W91.鹿島槍・五竜・唐松

1.動 機
水戸アルパインの9月例会は、扇沢から爺ヶ岳、鹿島槍、五竜岳、唐松岳まで縦走する3泊4日の山行だった。我家にとっては長い間の憧れだった秀峰鹿島槍にやっと登ることができ、難所として名高い八峰キレットにも絶対の信頼をおけるリーダが先導してくれるので安心して挑戦できるので喜んで参加した。
茨城を夜行バスで出発して、扇沢から登って種池山荘まで登って一泊、爺ヶ岳から鹿島槍ヶ岳と歩いて八峰キレットを下ってキレット小屋二泊目、五竜岳、大黒岳を越えて唐松山荘まで登って三泊目、最終日に唐松岳に登って八方池に下って帰ってきた。普通よりも1泊多い行程で、登山道脇の色々な高山植物の花をゆっくりと愛でながら歩くことができたし、絶好のお天気にも恵まれて、山行中はずっと剱岳の岩峰を目の前に見ながら歩き、時には富士山も見ることができた展望の山行でもあった。



2.データ
a)山域:爺ヶ岳(2670m)、鹿島槍ヶ岳(2890m)、五竜岳(2814m)、唐松岳(2696m)
b)登山日:2009/09/05(土)曇、06(日)晴、07(月)晴、08(火)晴
c)コースタイム:
前夜アクセス(9/04):日立電鉄南営業所20:50=勝田駅=22:15水戸IC=佐野藤岡IC=(R50)=太田桐生IC=麻積IC=7:00下扇沢登山口
1日目(9/05):下扇沢登山口7:05----11:30種池山荘(散策・泊)
2日目(9/06):種池山荘6:10----爺ヶ岳南峰----爺ヶ岳中峰----冷池山荘----布引山----鹿島槍南峰----鹿島槍北峰----14:50キレット小屋(泊)
3日目(9/07):キレット小屋6:00----北尾根の頭----五竜岳----五竜山荘----大黒岳----15:50唐松山荘(泊)
4日目(9/08):唐松山荘5:05----唐松岳----6:05唐松山荘7:10----八方池----10:05八方池山荘=(リフト)=(ゴンドラ)=10:50山麓駅
帰途:山麓駅11:00=美麻ぽかぽかランド(入浴・昼食)=長野IC=太田桐生IC=(R50)=佐野藤岡IC=水戸IC=勝田駅=19:50日立電鉄南営業所
d)同行者:水戸アルパイン会員13名(男8、女5)、和子
e)地形図:1/25000 「黒部湖」「十字峡」「神城」「白馬町」

3.山行記録
(前日:アクセス):森山20:30=20:40日立電鉄南営業所20:50=21:00東海駅=21:25勝田駅21:35=21:50水戸駅=22:15水戸IC=23:00壬生PA23:10=佐野藤岡IC=(R50)=太田桐生IC=1:15横川SA1:30=2:40姥捨SA3:30=麻積IC=4:55扇沢6:55=7:00下扇沢登山口

バスは始発の日立電鉄南営業所を定刻20時50分に出発し、先々の各乗車場所で15名の参加者全員乗り込んで、22時15分に水戸ICから常磐道に乗った。今回も北関東道経由で上信越道を走って、長野道の姥捨SAで時間調整をして扇沢バスターミナルに5時前に到着した。
有料駐車場はガラガラだったが、下の無料駐車場はすでに満車に近く、7時30分始発6時50分発売開始のトロリーバス乗車券発売所にはもう行列ができていた。
空は高曇りで、夜明け前の空に柏原新道の急な尾根線が浮かび上がり、今日早々の登りの急登の厳しさを思わせていた。

(1日目:下扇沢登山口−種池山荘)
下扇沢登山口7:05----8:05八ツ見ベンチ----8:35ケルン8:45----10:05水平道10:15----10:50ガレ場・富士見坂11:00----11:30種池山荘12:45----13:30岩小屋沢岳鞍部----14:10種池山荘----14:20展望所14:25----14:30種池山荘
ターミナルのトイレで体調を整え、バスの中で朝食と身支度を整えると、爺ヶ岳の登山口までバスが送ってくれた。登山口にも多くの車が駐車場や路肩に停まっている。大型車用の駐車場がないので全員急いで降ろすとバスは行ってしまった。小広い登山口でラジオ体操とストレッチをしてすぐに歩き始めた。
(下扇沢登山口で準備運動をして登り始めた)

