X73.黒部五郎岳から笠ヶ岳縦走

1.動 機
水戸アルパインの7月例会は黒部五郎岳と笠ヶ岳の久弥の百名山2座を縦走する計画で、二つの山ともになかなか取りつきにくい山なので、絶好のチャンスと喜んで参加した。
茨城を夜行バスで出発して、折立から登って太郎平小屋で一泊、次の日は北ノ俣岳から黒部五郎岳を登って三俣山荘まで歩いて2泊目、次の日三俣蓮華岳に登り双六岳、抜戸岳を通って笠ヶ岳山荘まで登って3泊目、最終日は笠ヶ岳を往復して笠新道の急坂を下り、新穂高温泉まで林道を歩いてバスに乗り茨城まで帰ってくる前夜発3泊4日の山行だった。
2日目と3日目に長い歩程と結構な上り下りが続く行程は、2日前に灼熱の荒島岳から帰ったばかりの身体には少々きつかった。それでも仲間の思いやりで一行から遅れながら歩くのを許してもらって、素晴らしい展望と盛りのお花畑を楽しみながら全コース歩き通すことが出来た。

2.データ
a)山域:太郎山(2373m)、北ノ俣岳(2662m)、黒部五郎岳(2840m)、三俣蓮華岳(2841m)、双六岳(2860m)、弓折岳(2592m)、大ノマ岳(2662m)、笠ヶ岳(2898m)
b)登山日:2009/07/23(金)晴、24(土)晴、25(日)晴、26(月)晴
c)コースタイム:
前夜アクセス(7/22):日立電鉄南営業所 20:55 = 勝田駅 = 水戸IC =(北関東道=(上信越自動車道)=(北陸道)= 立山IC = 有峰口 =(ジャンボタクシ)= 7:20 折立登山口
1日目(7/23):折立登山口 7:50 ---- 三角点ベンチ ---- 13:10 太郎平小屋(泊)
2日目(7/24):太郎平小屋 5:40 ---- 太郎山 ---- 北ノ俣岳 ---- 黒部五郎岳 ---- ---- 五郎沢 ---- 黒部五郎小屋 ---- 17:00 三俣山荘(泊)
3日目(7/25):三俣山荘 5:45---- 三俣蓮華岳 ---- 双六岳 ---- 双六小屋 ---- 弓折岳 ---- 秩父平 ---- 17:20笠ヶ岳山荘(泊)
4日目(7/26):笠ヶ岳山荘 5:35 ---- 笠ヶ岳 ---- 6:10 笠ヶ岳山荘 ---- 抜戸岩 ---- 笠新道 ---- 林道出合 ---- 13:40 新穂高温泉駅
帰途:新穂高温泉駅 13:55 = 平湯温泉 =(長野道)=(上信越道)=(北関東道)= 水戸IC = 23:25 日立電鉄南営業所
d)同行者:水戸アルパイン会員15名(男9、女6)、和子
e)地形図:1/25000 「有峰湖」「薬師岳」「三俣蓮華岳」「笠ヶ岳」





3.山行記録
20日昼前に荒島岳から帰宅すると、予定表を見直していた和子が「23日出発と言っていた黒部五郎−笠は一日前倒し、22日の出発だよ」と騒ぎだした。体力回復に一日の違いは大きいが、黒部五郎も笠ヶ岳も諦めたくない名山だ。すぐに次のパッキングにかかった。悪いことに、その夜から下痢がピーピー始まって咳も出て喉も痛い。風邪を引いたかと思って翌朝すぐに病院に行って「なんとか山に行けるようにしてください」とお願いする。聴診器であちこち見てから、「下痢を止めなくっちゃ力が出ないだろう。喉も下痢から来てるみたいだから、下痢が止まれば大丈夫」と言って、整腸剤と下痢止め、喉の痛みどめを処方してくれた。22日朝には下痢は止まって、予定通りに黒部五郎−笠縦走に参加することにした。

