D104.県北アートフェステイバル日立1

1.動 機

 昨日の常陸太田市内を回った県北アートフェステイバル2016見物に続いて、今日は日立市内を回ることにした。 日立市内の展示場を示すマップがあったのでこれを見ながら歩き、日立北部の3ポイントは高萩への途中で寄ることにして、その他の市内9ポイント全部を走りまわってきた。 。これがアート?と首をかしげたくなるような作品も多かったが、中にはなかなか面白い作品も多かった。
 この編にもNETから引用した説明文を青字で示したが、これらは”県北アートフェステイバル”のHPから引用している。興味を持たれた方はこちらを開いていただくと、色々な情報を見ることができます。これを機会に茨城にどうぞ。

2.データ

3.山行記録

 マップを見ると、我家から一番近いのは日立多賀駅近くに3つのポイントがある。駅近くの駐車場に車を入れて駅構内に入ったが、どこにもそれらしき物が見えない。 駅員に「アートはどこにあるのですか?」と聞くと「その辺に毛糸で巻いてあるのがアートらしいですよ」とのこと。 そう言われれば、改札口の列車発車時刻表に橙色のニットが巻きつけてある。その他にも、ベンチやテーブルなど色々なものに同じ色の毛糸が巻き付いてある。
 マップによればこれが作品A-20らしい。これらは街に出てから、別の展示場で実演していた編み機によってつくられた太い毛糸で編まれていることを知ることになる。

 駅員は「改札口を出たところにも作品がありますよ」と言って、改札口を切符無しで通してくれた。 プラットフォームに出ると、駅舎の壁に高校生による習字や絵画の作品が掛けられていた。素人目にはこちらの方が好ましい。

 街に出ると、電柱にも、商店の看板にも同じニットが巻きつけてある。時に空色のものもあった。

 近辺の情報を頂こうと思って、マップにナビスポットとして紹介されている裏通りの商店に入ってレジを打つ女性に当たったが、客相手に忙しい女性は 「アートフェステイバルって知りませんね」とにべもない。街中がアートに熱心だった常陸太田とは大分雰囲気が違う。
 駅前通りに出ると、空き店舗らしき部屋に扇風機など家電品が並べられていて、一角には数台のテレビがスピーカの音に合わせたような映像を流している。

A-19:エレクトロニコス・ファンタスティコス! in 日立
 役割を終えた古い家電を新たな電子楽器として蘇生させ、合奏する和田永のプロジェクト「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」。 ここはそのプロジェクトの基地となる、「NICOS LAB in 日立」です。地元のメンバーたちが和田永とともに、 新しい楽器のアイデア出し、古い家電の収集と改造、そして演奏の練習を行っています。 世界的家電メーカーHITACHIの町である日立市にて、家電メーカー関係者や、新たな音楽づくりに興味のある方、工作・発明の好きな方と共に活動を行い、会期終了時にはアンサンブルを編成してコンサートを行う計画です。あなたも参加してみませんか?

 街路の歩道脇にある石の四角い5個のベンチに色々な模様が描かれている。これはコンクリートで作ったベンチに、新しい手法で絵を描いたもので、多賀駅近辺の5ヶ所に展示されているらしい。 時間があるときなら5ヶ所全部を見て回りたいところだが、今日はここだけにしておきましょう。  

A-25:ヒタチタガ・コンクリート・マンガ・ベンチ・コレクション
 「グラフィックコンクリート」のテクノロジーによって、コンクリートの表面にかなり細かい絵を描くことが今日では可能になりました。本芸術祭では、この技術と、漫画家である山本美希によるコラボレーションを常陸多賀商店街で展開します。現地を視察し、商店街の雰囲気を感じ取った山本は、鳥の「鵜」など、日立市に関連する絵柄を四コマ漫画の要領で描きました。常陸多賀商店街のバス停5か所にそれぞれ違う絵柄が置かれています。ユーモラスな「読める」ベンチをぜひチェックしてみてください。

 空き部屋には、マンガのような顔を描いたレジ袋がいっぱい展示されている。モニタには美人女性が映し出されていて、手に持つレジ袋に可愛い顔が描かれていた。おめめパッチリの可愛いお嬢さんの顔、この女性の雰囲気が出ているような気がした。