少し登ると爺ヶ岳の山頂が南尾根の先の随分と高いところにわずかに見えていたが、ガスですぐに見えなくなった。余り高い目標は見えないほうが助かることもある。整備された登山道をゆっくりと登っていくが、どこまでも続きそうな登り一辺倒の登山道は気分的に疲れる。1時間頑張ると八ツ見ベンチというところがあり、「八ケ岳が見えます」の看板がぶら下がっていたが、今日はガスで無理だった。下に扇沢の広い駐車場が見えていて、もう随分と登ったのだなと実感できた。
さらに30分急登を頑張るとケルンがあり、「扇沢1.7km40分。種池4.5km3時間半」の表示があった。嘘でしょう!こんな急坂を3時間半も登れませんよ。
クロウスゴの実を口に入れたりしながら頑張ると「水平道」の表示があり、文字通りなだらかな道になった。道傍のアザミやシラネニンジン、リンドウ、アキノキリンソウなどの花々を愛でるゆとりもできてきた。1時間近く歩くと今度は「ガラ場通過注意事項」の看板があり、100mほどのガレ場を急いで通過した。次には「富士見坂」の看板があったが、一面のガスで富士山はもとより回りの山は何も見えない。
(登り一辺倒)
(水平道に入る)

ガスの中に三角屋根の種池山荘がボンヤリと見える所まで来ると、周りの原っぱは一面チングルマの果穂で覆われていた。フウロ、ハハコグサ、シシウドなども咲いていたが、チングルマの花の時期に来れば素晴らしい花園になりそうだった。
階段道を登って山荘前に着いて、リーダによるチェックイン手続きを待った。男性9名に割り当てられた部屋は8畳ほどの広さで、8月の薬師岳縦走時の山小屋に比べれば天国である。1リットルの水がもらえる切符が各人に1枚ずつ与えられた。
山荘の横に小さな池があり、「種池」の立札があった。もう足が生えているオタマジャクシがうじゃうじゃと泳いでいたが、この小さな池が種池山荘の名前の元らしい。
時々ガスが流れて晴れ間が覗き、ガスの晴れ間に時々頭を出す爺ヶ岳、岩小屋沢岳、別山などが眺められ、山荘前のベンチは展望を楽しみながら談笑する登山者で賑わっていた。
(1泊目の種池山荘)
(山荘前から別山)

部屋の寝床の準備をし、展望を楽しみながら昼食を取った。まずまずのお天気で時間もあるので、剱の展望を期待して岩小屋沢岳まで往復して来ようと6人ほどで出かけた。岩小屋沢岳に登るにはテント場の先から70mほど下って登り返す。途中にはトリカブトやオヤマリンドウ、テガタチドリ、ウサギギク、ナナカマドの赤い実など賑やかなお花畑があった。下る途中でまたガスが沸いてきて岩小屋沢岳をすっかり隠してしまった。少し登って下ったところの次のお花畑まで歩いてみたが、岩小屋沢岳は隠れたままだった。これから頑張って登っても岩小屋沢岳山頂で晴れるかどうかは賭けだ。ここまで綺麗なお花畑を楽しんだことに満足して引き返すことに全員意見一致した。
山荘まで引き返していくと、またガスが少し晴れてきたので、今度は反対側のの爺ヶ岳の登山道に少し足を延ばしてみた。5分登って尾根に出ると西側の展望が広がっていた。今はガスで山並みは隠れているが、晴れ間を狙って登ってくれば、剱岳方向の展望が期待できそうだった。
山荘に戻って談話室でビールを飲みながらみんなと山談義に花を咲かせ、5時からの山荘の美味しい夕食を頂いてから再度、全員で展望所まで登ってみた。雲海に浮かぶ剱のシルエットが美しく、明日登る鹿島槍も見えていた。
(トリカブト)
(剱岳のシルエット)


(2日目:種池山荘−爺ヶ岳−鹿島槍ヶ岳−八峰キレット−キレット小屋)
種池山荘6:10----6:15展望所6:30----7:10爺ヶ岳南峰7:30----7:45爺ヶ岳中峰8:00----8:55赤岩尾根分岐9:00----9:15冷池山荘9:40----10:50布引山11:00----11:50鹿島槍南峰(昼食)12:15----13:00鹿島槍北峰13:10----14:50キレット小屋

朝起きると空は晴れ渡っていた。裏の窓から眺めると鹿島槍の双耳峰が朝焼けの空にクッキリと浮き上がっており、前庭に出ると蓮華岳と針ノ木岳が正面に堂々と聳えていた。
(山荘窓から日の出前の鹿島槍)
(蓮華岳と針ノ木岳)

