Y91.塩見岳

1.動 機
塩見岳には、水戸アルパインクラブで3年前に鳥倉林道から塩見岳、蝙蝠岳、二軒小屋までの長い縦走路を連れて歩いてもらった時に登ったが、和子はその時足を故障していて参加できなかった。きつい山だが、夫婦二人の百名山を達成するためには二人で登るしかない。普通は山小屋一泊での往復登山らしいが、無理せずのんびりと歩こうと山小屋2泊の計画で出かけた。ゆっくり歩いて無事に塩見岳山頂に立つことができて、絶好のお天気にも恵まれて360°の大展望もゆっくりと楽しむことができた。

2.データ
a)山域:塩見岳(3052)、本谷山(2658)
b)登山日:2011/9/7(水)晴、8(木)晴、9(金)曇時々小雨
c)日程:
アクセス 9/7:日立自宅4:50発 = 日立南IC = 常磐道 = 北関東道 = 上信越道 = 長野道 = 中央道 = 松川IC = 10:55 鳥倉林道ゲート
山行 9/7:鳥倉林道ゲート11:30 ---- 鳥倉登山口 ---- 三伏峠小屋 (泊)
9/8:三伏峠小屋 5:10 ---- 本谷山 ---- 塩見小屋 ---- 10:15 塩見岳 12:00 ---- 13:10 塩見小屋 (泊)
9/9:塩見峠小屋 6:05 ---- 本谷山 ---- 三伏峠小屋 ----10:15鳥倉林道ゲート
(塩見岳鳥倉ルート)

(塩見岳鳥倉ルートの標高差)

帰途 9/9:鳥倉林道ゲート 11:35発 = 赤石温泉(入浴) = 塩の里(昼食) = 14:55 松川IC = 19:20 日立南IC = 日立自宅18:00帰着
d)同行者:和子
e)地形図:1/25000 「塩見岳」「信濃大河原」

3.山行記録
1)アクセス
9/7: 日立自宅 4:50 = 5:00 日立南IC = 5:15 友部JCT = 5:50 都賀JCT = 6:00 岩船JCT = 6:25 高崎JCT = 6:30 藤岡JCT = 6:55 横川SA(朝食) 7:30 = 8:15 更埴JCT = 8:30 筑北PA 8:45 = 8:55 梓川PA 9:05 = 9:25 岡谷JCT = 9:55 松川IC = 10:55 鳥倉林道ゲート

早起きして朝食抜きで出発し、日立南ICで5時に常磐道に乗り、北関東道から上信越道に入って横川SAで朝食をとった。
長野道に入って、先日歩いた燕岳から餓鬼岳の山並みを見ようと筑北PAに立ち寄ったが、鹿島槍から針の木辺りは良く見えたが、餓鬼岳などは端っこで良く見えなかった。次の梓川SAに立ち寄ると、良く目立つ常念岳の右、有明山の後ろに燕山と餓鬼岳が良く見えていて満足した。
中央道に入ってまたもどこかのSAで中央アルプスも眺めてみたかったが、余り寄道していると三伏峠小屋に約束の16時に着くのが苦しくなりそうで諦めた。
(梓川SAから北アルプスを展望)

松川ICで高速を下りて、ナビの指定するままに県道59号を西走、松川の街を抜けR153を横切り、ダム湖湖畔の狭い道を工事中の交互通行の信号を待ったり、ダンプと交差したりしながら走って大鹿村に入った。R152と交差して右折、少し走った大河原の集落で山道に入った。くねくねと何度もUターンを繰り返す林道を走ってトイレのある車止め手前の駐車場に入った。駐車場は結構広いが既に満車の状態、背中あわせにくっつけて停めたり、路側いっぱいに停めたり色々と工夫してぎっしりと停めてあって、我が家の車の入る余地はなさそう。諦めて林道の途中にでも停めようかと方向変換しようとしていたら、車の中から「ここが空くよ」と声がかかった。ラッキー、一番いいところに駐車することができた。
昨日、山小屋に予約の電話をした時に、「今は登山の端境期なのでグループ登山がなくて宿泊客は少ないが、塩川登山道も塩見新道も通行禁止なので、鳥倉林道の駐車場は混むかもしれないよ」と聞いていたので心配はしていたのだ。

