T83 北アルプス(高天ヶ原・雲の平・鷲羽岳)

1.動 機
水戸アルパインの8月例会として「北アルプスの真ん中を登山する」と題して、太郎平、薬師沢、高天ヶ原、雲の平、鷲羽岳、三俣蓮華岳、双六岳を登山する、4泊5日の縦走計画があった。双六岳から北は、我家が踏み込んだことのない領域であり、高天ヶ原や雲の平という名前のイメージから、優しい美しいコースと思い込んでいたので、色々な期待を胸いっぱいにして参加した。実際は、沢沿いの岩場渡りがあったり、急登に次ぐ急登で汗を搾られたりと、なかなか手ごわい変化の多いコースだった。通年なら花はおしまいの時期だが今年は遅れ気味のようで、あちこちで沢山の可愛い花たちに迎えられ、天気もまずまず、素晴らしい北アルプスの景観も満喫できて、満足いっぱいの山行を楽しんできた。

2.データ
a)山域:鷲羽岳(2924m)、三俣蓮華岳(2841m)、双六岳(2860m)、祖父岳(2825m)
b)登山日:2006/08/27(日)〜 8/31(木)(前夜発)
(北アルプスど真ん中ルート)
c)コースタイム:
8/26(土):日立電鉄南営業所 = 水戸IC
8/27(日): 立山IC = 折立登山口 --- 太郎平小屋 --- 薬師沢小屋(泊)歩行6.8 hr
8/28(月): 薬師沢小屋 --- 高天ヶ原山荘 --- 夢の平 --- 高天ヶ原山荘(泊)歩行6.5 hr
8/29(火): 高天ヶ原山荘 --- 高天ヶ原峠 --- 雲の平山荘 --- 祖母岳 --- 雲の平山荘 --- 祖父岳 --- 黒部源流 --- 三俣山荘(泊)歩行7.2hr
8/30(水):三俣山荘 --- 鷲羽岳 --- 三俣山荘 --- 三俣蓮華岳 --- 双六岳 --- 双六小屋(泊)歩行6.0 hr
8/31(木):双六小屋 --- 鏡平 --- 新穂高温泉 = 平湯温泉 = 松本IC=水戸IC=日立電鉄南営業所 歩行5.2hr
d)同行者:水戸アルパイン(男性8名、女性13名)、和子
e)地形図:1/25000「有峰湖」、「薬師岳」、「三俣蓮華岳」、「笠岳」

3.記 録 
8月26日 晴:折立登山口まで
夕食を食べてから我家を出て、南営業所の駐車場に車を置いて、出発準備が出来たバスに乗り込んだ。バスは順々に仲間を乗せて23名全員揃い、夜9時過ぎに水戸ICから常磐道に乗った。守谷SAを皮切りに、横川SA、妙高SA、有磯海SAとほぼ2時間おきに駐車し、運転手が交代しながら、5時10分に立山ICで高速道を降り、5時35分に有峰林道のゲートに到着した。駐車場とトイレのある料金所で朝食を食べ、6時の開通とともにトップで林道に入り、時々自家用車を追い越させながら走って、林道終点の折立登山口に6時45分到着した。
8月27日 曇一時雨:折立登山口から薬師沢小屋まで
折立登山口7:15 ---- 7:40衣服調整7:45 ---- 8:15休憩8:20 ---- 9:00三角点9:10 ---- 10:25五光岩10:35 ---- 11:50太郎平小屋12:25 ---- 13:15第一渡渉点13:20 ---- 14:05休み14:10 ---- 14:50薬師沢小屋(泊)