5時からの朝食をとってから山荘の前庭で準備運動をして、6時10分に爺ヶ岳の登山道に向かった。丁度爺ヶ岳の肩から朝日が出るところでまぶしかった。
昨夕も登った展望所まで上がると、今日は朝日を受けた立山から剱岳、毛勝三山が雲一つなく並んでおり、その前に種池山荘の赤い屋根が可愛く光っていた。鹿島槍も東面の絶壁に朝日を受けて一層美しく輝いていた。
(爺ヶ岳に向かって)
(展望所から立山−剱岳)

しばらく展望所で展望を楽しんでから爺ヶ岳へのきつい登りにかかった。高度を稼ぐにしたがって、展望は更に広くなり、針ノ木岳の右に薬師岳、蓮華岳の左に槍ヶ岳と穂高連峰が頭を出してきた。振り返りながら登るのでなかなか歩程は捗らない。
南峰山頂近くは岩屑の重なりの登山道になり歩きにくくなった。石だらけの山頂で集合写真や証拠写真を撮ってから360°の展望を楽しんだ。
(立山−剱岳を後ろにしてす)
(爺ヶ岳南峰山頂)

東には穂高、槍ヶ岳、蓮華岳、針ノ木岳、薬師岳、岩小屋沢岳、立山、真砂岳、別山、剱岳、毛勝三山などが並んでいて山座同定が楽しかった。北には鹿島槍の尾根に、これから歩く登山道がくっきりと見えていてわくわくとさせた。
(爺ヶ岳南峰山頂からの大展望)

ガレた南峰山頂を下って三角点のある標高2670mの主峰・中峰に登り返した。南峰に負けない展望、ゆっくりと展望を楽しんだ。鹿島槍がいっそう近くなってきたが、だんだんとガスが上がって来て、そのうち視界を遮るのではないかと気になり始めた。
次の北峰は巻いて這松のトラバース道を歩くと、左下に見えるはっきりとした沢筋が見えてきた。下の廊下の十字峡に向かう棒小屋沢だと言う。下の廊下の話を聞く度に、我家も一度は歩いてみたいなと思う。
(三角点の中峰)
(北峰を巻いて)

尾根筋に下ると冷乗越があり、赤岩尾根に下る分岐点であり、周りにはホタルブクロの群生もあり、なかなかの展望地でもあった。小休止しながら行く手を見上げると、冷池小屋が今にも崩れそうな断崖の上に建っているように見えた。
最低鞍部まで下ってから登り返したところに冷池山荘があり、ここにもやはり手前に小さな池があった。表示は見なかったが、これが冷池なのだろう。この小屋は種池山荘と同じ経営で、種池山荘の水切符で水が貰える。小屋前の高台に上がってみると、歩いて来た爺ヶ岳の三峰が綺麗に見えていたが、これから行く鹿島槍はガスの中だった。
(冷乗越)
(冷池山荘で休憩)

冷池山荘前で休んでからいよいよ鹿島槍への300mの登りです。登り始めるとキャンプ場が数箇所有り、さらに尾根を緩やかに200m登ると、登山道から少し外れて布引山という小さなコブがあった。皆さんはその先の登山道で休んだが、ピークハンタの我家は休みの間に布引山の山頂に登ってみた。立山、剱が目の前にドーンと見えており、その左に薬師岳、右に毛勝三山が控えていた。おまけにトウヤクリンドウの大きな株もあった。
一休み後、鹿島槍への登りにかかった。ガラガラの石だらけの斜面にトウヤクリンドウが沢山咲いていた。登山道は始めは緩やかだったが、だんだんと急になりジグザグに登っていくと山頂に飛び出した。
(布引山への登り)
(布引山から鹿島槍へ)

バンザーイ! やっと2889mの鹿島槍ヶ岳の山頂に立ちました。どこから見てもその格好のいいバランスの取れた双耳峰が目だって、早く登りたいなと思いながらなかなか登れないでいたが、山の会の仲間のお陰でやっと思いを果たせました。感謝!感謝! 感激に浸り、展望を楽しみながら種池山荘特製の4色弁当を広げた。
(鹿島槍山頂!)