2)1日目山行
9/7:鳥倉林道ゲート11:30 ---- 12:05 鳥倉登山口 12:10 ---- 12:35 尾根 ---- 13:10 1Km地点休憩 ---- 13:30 5/10地点 ---- 13:55 水場 14:00 ---- 14:30 塩川小屋分岐 ---- 15:05 三伏峠小屋 15:10 ---- 15:20 三伏山 ---- 15:20 三伏峠小屋(泊)

お帰りの男性の隣にこれから登る男性が立っていて、「こんなに暑くてこの林道を歩くのが耐えられそうにない。明日朝一番に来て登ろうかな。一度ここを出たら、明日駐車できるかどうか分からないよね。車中泊しかないかなあ。」などと贅沢な話をしていた。
軽く昼食をとってから、ゲート脇に設置してある登山ポストに登山者カードを提出し、迷っている男性を置いて鳥倉林道を歩き始めた。
(満車の豊倉林道終点駐車場)
(ゲート横を通って歩き始め)

鳥倉林道は登山口近くまで舗装されていて歩きやすいが、距離が3kmもあるとウンザリしてくる。鳥倉林道は急斜面に作られた林道で、大きな岩壁がすぐそばに聳え立っていてスリリングな感じも与える。道傍にはヤマハハコやウメバチソウ、オンタデ、ユウガギクなど野の花が咲いていたり、枝沢を小さな滝が流れ落ちていたりと目を慰めてくれるが、何しろ暑い。緩やかでも登り坂を歩くと汗が噴き出してきて、汗を拭きながら30分以上も歩いてやっと登山口に着いた。
駐車場には折畳み式の小さな自転車が停めてあった。自転車ならゲートを通過してここまで走って来れるのだ。頭いい!
(長ーい林道歩き)
(登山口到着)

登山口からは樹林の中の山道登りが始まる。今夜の宿は標高2615mの日本で一番高い峠の三伏峠にあって、ここから標高差800m以上あり、登山口の案内板には「三伏峠まで4km、徒歩3時間」とある。小屋で夕食にありつける約束の時間は16時、4時間あるので急ぐことはない。樹木がお日さまを遮ってくれるとはいえ、やはり暑い。ゆっくりと登り始めた。シラビソの木には3年前と同じように鹿除け(?)のビニールテープが巻きつけてあった。
尾根まで登り着くと傾斜が少し緩やかになった。登山道の途中には「登山口から三伏峠小屋まで1/10」と1/10毎にビニルシートに挟んだ道標が取り付けてあって、目安になって助かった。4/10辺りから道がまた急登になり、丸太の階段が度々現れるようになった。素人作りみたいな頼りない階段で少々気持が悪かった。
(樹林帯を登る)
(丸太階段)

花も端境期だが、登山道脇にはマルバタケブキやサラシナショウマなどの群落があって、その都度立ち止まってはシャッタを押す。結構休憩時間になる。
(マルバタケブキ)
(サラシナショウマ)

6/10を過ぎ残り1kmの道標を過ぎた曲り角に水場があり、汲みとって飲んでみると冷たくて美味しい。ペットボトルの水を入れ替えた。
8/10近くでは樹間の眺めが良くなり、中央アルプスの山並みが見渡せるようになって木曾駒や空木岳を確認しては二人で喜びあった。
9/10近くなると塩川登山口からとの道と合流したが、この塩川からの道にはロープが張られていて「地滑りのため当分の間通行止め」の注意札が取り付けてあった。
塩川分岐から更に登ると仙丈ヶ岳や甲斐駒が頭を出してきて、摩利支天辺りのガレ場だろうか甲斐駒の山壁が真っ白に輝いているのが印象的だった。
(水場)
(樹間の展望:仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳)

三伏峠小屋に15時過ぎに到着、登山口から3時間でほぼコースタイムだった。小屋の主人にも「早かったね」と老夫婦を労わっていただいた。
夕食は17時から、小屋でじっとしていてもつまらないので、小屋の主人に「どこか展望のいい所」と訊いて「烏帽子岳は今からでは無理だろう、三伏山なら10分で登れるよ」と勧められ、ザックを御主人に預けてその足で三伏山に向かった。
テン場を過ぎて少し下った鞍部で荒川岳への分岐を右に分け、石の重なる道を少し登ると三伏山の標柱があった。3年前にここを通過した時にはガスで何も見えなかったが、今日はすばらしい展望が広がっていた。
(三伏峠小屋到着)
(三伏山)