A-17:スマイリー・バッグ・ポートレート
 アメリカの食料雑貨店やレストランの持ち帰りなどでおなじみのレジ袋「スマイリーバッグ」に、アーティストの青崎伸孝が似顔絵を描いていくプロジェクトです。青崎が住むニューヨークでは、アジア系の店でスマイリーバッグをよく目にしますが、観光客の似顔絵を描いて生活するニューヨーカーにもアジアやラテンアメリカからの移民が多く、青崎はそのような文脈の中でコミュニケーションの契機となり、多種多様な人々を繋げるような活動を考案したのです。巷に行き渡っているチープな素材とイメージの上に、参加者1人ひとりのユニークさが刻み付けられ、この世に2つとない作品が仕上がっていきます。パフォーマンスは県北地域の6会場で実施されます。本会場では、それらの様子が展示されています。

 店先に県北各地の地名を描きいれた四角い看板が並べてあり、なかなか綺麗。アーテイストにかかると、看板もこんなにきれいになるのか。

A-18:看板屋なかざき
 茨城県出身の中崎透は、県北地域を幼少期に親しんだ14の地名で記憶していると言います。そこで県北芸術祭では、市町村の統廃合により消えてしまった、美和、水府、里美、金砂郷などの県北の地名地域を看板にしたインスタレーションを展開。昔から親しまれてきた土地の記憶を人々の心に蘇らせます。常陸多賀商店街の空き店舗に組み上げられたライトボックスタイプの看板は、言葉の持つイメージを増幅させ、見る人の心に特別な感興を呼び起こすでしょう。2階にも展示は続きます。

 少し先の銀行跡一階の部屋に入ると、広い部屋にはニットで包まれた脚立の奥に、A-20の毛糸を編み出す機械の展示があった。下から送り出される細い糸が、上の機械で筒状に編まれて下に垂れてきて、下にある三本のアクリル円筒容器に溜まっていた。これを使って街中に飾られていたニットが編まれていたという事らしい。
 店内入口には、これで編まれた色とりどりのご婦人用の衣類も掛けてあった。

A-20:ニット・インベーダー in 常陸多賀
 常陸多賀駅に降り立ち、駅前の商店街を歩いてくる道すがら、街路樹や手すりなど、街のあちらこちらがニットによって包まれているという、異常な光景に出くわしたのではないでしょうか。これはニット・インベーダーを名乗る力石咲のプロジェクトで、室内の編み機で編まれたニットが屋外の公共空間へと拡張していくものです。手の中でできあがるようなパーソナルな活動である編み物が、街へ出て行き、風景を完全に変えてしまうこのプロジェクトは、人と街との密接なコミュニケーション形成を促しています。ニット・インベーダーは世界を編み包む野望を抱いており、今後も世界のどこかで増殖を続けるでしょう。常陸多賀商店街はその壮大な計画の一部なのです。

 二階に上がると面白い見ものがあった。ペットボトルやプラスチックのおもちゃなどを組み合わせて作られた造形の数々。

A-21:ポリプラネットカンパニー
 藤浩志は、日常生活の中で日々捨てられていくビニールやプラスチックの素材を収集して、彫刻やインスタレーション、あるいは様々な活動が発生する仕組みを作ってきました。これらの活動は1997年より7年間、自分の家庭から出るごみを一切捨てずに溜め続けるプロジェクトからの連鎖で拡がっています。この旧銀行の建物の2階で行われているのは、ビニールやプラスチック素材を使って商品開発を行う架空の会社を想定したインスタレーションです。ここには藤がこれまで集めた素材で作られた品物で構成される無販売のショップがあり、その制作工房と、訪問者がくつろぐことのできるロビーがあります。この架空の会社で提供されているものは、私たちの生活の裏側で見えなくなっている廃棄物について考え直す機会なのです。

 大きすぎて展示場には置けないが、公開場で作られた巨大な亀や恐竜の写真が展示してあった。実物を見てみたかった。

 捨てられたものを集め、洗って綺麗にした、造形の材料になるプラスチックごみが山と積まれていた。円錐状のテーブルにきちんと並べられているのは、このままで芸術に見えた。

 おもちゃの人形を全身にまとった獅子や、犬などの愛玩動物のおもちゃで覆われた椅子もあった。

 次は日立駅近くのデパートの駐車場に車を置いて、昼食をとってから日立駅に向かう。駅前の普段はバスが停まっているはずのないところに、一台のバスがいた。屋根の上には樹の頭が見える。
 前後の乗降口が開いていたので中を覗いて見ると、ビニルカーテン越しに見えるバスの中には樹や竹が生えていて森のよう、生きているヤマドリやウサギも遊んでいた。