吊尾根を挟んだ向うに少し低い北峰2842mが見えていた。その向うの下り斜面が難関の八峰キレットで、その通過が今回のもう一つのメインイベントである。鹿島槍登頂で浮かれてはおれない。気持ちを引き締めて南峰を下って北峰に向かった。
難所は八峰キレットだけだと思っていたら、南峰からの下りも大変だった。岩場の下り、崖のような急斜面をへつるトラバース、気が抜けないところが次々と現れた。時々ミヤマウスユキソウ、ウサギギク、イワギキョウなどの可愛い花たちを眺めては休みながら下った。
(南峰から北峰の向うに八峰ミレット)
(南峰からの下りも急坂の連続)

北峰の頂上に近づくとにキレットと山頂との分岐があった。ここにザックをデポして空身で北峰まで往復した。急登だが空身だとラクチンだ。10分ほどで山頂に着いた。
幸か不幸か、五竜岳は雲の中、キレットも半分隠れていた。この辺がはっきりと見えると、五竜までの登り返しの高さにがっくりとさせられ、キレットの難所に向かう覇気を削がれかねない。
(分岐から北峰には空身で)
(北峰山頂)

分岐点まで引き返していよいよキレットに向かっての下りが始まった。初めからガレ場、ザレバ、岩場のトラバースが続いたが、覚悟はしていたし、南峰の下りで直前練習もしてきたところだったので、あまりびくつくこともなく歩くことができた。近年山の会であちこちの難所を連れ歩いてもらってきたので、皆さんもみなベテランである。リーダのペース配分も良くて、渋滞することもなく順調に下っていった。
(いよいよキレットに向かう)
(急下りの始まり)

ストックを使いながら下っていくと、時々ハシゴや鎖場が出てきて「ストックを仕舞え」の伝令が飛んでくる。
(ハシゴ場や鎖場を登ったり下ったり)

ハシゴや鎖場はしっかりしているので怖くはないが、崖のへつりのところで岩肌に足場を作れなくて、一本の材木を針金で固定した間に合わせみたいな橋を渡る時は怖かった。先頭を歩くリーダが一番体重が重いので、リーダの通過後は試験済みということで思い切って歩くことはできたのだが。
ハシゴを登って崖を回り込んだら、眼下にキレット小屋が見えてきた。痩せ尾根の上に立派な建物が立っている。良くもこんなところに山小屋を作ろうという発想が浮かんだものだと驚かされた。後ろにはヘリポートも作ってあるが、小屋の建設作業も大変だっただろう。
小屋が見えてから小屋まで下るのも、鎖があったりして気が抜けなかった。15時前に小屋に着いたが、今日は平日なので小屋は割合空いている。割り当てられた部屋は展望のいい西側の2段ベットだった。男性は上のベットでハシゴが垂直なので寝ぼけると危ないが、スペースは十分でゆっくりと眠れそうだ。
(崖をへつったり)
(キレット小屋に到着)

寝床を作って小屋の前に出てビールで乾杯!「今日は良く歩いた」と話し合っていたら、16時半ごろ中年のご夫婦が鹿島槍側から下ってきた。見かけはそれほど健脚には見えなかったが、「扇沢を今朝出発した。疲れた。」とのこと。我山の会の二日分を一日で歩きとおして来たのだ。スッゴーイ!人は見かけによらないものだ。
不便なところなので待遇には期待しなかったのだが、夕食は大きなハンバーグの皿にキャベツの千切りが山のように盛られ、ポテトサラダとトマトが付いていた。別に魚の煮付け、タケノコ、漬物の皿があり、ご飯と味噌汁はお代わり自由、美味しく満腹になる夕食だった。それに、飲み水が自由に貰えるのも有難くもあり驚きでもあった。
到着した時には一面のガスだったが、5時からの夕食を終わる頃からだんだんと雲海が下がってきて、剱のてっぺんが頭を出してきた。丁度落日も始まって、部屋の窓を開けて撮影会の始まりになった。雲海はどんどん下がっていって、すっかり日が落ちてからさらに30分すると、毛勝三山まで頭を出してきて、夕焼けをバックに美しい山のシルエットが出来上がった。
(落日)
(落日後ガスも落ちた)


(3日目:キレット小屋−北尾根の頭−五竜岳−大黒岳−唐松山荘)
キレット小屋6:00----7:05休み7:10----7:50口ノ沢のコル----8:15北尾根の頭8:40----9:40G5----9:55G410:10----11:05五竜岳(昼食)11:35----12:35五竜山荘12:55----13:00遠見尾根分岐----13:55大黒岳----15:50唐松山荘

