W31.日立アルプス縦走
(30km超のロングコース)

1.動 機
先週の上高地スノーハイクを欠席し、なたね梅雨が続いてしばらく山をお休みしていた和子が、久々の一日好天の天気予報を聞いて「久しぶりに歩き甲斐のある山に行きたい。日立アルプスがいいな」と提案してきた。日立アルプスは全部を縦走すると30km以上の超ロングコースになる。7年前に日立市の催しに参加して歩いたことがあるが、7年たった現在、まだ縦走する体力が残っているかどうか心配だった。そうかと言って和子に弱音は吐けないし、途中にエスケープもあるので、受けて立つことにした。
(町内からの日立アルプス展望)

2.データ
a)山域:風神山(242)、高鈴山(623)、御岩山(492)、神峰山(599)、羽黒山(491)
b)登山日:2009/03/02(月)晴
c)コースタイム:森山自宅 7:25 ---- 7:45 研究所前 ---- 8:05 風の広場 ---- 8:15 風神山 ---- 8:45 展望所 ---- 9:00 弁天三角点 ---- 9:30 石切り場 ---- 10:15 休憩所 10:30 ---- 10:55 ゴルフ場 ---- 11:10(電話連絡)11:30 ---- 11:40 県道 ---- 13:00 高鈴山(昼食)13:30 ---- 13:45 御岩山 ---- 14:05 向陽台分岐 ---- 14:40 神峰山 14:45 ---- 15:30 羽黒山 ---- 15:45 山ノ神 ---- 16:00 蛇塚 ---- 16:35 鞍掛山駐車場 ---- 17:10 神峰公園 17:15 ---- 17:45 日立駅 17:54= 18:04 大甕駅 18:35 ---- 18:50 自宅
(日立アルプス縦走コース)
(日立アルプスルート高低差)

d)同行者:和子
e)地形図:1/25000 「日立」「町屋」

3.山行記録
近所の人に目立たないように出勤時間前に我家を出発した。スギ花粉が心配だが、ロングコースなので邪魔くさいマスクや眼鏡はしておれない。コースに植林地帯は殆どないので、無防備で出かけることにした。
R6を横切り、浄水場脇の団地を突っ切って、奥の石段を登って山道に入った。鉄塔点検路にもなっているのか手入れのいい道を登っていくと、日立エネルギー研究所の正門前に出る。R6バイパス道路を橋で渡ったところが、本来の風神山登山口だ。
(団地の奥が登山口)
(エネルギー研究所)

舗装しなおされた道を登っていくとすぐに風神山自然公園に着く。分岐を右にとって風の広場に出て太平洋の展望を楽しんだ。我家が小さく見えていた。
(風神山自然公園)
(風の広場から町内展望)

これから向かう高鈴山や神峰山が樹間からはるか先に見えていたので、樹木が邪魔しないところを探して写真を撮りたかったが、今日はそんな時間のゆとりはない。そのまま通過して風神の碑のある風神山の山頂に向かった。ここにも駐車場があり、車の前で身支度をしている男性がいて、「下から歩いてきたの?」と不審顔だった。
登山道から左に少し上がった2等三角点のある山頂で、風神雷神と一緒に証拠写真だけを撮って次に向かった。
以前は登山道の脇にベンチのあった展望地点からは今でも西側の視界が開けていたが、今日は意外にも霞が濃くて水戸の県庁の建物が確認できる程度で、筑波山はガスの中だった。くねくねと伸びる常磐道の形が面白くてシャッタを押した。
(風神雷神の碑)
(常磐高速道)

日立市がやっているのか登山道の手入れが良くて歩きやすくて助かる。立札には「ハイキングコースは、ハイカーのために整備されたものです。オートバイ・マウンテンバイク(自転車)の乗り入れは出来ません。」とあり、いまは自転車の乗り入れはないらしい。落ち葉を踏みながら気持ちよく歩いていくと、ランニングで下ってくるスマートな男性に出合った。私よりも年配に見えたが、軽い足取りだった。
一昨年の1月、孫と一緒に歩いた時に土地の男性に教えていただいた展望所に立ち寄った。ガスが少し薄くなって、筑波山がうっすらと見えるようになっていた。
(手入れのいい縦走路)
(展望台から筑波山、加波山)

