Z92.朝日岳から白毛門(関東百名山)

1.動 機
 8月末に夫婦揃っての日本百名山を完登して、ピークハンターの我家として次の目標を検討した。日本百名山は水戸アルパインクラブに連れ歩いているうちにいつの間にか完登した形になったが、今度は我家だけで行動する覚悟が必要だ。「日本二百名山」や「花の百名山」を薦めて下さる人もあったが、二人揃っては登っていない山が「日本二百名山」には47座、「花の百名山」には23座残っており、どちらも残っている山は日立から遠い北海道や九州の山が多く、お手軽が好きな我家としては登山口へ行くだけでも億劫だ。チャンスがあれば追い追い挑戦してみることにして、とりあえず近場の「関東百名山」に狙いを定め、図書館からガイドブックを借りてきて検討した。残りは33座、茨城県栃木県は終わっているが、半分以上は秩父や神奈川県に集中している。首都高を越すのが嫌なのがこの辺りの山が未登頂で残っている主因だが、首都高を運転する覚悟を決めれば何とかなりそうな山ばかりに思われる。
 今回は、手始めに「関東百名山」のNo.1に上げられている谷川の朝日岳に挑戦することにして、ガイドブックに一番手軽だと書いてあった、土合駅から新道を歩いて蓬ヒュッテに一泊、次の日に朝日岳から笠ヶ岳、白毛門と縦走して土合駅へ戻るコース取りにした。無事に念願の朝日岳の山頂を踏むことはできたが、後から考えると、一日目の蓬ヒュッテまでは、天神平から谷川岳、一の倉岳、茂倉岳、武能岳と稜線を歩いた方が時間的には余り変わらないで展望が良くて楽しかっただろうと反省したが、準備不足、勉強不足のなせるところ、いかんともしがたい。もう一つ、白毛門からの悪路の連続する1100mの下りが想定外の厳しさでやっとの思いで下山した。加齢による体力減退と普段の鍛錬の不足を思い知らされた山行でもあった。。
 
2.データ
a)山域:七ツ小屋山(1675m)、朝日岳(1945m)、笠ヶ岳(1852m)、白毛門(1720m)
b)登山日:2012/9/14(金)、15(土)
c)日程:
9/14 アクセス:森山自宅 6:30 = 日立南IC = 波志江PA = 水上IC = 9:20 土合駅
9/14:土合駅 9:45 ---- 新道入口 ---- マチガ沢出合 ---- 紅芝寮 ---- 武能沢 ---- 白樺避難小屋 ---- 14:50 蓬ヒュッテ(泊)
9/15:蓬ヒュッテ 5:40 ---- 七ツ小屋山 ---- 清水峠 ---- 朝日岳 ---- 11:35 笠ヶ岳 ---- 白毛門 ---- 東黒沢 ---- 16:00 土合駅
9/15 帰途: 土合駅 16:15 = 湯テルメ谷川(入浴) = 水上IC = 壬生PA(夕食) = 日立南IC = 20:15 森山
(朝日岳白毛門周回ルート)

(朝日岳白毛門周回ルートの標高差)

d)同行者:和子
e)地形図:1/25000 「茂倉岳」

3.山行記録
(9/14):晴:土合駅までアクセス
森山自宅 6:30 = 6:40 日立南IC = 8:05 波志江PA 8:15 = 8:55 水上IC = 9:20 土合駅

 我家で朝食をとってから6時半に出発、日立南ICから常磐道に乗って、北関東道に入って波志江PAでトイレ休憩して関越道の水上ICを9時前に降りた。北関東道が全通したお陰で群馬も近くなった。土合橋近くに駐車場があるとの情報から土合橋まで走ったが、橋手前の駐車場は民宿?MAXの専用駐車場だった。土合駅に引き返して駅前の駐車場に車を停めた。


1日目(9/14):晴:土合駅から蓬ヒュッテまで
土合駅 9:45 ---- 9:55 新道入口 ---- 10:15 マチガ沢出合広場 ---- 11:00 紅芝寮 11:10 ---- 12:00 武能沢 12:35 ---- 13:05 鉄塔 13:15 ---- 13:30 白樺避難小屋 ---- 14:45 蓬峠 ---- 14:50蓬ヒュッテ 15:20 ---- 15:30 水場 15:35 ---- 15:50 蓬ヒュッテ 16:25 ---- 16:30 蓬ヒュッテの丘 16:35 ---- 16:40 蓬ヒュッテ(泊)

