S75.コマクサの岩手山

1.動 機
岩手山は、5年前に東北の山々を9日間かけて歩き回ったときの計画に入れていて、網張温泉に泊まったのだが、丁度噴火騒ぎが始まって登ることができなかった。今回、コマクサを見にどこかに行こうと話し合ったとき、燕岳も考えたが、やはり登れなかった岩手山に決まった。インターネットで調べると、焼け走ルートのコマクサは日本一で7月中は見ごろとなっていたので、登山口の焼走り国際交流村のロッジに泊まって登ることにした。意外にもコマクサの他にもたくさんの花に出合え、天気も良くてすばらしい登山になりました。

2.データ
a)山域:岩手山(2038m)
b)登山日:2005/07/19(火)晴れ一時曇
c)コースタイム: 
焼走り国際交流村ロッジ6:20 = 6:25焼走り登山口6:45 ---- 8:20第2噴出孔8:30 ---- 8:40第1噴出孔8:50 ---- 9:40ツルハシ ---- 11:00避難小屋(昼食)11:25 ---- 12:10岩手山山頂12:15 ---- 12:55平笠不動---- 13:35ツルハシ ---- 14:05第1噴出孔14:20---- 15:30焼走り登山口15:45 = 15:50展望台16:00 = 18:30沢内村ろくのへ旅館
d)同行者:和子
e)地形図:1/25000 「松川温泉(南東)」

3.記 録 
(溶岩流観察路からの岩手山)
朝目覚めると、外は青空、岩手山が大きく見えていた。朝食を済ませ、部屋の片付けとごみの処理をして、岩手山をバックに記念写真を撮った。登山口の駐車場に移動し、溶岩流観察路に入って、累々とした溶岩の重なりに噴火当時の溶岩流の凄さに思いをはせ、ここでも岩手山をバックに写真を撮った。
登山口には噴火警報時の注意事項を書いた大きな看板が立っている。登山道は溶岩流に沿った雑木林の端を伸びており、樹木で覆われているので日差しは遮られていて助かったが、だらだらと登る道は単調で、暑くて汗が止めどもなく出てくる。だんだん勾配が急になり、砂礫の道は一歩ごとにずるずると滑って歩きにくい。丸太の階段も作ってあるが、段差が高くて嬉しくない。ところどころに見えたシャクナゲやトリアシショウマが僅かに慰めてくれた。青い実をつけたツバメオモトがたくさんあり、少し早ければ綺麗だっただろう。
1時間半頑張って樹林帯を抜けて火山岩の上の第2噴出孔見晴らし台に着いた。見下ろすと国際交流村を始め、溶岩流の跡、西根町一帯が見渡せた。その上に八幡平の端から姫神山、早池峰山も見え、後ろには岩手山が聳え、まだまだ先が長いことを思い知らせていた。ロッジの冷蔵庫で凍らせたゼリーを飲み込むと、とても美味しくて生き返った。
10分も登って第1噴出孔に着くと、溶岩にイワブクロやコマクサが張り付いていた。今年初めて見るコマクサに大喜びでシャッタを押す。ここから少し登ると、登山道の両側にロ−プが張られていて、上下の斜面にコマクサが無数に点在している。ここが最高のコマクサ群生地のようだ。少し気が引けたが、ロープを乗越え踏み後を辿って、コマクサのアップの写真を撮った。この群生地はここから800mも続き、上の方では登山道からもアップの写真をいくらでも撮れた。大群落の写真を試みるが、目で見ていないとこの迫力は分からないだろう。此処まで来てこの群落を見れば、山頂まで登らなくても岩手山に来た価値は十分にありそうだ。
(コマクサはまだ綺麗でした・和子撮影)
(斜面一面にコマクサの絨毯・和子撮影)