南方向には荒川岳への縦走路になる烏帽子岳、小河内岳があり、左に塩見岳、右奥に赤石岳や聖岳など南アルプス南部の峰々が見えていた。
(三伏山から:塩見岳、烏帽子岳、小河内岳、赤石岳、聖岳、兎岳)

北西を見ると、左に今出て来た三伏峠小屋が見え、その後ろに恵那山の高み、その右に中央アルプス、その奥に乗鞍岳、北アルプスの峰々が並んでいる。槍ヶ岳もはっきりと確認できた。その右手前にこれから歩く本谷山と塩見岳が見え、その奥は仙丈ヶ岳と北岳、農鳥岳に違いない。甲斐駒は本谷山に隠れているのだろう。
(三伏山から:三伏峠、恵那山、中央アルプス、仙丈、本谷山、北岳、間の岳、塩見岳)

ゆっくりと展望を楽しんでから三伏峠小屋に戻って、主人に指定された2階の部屋に入った。今日は宿泊者20名ほどでゆっくりと眠れそうだ。既に運んであるザックのある場所に布団を敷いて横になった。
16時45分には「夕食の準備ができました」のアナウンスがあり、天麩羅やうどんなど品数豊富な美味しい夕食を頂くと、「今日は珍しく天気が良いから夕日に映える塩見岳が綺麗だよ」との案内があった。三伏山に登るのが一番のようだが、さっき登ったばかりなのでまた登るのは気が重い。「小屋の玄関からの塩見岳が絶品だよ」との御主人のお薦めに乗って、玄関前でカメラを構えて日没を待った。時々刻々変化する塩見岳の山肌が綺麗だった。18時3分に陽が沈んでドラマは終わり、部屋に戻ってすぐに布団に入った。長いドライブと800mの登りで疲れていたのだろう、消灯前に眠りに着いた。
(夕焼け前)
(夕焼け時)
(三伏峠小屋前から)


3)2日目山行
9/8:三伏峠小屋 5:10 ---- 5:20 三伏山 5:25 ---- 6:20 本谷山 6:35 ---- 8:00 塩見新道分岐 ---- 8:15 塩見小屋 8:40---- 9:30 天狗岩鞍部 9:35 ---- 9:55 塩見岳西峰 10:00 ---- 10:00 塩見岳東峰(昼食) 11:20 ---- 11:20 塩見岳西峰 12:00 ---- 12:30 天狗岩 12:35 ---- 13:10 塩見小屋

朝食は4時半、卵かけご飯などの朝食を頂いて5時10分に小屋を出た。まだ日の出前だがヘッドランプがいるほどではない。塩見岳の右裾が赤く燃え始めていた。
三伏山の山頂に上がると昨日と同じく360°の大展望、薄墨で描いたようなパノラマも美しい見ものだった。丁度お日さまが登るところで、雲が適当に出ていて、えも言えず綺麗な朝焼けになった。
(朝焼けの中を出発)
(三伏山山頂で日の出)

ここから一旦下って本谷山に100m上り返すが、三伏山の樹林帯の下り坂の途中には前方が開けた好展望地があり、目の前に本谷山があり、右に塩見岳、左に中央アルプスが綺麗に見えていた。
鞍部はシラビソの密な樹林帯で薄暗い感じ、足元には泥濘も出来ていた。
(三宝山から本谷山へ)

本谷山の上りにかかると、右裾に富士山が頭を出してきた。富士山を見ると不思議と元気が出て来る。
山頂には標柱が立っていてその前に地表に1mも飛び出した三等三角点が立っていた。三角点標石の上にカメラを置いてツーショットの証拠写真を撮った。
(富士山が頭を覗かせる)
(本谷山山頂)

本谷山の山頂部は樹林帯だが、結構開けたところがあって、展望もなかなか良かった。この辺りから下山してくる登山者に出合うことが多くなってきた。昨日は天気が良かったのでみんな満足気な笑顔で挨拶して行った。
(中央アルプス、乗鞍岳、北アルプス)
(塩見岳)
(本谷山からの展望)

本谷山山頂部は細長い尾根になっていて、何度か小さな上り下りをして権右衛門山との鞍部に下り、ここから権右衛門の裾野を巻きながら歩いて行った。立枯れの木が多く、苔むした倒木を避けたりしながら緩やかに登って行く。大石ごろごろの枯れ沢を過ぎるとガレ場の急登になった。
(立枯れの林)
(倒木やガレ場)
(権右衛門山を巻く)

