前掛山、右手に剣ヶ峰、左手に右が切れ落ちたトーミの頭、その左上に黒斑山の山頂が見えていて、パノラマ写真を撮る。
 赤ゾレの頭にも大きなカメラを三脚に乗せて浅間山に向かってシャッタチャンスを待っている男性が一人いたが、一つ前の岩頭の上にも3人の男性が三脚が据え付けていた。あの蛾々とした岩頭までどうやって行ったのだろうか。どんな風景を撮ることができるのか素人には分りようがないが、ご苦労なことではある。
(黒斑山・トーミノ頭・前掛山・剣ヶ峰)

 目の前のトーミの頭には一旦下りてから登り返す。その鞍部に中コースの分岐があり、下りはここから中コースで車坂峠へ向かう積り。
 トーミの頭への登りはガラガラの道だが、見かけほど急坂でなく、浅間山を眺めながら気持よく登っていくことができた。振り向くと先ほどの岩頭がくっきりと見えるようになっていたが、シャッタチャンスの時刻はまだのようで、3人のカメラマンはあちらこちらと動き回っていた。
(トーミノ頭へ)
(岩頭にカメラマン)

 トーミの頭の頂上部は岩場になっていて、3人の男性が話し合いながらカメラを構えていた。岩場を登って頂上に上ってみると、東側が断崖絶壁になっていて、正面には湯の平を挟んで大迫力の浅間山が聳えている。その左に緑の湯の平を挟んで、これから歩く予定の外輪山の絶壁が綺麗に弧を描いている。更に混んできたのでパノラマ写真だけ撮って今回の目標の山黒斑山に向かった。黒斑山はすぐそこに見えるので、あとひと頑張りと歩き始めた。
 トーミの頭への途中、下の方から子供たちの元気な声が聞こえてきていた。「ヤッホー!ヤッホー!」小学校の集団登山のようだ。山頂に上がった時にはシェルター近くを登って来る姿が見えていたが、その後声が聞こえなくなった。どこまで登ったのだろう。
(トーミノ頭から:黒斑山・蛇骨岳・仙人岳・鋸岳・前掛山)

 ちょっと下ったところに、湯の平への分岐標があり、一回りして草すべりを登ってここに上がってくる予定だと確認する。
 トーミの頭から15分程で、黒斑山の山頂です。山頂は大きな石がゴロゴロしているが少し広くなっていてゆっくりできる。見える景色はトーミの頭の時とあまり変わりないが、標高が70mほど高くなったので前掛山の上に浅間山がわずかに頭を出し、噴煙が上がっていることが確認できた。赤ゾレの頭での男性がやってきてシャッタの押しあいをした。
(草すべり分岐)
(黒斑山山頂:浅間山が見えてきた)

 正直な話は、黒斑山での体調によっては黒斑山か、せいぜい蛇骨岳まで歩いて引き返そうかとも考えていたのだが、ここから眺める蛇骨岳、仙人岳、そして先端の鋸岳までの稜線がアップダウンが少ない事を眼で確かめ、これなら全コース歩けるなとの結論になった。黒斑山から鋸岳まで浅間山の形が色々と変化するのを眺めるのも楽しみだし、Jバンドの下りの体験、間近に眺める外輪山の絶壁も楽しみ、途中で引き返す手はない。
(黒斑山から:蛇骨岳・仙人岳・鋸岳・浅間山・前掛山・剣ヶ峰)

 黒斑山から蛇骨岳まで樹林帯を歩くコースには「崩落の為立入禁止、迂回して下さい」の立札があって、絶壁側の道に進んだ。絶壁沿いの道もところどころ崩れ加減なところが何ヶ所かあったが、ここだけ気をつければ、全体的に安心して歩ける道が続いた。行く手の外輪山の絶壁や右手の浅間山を眺めながら緩やかな下り加減の道を歩いて行った。
 途中にはクロマメノキがたくさんあり、土地の登山者が「山ブドウ美味しいよ」と言って薦めてくれた。木はたくさんあるのだが実は殆んど付けていない。この辺りは登山者が多くて、クロマメノキをご存じの登山者の餌食になっているのだろう。
 蛇骨岳のピークは巻いて進み、目の前に大きな岩の重なりがが現れた。岩を登ったり間を抜けたりしながら登って行って岩の向こうを覗くと、岩の向こうの小広いところに「蛇骨岳」の山名板が立っていて、数グループの登山者が屯していた。
(蛇骨岳へ)
(蛇骨岳の岩場)