また灌木帯に入り、ハクサンチドリの写真をとって歩くと、上坊口ルートとの合流点ツルハシに着いた。
道はここから又急坂になってきた。花はコマクサに代わってカラマツソウが登山道の両側を飾っていた。急斜面を登りきったあたりから、色々な花が見え始めた。モミジカラマツ、ズダヤクシュ、シラネアオイ、サンカヨウ、コバイケイソウ、マイヅルソウ、ミヤマオダマキ、ハクサンチドリ、ヨツバシオガマ、ムシトリスミレなど色とりどりで賑やかだった。岩手山でこんなに多くの花に出会えるとは思わなかった。
(ズダヤクシュ)
(シラネアオイ)
(カラマツソウとミヤマオダマキ)

(赤と白のハクサンチドリ)
(ヨツバシオガマ)
(ムシトリスミレ)

1時間登って茶臼の異様な岩山が見え始めたところで、前から降りてくる御夫婦から大きな声がかかった。なんと隣の町内に住むSさんだった。お互いに日本は狭いねと奇遇の挨拶を交わし、帰ってからの情報交換を約した。平笠不動避難小屋に近づくとハクサンシャクナゲやアオヤギソウが現れた。避難小屋の100m手前に「岩手山山頂へ」の指標がついた分岐が現れた。下山時に教わったのだが、網張温泉ルートが通行禁止になった時に作られた焼け走側からの臨時登山道だった。このまま山頂に向かうにはお腹が空きすぎていたので、避難小屋に入って昼食にした。
(異様な岩山・茶臼)
(昨日登った森吉山がはるか)

避難小屋の周りはお花畑のようにたくさんの花が咲いていた。ミヤマキンバイの大きな株があり、アカと白のハクサンチドリが並んで咲き、そこかしこにヨツバシオガマやベニバナイチヤクソウが綺麗な色を見せていた。避難小屋の先からは、再開された山頂への登山道がついており、勾配は結構急だが歩きやすく綺麗に整備されていた。登るにつれて、八幡平から秋田駒方向の展望が開けてきて、ツクバネソウやイワブクロやイワギキョウの花が咲いていた。山頂近くの砂礫地帯になると、コマクサも現れた。広い範囲に結構大きな株が咲いているが、下の群落地で日本一の群落を見てきたばかりなので感激は薄かった。
(ミヤマキンバイ)
(ベニバナイチヤクソウ)
(イワブクロ)

山頂は寒かった
(岩手山山頂にて)
山頂に近づくと雲が湧き上がってきて視界を遮ぎりはじめ、外輪山の環状ルートに上がった時には外輪山全体が見えていたのに、最高地点の薬師岳山頂に着くと視界ゼロになってしまった。コマクサを愛でる時間や、昼食を後回しにしていたらすばらしい360°の展望を楽しめただろうにと反省しても後の祭りだった。下山しようとしていた20人ほどの団体さんの一人に証拠写真のシャッタを押してもらって、さっさと下山にかかる。下山時、臨時登山道の分岐点に着くとロープで仕切ってあった。この道を登ってきた御婦人が、「上り口にはロープはなかった。登山ルート制限時に作られた道なので歩いて悪い訳はないわ」とおっしゃる。近道だと思って入り込んだが、ハイマツが出っぱっていたり、ぬかるんでいたり、歩きにくい道だった。
ツルハシを過ぎたあたりから、また陽がさし始め、山頂も見えだした。登山口まで降りると、監視員の人が立っていて、「今日は天気が良くてよかったですね。梅雨に入って山頂がこんなに良く見えたのは初めてです。」と言って、山頂では視界がゼロだったと言っても信じてもらえなかった。監視員に薦められて、溶岩流観察路の他方の入口にある展望台まで車で行って溶岩流と岩手山を心行くまで眺めてから、次の和賀岳への登山口の沢内村に向かった。
ナビの設定を間違えて、80kmで行ける筈の沢内村に120km、2時間半も走ってしまった。着いたろくのへ旅館は商店の2階を旅館にしている安宿だったが、丁度宴会の日だったので、そのお流れが来たのか豪華な夕食だった。



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