(前日:アクセス):日立電鉄南営業所 20:55 = 21:25 勝田駅 = 22:45 水戸IC = 0:20 波志江PA 0:30 =(上信越自動車道)=(北陸道)= 4:15 有磯海SA 4:50 = 立山IC = 5:10 立山コンビニ 5:50 = 6:00 有峰口 =(ジャンボタクシ)= 7:20 折立登山口

バスは始発の日立電鉄南営業所を定刻20時55分に出発し、先々の各乗車場所で17名の参加者全員が乗り込んで、22時45分に水戸ICから常磐道に乗った。大型バスを手配してあったので、一人2席を確保できてゆっくりと眠ることが出来た。北関東道経由で上信越道を走って、北陸道の有磯海SAで時間調整をし、立山のコンビニで朝食や昼食、行動食を調達して有峰口のバスターミナルに6時に到着した。
今年は有峰口〜折立間をいつも走る有峰林道小見線が土砂崩れにより通行禁止になっていて、少し遠回りで有峰林道小口川線を利用して折立まで入るしかない。大型バスは通行不可なので、幹事さんが予約していたジャンボタクシー2台に乗り換えた。初めて走る狭い林道をくねくねと1時間近く走ってやっと有峰湖が見えてきた時にはほっとした。ここで小見線と合流して折立登山口に7時20分に到着した。

(1日目:折立登山口−太郎平小屋)
折立登山口 7:50 ---- 9:55 三角点ベンチ 10:20 ---- 10:40 大現三ベンチ ---- 11:05 2011mベンチ 11:15 ---- 12:00 五光岩ベンチ 12:20 ---- 13:10 太郎平小屋(泊)

登山口のトイレ脇の広場は広いので、身支度を整えてから、ラジオ体操とストレッチ運動をしてから歩き始めた。
樹林帯の中の登山道は、傾斜は結構きついが、階段状にステップをうまく切ってあったりして歩きやすい。今日は太郎平小屋までコースタイム4時間歩くだけだ。ペースもゆっくりだし、バスでもよく眠れたので皆さんについて歩いて行ける。心配した荒島岳の後遺症はない。
(折立登山口で準備運動)
(樹林帯の道を登る)

三角点ベンチまでは急登が続いたが、ここを過ぎると登山道はなだらかで、広い石畳や複線の木道になってきて、更に歩きやすくなってきた。
右手に薬師岳の大きな稜線が広がり、そこに向かって荷物を釣ったヘリコプターが何度も何度も飛んで行った。薬師小屋は8月1日新装開店めざして改装中らしかった。登るにつれて大日岳の上に剱岳も見えてきてみんなでシャッタを押した。後には有峰湖も広がってくる。大きな人造湖だ。
(三角点ベンチ)
(薬師小屋への物資輸送)

足元にはいろいろな可愛い花が咲いていて目を楽しませてくれた。せっせと撮った写真を見直してみると、チングルマやタテヤマリンドウのほかに、キンコウカ、エゾシオガマ、ヨツバシオガマ、コガネギク、ウサギギク、コウリンカ、ニッコウキスゲ、コケモモ、コイワカガミ、コバイケイソウ、イワイチョウ、シロバナニガナ、ネバリノギラン、ミヤマホツツジ、ハハコグサなどが写っていた。
(チングルマ)
(タテヤマリンドウ)

ゆっくり休みながら登って4時間20分、太郎平小屋に到着。林道小見線が不通で定期バスが入らない影響か、宿泊者は少なくて、一人一畳以上を割り当てられた。前回押し込められた大部屋には人は入っていないようだった。
前庭のベンチもガラガラだ。先ずは窓口でビールを買ってカンパーイ。明日からのきついコースの話もでて、いつもの仲間で山談議が尽きなかった。
(太郎平小屋に到着)
(小屋前で歓談)

視界も利いて前庭からの展望も素晴らしい。薬師岳の右に雲の平、その後ろに水晶、ワリモ、鷲羽、祖父、三俣蓮華、双六と並び、連れて歩いてもらった山がだんだん増えてきて嬉しくなる。更にその右に黒部五郎、北ノ俣、太郎山と並んでいる。明日は鷲羽の下まで歩くんだ。遠いなあ。
(大パノラマ)

