Q81.庚申山から皇海山

1.動 機
下山先生から「皇海山へ一緒に登ろうよ」とお誘いがあった。「最短距離の皇海橋からでは面白くないので、庚申山荘に一泊して、庚申山から鋸山を越えて皇海山に登り、六林班峠から銀山平に下りたいんだ」とおっしゃる。皇海山も庚申山もまだ我家の視界にはなく、どんな山なのか全く知識がなかったが、ガイドブックを読むと、鋸山11峰越えの上り下りの繰り返しは結構厳しく、皇海山に登って六林班峠を通って銀山平まで歩くのはなかなかのロングコースらしい。まあ。先生について歩けば何とかなるだろうと喜んで同行することにした。


2.データ
a)山域:庚申山(1892m)、鋸山(1998m)、皇海山(2144m)
b)登山日:2003/8/22(金)〜8/24(日)
c)コースタイム: 
8月22日:日立自宅 7:20 = 8:30 馬頭道の駅(集合)8:45 = 9:35 徳次郎IC = 9:50 日光口PA 10:10 = 10:50 銀山平(昼食)11:20 ---- 12:50 一の鳥居 13:00 ---- 14:45 庚申山荘 14:55 ---- 15:10 天下見晴 15:30 ---- 15:50 庚申山荘(泊)
8月23日:庚申山荘 4:05 --- 4:50 初ノ門 ---- 5:40 庚申山 5:50 ---- 6:00 御嶽山 ---- 6:10 鞍掛山 ---- 6:35 渓雲岳 6:40 ---- 6:50 地蔵岳 ---- 7:10 薬師岳 ---- 7:20 白山 ---- 7:35 蔵王山 7:40 ---- 7:55 熊の山 ---- 8:05 剣の山 ---- 8:25 鋸山 8:45 ---- 9:05 不動沢のコル ---- 9:50 皇海山(昼食)10:10 ---- 11:20 鋸山 11:30 ---- 12:35 六林班峠 12:45 ---- 15:30 庚申山荘 15:50 ---- 16:15 一の鳥居 ---- 17:55 銀山平「かじか荘」(泊)
8月24日:銀山平 9:00 ---- 9:20 展望台登山口 ---- 9:35 銀山平展望台 9:40 = 10:25 銅親水公園 11:05 = 11:15 第一展望台 = 清滝IC = 徳次郎IC = 馬頭道の駅 = 15:15日立自宅
d)同行者:下山夫妻、和子
e)地形図:1/25000 「足尾」「皇海山」「中禅寺湖」
(皇海山登山ルート)

3.山行記録
馬頭道の駅で下山車と合流して、日光を越えてR122で足尾に向かい、銀山平のかじか荘の駐車場に昼前に着いた。ここで昼食をとってから、庚申山へと歩き始めた。
庚申川沿いの単調な林道が4km続いたが、まだヤマアジサイやソバナが咲いていたり、対岸に悲恋めいた坑夫滝という滝を見たり、大量の岩が積み重なっている「天狗の投石」にびっくりしていると、退屈しないで1時間半で真っ赤な一の鳥居に着いた。
(天狗の投石」)
(一の鳥居)

一の鳥居には「庚申七滝へ100m」の立札があったので寄り道してみた。七段に落ちる美しい滝で、昔から庚申講にやってくる人たちの憩いの場になっていたらしい。一の鳥居からは水面沢沿いの登山道になり、30分で百丁目の標石、さらに大きな鏡岩を過ぎると急登になってきた。家庭円満を表す夫婦蛙石を拝み、仁王門という二つの巨石の間を通って登っていくと、猿田彦神社跡に出た。かっては栄えた神社らしいが、今は何も残っていない。ここから庚申山荘に向かう途中に「お山めぐりの道」への別れがあり、案内板によると昔の修験道跡で奇岩怪石が林立する上級者向きの登山道らしい。
(庚申七滝)
(夫婦蛙石)

直進して庚申山荘に着くと、無人だが立派な大きな山小屋だった。寝室は一階と二階にあり、炊事場、トイレ完備、寝具も揃っていて、水も蛇口から流れっぱなしだった。料金は2000円で利用者カードに名前など記入して一緒に料金箱に投入する。
一休みしてから、空身で「天下見晴」まで出かけてみた。名前に惚れ込んで出かけてみたのだが、生憎ガスが出てきてそれほどの展望はなかった。
(庚申山荘)
(天下見晴)

山荘に戻ると同宿者は単独行の男性一人だけだった。早めに夕食を作って食べ、広い部屋に布団を敷いてゆっくりと眠った。

翌日はロングコースなので早起きした。3時に起床して朝食を食べて昼食を作って、バーナや食器などは山荘にデポして、4時過ぎに暗い登山道をヘッドランプを頼りに歩き始めた。上の庚申山荘の写真の後ろに写っている岩峰の間を縫うように、岩壁の下をくぐり、岩場の急登を登っていった。一の門、とうろう門、まがね門など鎖場や梯子が続き、初の門のところの案内板によると、「南総里美八犬伝」の化け猫退治の舞台になったと書いてあった。
(ヘッドランプで歩き始め)
(初ノ門)