急登を登り切ると、反対側から塩見新道が合わさってきていたが、この塩見新道も去年から通行止めになっているらしい。
新道分岐から少し登るとまた展望のいい所に出た。三伏山と似たような構図だが、中央アルプスの上には御岳山が頭を出し、北アルプスの右に火打、妙高あたりの山も見えるようになっていた。
(塩見新道からの展望:恵那山、中央アルプス、乗鞍岳、北アルプス、仙丈ヶ岳)

間の岳や農鳥岳が全身を現し、間の岳から塩見岳に向かう長い縦走路の尾根筋も見えるようになっていた。
(塩見新道からの展望:仙丈ヶ岳、甲斐駒、北岳、間の岳、農鳥岳)

塩見小屋に8時15分に到着、三伏峠小屋を出てから3時間10分、ほぼコースタイムだった。山の会で皆さんの後を追いかけていると、リーダがコースタイムの2,3割増しでゆっくりと歩いても、足が重くて付いて歩くのが辛いのだが、二人で黙々と歩くと早足になるようだ。歩きは速くても、足は結構疲れている。もし朝、下の鳥倉登山口から歩き始めていたら、無事ここまでたどり着いたかどうか怪しい限りだ。
受付で宿泊料金を払うと、先ずはトイレの使用方法の実演説明が始まる。女性と男性の大は携帯トイレを様式便座に取り付けて用を足し、用済み後回収箱に入れる。男性小は野天に一個の便器があり、ここは毛細管サイホン現象なるものを使って処理しているとのこと。下に水場があるので、付近でのキャンプや用足しは厳禁、宿泊者には男性に1個、女性には3個の携帯トイレが支給される。追加は一個100円也。これは3年前と同じ事。それにしても登山者が到着するごとに毎度毎度同じ説明を繰り返すのは大変な労力だろう。ペットボトル1本の飲み水の支給もあって有難かった。

受付棟前の高みから塩見岳を見上げると、その前の天狗岩が立派な恐ろしげな岩山に見える。あの岩山に3年前にはどうやって上ったのだろうかと考えてしまう。
小屋の屋根を見ると布団や毛布がびっしりと敷かれて天日干しされている。今晩は気持ちのいい布団で寝られそうで嬉しいが、小屋番は若い男女二人だけのように見える。定員30名の小さな山小屋とはいえ、二人でよくもこれだけの布団を屋根の上に上げられたもんだと感心させられる。しかもトイレの使用法の講習をしながらだ。
(塩見小屋)
(天狗岩と塩見岳)

トイレの講習を終って一休みしてから、小屋の前にザックを置いて、空身で塩見岳に向かった。小屋前から少し登って ハイマツの間の登山道を抜けると,天狗岩の全貌がはっきりと見えてきた。山頂が随分と高く見え、始めはハイマツ帯だが最後にきつい岩場が待っているように見える。
ハイマツ帯の中もガレた道で、ハイマツが尽きるといよいよ天狗岩のガレバだ。岩がゴツゴツ出っ張っている急斜面はどこでも歩けそうに見えるが、踏跡は、はっきりしている。踏跡を探しながら忠実に辿って行くと、道は山頂には向かわず山頂部を巻いていた。
(塩見小屋からは空身で)
(天狗岩の巻道)

天狗岩を巻きながら登って東面に出ると、目の前に塩見岳の岩峰が聳え立っていた。3年前の復習もしないで飛び出してきて、天狗岩さえ越せば塩見岳はすぐだと思っていたので、この垂直とも思える岩壁の高さには驚かされた。ここは甲斐駒や間の岳方向の展望も良くて一息入れて気合を入れ直した。
岩場の好きな和子は恐れる様子もなく先にどんどんと登って行く。大股に乗越えるような所も平気である。3大キレットを経験すると女性も強くなる。私は後について登って行けばいいので気が楽だ。(家でも頭が上がらず、山でも威張れなくなっては立つ瀬が無くなってきた)
(天狗岩の次に塩見岳が立ちはだかる)
(岩場の急登)

塩見小屋を出てから1時間半で山頂標柱と三角点のある塩見岳山頂に登りついた。目の前に富士山が見えていたが、幾重もの山並みの向こうに浮かぶ富士山の姿はすばらしい見ものだった。
三角点のあるこの西峰は標高3046.9m、すぐ先に見えるピーク東峰は3052mと5m高い。東峰まで行かないと塩見岳に登ったことにならない。。
(西岳登頂)
(その先に東峰)