A-11:ノアのバス
 日立駅からシビックセンターへ行く途中、広場の外側に置かれたバスの中では、ウサギ、ロシアンリクガメ、モルモット、レースポーリッシュ(鳥)が暮らしています。植栽されているのは、日立市に自生する植物です。都市空間の中に突如として出現した動物・植物たちの空間は、私たちに自然との共生のあり方を考えさせます。フィンランド出身のアーティスト、テア・マキパーによって、バスは「ノアのバス」と名付けられ、海から山へ逃げる方舟としてイメージされています。
*この作品は日立市かみね動物園、茨城県造園建築業協会の全面的な協力により実現しました。動物たちはかみね動物園フレンズが毎日ケアを行っています。

 日立駅に向かい、海岸口への回廊に入ると、両側の広いガラス窓が青や黄色に彩りされて、これに太陽の日が射しこんで明るくてとても綺麗。気持ちよく明るい気分で歩いていった。

A-04:回廊の中で:この場所のための4つの虹 ー KENPOKU ART 2016のために
 建築家の妹島和世がデザイン監修したガラスの日立駅舎を、全長300メートルの虹色のカッティングシートで覆いつくしました。色とりどりの透明のシートに包まれた空間は、時間の流れや季節の移ろいに合わせて姿を変えていきます。芸術祭の玄関口であるこの日立駅から、海と山をめぐるアートの旅が始まるのです。ダニエル・ビュレンは世界を舞台に活躍する画家であり、コンセプチュアルアーティスト。トレードマークである8.7センチのストライプは、1965年の作品から使われています。1968年には、パリ市内や地下鉄の駅にストライプのインスタレーション作品を展開し、注目を集めました。現在も、世界各地で新たな挑戦を続けています。2007年、高松宮殿下記念世界文化賞受賞(絵画部門)。

 改札口の別れに入ると、資料置場の棚が4色のバラの造花で飾られていた。アートフェステイバルに同調。
 ここから海側を見ると、駅舎の端が太平洋に突き出ている風景が気持ちいい。この駅舎の設計をした妹島女史は、旧職場の工場の原料部部長のお嬢さんと聞いていた。

 回廊の突き当りからは眼前に太平洋が広がっていい眺めだ。車椅子を押してもらってここまで来て、記念写真を撮ってもらっている人が二人あり親近感を覚えた。
 下のパノラマ写真はカメラアングルを間違えて出来が悪いが、展望が広いことだけは分かってください。

 窓際には望遠鏡が据え付けられていて、人が入れ替わり立ち代わり覗き込んでいる。ここから何が見えるのかなあと思って私も覗いて見ると、予想通り6号バイパスの上に太平洋の青い海が見えていたが、やがてその上から大きな人の手が伸びてきて、丸い玉を掴んだり、大きな魚?を捕まえたりする映像が重なってきた。

A-05:風景幻灯機
 望遠鏡型の作品をのぞくと、そこには日立市の美しい海が広がります。しかしずっと見ていると、現実にはあり得ないことが起こりはじめます。この望遠鏡を制作した村上史明は、常陸大宮市の旧美和中学校と日立駅にも同形の作品を設置しています。望遠鏡から臨む映像は、県北地域の伝承を収録した8世紀の古文書『常陸国風土記』の「カビレの高峰」や「ダイダラボウ」の伝説をもとにしています。この現実と幻想が混じり合う新しいアートの体験は、神話の出来事がもしかしたら本当にこの地で起こったのかもしれないと感じさせてくれるでしょう。

 次は駅前に戻って、新都市広場を横切って日立シビックセンタに入った。天球劇場で壮大で面白い映像三つ(A-08,A-09,A-10)が見られるらしいが、今日は夕方のみ上映、それも大分前に来て整理券を貰う必要があるとのこと。今日は諦めて、他のアートを見せていただくことにした。

 一階には角錐のタワーが立っていて、上にテレビがあり、係員が近付けてくれるラジオに耳を貸すと、何やらテレビの映像に同調した音が流れてきた。音楽にも疎い老人はお呼びではないようだった。

A-07:日立電輪塔
 和田永の《日立電輪塔》は、リズミカルに明滅するブラウン管テレビが埋め込まれたタワー型の作品です。ここにラジオを持って近づくと、テレビから発せられる電磁波のノイズをラジオが受信して、テレビの明滅と同期した音が鳴り響きます。近づいたり遠ざかったり、ラジオの種類を変えたり、チューニング・ダイヤルを回したりしながら、様々な音色を鳴らすことができます。電輪塔の先端には、象徴的に日立製のカラーテレビが祀られています。工業都市日立市で、その「ものづくり」の精神を受け継いだ、新しい電子楽器のような作品です。