朝目覚めると、窓の外は晴れて剱の山並みがすっきりと見えていた。今日も気持ちよく歩けそうだ。
美味しい朝食を頂き、水を満タンに補給してから、小屋前で準備運動をして歩き始めた。
(夜明け前の剱岳)
(小屋前庭)

小屋前の岩山をトラバース気味に登っていき、登りきったところから急降下が始まった。下るとまた登らなければならない。素直な登山道はなく、昨日の八峰キレットと決して劣らない難所の連続だった。
五竜側からキレット小屋に向かってくる登山者も多いようで、何組ものグループと交差して、その都度道の譲り合いをした。
(何度も岩場を登ったり下ったり)

登下行の間に岩の間から南の展望が開け、美ヶ原、八ケ岳の右に富士山が見えていた。どこでも富士山が見えると嬉しくなって元気が出てくる。
(富士山も見えた!)

岩場を何度も登ったり下ったりして最低鞍部の口ノ沢のコルまで50m高度を下げると、今度は五竜岳まで400m登らなければならない。北尾根の頭まで登り返すと目の前に五竜岳までの山並みが見えてきた。キレット小屋ではガスで見えなかったが、目的地がはっきりと見えてくると登りのきつさが身にしみて感じられる。それも五竜岳の前にいくつもピークを越えなければならないようだ。
(北尾根の頭から五竜岳を見上げる:まだいくつものピークがある)

覚悟を決めて歩き始めたが、まだまだ難所が待っていた。ザレバの横断、鎖場、ハシゴが連続して昨日の八峰キレット以上に緊張させられた。
(まだまだ続く登下行)

岩場をこなすと、少し稜線歩きがあったが、今度は急坂の登りになった。五竜岳に近付くと、わずか200mの高度差だが、五竜の山頂がのしかかるように聳えている。ザレた急斜面をジグザグに登ると、山頂近くは岩場の登りになった。
五竜小屋への分岐を過ぎて岩の重なりの尾根を5分ほど辿って五竜岳の山頂に到着した。歩いて来た鹿島槍からの八峰キレットの道を振り返ると、「よくぞ無事に歩いてきたもんだ」と感慨ひとしおだった。
先客のグループが引き上げたので、狭い山頂に陣取って、展望を楽しみながらキレット小屋特製の鰻の蒲焼弁当をほおばった。蛇が嫌いな和子は鰻も受け付けないので、半分貰ってたっぷりと英気を養うことができた。
(五竜岳山頂)
(穂高・槍も遠望拡大)

鹿島槍、蓮華岳、針ノ木、薬師岳、立山、別山、剱岳、毛勝三山とずらりと並び、良く見ると、剱の左に奥大日岳が見えており、鹿島槍の肩の上には槍・穂高も見えていた。
(北アルプス大展望)

五竜岳から先は2年前に歩いた事のあるルートだ。五竜山頂から五竜山荘まではガレ場、岩場が続く。この時間でも登ってくる登山者が多く、やり過ごしながら1時間下って五竜山荘で一休みした。良く冷えたコーラが美味しかった。
(五竜からの下りはガレ場の連続)
(五竜山荘)

五竜山荘から唐松山荘までの前半はなだらかな登り下りが続いた。ハイマツや砂地の道を気持ちよく歩いた。伸びやかなカール状の山容が気持ち良かった。ここでも目的地の唐松山荘がガスで見えなかったのが幸いした。唐松山荘は最低鞍部近くの大黒岳から300m登り返す。
(前半は緩やかな登下行)

後半の300mの登りは、ここまで疲れた身体にはきつかった。その上に、大黒岳を過ぎてしばらくすると、鎖も張られた岩場の上り下りが続いて神経を使い、大黒岳から唐松山荘までの距離は五竜山荘から大黒岳までと同じだが、時間は前半の2倍かかった。
(終わりに長い岩場の登下行が待っていた)

眼下に大きな唐松山荘が見えたときには、みんなほっとして歓声を上げた。今日は本当に長かった。
山荘に入ると2段ベット向かい合わせの一部屋を割り当てられた。部屋は真新しくて気持ちがいい。トイレも水洗だ。
山荘に着いて早速生ビールで乾杯しようとしたが、生ビールは売切れ。ジュースも自動販売機に冷えたものが入っていない。已む無く缶ビールを買って乾杯したが、水が今回の山行ではじめて有料だったこともあって、唐松山荘の評判を落としてしまった。
5時半の夕食を頂いてから前庭に出ると、雲海の上に剱岳が浮かんでいた。タイミングよく唐松岳の肩のところに陽が沈みはじめて、また撮影会が始まった。
今日はしっかり歩いたので早く寝ようと寝床にもぐりこんだが、部屋の密閉度がいいのか、何か暖房が効いているのか暑くて眠れなくて参った。皆さんも掛け布団を剥いで裸に近い格好で寝ていた。
(やっと唐松山荘が見えてきた)
(唐松岳と落日)