夕食をとってから19時頃になると日没の時間になり、西や東の空が色付いてきて綺麗になった。東には国立公園標柱の真上に満月が浮かび、三俣蓮華や双六岳の上の積乱雲に夕陽が当って赤く燃えてきた。
反対側の西に陽が沈んでいったが、雲が出てきてチャンスを逃がした。それでも夕焼け空の下の草原に二本の木道が浮かび上がって印象的だった。
(東、三俣蓮華岳と積乱雲)
(西、夕陽と木道)

22日下痢は止まったが、定期便が出なくなった。今日もバスの休憩ごとに頑張ったが出てくれない。20時前に就寝して22時頃模様してきて、あら嬉しやとトイレに行くも空砲、その後、2時間ごとに目覚めてトイレに通うもいずれも空砲。このままで山中で腸閉塞になったら命にかかわると心配になって寝付けなくなり、朝方「ここから折立に下りる」仲間に申し立てたが、心配過剰だと言って相手にしてもらえない。

(2日目:太郎平小屋−北ノ俣岳−黒部五郎岳−三俣山荘)
太郎平小屋 5:40 ---- 5:50 太郎山 5:55 ---- 7:30 北ノ俣岳 7:40 ---- 8:40 8:50 ---- 8:25 赤木岳 ---- 9:30 中俣乗越 9:50 ----10:50 黒部五郎の肩 ---- 11:10 黒部五郎岳 11:15 ---- 11:25 黒部五郎の肩 11:45 ---- 12:15 五郎沢 12:20 ---- 13:35 黒部五郎小屋 13:50 ---- 15:00 尾根 ---- 15:35 分岐 ---- 17:00 三俣山荘(泊)

朝食後、嬉しい定期便が出て、すっきりとした気分で準備運動をして太郎山に向かって歩き始めた。今日は三俣山荘まで登り下りもある長丁場、今日のトップは16時頃には着きたいと昨日よりもペースをあげてひっぱってゆく。寝不足の身体には少々きつい。
ゆるやかな道を10分登ってあっけなく太郎山の山頂に着く。日本海は霞んで見えないが有峰湖は見えていたような気がする。ごろ石を積み上げた大きなケルンのそばで証拠写真を撮ってすぐに次に向かう。
(太郎山へ向かって登り始める)
(太郎山山頂)

太郎山からはゆるやかな尾根歩きになり、チングルマの果穂が朝露を含んでキラキラと光って綺麗だった。イワイチョウやコバイケイソウ、ミツバオウレンの白い花も綺麗だった。
(チングルマの果穂)
(イワイチョウ)

次の目立たないピークからは目の前に北ノ俣岳、その向こうの黒部五郎岳の右肩に笠ヶ岳も見えるようになっていた。明日の目的地だが気が遠くなるほど遠くに見えていた。
気持のいい広い尾根を、シャクナゲやハクサンイチゲなど愛でながらゆるやかにアップダウンを繰り返していくと北ノ俣岳に着いた。北アルプスの視界が太郎平よりも更に開けて、大日岳、赤牛岳や笠ヶ岳も見え、乗鞍岳や白山も青い山並みの向こうに浮かびあがっていた。
北ノ俣岳の山頂で展望を楽しみ、記念写真を撮って次に向かった。
(太郎山から北ノ俣岳へ)
(北ノ俣岳山頂)

北ノ俣を後にしてゆるやかに下って行くと、五郎岳の名前の謂れになっているゴーロ(ごろ石)が登山道に多くなってきて歩きにくくなってきた。黒部五郎岳は目の前に見えているのだがなかなか近づかない。
黒部五郎の手前のピーク、赤木岳は花崗岩の重なりの山だった。山頂を巻いてゴーロを踏みながら通り過ぎた。
(北ノ俣岳を後にする)
(赤木岳を巻く)

赤木岳を過ぎたところで一休みになった。天気も良くなったこともあって展望は更によくなってきて、黒部五郎の左肩に三俣蓮華も頭を出し、乗鞍の右に御嶽山も見えていた。
(北アルプス大展望)