 二階に上がって、案内されて暗幕の入口を通って暗い部屋に中に入ると、大小さまざまなシャンデリリアが、緑、青、白と美しい色で輝いていた。ウランガラスで出来たシャンデリアと言うのが特徴らしいが、とにかく綺麗だった。シャンデリアは原子力発電をしている国ごとに一つあり、その国の原子力発電量に比例した大きさになっているという。真ん中の大きいのはアメリカで、日本のは奥にある意外と小さなシャンデリアだった。
 シャンデリアの下に小さな白い造形があって目立っていたが、何だったのかなあ。

A-06:クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会
 ブラックライトによって緑色に光るシャンデリアは、世界中に多くのコレクターがいる「ウランガラス」でできています。各シャンデリアには原子力発電所保有国の名前がつけられており、その大きさはその国の原子力発電による電力の規模を表しています。米谷健+ジュリアは、福島第一原子力発電所事故に応えるべく2011年からこのシリーズの制作に着手しました。美しく不気味な光は人類の科学的発見とエネルギーの進化・発展を象徴する一方で、私たちが直面し乗り越えなければならない環境や生活に対する課題を考えさせます。かつて日立鉱山が栄え、公害と向き合った歴史を持ち、また日本で初めて原子力の火が灯った東海村に隣接する日立市。そんな場所で、ウランガラス製のシャンデリアは私たちの過去と未来を見守っています。

 日立の街中には展示場はなく、次は神峰公園下にある日立郷土博物館に移動した。
 博物館の玄関周りには、日立市内の小学校や中学校の生徒が創った色々なエンブレムが展示されていた。

 受付を通って入った最初の常設展示室には、ユネスコ無形文化財に登録されている「日立風流物」の精巧な縮小模型が、さくら満開の平和通りで興行中の写真の前に展示されている。
 山車の上で演じられる役者像や、でんぐり返しのカラクリを説明する模型なども並んでいた。

 その奥には、昔の住居や、お宮への御供え物、農機具など昔の風習を残す写真があり、さらに出征兵士を見送っている写真や残った者同士が助け合って炊き出しをしている絵など戦時中の記録も展示されていた。

A-12:日立工場の建物間の何もない場所で、私は未開人と飢饉や戦争の犠牲者たちを織り込んだ詩を読む
 米国在住のアーティスト、ティファニー・チュンは今回の展示のために日立市の歴史と社会について多くの資料調査を行いました。そして最も意義深いと思われる時代のものを、日立市郷土博物館の収蔵品から選び出し、地図やテキストを基にしたチュンの作品と共に展示しています。その併置を通じて、彼女は社会が移り変わって行く様子を私たちに意識させます。さらに、日本の他の都市や、ベトナム戦争後のベトナムの人々の記憶を描写した映像作品を織り交ぜることで、日本に住む人だけでなく、世界中の多くの人々の経験と重なるように全体を構成しています。公の歴史に現れてこない余白には「隠され、忘れられたストーリーがある」と作家は述べているのです。

 次の部屋の床上に、色々な石英のような石が載せられたお盆が一列に並べられていた。
 石の一部が微かに光って点滅いるものがある。係員に薦められて手に持つと光は消え、下に置き直すとまた光り出す。魔法のようだった。

A-13:フィールド・クリスタル
 イアン・カルロ・ハウシャンは、県北地域の5億年前の地層や鉱物に興味を持ち、そこからこの作品を構想しました。床に置かれたクリスタルは、持ち上げると光が消え、地面に置かれると光ります。銅のコイルに接続されたLEDライトが、振動する磁場に近づくと強く光るようになっているのです。クリスタルは、クレンザーや洗剤、殺虫剤などに使われる一般的な素材、ホウ酸ナトリウムでできています。このクリスタルは、LEDライト以外、完全にリサイクルができる素材で作られていることからも分かるように、ハウシャンは、新しい技術と自然、維持可能な素材についての新しいデザインの可能性を示唆しています。

 次は県道36号を山に向かって走って、高速道を過ぎて峠近くにある日鉱記念館に入った。
 常設展示場には、日立鉱山から掘り出された鉱石や、鉱山の歴史を物語る写真、削岩機を使う鉱夫像などあって見飽きない。
 日立駅から本山までの広い地域にあった日立鉱山関連施設を示すパノラマ図には、和子が住んでいた社宅の場所も明示されていた。

 その奥には、色とりどりのプラスチックで作ったネジやバネ、油圧ジャッキ?などを組み合わせた機械みたいなものがあった。前は組み立てて遊ぶことができたらしいが、今は見るだけ。