 身支度を整えて土合橋まで車道を歩き、橋を渡ったところの右手に「蓬峠方面入口(新道)」の道標が立つ分岐に入った。この道は車も入れる広い道だが、すぐに車止めがあってその先は歩行者専用になっていた。「熊の出没に注意」の札もかかっていた。
(土合駅)
(新道入口)

 ツリフネソウやシロヤマキク、ミゾソバなどが咲く広い道を20分歩いて行くと、小屋や案内図のある広場に出た。案内板によればここはマチガ沢の近くで、ガンゴ−新道の登り口になっている。ここは駐車場で、ここまで車で入ることができていたのだろう。
(車止めの先も車道)
(マチガ沢分岐)

 広場から奥は登山道。基本的には湯檜曾川沿いの平坦な道だが、狭い道には大石が転がっていたり、沢を渡ったり、登ったり下ったりもあり、時にはロープを張ってある所もあった。基本平坦ですが、マチガ沢、一の倉沢、幽ノ沢付近では急なアップダウンやガレ場の通過があり、以外に疲れます。


(マチガ沢橋)
(湯檜曾川沿い)

 広場から45分で2階建小屋のところに着いたが、看板にはJR高崎給電区となっていて立入禁止になっていた。ガイドブックには紅芝寮とあるが、近くに別の建物があるのだろうか。
 JRの巡視小屋のすぐ先に芝倉沢渡渉点。ロープで河床に降りて、ゴロゴロする大石を縫うように歩き、大岩に書かれたペンキ印を頼りに少し下流の対岸に上がった。
(JR巡視小屋)
(芝倉沢渡渉)

 芝倉沢からは谷川連峰の峨々とした岩山が見え、少し進んだところからは湯檜曾川の上流に明日歩く七ツ小屋山のなだらかな山並みが見えてきた。
(一の倉沢山?)
(七つ小屋山?)

 芝倉沢を渡った直後は荒れたトラバース道になるが、しばらく湯檜曽川に平行に進んでいく。
 ユウガギクやヤマアジサイ、サラシナショウマ、ミソガワソウなど愛でながらいくつか枝沢を過ぎていくと、やがて武能沢の表示があった。
(ガレ場)
(ユウガギク)

 武能沢出合を過ぎると、道は湯檜曽川から離れ、始めはなだらかな歩きやすい道だったが、やがて九十九折りの急登になり汗を絞られる。
 頑張って登って行くと、大きな鉄塔が見えてきた。
(ジグザグの急登)
(鉄塔)

 鉄塔のまわりは展望台のように七ツ小屋山から朝日岳、笠ヶ岳、白毛門の稜線を見渡すことができた。
(蓬ヒュッテ手前からの展望)

 ガイドブックでは急登は鉄塔までとなっていたが、まだまだロープ場もある急登が続いた。左手から一の倉沢出合からの旧道(R291歩道)が合流してくると、やっと傾斜がゆるめになってきた。
(鉄塔からも急登続く)
(旧道R291合流)

 旧道R291と合流すると、すぐに小さな白樺避難小屋に到着した。ここもJR高崎給電区管轄の小屋で、中は土間に箱型のベンチがあるだけ、あくまで緊急避難用の小屋とのこと。
 破線の国道R291は小屋を過ぎるとすぐに清水峠へ向かって右に分かれていくが、我家は直進して蓬峠へ向かう。
(白樺避難小屋)
(清水峠へのR291分岐)

 このあたりからは灌木帯に入って視界も開けてきて、谷川岳から続く武能岳の稜線も見えてくる。
 これから先何か所か沢を横切りながら歩いたが、最初の沢を渡ると右傾斜の山腹をトラバースする道になり、ところどころ岩の露出した急坂があったり、少し緊張して歩きます。
(武能岳?)
(トラバース)

 やがて周りが灌木帯から草原の様相になると、色々な花が眼を楽しませてくれます。エゾアジサイ、シラネニンジン、ハナウド、ユウガギク、トリカブト、アザミ、ヒキオコシ、ヒヨドリバナ、ウメバチソウ、ダイモンジソウ、アキノキリンソウ、コゴメグサ、ミヤマリンドウ----いろいろ
 次いでチシマザサの草原になり、明るい原っぱの中をうねうねと伸びる道を気持よく歩いていきます。今は笹が綺麗に刈りはらわれているが、刈り払いがされていないで一面笹で覆われたままだったら、道が見えなくなってどっちに向かって行っていいのか分らなくなりそうだ
(お花畑)
(笹原)