(グッパー体操)
登山口のトイレ脇の広場は広いので、身支度を整えてから、ラジオ体操とグッパー体操の準備運動を充分にしてから歩き始めた。樹林帯の中の登山道は、傾斜は結構きついが、階段状にステップをうまく切ってあったりして歩きやすくなっていた。さすがメジャーなコースは手入れがいい。暑くなって一枚脱ぎ、立ち休みして歩き始めると、前方で大きな黄色い声が何度も上がった。何事かと思ったら、上から薬師岳から降りてくる茨交のツアー一行があり、先頭に水戸アルパインのUさんがいたのだった。その後にも、リーダの川又さん、先日聖で一緒だったHESCOのAさんがいたり、人気のコースでは知人に出くわすことが多い。このあとも、ツアーやグループと何度も交差したが、登山道が広いので、あまり気を使わないで歩くことが出来た。
(太郎平小屋への広い登山道)

三角点で一休みしてから先は、登山道はなだらかで、広い石畳や複線の木道になってきて、更に歩きやすくなってきた。はるか先に薬師岳の大きな稜線が広がり、手前に太郎平が見えているが、まだまだ先は遠い。足元のイワショウブやキンコウカなどを愛でながら気持ちよく歩いていくと、先を歩いていた和子が立ち止まっている。大腿に痙攣が来たという。リーダが「原因は睡眠不足だろうが、正座するのが一番」とおっしゃるので、路側に正座してみた。座る時は筋が切れそうなほど痛かったが、痙攣は治まって筋肉はやわらかくなったという。さすがリーダ。
太郎平に近づくと、周り一面がチングルマの果穂になった。こんな大きなチングルマの群落は見たことがない。果穂でも充分綺麗だが、一度花の時期に訪れてみたいものだ。太郎平小屋に着いてから、前の広場のテーブルで持参の弁当を広げた。薬師岳の山頂は隠れているが、水晶岳が正面に大きく広がり、左に鷲羽、三俣蓮華あたり迄が見えていた。
(渡渉点には木橋が架かっていた)
(もうすぐ薬師沢小屋)
太郎平小屋からは北の俣岳への道を右に分けて、薬師沢への展望のいい木道へ入っていった。昨日土曜日は賑やかだったのだろうが、ここから先は誰一人出会うこともなく、水戸アルパイン貸切の山歩きになった。時折雲が出てきて山並みを隠すが、このあたり花が多い。ウサギギク、アキノキリンソウ、オトギリソウ、タカネニガナなど黄色い花のほかにも、ハクサンイチゲやイワイチョウなど初夏の白い花も残っていて目を楽しませてくれた。20分も木道歩きを楽しむと、樹林帯のなかの急坂の下りになり、30分で沢筋に降り立った。地図では3箇所に渡渉点があったが、すべて立派な木の橋が架かっていて、難なく通過できた。むしろ途中の登り返しの階段が、一段ごとのステップが高くて苦労した。沢沿いからは展望はないが、ハクサンフウロ、トリカブト、ミソガワソウ、サラシナショウマ、オタカラコウなど色とりどりの花が賑やかだった。
薬師沢小屋の手前の笹原を歩いている時に小雨が降り出し、ザックだけカバーして歩いていった。薬師沢小屋の先には吊橋があるが、現在修復中で鉄製の臨時吊橋になっていた。吊橋の上からの沢の眺めが良かった。
薬師沢小屋のトイレ考:小屋に近づくと異様な悪臭がし、小屋中にも臭っていて困った。バイオ式だが、通電して攪拌するのは朝方と夕方の照明点灯時だけなので、その他の時間のものは処理されなくて悪臭立ちっぱなしなのだ。特に前日の土曜日は定員以上の100人の宿泊があったそうなので、日曜日は特別だったのかもしれないが----。他に部屋は空いているのに、9人の男性は定員いっぱいに詰め込まれるし、空いた食堂も談話室として使わせてもらえないので、食後は寝るしかなかったり、トイレの悪臭に加えて評判が悪かった。
薬師沢小屋の弁当は、他の小屋がパック詰めだったのに対し、小さなちまきが3つで、味も良く、少しづつ食べるに便利だし、あとのごみが少なくて済み、これだけは評判が良かった。