A-16:遊べる彫刻
 日鉱記念館の鉱山資料館に展示されている多数の機械の中に、岩を砕くドリルがあります。タクシナー・ピピトゥクルはそのドリルの一部が、まるで昆虫の頭のようなかたちをして愛らしい、と感じました。生活の中にある素材や形に興味を持ち、それに少し手を加えることで新鮮な驚きを生み出す作品をこれまでも作ってきた彼女は、このインスピレーションから、ドリルの形が超合金ロボットのように変形し昆虫のようなかたちになる作品を作り出しました。そして、かつてこれらの機械を操っていた労働者たちは、生態系を支える昆虫のような存在に重ねられています。彫刻作品を手に取って遊びながら、多くの炭坑夫と、機械の歴史に思いを馳せてみてください。
 当初、手で組み立てて遊ぶように意図された作品でしたが、組み立て部品が破損したため、今後は鑑賞のみとさせていただきます。どうぞご了承ください。

 最後は峠を越えたところにある御岩神社、入口に立っていた案内者に誘導されて駐車場に車を入れた。駐車場から出たところにある大鳥居を潜って長い参道を行く。

 仁王門の手前には、御岩神社のご神木で県指定の天然記念物になっている樹令500年の三本杉が聳えている。その前には「森の巨人たち100選」看板も立っていた。
 仁王門の左右の阿形像と吽形像を眺めて、門の下に入って上を見上げると、海の岩礁の上に昇る日の出の絵があった。

 仁王門から先に進むと、左手にA-15へ150mの案内標識があり、その下に説明板が取り付けてあった。


 A-15:杜の蜃気楼
 建築を学んだバックグラウンドを持ち、その後、テキスタイルを学んだ森山茜は、非常に軽い素材を用いて、私たちの既成概念を超えた構造物を作り出します。今回の作品は、古くから信仰の対象としてあった御岩神社の、清澄な杉林の空間の一部を満たすように設置されます。素材に用いられているのは約6千枚の極薄のフィルムで、御岩山山頂から下へと吹いてくる風によってヒラヒラとなびきます。その有機的な動きは、息を吸い込み、吐き続ける生き物のようにも見えます。大気、人々や植物や自然の生き物の目に見えない祈りを受けてさざめく本作は、この土地の空間と、そこに流れる時間をいっそう際立たせます。

 石段も社も避けて坂道を登っていき御岩神社手前までくると、で杉の木立の間から、空色のハンモックの様なものが見えてきた。これが杜の蜃気楼だと喜んで二人でシャッタを押す。

 踏み跡を辿って造形の真下に来て見上げると、杜の蜃気楼は意外な形をしていることが分かった。両側のカーテン2枚を繋ぐ仕切り板の様なカーテンが、等間隔に並んで桝目のようになっていた。
 本殿近くまで来て振り返ると、始めに見た時と同じようなカーテンに見えるが、気の所為か中に仕切りがあるのが気になった。

 日立市内案内図を見てA-14の造形は建物の壁にあるものと思っていたが、それらしき所はどこにも見当たらなかったし、この先にもなさそう。引返しながら左右に目を配りながら歩いていったが、駐車場まで遂に見つからなかった。駐車場で案内者に訊くと「A-14は斎神社の天井絵ですよ」とのこと。私の神経痛を気にして石段を避けて歩いたので斎神社を見落としたようだ。駐車場閉鎖の17時にもう近いが、急いで引返してみることにした。私もステッキをつきながら懸命に歩いていくと、心配した案内者が追いついてきて、斎神社まで案内してくれた。斎神社にはもう明かりがついていた。
 天井を見上げると、長いひげを持つ雲龍が大きな口を開け、怖い目を見開いて大きな爪を立てて雲間から睨んでいる絵が天井いっぱいに描かれていた。

A-14:御岩山雲龍図
 パワースポットとされる日立市の御岩神社は、700年以上の歴史を持ち、信仰の対象と推測される縄文時代の遺跡も発見された、非常に古くからある場所です。その社の1つである斎神社の新たな天井画を手がけたのが、画家の岡村美紀です。天井を見上げると、御岩山の上空を飛行する龍が、雲の間からこちらを見ています。それはこれまでの天井画に描かれることのなかった、上空からの視点です。宇宙開発が進み、衛星や宇宙船から地球を見ることができるようになった現代において変化した世界観を描きながら、人々のうちに消えることのない自然や神秘的な存在への信仰を、迫力ある龍の眼差しのなかに描いています。

 雲龍図を眺めて駐車場に戻った時は制限時間の15分前、案内者に何度もお礼を言って神社を後にし、R349へ出て常陸太田経由で我が家に帰った。最後の御岩神社は、私としては随分頑張ったウオ―キングになりました。

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