 笹原に入ってからも枝沢を渡るところがあり、水を補給することも考えたが、水場の表示もないので蓬ヒュッテに着いてから良く訊いて出直すことにしよう。
 笹原を歩いて行くと、左上の道を歩いていく三人組の後姿が見えた。谷川岳からの稜線を歩いて来た人たちだろう。やがて蓬峠の道標があり、この稜線コースの道と合流した。道標には我家が登ってきた方向に「水場」の矢印が付けてあった。
(何度か枝沢を渡る)
(蓬峠)

 峠からは小さな蓬ヒュッテが見え、七ツ小屋山から朝日岳、笠ヶ岳、白毛門の山並みが広がっていた。新潟側の展望も広く、気持のいい場所だった。
(蓬ヒュッテ手前からの展望)

 蓬ヒュッテに入ると、玄関先がトイレで、左の部屋に靴を脱いで入る。宿泊者名簿に記帳して若い管理人さんに指示されて二階の寝室に上がる。5人の先客があって、2階は合計7名、定員ちょうどでゆっくりとしたスペースである。「二階は梯子を登らなければならないが、一階は天井が低くて申し訳ないので、先着順にニ階から入って貰っている」と管理人の話。後で入ってきた若いカップルは一階にもぐりこんでいた。
 管理人さんに水場に付いて訊くと、「沢水は慣れない人は腹を下すことがあるので、土樽側に10分下ったところの水は水源から近いので、こっちがお薦めだよ」とのこと。小屋前の道標にある水場の方向に登山道を下った。10分程で着いた水場には樋からわずかに水が流れ落ちており、500cc溜めるのに45秒かかった。今年の夏はどこの山小屋も水には苦労しているようだ。
(土樽へ10分下って)
(水場)

 15分かかってヒュッテに戻ったが、夕食の17時までにはまだ時間があり、管理人さんが夕食にカレーライスの調理中で部屋中に匂いがたちこめて空腹には辛いところがある。小屋のつっかけを借用して、ヒュッテの裏の丘まで上がってみた。道中にはコゴメグサやウメバチソウがたくさん咲いていた。
 風が強くて少々寒いが、何とか視界はあった。朝日岳方向はガスの中だったが、尾根道が延びる・1544、・1596のピークの向こうに七ツ小屋山が見え、その左の三角に尖った大源太山が目を惹いていた。
(ヒュッテの丘から展望)

 ヒュッテに戻ると、夕食はすぐに始まった。小さな食卓を9人で囲んで、カレーライスに福神漬けラッキョウ、野菜サラダを頂きながら賑やかに話が弾んだ。我家以外はみんな谷川岳から尾根を歩いてきたとのこと、若いカップルさんはゴンドラだったが、男性二人連れと男性と女性2名のグループは西黒尾根や巌剛新道で麓から登ってきたとのこと。らくちんな湯檜曾川沿いの新道で登ってきた我家は肩身が狭い。管理人さんに新道は暑かったでしょうと言われてしまった。
 カレーライスのお代わりを頂いているうちに、管理人さんは明日の朝食の準備を始めた。照明はランプに、補助に時々電池式?ライトを点けたりしているが、暗い所で若さに似合わず慣れた手つきで煎り卵を作ったりウインナを茹でたり手際がいい。親父さんと交代で小屋番をやっているとのこと。
 今日は空いているが、連休初日の明日は大勢の予約が入っていて、寝場所も大変らしい。食堂?も使うし、管理人もテント泊にして、管理人室も開放することもあるとのこと。
(夕食)
(ランプの小屋)

 夕食が終わった暗いランプの光では何もすることがなく、3人組さんは、今日は精一杯頑張って足が疲れているので明日はゆっくり歩きたいから明日朝は早めに出発すると言って早々に寝に着いた。我家もすぐに毛布にくるまった。
 夕食中から降り始めた雨が夜中中風を伴って降ったり止んだりしていた。小屋は小さいが構造が鉄骨でしっかりしているのか、風が吹いてもびくともしない。50年建っているとか。