8月28日 曇一時雨:薬師沢小屋から高天ヶ原山荘−夢の平まで
薬師沢小屋6:00 ---- 7:40 A沢 ---- 8:15 B沢---- 8:45 BC間8:55 ---- 9:15 C沢 ---- 9:40 D沢 ---- 10:05 E沢 ---- 10:55高天ヶ原峠11:10 ---- 12:15高天ヶ原山荘12:40 ---- 13:20夢の平13:40 ---- 14:05高天ヶ原温泉14:40 ---- 15:10高天ヶ原山荘(泊)

(薬師沢の吊橋から出発)
小屋の前は狭いので、準備運動は各自で行い、小屋前で集合写真を撮ってから、吊橋を渡って歩き始めた。吊橋を渡ったところから河原に下りる落差10mが滑りそうな傾いた鉄製の梯子と崖になっていて、早速渋滞になった。今日は、高天ヶ原という名前の持つ優しいイメージのところに行くとは思えないような、こんな難所が連続して現れるのだった。
A沢までは、河原の大きな石を越えたり、少し高巻いたりはあったが、あまり苦労はなかったのだが、A沢を過ぎると川は奥黒部の様相を示し始め、両岸の岩の急斜面が迫ってきた。崖の狭い足場を頼りに岩の出っ張りにへばりつきながらの難行苦行が連続し、高巻きの落差も高くなり岩場の登り下りに難渋した。難所ごとにベテランが女性陣の激励指導に当たったが、薬師沢小屋からB沢入口までのコースタイム1時間が丁度2倍の2時間かかった。
(河原では岩を乗り越え)
(難所では大渋滞)
(竜昌池に映る美女集団)
(いい湯だな)
B沢を少し登って左の急斜面をジグザグに登ったが、登った分だけまた急坂(むしろ崖)を下ってC沢に下りる。登りも辛いが下りのほうが怖い思いをする。まわりには、チョウジギクやヒメシャジン、ギボウシなど咲いているがゆっくり楽しんではおれない。D沢、E沢と登り下りを繰り返したが、最後のE沢で流れる沢水を掬って飲んだら美味かった。E沢から梯子を登って急斜面に取り付き、何度もジグザグを繰り返してやっと高天ヶ原峠に到着してほっと一休みした。
高天ヶ原には峠から30分下る。梯子があったりしたが、みんな快調だ。あとに続くのが少々辛い。平地に降りると湿原保護のため木道が整備されており、歩くにも楽ちんになり、リンドウやワタスゲも咲いていて気持ちのいいところだ。木道を歩いて高天ヶ原に着くと展原台という小さな台があり、上がってみると池塘の配置が一段と綺麗に見えた。
高天ヶ原山荘に着くと、前庭から水晶岳と赤牛岳がガスに隠れ気味に目の前に見えていた。部屋の寝床を確保してから前庭で一休みし、着替えをサブザックに入れて露天風呂に出かけた。温泉まで20分、更に20分歩いて入浴前に夢の平の竜昌池まで足を伸ばした。静かな池で、向こう岸に並んだ女性陣が水面に綺麗に映っていて絵になった。薬師岳を入れた写真も絵になるらしいが、残念ながら雲が多すぎた。 温泉まで引き返して露天風呂に入った。白く濁った温泉は気持ちが良く、ゆっくりと3日分の汗を流し、下着も着替えてさっぱりとした。温泉に入れる山旅はいいもんだ。
高天ヶ原山荘は古い建物で、ランプの宿で風情はあるが、床が相当に傾いていて、頭と足の高さが随分と違う。夜中、誰かがトイレに歩くと、廊下も階段もガタガタ、ギシギシ大きな音を出すのには閉口した。

8月29日 晴後曇:高天ヶ原から雲の平−祖父岳−黒部源流−三俣山荘まで
高天ヶ原山荘5:50 ---- 7:20高天ヶ原峠7:25 ---- 7:45庭園入口7:50 ---- 8:05奥スイス庭園 8:10 ---- 8:35電波塔 8:45 ---- 9:10雲の平山荘 9:25 ---- 9:50祖母岳10:00 ---- 10:15雲の平山荘10:35----10:50キャンプ場分岐 ---- 12:10祖父岳 12:25 ---- 13:10岩苔乗越13:20 ---- 14:30黒部源流石碑 ---- 15:20三俣山荘(泊)