中俣乗越を過ぎて展望を楽しみながら歩いて行くと、黒部五郎岳への急登が始まった。ここまで頑張ってきた和子が私の風邪(?)を引き継いだように咳をし始め、調子が悪いと言い出した。数日前東京に出て熱中症になったという仲間のFuさんも、今日のペースにはついて行けそうにないと言う。寝不足の私と三人で皆さんと遅れながらゆっくりと登って行った。
(黒部五郎へ)
(黒部五郎肩へ)

肩まで上がると、眼下に大きなカールが口を広げていた。久弥はこの底から見上げるカールの情景を、他には類例のない素晴らしさ、圏谷の底という感じをこれほど強烈に与える場所は他にないと絶賛している。左にカールに下る登山道が見えるが、今日は右の黒部五郎に登頂したらそのまま右の尾根を黒部五郎小屋まで下るらしい。
(黒部五郎の肩からカールを見下ろす)

リーダがここまで遅れ気味だった3人を見ながら、ここから山頂まで空身で往復してカールに下って黒部五郎小屋に向かってもいいよ。その方がコースタイムが少し短い。」と声をかけてくれた。助け船に乗って、三人ともう一人Taさんが加わって、4人で楽ちんをすることになった。
空身で山頂に登って、みんなと一緒の集合写真に加わった。
(空身で黒部五郎山頂へ)
(黒部五郎山頂)

黒部五郎山頂からの展望はまたまた素晴らしく、歩いてきた赤木岳から北ノ俣岳、薬師岳、越中沢岳
(黒部五郎から北を展望)

手前に雲の平、遠くに立山、赤牛岳、水晶岳、スバリ岳、鷲羽岳、
(黒部五郎から北東を展望)

三俣蓮華、双六岳、抜戸岳、笠ヶ岳と続き、その後ろに槍穂高連峰、乗鞍、御嶽も控えている。
(黒部五郎から南東を展望)

山頂で弁当を広げる皆さんと別れて肩まで下って昼食にした。カールと向かいの山々を眺めながらゆっくりと山小屋謹製の弁当をいただいた。
下り道は肩から右手に大きく歩いたところにあったが、道は大きなゴーロがゴロゴロしていて歩きにくい。三人の女性は下りでは私よりも強いのだ。追われるように下りながら、これなら皆さんと一緒に尾根を歩いた方が楽だったかなと思ってももう遅い。足元を確かめながらゆっくりと下って行った。足元にはシナノキンバイなどの花もいろいろと咲いていた。
(肩へ下る)
(肩からの下りは歩きにくい)

下る途中からは、はるか下に黒部五郎小屋の赤い屋根が見えており、小屋の向こうの急斜面に登山道が見えていた。小屋まで下ってその急登をを300mも登らなければ今日の宿に着かないのだ。お互いに励まし合うが、正直暗澹たる気持ちになった。
(三俣蓮華岳の下に黒部五郎小屋も見えてきた)

底まで下ると、評判通りに素晴らしいカールを見ることが出来た。白い岩壁と緑の斜面に挟まれた渓谷は、ゴロゴロする大きな岩やいろいろな花が咲くお花畑と見事なコントラストを構成していた。やっぱりこちらの道を選んで良かったのだ。
(黒部五郎の大カールの底から)

五郎沢の水は冷たくて美味しく、一口飲んだだけでいっぺんに疲れがふっ飛んで行く感じがした。ペットボトルの水を全部入れ替えた。
冷たい水で元気をもらって、大石を乗り越えながら小屋への道を急いだ。
(冷たい五郎沢の流れ)
(カール底の大石を踏みながら)

小屋に近づくと、平原いっぱいにコバイケイソウが咲いていて、見事な群落にしばし足を止めた。
キャンプ場を通り過ぎると小屋はすぐだったが、皆さんは15分も前に到着して、首を長くして待っていた。一休みして次の急登に向かう事になった。
(キャンプ場近くのお花畑)
(黒部五郎小屋で合流、一休み)