 歩いて来た手前の方がずっと高いので、とてもここが蛇骨岳とは信じられなかったが、証拠写真は山名板の前でシャッタを押してもらった。
 それでも少し心残りなので、私一人手前の大岩の重なりのてっぺんまで登って和子に写真を撮って貰っていると、登山者の一人が「シャッタを押してあげるから和子にも登ったら」と親切なお言葉。和子も攀じ登ってきて良いツーショット写真が撮れました。
(蛇骨岳)
(蛇骨の岩場)

 蛇骨岳からは浅間山方向だけでなく、反対方向にも展望が広がっていた。赤ゾレの頭の男性が地図を持ち出してくれて、四阿山から草津白根、苗場山、白砂山、(谷川岳は雲に隠れていて)、子持山、浅間隠山まで山座同定をすることができた。
 ここで土地の登山者に「草すべりの登りは辛い。Jバンドの岩場やこの蛇骨岳までの道に岩場が多いので、草すべりを下ってJバンドを登った方が楽で安全だよ」と教えられた。赤ゾレの頭の男性と一緒に拝聴したが、説得力はあるが今更しようがない。足元に気を付けて元気を出して行きましょう。
(蛇骨岳からの展望:四阿山・草津の山・苗場山・白砂山・・・浅間隠山)

 蛇骨岳から先は稜線に樹木が少なくなって、岩稜と砂礫地、草地が続くアルペン的な風貌へと変化した。絶壁すれすれの登山道を歩いて湯の平を見下ろすと高度感いっぱい。岩稜や砂礫地を登ったり下ったり、下り加減にルンルン気分で歩いて行くと、正面に三角形の仙人岳がせり上がってきた。
 見た目よりも簡単に仙人岳の山頂に到着、山頂は広い砂礫帯で三等三角点と山名板が立っていた。展望も広く気持のいいところなので、ここで弁当を広げようと思ったが、吹きっさらしの風が冷たくて和子のノーが出た。写真だけ撮って次に向かう。
(仙人岳へ)
(仙人岳)

 仙人岳からは更に岩が多い稜線を辿り、次の岩っぽいピークに登った。名前はないようだが2390mの丸い等高線が囲っているので「239○」と呼ぶことにする。このピークは大岩が多いので、岩陰に入ると風を避けられる。やっとお昼弁当にありつけた。
 239○からは鋸岳も見ることができた。次のピークには登山道が確認できるが、鋸岳には道が見えない。Jバンドの分岐は次のピークと鋸岳の間にあるので、鋸岳には余り行く人がいないのだろう。
(229○ピークへ)
(Jバンドへ:最奥が鋸岳)

 239○からここまで歩いて来た稜線を見返す。なだらかで気持のいい稜線漫歩コースである。
(239○ピークから振り返る:剣ヶ峰・牙山・トーミの頭・黒斑山・蛇骨岳・仙人岳)

 239○から険しい岩場を縫うように下って行くと、女性を含む元気の良さそうなグループが登ってきて道を譲った。「火口も覗いて来たわよ」と小声で得意そうにおっしゃっていた。自己責任で立ち行っても良いではなくて、立ちいったら法律で罰せられると書いてあったと記憶するのだが----。それにしても浅間山にも立ち寄って、この時間(12時20分)にここまで歩いて来たのは凄い健脚揃いだし、朝早く歩き始めたんでしょうねえ。
 Jバンド分岐まで来ると男性が休んでいて、鋸岳方向の踏跡を探している老夫婦に「Jバンドはそっちだよ」と教えてくれた。「鋸岳に行ってみたいの」と答えるとびっくり顔。
 薄い踏跡を辿るとすぐに鋸岳だった。山頂部に「(のこぎりだけ)鋸岳2254m」と書いた小さな板切れが置いてあった。私がこれを持った証拠写真を撮ってみたが、大きな写真にしないと字が読めない。
(鋸岳山頂)

 鋸岳からはこれまでは見えていなかった鼻曲山が浅間山の山裾にぎりぎり頭を出していた。昨日登った山をここでやっと見ることができた。
 鋸岳とJバンド分岐の間にもクロマメノキがたくさんあり、ここのクロマメノキにはいっぱい実が付いていて、雨酸っぱい味をしっかり味わうことができた。やはり鋸岳に寄道する人が少ないのは確からしい。
(浅間隠山・角落山・剣の峰・鼻曲山:後ろに子持山・榛名山)

Jバンド分岐まで引き返していよいよjバンド下り。垂直の岸壁の基部を巻いていくのがこのルート。
見上げるとおそろしい垂直の岩壁。足元には岩壁から剥がれ落ちたと思われる巨石がゴロゴロ。あっちこっち写真を撮りながら下る私に「こんなところは早く通過しなさいよ」と和子の叱責が飛んできた。
(Jバンド下り)