高天ヶ原山荘を朝6時前に出発して、高天ヶ原峠まで昨日の道を引き返した。昨日下った急坂の登りが随分きつかった。高天ヶ原峠で一休みして、雲の平方向に曲がったが、雲の平はまだまだ上だった。梯子やロープもある急坂を更に20分汗を搾られると、道が平らになって木道も出て来て、やっと奥スイス庭園の端に着いたようだった。少し先で直登方向が通行止めになっていて、木道は右の「森の小道」に入っていった。木陰に入ると、B沢あたりからの冷たい風が吹いてきて気持ちが良かった。
(岩と花の奥スイス庭園)
(祖母岳から水晶岳の展望)
(雲の平のど真ん中を歩く)
(祖父岳からワリモ岳と鷲羽岳は高かった)
(黒部源流はお花畑満開)
(三俣山荘前からの槍ヶ岳)
森の小道の坂を登り切ると、いよいよ雲の平「奥スイス庭園」の始まり、岩の重なりの間にチングルマの果穂など可愛い花が散りばめられた緩やかな斜面がどこまでも続いていた。気持ちよく石伝いに登っていくと電波塔の立つピークに到着した。ちょうどガスが掛かったところだったが、晴れればなかなかの展望が期待できそうだった。
目の前の丘の上に雲の平山荘の赤い屋根があり、間にある浅い谷間に薬師沢から祖父岳に向かう木道が横切っているのが見えた。たくさんの花が賑やかに咲く登山道を木道まで降りて雲の平山荘に上り返し、山荘前にザックをおいて祖母岳に向かった。祖母岳はアルプス庭園の中心で山荘と高さはあまり変わらない。まわりにエゾシオガマやリンドウの花が目立つ木道をのんびりと歩いて祖母岳につくと、空も晴れてきて展望満点だった。薬師、赤牛、水晶、祖父、黒部五郎が見渡せた。
山荘に引き返して少し弁当を食べてすぐに出発。スイス庭園への木道はまさに雲の平のど真ん中を歩くように敷設されていて、展望もお花も申し分ない。はるか左下には昨夜の高天ヶ原山荘も見えたし、後にはどこまで歩いても雲の平山荘が見えていた。キャンプ場への分岐点にくると、「キャンプ場から祖父岳に登る道は荒廃のため通行止」とあり、スイス庭園側に回り道をした。こちらの方が時間はかかっても歩くには楽らしい。
途中、岩苔の谷間の向こうに薬師、赤牛、水晶、祖父岳の展望が雄大で素晴らしかった。花の種類の多いガレ場をトラバースして尾根に上がると、延々と木道が伸びる広い雲ノ平の真ん中に赤い屋根の雲の平山荘が目立っており、その上に太郎平小屋のあるなだらかな稜線が見えていた。
祖父岳山頂に上がると、向こうにワリモ岳から鷲羽岳への雄大な稜線が広がっていた。眺めるのは気持ちがいいが、あの稜線まで上がるのかと思うと気が遠くなる。幸い、「岩苔乗越から黒部源流地点に下りてみたい」との希望がでて、乗越で一休みしてから黒部源流の沢筋を下ることになった。
ガレた沢筋を10分下ったところに、涸れ沢のあちこちから清水は湧き出しているところがあって、みんなでコップを持ち出して「これがほんとの黒部の水だ。美味しい!」とわいわい言いながら味わった。ペットボトルの水を入れ替える人も多かった。
さらに下って、沢に流れが出来てくると、周りに緑が増えてきて、たくさんの花々が賑やかに見られるようになってきた。上の方では、ミヤマミミナグサやミヤマシャジン、シラネニンジン、中ほどにはトリカブト、ミヤマダイコンソウ、ハクサンイチゲ、下るとオヤマソバ、オタカラコウ、ハクサンフウロ、ミソガワソウなどそれぞれ大きな群落になっていて、素晴らしいお花畑だった。8月末にこんなに賑やかなお花畑に出会える幸せにみんな感激して「今日のコース変更は百点満点」の評価だった。
最下点には「黒部川源流地標」の石碑が立っていて、近くの湧き水から今日と明日の水をペットボトルに確保した。ここから1時間近くゆっくり登って三俣山荘に到着、前庭からは目の前に大きく鷲羽岳が聳え、右に餓鬼岳、燕岳、大天井岳、常念岳、槍ケ岳、双六岳、三俣蓮華岳と素晴らしい展望だった。一昨年の表銀座縦走の時にはついに見ることが出来なかった槍ヶ岳に感激して、日没まで、雲の晴れ間を狙っては外に飛び出しでシャッタを押し捲った。