更に荒れた岩場を登っていって道がなだらかになると、東の空が朝焼けに染まり、富士山も見えていた。
(朝焼け)
(富士山)

三角点のある庚申山の山頂に着いたが、周りは樹木に囲まれて展望は利かなかった。すぐ先に展望のいい所があって、ここで一休みした。目の前にこれから歩く鋸11峰、その左に袈裟丸山の山並み、右に皇海山の堂々とした山容が広がっていた。日光の連山も見え、山座同定忙しい。
(庚申山からの展望:鋸山への11峰の尾根と右に堂々とした皇海山)

いよいよ鋸11峰の上り下りの始まりだ。11峰は庚申山、御岳山、駒掛山、溪雲山、地蔵岳、薬師岳、白山、蔵王岳、熊野岳、剣の山、鋸山と続く。先生の後について歩けばいいので、我々はまだ気は楽だが、まだまだ先は長そうだった。
前半の庚申山から第6峰の薬師岳までは、比較的緩やかなアップダウンでらくちんだった。山頂での証拠写真にも余裕が感じられる。
(渓雲山)
(薬師岳)

薬師岳からは急な下りとなり百メートルも下って次の白山に登り返した。白山からは展望が良く、鋸山の岩峰が皇海山よりも大きく見えてきて、だんだんと鋸山に近付いてきていることが実感できた。
(白山からの展望:鋸山と皇海山)

ここから、急坂の上り下りの難所が続くが、要所には鎖やアルミ製の梯子が掛けられていて助かった。
(白山からの鎖の下り)
(岩場のトラバース)
(熊野岳、あと二つだ)
(剣の山からの下り)

やっと鋸岳に登りついた。ここまで緊張の連続だったが、山頂からは素晴らしい展望が待っていた。尾根筋が伸びた先に大きく皇海山が聳え、その先に日光の山々が姿を現し、
(鋸山からの展望:皇海山−日光の山−庚申山))

南には、袈裟丸山、赤城山、榛名山と名山が連なる。
(鋸山からの展望:袈裟丸山−赤城山−榛名山))

難所をこなして鋸山で一息ついたが、先はこれからも長かった。立ち木に掴まったりしながら急坂を100m以上下り、皇海橋からのコースと合流するまで何回か上り下り、その先に皇海山への直登が待っていた。やっと百名山の皇海山の山頂に到着すると、そこは小さな広場になっていて、木々の合間から周囲の山々を望むことができた。歩いて来た鋸11峰の急峻な峰々が印象的だった。
(皇海山山頂)
(鋸11峰を振り返る)

山頂で昼食をとってから下山にかかった。鋸山までまた上り下りし、鋸山山頂でもう一度展望を楽しんでから六林班峠に向かって急坂を下ったが、女山を越えたあたりから六林班峠までは笹を分けるようにして歩いた。皇海山から六林班峠まで2時間半かかった。ここで休んでいると、大きな鹿が近寄ってきた。人を恐れる様子はなく、和子の方が怖がって逃げていた。
(西峰から皇海山)
(六林班峠の鹿)

六林班峠から庚申山荘までは、11峰の山腹の等高線を辿るほぼ水平な、従ってくねくねとした道を3時間近く歩いた。前半では沢やザレ場を何度も通過しなければならなかった。後半は問題になる所はなかったが、長い道をただひたすら歩いた。やがて、天下見晴への分岐まで来ると昨日歩いた道になり、足場の悪いところなどを思い出しながら歩いて庚申山荘に到着した。
山荘に入って一休みし、デポしておいた物を回収してから、銀山平へむかった。一の鳥居から4kmの林道歩きだったが、朝歩き始めてもう12時間たっている。足は進まない。重い足を引きずるように歩いて銀山平のかじか荘にたどり着いた時は心底ほっとした。かじか荘は清潔な国民宿舎、温泉で汗を流し、美味しい夕食に舌鼓を打って至福の夜を迎えることが出来た。
(ガレた沢を渡る)
(やっと一の鳥居)

翌日は下山夫婦と別行動、舟石林道を走って足尾銅山の跡地を見物して帰った。舟石林道の入り口に「銀山平展望台へ400m」の看板があったので展望台に登ってみた。庚申川の流れやかじか荘のたたずまいが見渡せた。舟石林道は展望の良い林道で、日光の山などの展望が素晴らしかった。
松木沢沿いの道に出ると、対岸に足尾精錬所が廃墟のような巨体を晒して異様な雰囲気をかもし出していた。
車を道の奥に向けて走ると、銅(あかね)親水公園があり、目の前に松木ダムが綺麗な水幕を作っていた。傍らの展望台に上がってみると、松木渓谷の素晴らしい展望が広がった。
(舟石林道からの展望)
(松木ダム)
(銅親水公園)
(足尾精錬所)
(親水公園展望台から松木渓谷の展望)

松木渓谷の奥にグランドキャニオンという絶景があるらしいが、今日はここまでで満足して、日立への帰途についた。R122へ出てからは、来た時と同じ道を走って、夕方我家に帰ってきた。



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