桜の植裁地を通り過ぎ、急坂を登り切ったところに右に上がる踏跡があり、少し上がって小さな4等弁天三角点にタッチしてきた。小さなアップダウンを繰り返すと日立の大久保から常陸太田の亀作に通ずる林道に出た。正面に分岐する広い林道を少し行くと真弓神社への分岐点だが、不思議なことに真弓神社への明確な道標はなかった。
林道の終点は採石場で、大きな音を立てながら盛んに重機が動き回っていた。一昨年見たよりも、ずいぶんと広く採掘されているように見えた。
(弁天三角点)
(石の倉鉱山)

採石場のところからまた山道に入ると、この先では何箇所かで植林が伐採されたところがあり、その後に杉の幼木が植栽されていた。花粉の少ない杉なのかどうかは分らないが、今も新しく植林が進んでいるのを見て嬉しくなった。
また気持ちよく落葉を踏みながらどんどん歩いて行くと、T字路にぶっつかり、そこは小さな広場のようになっていた。立ち木に中学校の集団ハイキングの休憩所を示す表示がとりつけてあり、我々もお腹も空いてきたのでお八つを食べながら休憩した。
地図によると、ここから右に行くと諏訪の石灰山か平和台団地に向かうようだったが、我々は左に向かった。広い平らな道を20分ばかり歩いて行き、道標にしたがって脇道に入ると高鈴ゴルフ場の作業道に出た。平日だが、若者のゴルファーも大勢プレーしていた。
今日のうちに処理をしなければならない用事が2件あり、日当たりが良くて携帯の通じるクラブハウスの近くで電話連絡を取った。道はまだ半分来ていない。気持ちは先を急ぐが話はなかなか片付かず、処理が終わるのに20分もかかってしまった。
(平和台分岐で休憩)
(高鈴GCで長電話)

オオイヌノフグリなどの早春の花を愛でながらゴルフ場の車道を歩いて県道37号に出て、これを横断して、向かいの登山道に入った。
ここからは何度も歩いた道になるが、常陸太田の春友への分岐を左に見送った先では右下に新しい車道の建設が進んでいた。北ノ沢からの道の付け替えかと思われるが何のための道路なのか分らない。
(オオイヌノフグリ)
(新道建設中)

この辺りまで来ると、いよいよ高鈴へ向かって登りが多くなってくる。足にも疲れがたまってきて、急坂に出会うと足が攣りそうだと言って和子の足が時々止まるようになってきた。痙攣を起こさないよう、ペースを落として休み休み登っていった。
高鈴の山頂に近付くと、標高はせいぜい600m少々なのに道傍に残雪が多くなってきた。登りで熱くなった身体には、冷たい空気が気持ち良かった。
(急登はつらい)
(山頂近くには残雪)

最後の登りをロープに助けられながら登りきって高鈴の山頂に着くと、数人の東電の作業者が車で登ってきて仕事をしていたが、ハイカーは誰もいなかった。
展望台からは、奥久慈男体山の上に、日光から那須までの雪を頂いた連山が見えていた。静かな山頂で遅い弁当を開いた。ここから先まだ17kmもある。展望を楽しむ時間も短くして次に向かった。
(高鈴山頂)
(奥久慈男体山)

雪解けのぬかるんで滑りやすい急坂を下っていくと、登ってくる二人のご婦人に出合い、お互いに人に出会えたことを喜び合った。お二人は、「下のほうで二人の男性に出会っただけで、今日は誰にも出会えないのかと思っていた。ここであなた方に出会えてとっても嬉しい」と笑顔でおっしゃる。それほどに今日は静かな山歩きだ。
(急な下り坂)
(御岩山)

向陽台の分岐点まで下って、ここから神峰山への150mの登りになる。いつもなら150mぐらいは何でもない高度なのだが、ここまで20km以上も歩いた足には、ここからの登り坂がとてつもなく長く感じられた。
神峰の山頂近くにも雪が残っていて、冷たい風が汗をかきそうな身体を冷やしてくれて助かった。
(向陽台分岐、登りは辛い)
(神峰山にも雪)

神峰神社にお参りしてから気象観測所のある山頂にあがると、太平洋の手前に日立市街が広がり、中間で倒壊した鉱山の大煙突からは今日も煙が出ていた。長く高く聳えていた大煙突が懐かしい。
その脇の最高点を示す標柱の前で証拠写真を撮ってから下りにかかった。ここからはほぼ下り一方であまり登りはないはずだ。
(神峰山頂から日立展望)
(598.7m最高地点)