リーダの頭の中:山荘の中で休憩中、M夫人が「先日剣に登った時、山頂から薬師岳を撮った写真」といって綺麗に撮れた写真を披露した時、リーダは一見して、「剣山頂からの薬師がこんな筈ない。どこか、登る途中で撮ったのだろう」と断言した。M夫人も「そう言えば山小屋の上だったかなあ」と引き下がるしかなかった。アルプスは自分の庭なのだろうが、多くの山の展望まで頭に入っているとは、頭の中の構造はどうなっているのだろうか。

8月30日 晴たり曇ったり一時小雨:三俣山荘から鷲羽岳往復−三俣蓮華岳−双六小屋まで
三俣山荘5:40 ---- 6:50鷲羽岳7:05 ---- 8:10三俣山荘9:00 ---- 9:25休み9:30 ---- 10:25三俣蓮華岳10:35 ----11;10昼食11:30---- 12:00双六岳 ---- 13:15双六小屋(泊)

(朝一番鷲羽岳に向かう)
朝5時40分発で、昨日登らなかった鷲羽岳を往復した。はじめは背の高いハイマツの中を登ったが、ハイマツが切れるてガレ場の登りになって展望がよくなり、右手に表銀座、左に薬師を見ながらの登山になった。トウヤクリンドウの咲くガレバを登っていくと、鷲羽池が見えてくる。「この池の上に槍ヶ岳を配した写真を撮るのが今回の目標」とリーダはおっしゃるが、山頂に至るまで槍はすっきりとは姿を現してくれなかった。
山頂に着くと、また素晴らしい展望が待っていた。祖父岳、薬師岳、ワリモ岳、水晶岳、野口五郎岳、餓鬼岳、燕岳、大天井岳、常念岳、槍ケ岳、遠くに去年登った針の木・蓮華まで見えていた。下りでは黒部五郎岳に朝日が当たり、常念岳の左に八ヶ岳まで姿をあらわして万歳!だった。
(鷲羽岳山頂からの大展望)
山荘に降りて、名物のコーヒとケーキのセットを注文し、しばしふくよかな香りと甘ーい味を楽しんだ。
(三俣蓮華岳山頂にて)
休んでいる間に雨模様になり、みんなザックカバーをして三俣蓮華に向かって歩き始めた。キャンプ場からハイマツの中の急登になり、ハイマツの緑と色とりどりのザックカバーの取り合わせも美しい。登るにしたがって展望が開け、槍から穂高の峰々が見えはじめて嬉しくなる。双六小屋への巻道を左に見送り、ガレた急坂を攀じ登って三俣蓮華岳山頂に着くと、笠ケ岳や黒部五郎岳も見えてきた。薬師の手前に雲の平の山荘も見えていて、どこからでも目立つこの山荘には驚かされる。山頂で集合写真を撮って歩き始めると、すぐに「長野・富山・岐阜三県の境」の木柱が立っていた。気持ちのいい稜線を双六岳に向かって歩いて、鞍部で昼弁当を食べている間に空模様が怪しくなり、双六岳山頂では一昨年の時と同じような風交じりの雨になった。今度も双六からの槍ヶ岳を見ることが出来ないことにがっかりしながら、広い山頂台地の真ん中をどんどん下り、急に現れたガレた急坂を下って午後1時過ぎに双六小屋に到着した。
(双六小屋の前庭で歓談)
小屋の前庭で整理運動をして、決められた部屋の中で濡れた雨具を整理している間に陽も射すようになったので、。雨具は戸外で乾かすことにした。外のテーブルでビールの乾杯をしながら、楽しかった5日間を賑やかに振り返った。 双六小屋は立派な山小屋だ。80人の食堂は食事前に行列を作る必要もなく、談話室も二つあって、ゆっくり飲みながらの話も出来る。廊下や部屋は人が歩いても物音一つせず、扉の開け閉めもスムーズで静かなものだ。