 平らなところまでおりてからゆっくりとJバンドを見上げる。前掛山登山の時には味わえなかった迫力。ここまで来て良かったあ!赤ザレの頭さんはここで昼食中だった。
 外輪山の反対側にはまるっこい砂礫の浅間山、色付いたカラマツとの対照が美しい。
(外輪山)
(前掛山)

 これまで歩いてきたトーミの頭、黒斑山、蛇骨岳、仙人岳、鋸岳などの外輪山の山々の連なりを見上げる。
 Jバンドの由来を後でしらべたら、昭和26年に群馬県在住の有志が安全に賽の河原へ下りられるルートを開拓し、これを浅間山側から見たとき尾根とルートの組み合わせが「J」に見えるので「Jバンド」と命名されたとのこと。この写真から、平らな稜線と折り返すように下るJバンドを組み合わせて浅間山から眺めると確かにJの字を横にしたように見えるなと納得。
(外輪山:トーミの頭・黒斑山・蛇骨岳・仙人岳・229○・鋸岳)

 Jバンドから湯の平に降り立ち、しばらくは岩屑の荒涼とした道を辿るが、周囲は次第に樹木の森となっていく。樹木のいくらかは色づいていて秋の気配。その紅葉越しのト―ミの頭と黒斑山の峨々とした岩壁がすごい迫力で迫ってくる。
(紅葉が始まった樹林帯)

 樹林帯に入ってしばらくすると前掛山とJバンドの分岐地点に着いた。ここから先は2010年5月に前掛山に登った時に歩いたので先を行く和子の足取りも心なし早くなった感じがした。前掛山分岐から15分ほどで草すべり分岐に到着、浅間山荘からの登山道を左に分けて、草すべりの急坂へ向かう。
 斜度は45°前後ある急坂を前にして、蛇骨岳での土地の人の言葉が思い出されて暗然となるが、頑張るしかないと心に決める。
(草すべり分岐)
(草すべり)

 斜度は急だが登山道がジグザクに付けられているので、思ったほどきつくはなかった。その上、登るにつれて周りの景色は極上になって来て元気をもらえる。前にも後ろにも登山者が見えたのにも心強くされた。赤ゾレの頭さんとここでも顔をわせた。
(外輪山)
(前掛山)

 トーミノ頭やカメラマンの頭の岩の造形美も見ものでした。
(カメラマンの頭)
(トーミの頭)

 草すべりを登り切ると岩っぽい道になり、下に湯の平がはるか下に見え、良く登ってきたもんだなあとご満悦。
(もうすぐ縦走路)
(湯の平を見下ろす)

 草すべり分岐から1時間でようやくトーミの頭に復帰。一休みする。眺める前掛山や外輪山の様子も朝見た時とは一味違って見えるから不思議なものだ。
 トーミの頭から少し下った鞍部から中コースを下って行った。
(トーミの頭)
(中コース分岐へ)

 中コースの深く掘られ泥道は、滑りやすかったり石がゴロゴロしていたりで歩きにくい。途中、道の荒れが酷くなるところでは巻き道が出来ていて、樹林の中に入り込んで下って行った。
 中間の広いガレ場を通過すると悪路も終りになり、あとはルンルン気分で歩けるハイキングコースになってきた。途中、蛇骨岳からの裏コースの出口をナビの示す位置近くに探したが廃道になったのか見当たらなかった。疲れて途中から引き返す時には裏コースを歩く積りでいたのだが----。
笹に覆われた水平な道をしばらく辿って車坂峠の駐車場に到着した。残っている車は4台だけだった。 
(中コースを下る)

帰途 
 靴を履き替えてワインデイングロードチェリーパークラインを下って小諸の日帰り温泉「あぐりの湯」に入った。浅間山から湯の丸山に連なる山並みの眺めを露天風呂から眺められるのが嬉しい。(写真を撮った時に丁度浅間山と黒斑山共に頭を雲に覆われたのが残念だったが、写真をクリックして一昨年の三月に撮った綺麗な写真を見て下さい。)

(あぐりの湯の展望図付き露天風呂)

 温泉に入って元気になり、17時30分に小諸ICから高速に乗り、閉店間際の笠間PAの美味しいうどんを頂いて、日立南ICに20時20分に到着した。ガソリンは高価な長野で給油しないで帰り着くことが出来、いつものガソリンスタンドで給油してから我家に無事帰り着いた。


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