神峰公園から神峰山への登山道も良く手入れされていて、笹も綺麗に刈り払ってある。登りが来るごとに巻き道を選んで気持ちよく歩いていったが、羽黒山には巻き道がなく100mの登りがきつかった。証拠写真には無理やり笑顔を作ってもらった。
(神峰側の登山道も手入れ良し)
(羽黒山)

羽黒山から下って行くと、古い言い伝えが残る山ノ神と蛇塚の二つの石碑が続いた。山ノ神は銅山の鎮めの神様として祭られていたらしく、蛇塚はそれよりもっと昔の戦国時代の言い伝えが残っている塚だという。いずれも、鉱山と十王沢平部落との間の古い道の要衝にある。
山ノ神を通りすぎる辺りで、走って登ってくる一人の青年に出会った。この青年は我々が蛇塚に着く前に追い越して駆け下っていった。羽黒山までの往復ランニング登山と思われるが、風神山で出会った男性といい、近くにも元気のいい人がいるものだ。少し元気を頂いた。
(山ノ神)
(蛇塚)

神峰山からこちらの登山道の両脇には榊の並木が続いたが、特に、蛇塚辺りの榊並木は素晴らしく、まさしく榊のトンネルを潜る風情があった。この榊も大煙突を建設した久原房の助が煙害に強い植物として植栽したのだと聞いたことがある。
(榊のトンネル)
(一箇所沢を渡る)

常磐道のトンネルの上を通り過ぎると、左手一帯が広大な産業廃棄物の埋め立て処分場になり、広い敷地を鉄条網で補強した金網の柵で囲ってある。誰も入りたくはないと思うのだが、仰々しく「これより先危険!立ち入り禁止」何箇所にも赤い注意札が取り付けてあった。
この金網の柵の脇を歩いて行くと、行く手から車の音が聞こえ始め、急坂を丸太の階段で下ることになった。
(廃棄物処分場脇の道)
(県道に下る)

車道に出ると向かいに駐車場があり、そこからまた丸太の階段が登っていて、鞍掛山に60mほど登ってから神峰公園に下るようになっている。このルートを歩けば神峰公園まで1.4km、車道を歩けば1.0kmとあり、疲れた足にはもう登りは沢山とごみ処理センタわきの車道を歩いていった。
神峰公園の上端部には冬桜が咲いており、十王町との合併の記念に十王で育てられた冬桜が植えられていて、丁度満開になっていた。この桜は「日立紅寒桜」といい、去年、農林水産省から「日立紅寒」という名称で品種登録が認められたというニュースを聞いたことがある。
(ごみ処理センタ)
(神峰公園の日立寒桜)

神峰公園から日立市街の展望を楽しんでから、日立駅までバスに乗らないで、街中を見物しながら歩いた。息子の母校日立一高脇を通って真新しく立派になった講堂を眺め、昔は町中に煤煙を降り注ぎ続けていた日立セメントの新しい煙突を見上げたりしながら歩いたが、何度も立ち止まらされた信号待ちの時間が、山歩きに慣れた感覚にはやけに長く感じられた。
日立駅に着いたのはもう日暮れに近い17時45分、夕空に神峰山と大煙突がシルエットのように見えていた。
(工都日立に着いた)
(大煙突と神峰山)

丁度、日立製作所の定時退勤者の乗る電車が入ってきて大甕駅まで乗ったのだが、朝から一日お仕事でご苦労された現役の人たちと一緒で少々気がひけた。
大甕駅駅前のラーメン屋で夕食をとり、30km完歩のお祝いに生ビールを一杯飲んだからか、急に足が重くなり、ここから我家までの1kmの道のりがやけに長く、足を引きずるように歩いて帰った。この道程が今日一番のきつい道のりだったので、山行記の歩行距離にはこの1kmも計算に入れることになった。
家に帰ってきて、足はそれ相当に疲れていたが、スギ花粉の影響は感じられない。道中、殆どが雑木林で植林帯が少なかったお陰だろう。いずれにしても、まだ、このロングコースを無事歩く体力が残っていて満足の一日でありました。




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