8月31日 晴:双六小屋から鏡平−新穂高温泉、バスで日立電鉄南営業所まで
双六小屋6:00 ---- 7:25弓折峠 ---- 8:00鏡平山荘8:25 ---- 10:50左俣林道 ---- 11:15ワサビ平小屋11:30 ---- 11:40笠新道----12:30新穂高温泉12:40 = 13:10平湯温泉(入浴、昼食)14:20 = 15:30松本IC = 16:25東部湯の丸SA 16:40 = 18:25三芳SA 18:30 = 19:15守谷SA(夕食)19:40 = 20:30水戸IC = 21:40日立電鉄南営業所

(槍ケ岳のシルエット)
(鏡池に映る槍ケ岳連山)
(Yさんに群がるアサギマダラ)

最終日は朝から天気が良かった。燕岳あたりから赤焼けが始まり、鷲羽岳山頂にも日が当たって綺麗になった。準備運動をして6時に歩きはじめると、双六池の向こうには笠岳が朝日をいっぱいに受けていた。見とれて木道を気持ちよく歩いているとつるりと滑った。昨日の雨が凍っていたのだった。油断大敵。
ハイマツの多い斜面をトラバース気味に登って行くと、前で歓声が上がった。続いて稜線に出てみると、目の前に長い西鎌尾根から槍ヶ岳−穂高連峰の山並みがシルエットのように浮かんでいた。一昨年は何も見えなかったところで、今年は素晴らしいご褒美を貰った。リーダにピークの一つ一つを解説してもらったが、いつかあの大キレットを越えることがあるだろうか。
稜線を歩いていくと、槍ヶ岳が段々と大きくなり、朝日が山稜を越えてくる斜めの縞模様が美しい景色を作った。やがて目の前には、焼岳、乗鞍、御嶽も見え始め、右手の雲海には遥か遠方に白山が浮いているのが見えていた。
弓折乗越から石の多い歩きにくい急坂を下って鏡平小屋に着くと、25分の休憩が伝えられた。皆さんはかき氷の注文に走ったが、カメキチの数人は休むことなくすぐに鏡池に向かった。水面は少し揺れているが、槍や穂高の山並みを綺麗に映していた。喜んで何度もシャッタを切ったので、メデイアを使い切ってしまった。
ここからも石だらけの急な下り坂が2時間以上も続き、林道に出ると20mほど雪崩で崩壊した場所があり、大きく河原に迂回させられ、自然の猛威を感じさせた。ワサビ平小屋で冷たいトマトを食べていると、渡りの蝶「アサギマダラ」がたくさん出てきて、なぜかYさんにだけ帽子やシャツだけではなく、顔と言わず手と言わず、ところかまわず止まってきた。私が手を近づけても逃げるだけ、何が違ったのだろうか。
ワサビ平から林道をうんざりしながら1時間歩き続けて新穂高温泉のバスターミナルに到着して、12時30分に4泊5日の大縦走山行が無事終わった。待っていたバスに乗り込み、平湯温泉で汗を流して昼食を食べ、松本ICから高速に乗り、長野道を北上、上信越道、関越道、外環道、常磐道と2時間ごとに休憩しながら走って、水戸ICを20時30分に降りて、最終の日立電鉄南営業所には21時40分に到着した。



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