すぐに東峰へ移動していくと、数人が記念写真の撮り合いをいていた。東峰の山頂標柱が未完成で斜めに立て掛けたままで格好が悪いので、みんなで力を合わせて重い標柱をまっすぐに据え付け直してから写真の撮り直しをした。
東峰の山頂は狭く、お互いの記念写真撮影の邪魔にもなるので、少し下がった広場で昼食をとった。
(東峰山頂)
(絶景富士山)

食事を終ってもまだ11時前、今日はたっぷりと時間があるのでじっくりと周りの山の山座同定を楽しんだ。いつもならベテランリーダの説明を聞いてすぐに納得して終りになるのだが、自分達の頭の中には地図が平面図で入っていない。二人で主張する山の並びがめちゃくちゃになって言い争いになる。地図を開いて一座一座同定して行く。
(南方展望)

(西方展望)

(北方展望)

農鳥岳と富士山の間に並んで見える奥秩父から奥多摩の山々については山容の特徴がつかめず、二人では山座同定は叶わなかった。
(東方展望)

東峰、西峰と座を変えながら展望を楽しんだが、大きな山の山頂でのんびりと2時間も過ごす贅沢を味わったのは初めてのことだ。山小屋2泊の効果絶大。
(東峰で)
(西峰でも)
(塩見岳山頂でのんびり)

山頂で幸せな時間を過ごして正午に下山開始。岩場の下りは登りよりも気を遣うが、他に殆んど人影のない静かな世界。マイペースでゆっくりと下った。
鞍部の降りて天狗岩の巻道に向かうところに、天狗岩のてっぺんに向かう踏跡を見つけて踏みこんでみた。和子は分岐にとどまって山頂岩の上でバンザイする私の写真を撮ってくれた。山頂から巻道に下る別コースもあるように見えたが、途中の大岩を乗越えるところにストックを置いてきたので分岐点まで往路を戻った。
(岩場の下り)
(天狗岩の頂上)

小屋へ着く直前にある分岐から小屋裏の展望台に上がって見るとなかなかの好展望。ここに上がれば簡単にすばらしい日の入り日の出を鑑賞できそうだと見当をつけて小屋に戻った。小屋ではまだ布団などを屋根から降ろしている最中で、まだ部屋には入れない。ヘリポートに上がってお八つを食べながらまた展望を楽しんだ。夕日、朝日はここから眺めた方がスリッパでも来れそうで手軽でいいと結論した。
小屋に呼び戻されて、部屋の中の寝る場所を指定された。2段ベッドの下段で、梯子の上り下りをしなくてよくてラッキー。3年前は上段に泊って、天井の低さと梯子の上り下りに苦労した。
部屋が狭いので、ザックは寝室には持ち込めない。入口脇の物置にザックをまとめて置くのだが、夜中に必要なものだけはザックから出しておかなければならない。要領の悪い私は、色々出したり入れたり、和子に悪態をつかれる。
夕食は2グループに分けて受付棟の食堂で頂いた。初めのグループとして食堂に入ったが、並んでいる食事は昨日の三伏峠小屋の食事に負けず劣らず品数豊富で美味しそうだった。夕食準備も2人の若い男女の仕事かと驚いたが、「ご飯とみそ汁はお代わり自由だよ」と言いながら奥の部屋から賄い専門の男性が現れた。オーナの奥さんと一緒に食事担当だとのこと。いい味付けで美味しかった煮物など全部小屋で調理したものだとのこと。奥さんのお顔を拝顔出来なかったのが残念。
(ヘリポートでのんびり)
(美味しい夕食)

食事が終わって、ヘリポートに陣取って日の入りの鑑賞。目の前に沈んでいく夕日、後ろに夕日を受けて赤く染まる塩見岳、その上にお月さまも昇ってきて点描を添える。前を向いたり、後ろを向いたりなかなか忙しい。
(日没)
(夕焼けの塩見岳)

横には仙丈ヶ岳、甲斐駒、北岳、間の岳、農鳥岳も赤味をおびて来た。特に真っ白だった甲斐駒の岩肌がピンクに染まったのが美しかったが、私のカメラ(技術?)では上手く写らなかった。
(仙丈、甲斐駒、北岳、間の岳、農鳥も夕日に焼ける)