ゆっくり歩きたい三人は、リーダにお願いして皆さんから遅れて歩くことにした。日暮れ前に小屋に到着すればいいだろうと、長い急坂をゆっくりゆっくり登って行った。いつか先行の皆さんの声も聞こえなくなっていた。
急登の途中、三か所にのんびりコースと書いた回り道があったが、最後ののんびりコースだけ歩いてみた。汗を絞られなくて済むし、展望のいい場所もあって楽しい道だった。
(黒部五郎小屋からは長い急登)

尾根まで登りついてほっとしたが、地図によると三俣山荘への巻道分岐は三俣蓮華岳の尾根道をもう少し登らなければならないらしい。覚悟して少し登って行くと、右下に急な雪渓があり、これを横断し始めている先行隊が見えた。後で聞くと分岐点で15分休んでいたらしい。
リーダが大声で「夏道を歩かないで、雪渓の上を歩いて来い」と指示してくれた。歩きやすい雪渓の上を歩いて分岐点に着くと、雪渓はなかなかの急斜面で、素人には怖い感じだ。先行隊が踏跡を付けてくれていたので、足跡を一歩一歩慎重に辿って無事通過できた。
(やっと稜線に出た)
(急な雪渓渡り)

巻道は大石でガラガラの道で歩きにくいことこの上ない。巻道とはいえ少し下ったと思ったら150mほどの登りが待っていた。想定外の登りにぶつぶつ言いながら登り切って、いくつかのゆるやかな雪渓を渡りながら下ってやっと三俣山荘にたどり着いた。
宿に着いたのは17時、先行隊は17時からの夕食をとっていたが、着いたばかりの三人はまだ食欲がない。山荘にお願いして、ゆっくり休んでから40分遅れの夕食を頂いたが、ご飯が硬くて美味しくなかった。先行隊に聞くと美味しいご飯だったというから、遅くなった分冷えて硬くなっていたのだった。
(キツイかった登り返し)
(やっと三俣山荘が見えてきた)

今日も小屋は空いていて、一枚の布団を占有してぐっすりと眠った。


(3日目:三俣山荘−三俣蓮華岳−双六岳−弓折岳−抜戸岩−笠小屋)
三俣山荘5:45----6:30 三俣峠 6:35 ---- 6:50 三俣蓮華岳 7:10 ---- 7:35 丸山 ---- 8:00 中道分岐 ---- 8:35 双六岳 8:45 ---- 9:50 双六小屋 10:10 ---- 10:50 くろゆりベンチ 10:55 ---- 11:15 花見平 11:30 ---- 11:45 弓折乗越 ---- 11:55 弓折岳 ---- 12:15 大ノマ乗越 ---- 13:10 大ノマ ---- 14:00 秩父平 14:15 ---- 14:45 鞍部 14:50 ---- 15:55 笠新道分岐 16:00 ---- 16:30 抜戸岩 ---- 16:55 キャンプ場 17:00 ---- 17:20笠ヶ岳山荘(泊)

翌朝目覚めると、今日も天気がいい。鷲羽岳や槍穂高に朝日が当たっており、前庭には三脚を構える人もいた。
(朝日に燃える鷲羽岳と槍穂高)

暖かい柔らかいご飯の朝食をいただき、前庭で準備運動をして歩き始めた。今日は後続隊にFuさんの友達Seさんが加わり、リーダを若いFさんが引き受けてくれることになった。
(前庭で準備運動して歩き始め)

Fさんの見事なペース配分で、三俣蓮華の急坂になっても休憩時間を先行隊より少し短くするだけで大きく遅れることなく付いて行った。花もハクサンイチゲやキンロバイ、タカネスミレ、イワカガミ、タカネヤハズハハコ、イワツメクサなどを愛でる余裕もあった。
山頂からは槍や笠が近付いてきて、昨日以上の展望が広がっていた。ゆっくりと展望を楽しんでから、集合写真を撮って次に向かった。
(だんだんきつくなる)
(三俣蓮華岳山頂)

ここからの道は何時も目の前に槍や笠ヶ岳を目の前にしながら歩く楽しい尾根歩きだ。小さなコブ丸山を越えて歩いて行くと、足元でもハクサンイチゲ、ミヤマキンバイ、タカネスミレなどが楽しませてくれる。
(丸山越えて双六岳へ)