(4日目:唐松山荘−唐松岳−唐松山荘−八方池山荘)
唐松山荘5:05----5:20唐松岳5:50----6:05唐松山荘7:10----7:50丸山ケルン----9:10八方池9:25----10:05八方池山荘10:15=(リフト)=10:25鎌池=(リフト)=10:35兎平10:40=(ゴンドラ)=10:50山麓駅

今朝のお天気が良さそうなので、唐松岳には昨夕登るのを止めて、今日の朝食は6時半からとして、その前に登ることになっていた。空が白み始めた5時に登りはじめ、山頂に登りつくと同時に東の雲海の上、妙高山や高妻山、戸隠などが浮かぶ右側にポッと陽が登り始めた。タイミングの良さに喜びながら、みんなでシャッタを押し捲った。
(日の出前に唐松岳へ)
(山頂から日の出を拝む)

陽が登ると、今度は山頂標の前で記念写真の撮りあいが始まった。剱岳をバックにした配置が一番評判が良かった。
北には白馬岳が見えており、そこから唐松岳まで続く難関の尾根筋・天狗の大下り−不帰ノ嶮が朝日で真っ赤に燃えており、これを見ながら、「次はここを歩きたーい」と元気な声が上がり、リーダもうなずいて詳しい説明をしていた。
(朝日を受けてバンザイ)
(白馬岳と不帰嶮)

展望写真や記念写真を撮ってから山荘に戻ると、山荘の手前の砂地にコマクサが咲いていた。今時期待していなかったので、大喜びでシャッタを押した。
遅い朝食を頂いて、7時過ぎに山荘の右手からタテヤマリンドウやオヤマリンドウなど賑やかな道を歩いて下り始めた。
(コマクサ)
(下山開始)

始めは右手に五竜を見上げながら下ったが、30分歩くと左手の展望が開けてきて、白馬岳から天狗の大下りや不帰ノ嶮の山並みを真横から眺めるようになった。近いうち、この難コースも企画される事を期待しながら歩く積りでじっくりと眺めた。
(不帰嶮(三峰、二峰、一峰)・白馬槍・白馬岳)

目の前の雲海に浮かぶ火打山、妙高山、高妻山を眺めながら扇雪渓まで下ると、花の種類も多く賑やかになり、右手には鹿島槍の双耳峰も見え始めた。八方池の畔まで下って一休みした。対岸に回ると湖面に白馬連山が綺麗に映っていた。丁度この頃からガスの動きが速くなり、時々白馬岳をガスが隠すようになり、湖面に映る逆さ白馬の写真を撮るのが難しくなった。
(八方池に映る白馬連山)

八方池からは登山道は木道が整備されていて、観光客の姿が見られるようになった。八方山まで下ると雲海の中に入ったようで、リフト乗場の八方池山荘まで下ると一面ガスの中に入ってしまった。
ガスの中は気温も低くて、リフトに乗っている間は寒かった。二つ目のリフトを降りて乗ったゴンドラは窓があるので助かったが。
(八方池からは遊歩道)
(リフトとゴンドラで下る)

(帰途)
山麓駅11:00=11:50美麻ぽかぽかランド(入浴・昼食)13:15 =13:55長野IC=15:00横川SA15:10=16:05太田桐生IC=(R50)=16:45佐野藤岡IC=16:50佐野SA19:20=18:00桜川筑西道の駅=18:30水戸IC=19:00水戸駅=19:20勝田駅=19:40東海駅=19:50日立電鉄南営業所=20:00日立自宅

麓駅でゴンドラを降りると、日立電鉄のバスが待っていた。長く履いた登山靴を脱いで足を楽にさせてからバスに乗り込み、美麻の日帰り温泉で汗を流した。久しぶりに汗を流して気持ちよくなって、同じ温泉で美味しい昼食も頂いた。
展望に恵まれ、難コースを無事に歩き通して満足いっぱいの一行を乗せたバスは、長野ICから高速に乗り、後は往路と同じコースを快調に走って茨城に帰ってきた。我家には夜8時到着、思ったよりもずいぶんと早く帰りついた。




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