明日もいい天気になることを念じながら静かな部屋で眠りについた。

4)3日目山行
9/9:塩見小屋 6:05 ---- 6:15 塩見新道分岐 ---- 7:30 本谷山 7:35 ---- 8:15 三伏山 ---- 8:25 三伏峠小屋 8:45 ---- 9:00 塩川小屋分岐 ---- 9:20 水場 9:25 ---- 9:35 5/10地点 ---- 9:55 1Km地点休憩 10:05 ---- 10:20 尾根 ---- 10:35 鳥倉登山口 ---- 10:15 鳥倉林道ゲート

夜中にトイレに起きだしてみると、外は霧雨模様だった。4時半に食事に呼び出されると、霧雨はまだ続いていた。日の出を拝むなどお呼びではなさそうだ。美味しい朝食を頂いて下山の準備を終えて、時間が経てば雨が止むかと期待しながら部屋で待機していると、「6時から部屋の片付けを始めるので全員外に出て下さーい」のアナウンス。しようなく雨具をつけて歩き始めた。
展望がないので歩くのは速い。少し若目の御夫婦二組と前後しながらどんどん下ったら、三伏峠小屋まで2時間20分で着いてしまった。コースタイムは3時間10分。信じられない出来事だった。熱いコーヒを頂いて一息入れた。
三伏峠小屋で20分休憩して再出発、今度は競争相手がいないのでマイペース、途中お八つで空腹を満たし、滑りそうな丸太の階段に気を付けながらゆっくり下って登山口に10時35分に到着した。ほぼコースタイム。
(今日は雨具をつけて下る)
(丸太梯子は滑りそう)

登山口から駐車場までの林道歩きが長かった。道が大きく右に回り込んだ所で谷の向かいに駐車場が見えたが、はるか遠くに見えてうんざりさせられた。目的地が見えるのも善し悪しである。途中で道傍に咲いている野の花や絶壁の写真を撮ったりしながらだらだらと歩いて行ったら、駐車場に着くまで一昨日の登りよりも余計に時間がかかっていた。
今日は天気が良くないからか、駐車場に止まっている車は大分減っていて、空きスペースも出来ていた。
(駐車場は谷向こう遥か)
(長い長い林道歩き)


5)帰途
9/9:鳥倉林道ゲート 11:35発 = 12:20 小渋温泉(入浴) 13:20 = 13:30 塩の里(昼食) 14:20= 14:55 松川IC = 15:10 駒ヶ岳SA(ガソリン給油) 15:25=15:45岡谷JCT= 16:25 更埴JCT = 17:25 甘楽PA 17:35 = 17:45 藤岡JCT = 17:50 高崎JCT = 18:20 岩船JCT = 18:25 都賀JCT = 19:05 友部JCT = 19:20 日立南IC = 日立自宅 19:40帰着

駐車場から車で大鹿村に下り、観光案内所で日帰り温泉の情報を訊くと、鹿塩温泉は金曜日午後休みのところが多いから小渋温泉の赤石荘の方がよかろうと薦められた。赤石荘は山奥の温泉だが道路の至るところに看板が出ていて迷うことはなく到着、500円也で清潔で気持ちのいい展望風呂でゆっくりと汗を流した。
(豆腐定食に大満足)
観光案内所で貰った村内地図で大鹿村の食堂を探し、鹿塩温泉入口の直売所「塩の里」まで走った。店主に訊くと鹿肉が大鹿村の名物とのことで私はお勧めに従って鹿肉定食にしたが、和子はバンビの可愛い顔が浮かんできて食べられないといい、2番目のお薦め豆腐定食を注文した。山小屋の食事も美味しかったが、やはり街中の食事はもっと美味しかった。
食堂脇の直販店には展示室があり、鹿塩温泉や大鹿歌舞伎の由来の展示物がならび、柳土情のすばらしい切り絵の数々の展示もあり、大鹿村の文化の一端にも接することができた。

食事が終わった頃から空が晴れ渡ってきて、車の中も暑くなってきた。松川ICで高速に乗り、給油のため駒ヶ岳SAに立ち寄ったついでに、南アルプスと中央アルプスの展望も楽しむことができた。甘楽PAでは西上州の山波を眺めて、翌々日に登る小沢岳を探した。
日立南ICに19時20分に到着し、途中スーパでデリカの食材を買い込んで我家に帰り、すばらしかった展望山行を祝ってビールで乾杯した。


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