双六岳山頂では槍穂高を目の前にしてお八つの時間。この山には2度登ってきたが、今までここから槍ヶ岳を見た事がない。絶景を楽しみ、ここでも集合写真を撮った。
(双六山頂から北アルプス大展望)

双六岳の稜線上から槍穂高を目の前にして気持よく双六小屋に向かって下って行ったが、先行隊はなぜか引き返してきた。先の急斜面に雪渓が残っていて通行禁止になっていて、別のルートを下ろうと引き返して来たのだった。途中にも危険との小さな案内板があったが、気持よく歩いていたので見落としたのだった。
(気持ちいい双六稜線を行く)
(みんな引き返してきた)

尾根道の途中から左に下る春道があり、これを下って中道に合流して双六小屋に下って一休みになった。
(春道を下って)
(双六小屋で一休み)

双六小屋でここまで頑張ってきたFuさんが「笠ヶ岳を諦めて一人鏡平山荘に下る」と言いだした。我家だけでは別行動をする訳にはいきそうにないし、みんなについて歩くのも辛そうだ。笠ヶ岳を諦めるのも残念なので、強引にFuさんを説得して一緒に歩くことにした。これを聞いたりーダが一緒について歩いてくれることになり、FさんとSeさんも今まで通り付いて歩いてくれることになり、第二部隊が出来上がった。頼もしいFさんは余分な荷物を分担してくれた。ここからは先行隊と別行動になり、先行隊には待つ必要がなくなり、後続隊も追いかける負担がなくなった。
双六岳から弓折乗越までは今まで何度か歩いた道だったが、今日は天気が良くて初めて歩く気分で楽しく歩いて行った。
双六池の近くにはクロユリがたくさん咲いていて、白山でクロユリを探して歩き回ったことを思い出した。
(第二部隊編成)
(クロユリ)

花見平では一面のハクサンイチゲの群落の脇で弁当を広げ、槍穂高連峰を見上げながら、8月末の大キレット越えに話が集中した。
(ハクサンイチゲの大群落)

鏡平山荘−新穂高温泉への分岐点がある弓折岳分岐は通過して、ここから初めて歩く笠ヶ岳への道に入った。
(弓折岳分岐)

弓折岳は小さなピークで記念写真だけ撮って通過、大ノマ乗越まで100m下ってから大ノマ岳まで200mのキツイ登りになった。大ノマの中ほどを歩く先行隊の姿が見えていた。
(弓折岳山頂)
(大ノマ岳への登り)

大ノマ岳に登りつくと、目の前に立ちはだかるような秩父岩の大岩壁が見えてきた。どこを登るのかをいぶかると、右手の斜面にジグザグの登山道が見えていて安心した。
この辺りで雨粒がチラチラと顔にあたり、遠雷が聞こえてきだした。リーダのペースが少し早くなってきたような気がした。下りになると女性は元気でいくらでも速く歩ける。いつものMACのペースだが、Fさんと「付いて歩くのがきついな」と苦笑いながら、元気な3女性の後を追いかけた。下り切ったところが秩父平で、水場もあって雨も止んだので一休みした。
(立ちはだかる秩父岩)

秩父岩の右の急坂を30分登って行くと鞍部に出た。ここまで登ってもまだ笠ヶ岳の姿は見えなかった。尾根上にまだ急坂が伸びていてがっくりと来る。
(秩父岩の脇を登る)
(鞍部まで上がってくたびれたあ)

気を取り直して頑張って登ると這松の先に笠ヶ岳が見えてきて、30分ほど先を歩く先行隊の姿も見えていた。もう一度ガレた斜面を這い上ると、気持のいい尾根道になってきた。
(やっと笠ヶ岳が見えてきた)
(まだ登るのお)

(なだらかに見える稜線)