2日目(9/15):曇:蓬ヒュッテ−朝日岳−白毛門−土合駅
蓬ヒュッテ 5:40 ---- 5:50 シシゴヤの頭分岐 ---- 6:30 七ツ小屋山 ---- 6:35 大源太山分岐 ---- 7:20 清水峠 7:40 ---- 7:50 鉄塔 ---- 9:40 巻機山分岐 ---- 9:55 宝川温泉分岐 ---- 10:05 朝日岳 10:15 ---- 11:25 避難小屋 ---- 11:35 笠ヶ岳 ---- 12:00 1700mピーク(昼食) 12:20 ---- 12:50 白毛門 13:05 ---- 13:50 松の木沢の頭 ---- 14:15 休み 14:20 ---- 15:25 休み 15:30 ---- 15:40 東黒沢出合 ---- 15:50 土合橋駐車場 ---- 16:00 土合駅

 三人組さんは3時半ごろ食事をしないで出ていったが、残りは昨夜作ってくれた朝食を暖かいスープでゆっくりと食べて出発です。昨夜降っていた雨は止んでいるが、道傍の草木が濡れているのでカッパのズボンをはいて5時40分に歩き始めると、管理人さんが玄関前の鐘を鳴らしながら最後に出発する二人を笑顔で見送ってくれました。
 濃い靄で全く視界が利かない中を歩いていきます。足元には雨に濡れたコゴメグサやウメバチソウが綺麗だった。
(見送られて)
(ガスの中)

 ・1544のピークのところには分岐標が立っていて「シシゴヤの頭へ」の表示があった。予習不足で「シシゴヤの頭」って何?
 小さくアップダウンを繰り返しながらチシマザサの中の稜線の道を歩いて行くと木道のある草原に出た。濃い靄の中、足元にイワショウブの白い花が揺れている以外何も見えず、ただ風の音だけを聞きながら歩いていると、広い笹原の中にいるのは二人だけで別世界を漂っている感じだった。
(シシゴヤの頭分岐)
(丘を越えると木道)

 ゆるやかに登っていくと目の前に十字架のような山頂標が見えてきて、七ツ小屋山の山頂だった。残念ながら視界はゼロ、三角点標石を入れた証拠写真だけ撮って先に進んだ。
 七つ小屋山からすぐのところのピークに昨夕三角に尖って見えていた大源太山への分岐標があった。
(七ツ小屋山)
(大源太山分岐)

 大源太山の分岐を右に曲がって清水峠に向かって下って行くとチシマササの背丈が少し高くなってこうるさい。
 岩の下りもある急坂を100m下って次の小さな高みに向かって登り始めると靄の中に太陽の光輪が見えるようになり、視界も少し利くようになってきた。
(深い笹原)
(登り返しでお日様)

 振り返ると、七ツ小屋山のなだらかな山容の笹原が陽を受けて緑一色に輝いて美しかった。その右手に見える大源太山のマッターホルンのような山容も格好が良かった。
(七ツ小屋山〜大源太山)

 この尾根道には花が多く、コゴメグサやウメバチソウ、イワショウブ、ミヤマリンドウ、ウツボグサ、アキノキリンソウ、ママコナ、シモツケソウなど賑やかだった。
 稜線を歩いて行くと、目の下にチシマザサに覆われて緑一色の清水峠が見えてきて、手前に三角屋根の送電線監視小屋が建ち、その先に白崩避難小屋が見えていた。チシマザサの中を下って行く。
(尾根道)
(清水峠へ下る)

  長い下りを経て清水峠に着くと十字路の道標があり、一の倉沢からきた破線国道R291がここで縦走路と交差して十五里尾根(謙信尾根)を経て清水へ下っている。
 白崩避難小屋の裏でカッパのズボンを脱いでお八つを食べながら一休み。小屋の裏にはお宮が祭られていて、その向こうに綺麗な稜線が見えていた。地図を広げてみると、正面の端正な山容の山は標高1900mの柄沢山で、その向こうが巻機山のようだ。
(白崩避難小屋)
(小屋裏から)

 清水峠で休憩後、目の前の鉄塔のあるピークに向かって登って行く。登り口の前に分岐があり、左手から件の若いカップルさんが道を間違えたと言って引き返してきた。分岐には土台が壊れているが案内図が置いてあって、右手に行くのが朝日岳方向だった。お陰で我家は道を間違えないで済んだ。
 鉄塔まで登って行って振り返ると、緑一面の清水峠が眼下に広がり、縦横に走る縦走路、R291、鉄塔点検路などの山道がはっきりと見えていた。
(鉄塔へ向かって)
(鉄塔から清水峠を振り返る)

 反対側の行く手には遠く高く朝日岳が聳え、左手に大烏帽子山、手前に朝日岳への縦走路の峰々が見えていた。
(進行方向の展望)