笠新道分岐のある抜戸岳の先で一休みした。笠ヶ岳山荘が見えており、コースタイムでは1時間ほどだが、急な上りもあってとても1時間では行けそうにもない。
また歩き始めて30分、大岩の間をすり抜けるところがあった。抜戸岩と言うらしいが、こんな変化があると気が紛れて元気が出てくる。
(応えるアップダウン)
(抜戸岩)

いよいよ笠ヶ岳の登りにかかると、リーダの一人平野さんが駆け下ってきた。なかなか登ってこない後続隊を心配して迎えに来たのだった。遠慮するFuさんのザックを取り上げて背負って歩き始めた。いつも気配りが素晴らしい平野さんだ。
途中のキャンプ場で一息入れて、笠ヶ岳山荘に登りついたのは17時20分、先行隊の遅れること35分だった。
(応援に駆け付け)
(やっと笠ヶ岳山荘着)

今日の小屋も空いていて一人一畳の布団を占有して眠れる。安心して品数も多い暖かい夕食を腹いっぱい頂いた。夕食の後に頂いた一切れ300円也のスイカが冷たくて甘く、高山病の気が出て食事が喉を通らない和子も喜んで頬張っていた。
食後、小屋の中でぶらぶらしていると、18時15分頃外で騒ぎが起こった。何事かと外に出てみると、ブロッケン現象が起きていた。前庭からだと小屋が半分蔭になって形が悪いので、笠ヶ岳方向に少し上がると綺麗な半円形になった。少し色が薄いが久しぶりに見るブロッケンに興奮してシャッタを押した。4月から山小屋に勤めているよと言う女性が、ブロッケンなるものを初めて見ると言っていた。たまたま来た私達にブロッケンを見せてくれるとは神様も気まぐれ者だ。
それから30分すると、今度は積乱雲が綺麗だよというご注進があった。穂高連峰を包むように積乱雲が巻き上がり、これに夕陽が当たって得も言えない情景を作っていた。
(ブロッケン)
(積乱雲)

時間とともに夕日は山肌にも当たるようになり、槍穂高が赤く燃えだした。
(槍ヶ岳)
(穂高連峰)

同じ時刻に小屋の裏に回ると、丁度日没の時間だった。秒を追うように沈んでいく真っ赤な太陽が神々しく美しかった。
その光は空一面を染めるようになり、あの白山も真っ赤な空の下にだんだんと暗く消えていった。
(日没)
(白山)
(夕陽の競演)



(4日目:笠小屋−笠ヶ岳−笠新道−新穂高温泉駅)
笠ヶ岳山荘 5:35 ---- 5:50 笠ヶ岳 6:00 ---- 6:10 笠ヶ岳山荘 6:25 ---- 7:05 抜戸岩 ---- 7:50 笠新道分岐 ---- 9:05 杓子平 9:20 ---- 10:45 2100m地点 ---- 11:05 1920m地点 ---- 12:30 林道出合 12:40 ---- 13:40 新穂高温泉駅

5時からの朝食をいただいてから、小屋の前で準備運動して、空身で笠ヶ岳を往復することになった。朝靄が立ち込めて山頂は見えないが、ガラガラの斜面を15分登って社の前の山頂標識の前で証拠写真を撮り合った。
(空身で笠ヶ岳往復)
(社前にて)

ひとしきり写真の撮り合いが終わってから気が付いたが、この標識は山頂が左にあるよという標識で、山頂は50m左に行ったところだった。
本当の標識の前で改めて証拠写真を撮り、集合写真を撮って、視界が利かないのですぐに下りになった。
(山頂は向こうだ)
(バンザーイ)

朝靄が流れると、時々、乗鞍や御嶽、白山が姿を現し、わずかな瞬間にシャッタを押して喜んだ。時間が許せば、30分も待っていれば霧も晴れてきそうに思えたが、この展望を目に焼き込んで下山した。
(乗鞍・御嶽)
(白山)

山荘に戻ってトイレを使ったり体調を整えて、いよいよ下山にかかった。キャンプ場の石にはサヨナラの字が書き込まれていた。
抜戸岩に向かって下るとだんだんと朝靄が晴れてきて、右手甲斐駒の横に富士山が見えてきて、みんな歓声を上げた。今回ずっと天気は良かったが、富士山を見るのは初めてだった。
(サヨナラ、笠ヶ岳)
(富士山も見えてきた)

抜戸岳まで下ると、後ろは晴れ渡ってきて笠ヶ岳はすっきりした姿を見せていた。昨日も雲に隠れ気味だったので、最後に綺麗な姿を見せてくれてありがとう。
笠新道分岐の標識から右に折れて、少し登って尾根に上がった。
(今日は笠ヶ岳がバッチリ)
(笠新道分岐)

尾根に上がって振り返ると、北ノ俣岳と黒部五郎岳が薬師岳の前にならんで、一昨日のきつかった山行を思い出させた。
ここから林道出合いまで、1300mの一本調子のきつい下りが始まった。目の前に焼岳や乗鞍岳は綺麗に見えていたが、今日の槍穂高は最後まで厚い雲の中に頭を隠していた。
(北ノ俣と黒部五郎、後ろに薬師岳)
(焼岳・乗鞍・御嶽を見ながら急坂下り)

ジグザグに切られた登山道を下って行くと、笠ヶ岳を真下から見上げるような形になり、やっとこの山に登ることができたという感慨が新たになってきた。
後ろを見上げると、お花畑の向こうに抜戸岳のカールが両翼を広げていて、これも良い眺めだった。
(また笠ヶ岳が見えてきた)
(抜戸のカール)

急斜面にも、コバイケイソウやハクサンイチゲ、チングルマ、キンロバイ、ナナカマド、ムシトリスミレなど色とりどりだった。
途中標高2400mの杓子平で一休みして、ここから再び始まる急坂下りに備えた。
(コバイケイソウ)
(杓子平で大休止)

杓子平からは大石もゴロゴロする急坂になった。この時間になると、下から登ってくる登山者と出合うようになってきたが、みんな息絶え絶えの様子で登ってくる。下りでも汗をかいているのだから、登るのはどれだけ大変だか想像に難くない。これを登ってくる計画でなくてよかったと思いながら、「頑張ってください」と声をかけた。
(まだまだ続く急坂下り)

林道にちかくなってくると、花もササユリやマルバタケブキ、ヒヨドリバナ、シモツケソウなど平地で馴染みの花が多くなってきた。

(ササユリ)
(マルバタケブキ)

やがてブナの森になり、やっと林道に飛び出した。ここまでみんなを引っ張ってきた平野リーダが一人一人と喜びの握手を交わした。
(ブナの森)
(林道に下りた!)

登山口にある水場で顔を洗ってすっきりしてから、新穂高温泉への長い林道歩きが始まった。途中、旧笠新道の凄まじい崩壊の跡を見上げ、登山口よりも冷たい水が流れ出ている水場で喉を潤し、風穴の冷たいお助け風で身体を冷やしたりしながら新穂高温泉駅まで歩いて行った。
(長い林道歩き)
(冷たい水場)

(涼しい風穴)
(新穂高温泉)


(帰途)
新穂高温泉駅 13:55 = 14:30 平湯温泉 15:45 = 17:10 松本IC = 17:15 梓川SA 17:25 =(長野道)=(上信越道)= 19:00 横川SA 19:10 = 20:35 佐野SA 21:05 = 22:15 水戸IC = 22:40 水戸駅 = 22:55 勝田駅 = 23:25 日立電鉄南営業所

新穂高温泉駅の駐車場には、日立電鉄のバスが待っていた。ゴンドラ駅の自動販売機で冷たいジュースを買って喉を潤してからバスに乗り込み、平湯温泉で4日分の汗を流した。久しぶりに汗を流して気持ちよくなって、同じ温泉で遅い昼食を美味しく頂いた。
今回はお天気も上々、山小屋も空いていてゆっくりと眠れて、難コースも無事に歩き通すことが出来た。満足いっぱいの一行を乗せたバスは、松本ICから高速に乗って、途中佐野SAで夕食もとって茨城まで快調に走って帰ってきた。我家には夜11時半到着、久しぶりの我家でむさぼるように眠った。




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