 朝日岳への登りは清水峠からの標高差は500mに近い。気分のよい笹原の稜線をしばらく行くと、いったん小広い湿地帯に着く。ここには池塘がありイワショウブがきれいに咲いていた。キンコウカも一面に生えていたので、時期には草原一面が真っ黄色に彩られるのだろう。
(草原の池塘)
(イワショウブとキンコウカ)

 そこから見上げる朝日岳に向かって縦走路が見えており、気が遠くなりそうなほど高く遠く見える。
 実際に登って行くと、なかなかの急登続きで大変な道だ。やがて森林限界を越えて低い潅木やハイマツになって来ると日差しがきつくなってくる。朝日岳は見えているが、なかなか近付かない。ガレた斜面をトラバースする所もあり緊張もする。汗をふきふき、休み休み登って行った。
 この途中で朝日岳から下って来る単独行のご婦人に出会った。朝早くに土合を出て来て時間を見て適当なところから引き返すのだとおっしゃるが、まだ時刻は10時前だ。我家は土合から朝日岳を往復するだけでも一日ではきついだろうと思っていたのに、驚くべき健脚である。
(朝日岳への登り)
(長い急登)

 途中には新潟方面の展望が開けたところがあり、地図を広げて山座同定しながらゆっくり休憩する。
(清水方向を振り返る:七ツ小屋山・大源太山・南魚沼市・巻機山・柄沢山・檜倉山)

 朝日岳の肩まで登り着くと、巻機山への分岐標があり、ジャンクションピークというらしい。巻機山方向の道標には「難路。道ナシ」と書かれていた。
(ジャンクションピーク)
(巻機山分岐)

 ジャンクションピークから少し歩くと、左下にいくつもの池塘をちりばめた朝日ヶ原湿原が見えてきた。大分笹に席巻されつつあるようだが、一面キンコウカの原だった。T字路に宝川温泉への分岐標識があった。 
(朝日ヶ原湿原)
(宝川温泉分岐)

 祠のある朝日岳に到着する。実は昨日採取した水がボトルの口が拙くて漏水させてしまい、ヒュッテ出発時にも既に水が乏しくなっていたのだが、昨夜朝日岳山頂直下に水場があると聞いて、ここで採水すれば何とかなるとたかをくくって出てきたのだったが、水場を見つけることができなかった。件の若いカップルさんが既に登り着いていて「水場はどこにあったか」と尋ねると、「下の湿原辺りらしいですが、余分な水があるから分けてあげますよ」と言って老夫婦に水を恵んで下さった。神様に水である。
(帰宅後、写真を見直してみると、宝川温泉の道標に「水場」と手書きで書き加えてあった。山頂直下という話に惑わされて、これを見落としていたのだった。)
 またガスが出てきて展望がゼロになってきたので、山頂標の前でカップルさんにシャッタを押してもらって次に向かった。
 山頂標の少し先に小さな祠があってそっちの方が少し高いようにも思えて寄道してから笠ヶ岳の方向に進んだが、ガラガラの下り坂には気を遣わされた。
(朝日岳山頂)
(ガレを下って)

 笠ヶ岳に向かう途中、目の前のガスの中に三角錐の山がひょっこりと姿を現す。少し早過ぎると思いながらも、「これが笠ヶ岳だと思って登っては裏切られ、またガラガラの道を下る」を何回も繰り返した。
(いくつもの偽笠ヶ岳に登って)
(下って)

 小さなピークをいくつも乗り越えていくと、大きく下った先に風の具合でガスが切れて時々本当の笠ヶ岳が姿を現す瞬間があった。目標の笠ヶ岳は標高1852m、その前に1900mを越えるピークがあるのだから笠ヶ岳と思い違いをするのも無理もない。(と言い訳をする)
 手前の笹の原を突っ切って行くと青いかまぼこ型の避難小屋があり、そこからちょっとで三角点のある笠ヶ岳山頂に登り着いた。展望もなく証拠写真だけ撮って次の白毛門に向かった。
(本当の笠ヶ岳へ)
(笠ヶ岳山頂)

 笠ヶ岳から笹とガレの斜面を大きく下って、白毛門へ緩やかに登り返す。白毛門までは近いと思ったが、ここの手前にも1700mの小さなピークがあって心理的には結構遠かった。このピークで簡単な昼食をとって再出発した。この辺りから土合から朝日岳に向かう登山者に度々出合うようになってきた。
 白毛門の山頂には腰周りにカナビラをたくさんぶら下げた集団がお休み中で賑やかだった。遅れて登り着いて来た三人が拍手で迎えられていた。白毛門に岩場か沢で登って来るコースがあるのだろうか。
 白毛門から眺める谷川岳が素晴らしい景観だと聞いていたので、ガスが張れるのをしばらく待っていたが、事態は一向に好転しそうにない。痺れを切らして下山に向かった。
(次は白毛門)
(白毛門山頂)

 下山口に向かうと、はるか1000m下に土合辺りの施設が見え、そこに向かって下る下山路が延々と見えていた。下りの弱い私の膝が少々心配になって来る。
(白毛門からの下り)

下り始め早々の急な岩場、それも結構長く続く。途中振り返ると、白毛門山頂では見えなかった笠ヶ岳が姿を現した。慌ててカメラを構えてシャッタを押したが、移った写真はすでに頭を隠し始めている時だった。
(早速岩場)
(やっと笠ヶ岳が見えた)

 ここから先急坂下りが続き、時折、鎖場もあり段差も大きいので慎重に降りる。
(どんどん下る)
(ロープ場)

 白毛門の斜面には色々な奇岩が頭を出している。ここにも西上州の御堂山と同じようにジジ岩ババ岩があるらしいが、どれがジジで、どれがババなのだろうか。
(ジジ岩?ババ岩?)
(ジジ岩とババ岩?)

 急坂を下ると「松ノ木沢ノ頭」という展望所があった。白毛門の斜面や谷川岳を眺めることができる。谷川岳は一向にあたまを出さないが、ラストチャンスのシャッタを押してみた。
(松の木沢の頭から白毛門)
(松の木沢の頭から谷川岳)

 松ノ木沢ノ頭からも落ちるような急坂が続く。白毛門山頂で休んでいた集団が下ってきたので道を譲った。長い鎖場を下る様子を見させて頂いたが、急な岩場も渓流靴ですいすいと下って行く。見ていても気持がいい。 
 プロの真似をして岩場を下るとやっと土の道になってきて、やれ安心と思ったが早合点だった。平坦な土の道は少しだけ、その後木の根っこやザレ場の下り坂になってまた緊張で疲れさせられる事になった、
(プロ集団)
(しばし土の道)

 それでも木の間から湯檜曽川やロープウェイ駅の駐車場が見え、さらに左下からは滝遊びに興じている人々の声が聞こえて来るようになって気を紛らわせることができるようになってきた。それでも体力は限界、何度も座り込んで休みながら下って行った。
(木の根っこ道)
(まだまだ続く急坂)

 ブナの木が多くなってくると、やっと東黒沢の登山口に下り着いた。ここからは平坦な道になり、間違いなく車を停めた土合駅に帰り着くことができるだろうとホッとした。本当に体力の限界だった。
 朝日岳の向こうで日帰り単独行のご婦人に出会った時には、我家でも日帰り出来たかなと反省したのだったが、この下り坂を体験した後では、やはり一泊して良かったと思い直した。ヒュッテでは他の皆さんと同じように、谷川岳から稜線歩きをした方が充実していたかと羨ましく思ったものだが、これも、もし昨日上り下りを繰り返す稜線歩きをして脚力を使いきっていたら、やはりこの急坂下りの途中でギブアップしていたかもしれないと、今回のコース取りは間違いなかったのだと思い直したのでした。
(やっと東黒沢出合)
(楽チン道)

 東黒沢を橋で渡ると、すぐに広い駐車場にでた。ここは何処?と思いながら歩いて行くとMAXの駐車場のあるR291に出た。昨日朝この駐車場が見つからなかったのだ。
 国道に出て線路を渡ったところで線路沿いの道を辿って土合駅に向かった。途中で国道に出られると思っていたのだが、駅舎まで枝道がなく、駅員に謝って出してもらおうと改札口に向かったが、土合駅は無人駅、そのまま通過した。駅の自動販売機で買った冷たいコーラが水不足で乾いた喉にはとても美味しかった。
(東黒沢の橋)
(土合橋駐車場)

(9/15):晴:帰宅
土合駅 16:15 = 16:35 湯テルメ谷川(入浴) 17:20 = 17:30 水上IC = 18:45 壬生PA(夕食) 19:10 = 20:05 日立南IC = 20:15 森山

 車に乗って20分走って谷川温泉の湯テルメ谷川で汗を流した。少し遠かったがお安いのが魅力だった。
 水上ICで高速に乗り、壬生PAで夕食を食べて我家に帰り着いたのは20時を過ぎていた。お疲れ様でした。


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